貯金1,000万円を超えたらどうする?注意すべきリスクや対策を徹底解説
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貯金1,000万円は、資産形成における一つの大きな節目となる水準ですが、2019年に金融庁が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」から「老後2,000万円問題」が話題となったように、1,000万円という資産は老後の生活費を考えると決して十分な金額ではありません。

また、日本はしばらくデフレが続きましたが昨今は物価高などインフレが生活を直撃し、金融機関が破綻した際のペイオフ制度の制限など万が一のリスク要因もふまえ、築いた資産を守りつつ、さらに資産を増やしていくための行動が求められます。

この記事では、貯金1,000万円を超えた後に考えるべき運用方法やリスク管理、さらなる資産拡大の戦略について詳しく解説していきます。

※なお、本文中の「貯金」は、預貯金(日常的な出し入れを除く)に加え、積立型保険商品、個人年金保険、債券、株式、投資信託、財形貯蓄などを含む「金融資産保有額」を前提としています。

目次

  1. 1.貯金1,000万円を超えている人の割合
  2. 2.貯金1,000万円を超えたら本当に安心なのか?
    1. 2-1.老後資金として1,000万円では足りない理由
    2. 2-2.金融資産が多いほど老後への不安は減少する傾向
  3. 3.銀行預金のままで本当に大丈夫?考えるべきリスクとは
    1. 3-1.インフレによる実質価値の減少
    2. 3-2.預金保険制度(ペイオフ)による保護の制限
  4. 4.1,000万円の貯金をどのように活かすべきか?運用方法と選択肢
    1. 4-1.安定性を重視したい人向けの選択肢
    2. 4-2.積極的に増やしたい人向けの選択肢
    3. 4-3.税制優遇制度を活用して運用効率を向上させる
  5. 5.資産2,000万円を目指すためのおすすめの方法
    1. 5-1.目標達成期別の必要な年平均リターン
    2. 5-2.期間別に見る具体的なアプローチと戦略
  6. 6.1,000万円を資産拡大のスタート地点としよう

1.貯金1,000万円を超えている人の割合

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まずは、貯金額を含む金融資産が1,000万円を超えている世帯が日本にどれくらいの割合でいるのかを見ていきましょう。

金融資産保有額 単身世帯 二人以上世帯
無回答 2.6% 3.9%
金融資産非保有者 36.0% 24.7%
100万円未満 12.6% 8.6%
100~200万円未満 6.3% 6.8%
200~300万円未満 4.4% 4.9%
300~400万円未満 4.3% 4.5%
400~500万円未満 2.9% 3.2%
500~700万円未満 4.8% 6.5%
700~1,000万円未満 4.2% 5.7%
1,000~1,500万円未満 5.7% 7.9%
1,500~2,000万円未満 3.0% 4.4%
2,000~3,000万円未満 4.6% 6.2%
3,000万円以上 8.6% 12.7%
1,000万円以上の合計 21.9% 31.2%

上記のデータを見ると、日本国内で貯金を含む1,000万円以上の金融資産を保有する割合は、二人以上世帯で全体の約31.2%、単身世帯に限れば約21.9%にとどまります。このことから、1,000万円という金額は決して誰もが簡単に達成できる水準ではなく、国内でも比較的上位に入る水準といえるでしょう。

また、金融資産保有額が1,000万円を超える世帯の割合は、年代によって大きく異なります。

(年齢別)金融資産保有額が1,000万円以上の世帯割合

年代 世帯割合 平均 中央値
20代 3.8% 266万円 120万円
30代 22.3% 874万円 315万円
40代 30.6% 1,181万円 500万円
50代 39.9% 1,773万円 700万円
60代 53.0% 2,499万円 1,200万円
70代 54.1% 2,162万円 1,100万円

年齢別のデータからは、20代では金融資産1,000万円以上の世帯の割合が3.8%と非常に少ないのに対し、40代になると平均金融資産保有額が1,181万円となり、全体の30.6%の世帯が1,000万円を超えていることがわかります。しかし、注目すべきは「中央値」です。例えば40代の中央値は500万円となっており、これは一部の上位層が平均値を大きく引き上げていると捉えることができます。

関連記事:貯金1,000万円に到達する年齢は?リアルなデータと差がつく習慣を解説

2.貯金1,000万円を超えたら本当に安心なのか?

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先ほどのデータで、貯金1,000万円が国内でも上位に入る水準であることがわかりました。しかし、この金額だけで老後まで安心して暮らせるかというと、残念ながら難しいといわざるをえません。なぜ1,000万円だけでは将来への不安が残るのか、具体的な理由を解説していきます。

2-1.老後資金として1,000万円では足りない理由

厚生労働省が発表している「令和5年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性で約81歳、女性で約87歳です。仮に60歳で定年退職を迎えた場合、20年以上の生活費が必要になります。

次に、公的年金について見ていきましょう。同じく厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度の平均受給月額は以下の通りです。

  • 老齢基礎年金(国民年金):平均月額 約5.6万円(25年以上加入の場合)
  • 老齢厚生年金(第1号被保険者):平均月額 約14.5万円

夫婦二人で国民年金の平均月額を受け取り、片方が老齢厚生年金(第1号)の平均月額を受け取る場合、合計金額は約25.7万円となります。

また、生命保険文化センターが実施している「生活保障に関する調査(令和4年度)」によると、ゆとりのある老後生活を送るための生活費は月額平均37.9万円となっています。

これらのデータから、仮に夫婦二人での生活費を月38万円と想定してみましょう。年金でまかなえる部分(25.7万円)を差し引くと、毎月約12.3万円の不足が生じる計算です。

この不足分が20年間続くと、単純計算で以下の金額が必要となります。

12.3万円/月 × 12ヶ月/年 × 20年 = 2,952万円

1,000万円の貯蓄だけでは、多くの人にとって老後の生活費として十分とはいえないのが実情でしょう。

※この計算はあくまで一例であり、個々のライフスタイルや健康状態によって必要な金額は変動します。

参照:
令和5年簡易生命表の概況(厚生労働省)
令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(厚生労働省)
生活保障に関する調査(公益財団法人 生命保険文化センター)

2-2.金融資産が多いほど老後への不安は減少する傾向

続いて、金融資産の保有額別に「老後の生活に対する考え方」を比較したデータを紹介します。

(金融資産保有額別)老後の生活についての考え方

金融資産保有額 それほど心配していない 多少心配である 非常に心配である
500~700万円未満 13.8% 44.5% 41.7%
700~1,000万円未満 15.8% 53.5% 30.6%
1,000~1,500万円未満 18.3% 55.5% 26.2%
1,500~2,000万円未満 28.5% 49.8% 21.7%
2,000~3,000万円未満 31.4% 52.4% 16.2%
3,000万円以上 57.8% 35.7% 6.5%

金融資産が増えるにつれて「それほど心配していない」と答える割合が増え、「非常に心配である」と答える割合が減少していく傾向がはっきりと見て取れます。例えば、金融資産が500〜700万円未満の層では約4割の人が「非常に心配」と答えているのに対し、1,000〜1,500万円未満の層だと26.2%に、さらに3,000万円以上になるとわずか6.5%にまで減少しています。

この結果は、貯金1,000万円を達成したとしても、老後への不安が完全に解消されるわけではない一方で、資産をさらに増やしていくことで、将来への不安を大きく軽減できる可能性を示唆しています。経済的な安心感を高めるためにも、次のステップへの行動が重要であるといえるでしょう。

3.銀行預金のままで本当に大丈夫?考えるべきリスクとは

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資産の総額が大きくなるにつれて、ただ銀行預金に預けているだけでは、価値の目減りや、予期せぬリスクにさらされる可能性があります。ここでは、貯金1,000万円を預金に置いたままにしておくことで考えられる主なリスクについて解説します。

3-1.インフレによる実質価値の減少

総務省の発表によると、2024年度のインフレ率(消費者物価指数、生鮮食品を除く総合)は2.7%となっています。もしこの水準の物価上昇が続けば、私たちの預金の実質的な価値は時間とともに下落していきます。

たとえば、現在1,000万円の貯金があったとして、年率1%のインフレが10年間続いた場合、その実質的な価値は約905万円(約9.5%減)にまで目減りしてしまいます。さらに年率2%のインフレが続けば、約820万円(約18%減)にまで減少してしまうのです。

現在のメガバンクの普通預金金利が0.2%前後であることを考慮すると、預金だけでは物価上昇に追いつくことは困難です。

参照:2020年基準 消 費 者 物価指数 全国 2025年(令和7年)3月分及び2024年度(令和6年度)平均(総務省)

3-2.預金保険制度(ペイオフ)による保護の制限

1つの銀行口座に預けている場合にも懸念すべきリスクがあります。

銀行に預けている預金は、万が一、金融機関が破綻した場合に預金者を保護する「ペイオフ(預金保険制度)」によって守られています。しかし、この制度は保護される金額に上限があります。

ペイオフにより保護される預金とその上限額は以下の通りです。

  • 保護される預金: 普通預金、定期預金、積金、元本補填契約のある金銭信託など
  • 保護の上限: 1つの金融機関につき、預金者1人あたり、元本1,000万円とその利息まで

つまり、もし取引している銀行が破綻した場合、普通預金口座に預けている1,000万円を超える部分はペイオフ制度の保護対象外となる、ということです。

この保護上限を超える部分は、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われる(一部カットされる可能性がある)か、最悪の場合、全く戻ってこないリスクがある点は留意しておきましょう。

なお、当座預金や、一定の要件を満たす「決済用預金」(無利息、要求払い、決済サービスを提供できること)は、全額保護の対象となります。

参照:預金保険制度(金融庁)

4.1,000万円の貯金をどのように活かすべきか?運用方法と選択肢

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一つの銀行預金口座だけで資産を保有しておくことのリスクを踏まえ、せっかく貯めた1,000万円をそのまま寝かせておくのではなく、将来の目標や許容できるリスクに応じて、お金にも働いてもらう視点を保つことが大切です。安定性を重視したい方と、一定のリスクをとって積極的に増やしたい方、それぞれの方向性で考えられる運用方法を紹介します。

4-1.安定性を重視したい人向けの選択肢

まず、インフレによる資産価値の目減りを抑えつつも、極力リスクも小さくしたいと考える方におすすめの安定性を重視した運用方法をお伝えします。

4-1-1.預金口座の分散

ペイオフ制度による保護の上限を超えるリスクを回避するための、最も基本的な対策が「複数の金融機関に預金口座を分散して預ける」という方法です。これにより、各金融機関での預金がペイオフの保護上限内に収まるように管理できます。これは積極的な「運用」ではありませんが、大切な資産を万が一の事態から守るための、重要なリスク分散策となります。

4-1-2.債券投資

債券は、国(国債)や企業(社債)に資金を貸し付け、利子を受け取り、満期には元本が返還される仕組みの金融商品です。

債券は、発行体(国や企業)が破綻しない限り、原則として約束された利子と元本が支払われます。そのため、株式のような企業の業績や市場全体の動向による価格変動リスクは比較的少なく、安定したリターンが期待できます。特に日本国債は、先進国の中でも信用度が高く、安全性の高い資産とされており、2025年5月の個人向け国債(変動10年)の初回適用利率は0.84%(税引前)となっています。社債は発行する企業によってリスクおよび利率は異なりますが、一般的に国債よりも高い利回りが期待できます。

参考:現在募集中の個人向け国債・新窓販国債(財務省)

関連記事:個人向け社債の利回りランキング!選び方のポイントも解説

4-2.積極的に増やしたい人向けの選択肢

ここでは、一定のリスクを許容しつつ、インフレ率を大きく上回るリターンを目指したい方向けの主な運用方法を紹介します。これらの方法は、資産が大きく増える可能性がある一方で、元本割れなどのリスクも伴うことを理解しておくことが重要です。

4-2-1.株式投資

主に上場している株式に投資し、配当、株式自体の値上がり益の獲得を目指す方法です。価値(株価)が上昇することで利益を得ることができます。特に、将来的な成長が期待できる企業の株式に長期で投資することで、株価の上昇と配当金の両方の恩恵を受け、大きな資産形成につながる可能性があります。

ただし、株価は企業の業績だけでなく、経済全体の動向や社会情勢によっても大きく変動します。最悪の場合、投資した企業が倒産してしまえば、株式の価値がゼロになるリスクもあります。また少数の銘柄に集中投資をする場合は短期間で資産が大きく減少する可能性もあるため、投資対象や投資タイミングの分散を心がけ、リスクを自身の許容範囲内でコントロールするようにしましょう。

4-2-2.投資信託

投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券、不動産などの複数の資産に分散投資を行う金融商品です。

通常、個人で多種多様な銘柄に分散投資を行うのは手間がかかり、十分な分散を図るにはまとまった資金も必要となります。しかし、投資信託を活用すれば、比較的手軽に少額から分散投資を実現できます。これにより、特定の企業の倒産や、特定の資産クラスの価格急落といった個別リスクの影響を軽減し、より安定した運用を目指すことができます。

特に、東証株価指数(TOPIX)や米国の代表的な株価指数であるS&P500といった、特定の市場指数と同じ値動きを目指すインデックスファンドは、運用にかかるコスト(信託報酬などの手数料)が比較的低く設定されていることが多く、投資初心者の方にとって始めやすい選択肢としておすすめです。

ただし、分散投資をしていても、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのように市場全体が大きく変動するような局面では、投資信託の基準価額も大きく値下がりするリスクがある点は十分に理解しておく必要があります。

4-2-3.不動産投資

不動産投資は、マンションやアパート、一戸建てなどの不動産を購入し、第三者に貸し出すことで定期的な家賃収入(インカムゲイン)を得ることを主な目的とする投資方法です。加えて、購入時よりも高い価格で売却できれば、その差額が売却益(キャピタルゲイン)となります。インフレが進行し物価が上昇すると、家賃や不動産自体の価格も連動して上昇しやすいため、「インフレに強い資産」として注目されています。

一方で、借り手が見つからない空室リスクや、地震や台風などの自然災害リスク、物件の維持管理にかかるコストなど、不動産投資固有のリスクも存在します。成功するためには、信頼できる不動産会社などのパートナーと連携を取り、賃貸経営という事業として真剣に取り組む姿勢が求められます。

どの運用方法を選択するにしても、ご自身のライフプランや許容できるリスクレベルを十分に考慮することが重要です。それぞれの運用方法が持つ特徴や、それに伴うリスク・リターンを深く理解した上で情報収集を行い、ご自身に最適な選択をすることが成功への鍵となるでしょう。

関連記事:借金して不動産投資をするのはなぜ?ローン(融資)活用の考え方を解説

4-3.税制優遇制度を活用して運用効率を向上させる

資産運用で得た利益には、通常、税金がかかります。しかし、国が用意している特定の制度を活用することで、税金を軽減したり、非課税にしたりすることが可能です。これらの税制優遇制度を上手に活用することは、資産形成のスピードを加速させる上で非常に重要なポイントとなります。

4-3-1.NISA(ニーサ)

NISAは、少額投資非課税制度のことで、NISA口座内で購入した金融商品から得られる配当金や売却益が非課税になる制度です。2024年から新NISA制度が始まり、年間投資枠が最大360万円、生涯で最大1,800万円まで投資できるように大幅に拡大され、保有期間の制限もなくなったことで、より長期的な資産形成に役立つ制度へと進化しました。

参考:NISAを知る(金融庁)

4-3-2.iDeCo(イデコ)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出し、自分で運用する私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されるメリットがあります。また、運用益も非課税で再投資され、将来受け取る際にも税制上の優遇措置があります。原則として60歳まで資産を引き出せないという特徴があるため、まさに老後資金形成に特化した、計画的な資産運用を行いたい方に最適な制度といえるでしょう。

参考:iDeCo(イデコ)の特徴(国民年金基金連合会)

4-3-3.青色申告

青色申告は、事業所得や不動産所得がある個人事業主やフリーランスの方が利用できる確定申告の方法です。複式簿記での記帳が必要となるなど手間はかかりますが、最高65万円の特別控除が受けられるため、節税効果が高いのが特徴です。不動産投資を行う場合など、事業として収益を上げている場合に検討すると良いでしょう。

参考:No.2070 青色申告制度(国税庁)

5.資産2,000万円を目指すためのおすすめの方法

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貯金1,000万円を達成したことは大きな一歩ですが、さらに資産を増やしていくことで、将来のインフレリスクへの備えを強固にできるほか、老後資金の形成やライフプランの実現において、より大きな安心感が得られます。ここでは、貯金1,000万円を「次の1,000万円」へとつなげ、資産2,000万円を目指すための具体的なアプローチと、期間に応じた戦略について解説していきます。

1,000万円を2,000万円にするために必要となる運用利回りは、目標を達成したい「期間」によって大きく変わります。そして、必要となる利回りが高くなるほど、取らなければならないリスクも高くなるのが一般的な資産運用の原則です。自身のライフプランやリスク許容度に合わせて、現実的な期間設定を行うようにしましょう。

5-1.目標達成期別の必要な年平均リターン

資産を複利で運用した場合、元本を倍にするために必要となる年平均リターンは以下のようになります(税金や手数料は考慮しない場合の単純計算)。

目標期間 必要なリターン 投資対象
5年 年間約14.9% 株式、FX
10年 年間約7.2% 株式型のインデックスファンド、不動産
15年 年間約4.7% 株式、債券の組み合わせ
20年 年間約3.6% 債券中心

5-2.期間別に見る具体的なアプローチと戦略

上記の必要なリターンを踏まえ、それぞれの期間でどのような運用方法や考え方が中心となるかを見ていきましょう。

5-2-1.5年で2,000万円を目指す場合:年間約14.9%のハイリターンの追求

年間14.9%というリターンを目指す場合、相応の高いリスクを取る必要があり、目標達成の難易度は非常に高いです。

具体的には、個別成長株への集中投資や信用取引、FX(外国為替証拠金取引)など、成功すれば短期間で大きな利益が見込める一方で、失敗すれば元本を大きく割り込む可能性もある運用手法が中心となります。

これらの分野で継続的に高いリターンを得るためには、市場や個別銘柄に関する深い専門知識、緻密な分析能力、高度な情報収集力に加え、損失が出た際にも冷静さを保つ強い精神力が不可欠です。現実的な目標として設定するには、十分な検討とリスク理解が必要です。

5-2-2.10年で2,000万円を目指す場合(年率約7.2%):分散投資による着実な増加

10年で2,000万円を目指す際に必要な年間リターンは約7.2%です。これは、過去の長期データに基づいた世界の株式市場全体の平均的な伸び率に近い水準で、極端なハイリスク運用を避けつつ、実現を目指すことが可能です。このリターンを目指す場合も、株式を中心とした一定のリスク資産への投資が中心戦略となります。

具体的には、S&P500や全世界株式などの指数に連動するインデックスファンドを活用した積立投資が有効な選択肢となります。また、複数のインデックスファンドやアクティブファンド、債券などを組み合わせたバランス型投資信託も検討に値します。これらの方法は、リスクの分散が図られているため、個別株投資のような極端なリスクは避けつつ、市場全体の成長を取り込むことで目標リターンを目指すことができます。ただし、市場全体の長期的な低迷期が訪れた場合、10年という期間でも目標に届かないリスクはあります。

また、年収が高い会社員の方など、金融機関からの借入(ローン)を利用できる信用力がある場合は、不動産投資も資金効率を高めて短期間での資産拡大を目指す選択肢となり得ます。しかし、売却益や十分な家賃収入を得られる物件(都心部の値上がり期待エリアや、地方の高利回り物件など)を選ぶためには、高度な目利き力と市場分析が求められます。

5-2-3.15年で2,000万円を目指す場合

15年間かけて資産を倍の2,000万円にするには、年間約4.7%の年平均リターンを目指す必要があります。この4.7%というリターンは、10年や5年の目標に比べるとより現実的な水準といえます。株式だけでなく、比較的安全性の高い債券などもポートフォリオに組み入れることで、リスクを抑えつつ目標達成を目指すことが可能です。

具体的には、国内外の株式と債券、リート(不動産投資信託)などにバランス良く分散投資を行うバランスファンドや、自身で株式や債券の割合を決めて運用するスタイルなどが考えられます。例えば、「株式50%:債券50%」といった組み合わせや、「株式60%:債券40%」のようなポートフォリオは、リスクとリターンのバランスを取りながら、十分に目標水準のリターンを狙うことができます。15年という期間は、市場の変動による影響を平準化しやすく、比較的リスクを抑えながら複利効果を享受するのに適した期間と言えるでしょう。

5-2-4.20年で2,000万円を目指す場合

20年で2,000万円を目指す場合は、年間3.6%のリターンが必要になります。3.6%でさらにリスクを抑えた運用も視野に入ってきます。これは、先進国の債券なども含めた国際分散投資や、より保守的なバランスファンドなどでも十分に目指せる可能性のある水準です。銀行預金よりは高いリターンを狙いつつも、資産の大きな目減りは避けたいという場合に適した目標期間と言えます。

6.1,000万円を資産拡大のスタート地点としよう

貯金1,000万円を超えたらどうする?注意すべきリスクや対策を徹底解説
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貯金1,000万円を達成することは大きな節目ですが、老後に向けた資産形成を目指す上では十分な資産規模とはいえません。むしろ、「資産に働いてもらう」という新しいステージのスタート地点と捉えることが、将来にわたる経済的な安心と豊かさを築く上で重要になります。

1,000万円は、あなたが将来の経済的な安定と自由を目指すための、強固な土台となりうる資金です。この素晴らしいスタート地点に立ち止まるのではなく、「次の1,000万円」という目標を設定し、資産が自らも働くお金のサイクルを作り出すことを目指しましょう。

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