不動産投資
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丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

マンション経営でオーナーが負担するコストに「退去時費用」があります。借主とトラブルにならないように、負担する費用の内容や相場をしっかり把握しておくことが重要です。本稿では退去時費用を項目別に解説し、あわせてトラブル回避のための方法や、退去時費用に対する心がまえについて紹介します。

目次

  1. 1.退去時費用は「更新時期」や「環境変化」で起こりやすい
  2. 2.入居者満足度が低いと退去が発生しやすくなる
  3. 3.入居者が退去したときにオーナーが負担する費用
    1. 3-1.原状回復費
    2. 3-2.仲介手数料
    3. 3-3.広告料(AD)
    4. 3-4.賃貸物件サイトなどへの出稿料(掲載料)
    5. 3-5.その他
  4. 4.マンション経営(ワンルーム)でかかる退去時費用の相場
    1. 4-1.ハウスクリーニング代
    2. 4-2.クロスの張り替え
  5. 5.トラブル回避の方法
    1. 5-1.最も多いのが原状回復に関するトラブル
    2. 5-2.入居者とのトラブルを回避するためには
  6. 6.退去時費用は、かけるべき部分にしっかりかけるべき

1.退去時費用は「更新時期」や「環境変化」で起こりやすい

マンション経営の退去時費用 オーナーが負担する内容と相場は?
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退去時費用は、入居者が入れ替わるときにかかるものです。この費用をオーナー側と入居者の双方で負担します。

「いつ入居者が退去するか(いつ退去時費用が発生するか)」のタイミングについては読みづらい一方、入居者の背景によってある程度推測することもできます。なぜなら退去は「更新時期」や「環境の変化」で起こりやすいからです。

退去が「更新時期」に起こりやすい理由は、「更新料を払うのであれば、新しい賃貸物件に引っ越そう」と考える入居者がいるからです。もう1つ退去のきっかけになる「環境の変化」とは、進学・就職・異動・転職などによる生活環境の変化になります。

例えば入居者が大学生だとすると、卒業のタイミングで退去する可能性が高いと推測できます。また、異動の多い職種の公務員が入居者の場合、数年で退去する可能性が高いともいえます。

2.入居者満足度が低いと退去が発生しやすくなる

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入居者満足度も退去に大きな影響を与えます。「近隣の騒音がひどい」「共用部の管理状態が悪い」など入居者が安心・快適に暮らせない事情があると、退去が頻繁に起こりやすくなります。これによってオーナーが負担する退去費用も多くなります。

1年以内など短期間での撤去が繰り返される場合は、「何か問題があるのではないか?」と疑いましょう。あまりにひどい場合は、管理会社と話し合ったり、賃貸物件の周辺や共用部を現地調査したりといった対策が必要かもしれません。

3.入居者が退去したときにオーナーが負担する費用

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入居者が退去し、新規の入居者募集までにオーナーが負担する費用には、「原状回復費」「仲介手数料」「広告料(AD)」などがあります。マンション経営をする際には、これらの費用を想定したうえで経営計画をシュミレーションしましょう。

3-1.原状回復費

原状回復費とは、部屋を入居前と同じ状態に戻すための費用です。国土交通省住宅局が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復について「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。

(出典:国土交通省 住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版))

原則、管理会社(自主管理の場合はオーナー)と入居者が部屋の状態を両者で確認したうえで、賃貸借契約の内容に沿って費用配分や金額を決めます。具体的な項目としては、ハウスクリーニング、クロスの張り替え、住宅設備の交換などがあります。

原状回復費の基本的な考え方として、一般的な生活で汚れたり経年劣化が発生したりした場合の修繕費は、オーナー側の負担となります。一方、入居者が故意または不注意で破損・損傷させた箇所などについては入居者の負担となります。

後述しますが、オーナーと入居者の間で最も多いのが原状回復にまつわるトラブルです。トラブルになるのを防ぐために、オーナーと入居者がそれぞれ負担する費用の範囲を確認しておきましょう。国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に掲載されている負担費用の項目をまとめると以下のようになります。

・オーナーが負担するもの
オーナーが負担する主な項目は下表の通りです。入居者の落ち度によるものではなく、住んでいれば必然的に発生する損傷については、入居者に請求するのは難しいと考えたほうがよいでしょう。また、次の入居者を確保するための化粧直しやグレードアップもオーナーの負担になります。

賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・畳の変色、フローリングの色落ち
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
・壁に貼ったポスターや絵画の跡
・エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡
・クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
・壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
・地震で破損したガラス
・網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)
・鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
・設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)
次の入居者を確保するための化粧直し、グレードアップを検討するもの
・畳の裏返し、表替え(特に破損等していないが、次の入居者確保のために行うもの)
・フローリングワックスがけ
・網戸の張替え(破損等はしていないが次の入居者確保のために行うもの)
・全体のハウスクリーニング(専門業者による)
・エアコンの内部洗浄
・消毒(台所、トイレ)
・浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)

国土交通省 住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版))

・入居者が負担するもの
一方、入居者が負担する費用は下表の通りです。善管注意義務に違反し、入居者の故意や過失で生じた損傷については請求できます。

賃借人の使い方次第で発生したりしなかったりするもの
(明らかに通常の使用による結果とはいえないもの)
・引越作業で生じたひっかきキズ
・畳やフローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
・落書き等の故意による毀損
・タバコ等のヤニ・臭い
・壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替が必要な程度のもの)
・クーラー(賃借人所有)から水漏れし、放置したため壁が腐食
・天井に直接つけた照明器具の跡
・飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
・鍵の紛失、破損による取替え
・戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草
賃借人のその後の手入れ等管理が悪く発生、拡大したと考えられるもの
・カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ
・冷蔵庫下のサビ跡
・台所の油汚れ
・結露を放置したことにより拡大したカビ、シミ
・クーラー(賃貸人所有)から水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
・ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす
・風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等

国土交通省 住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版))

3-2.仲介手数料

仲介手数料とは、オーナー(貸主)と入居者(借主)をマッチングする不動産会社(仲介会社)に支払う手数料のことです。宅地建物取引業法では、賃貸の仲介で受け取れる手数料を貸主と借主の両者からそれぞれ賃料の半月分(0.5ヵ月分)以内と定めています。

ただし、オーナーや入居者が事前に了承していれば、どちらか一方から家賃の1ヵ月分以内の仲介手数料を受け取ることも可能です。

3-3.広告料(AD)

不動産仲介会社に支払う広告料(AD)とは仲介手数料とは別に、追加で広告を行ってもらった場合に支払う費用です。

広告料を付けるメリットは、不動産会社にとって仲介手数料とは別に利益を得られるため、より熱心に客付け活動を行う傾向があることです。入居希望者の照会頻度が増え、成約する確率が高くなります。

広告料を付けるケースは人の動きが少なく、空室が埋まりにくい時期に依頼する場合があります。逆に賃貸の需要が多い1~3月頃は空室が埋まりやすいため、広告料を付けることは少ないといわれています。

広告料は仲介手数料のような明確な取り決めはないので、不動産仲介会社との間で次のような点を確認したほうがよいでしょう。

・空室発生時に広告料の設定があるのか
・ある場合は広告料をどんな業務の対価と定義にしているのか
・入居者が決まった場合、どれくらい広告料を払えばよいのか

3-4.賃貸物件サイトなどへの出稿料(掲載料)

入居者を募集する際、有料の賃貸物件サイトなどに広告(物件情報)を掲載した場合は出稿料がかかります。管理会社が負担するケースも多いですが、提案があったときは、選択するメディアの出稿料・出稿期間・条件などを確認しましょう。

3-5.その他

原状回復費とは別に、エアコンや給湯器などの住宅設備が老朽化・故障している場合は、入居者が退去するタイミングで交換するケースもあります。

あわせて、賃貸借契約のときに「退去時のクリーニング費用は入居者が負担する」といった特約を定めていて、それを入居者が認めている場合、本来オーナーが負担する費用を入居者が負担するケースもあります。

特約については後で「説明された、されていない」といったトラブルにならないよう丁寧な説明が必要でしょう。

4.マンション経営(ワンルーム)でかかる退去時費用の相場

マンション経営の退去時費用 オーナーが負担する内容と相場は?
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退去時費用の具体的な金額は、読みづらい部分もあります。そのため、不動産会社の担当者に「いくらかかるの?」と質問をしても「ケースバイケースですね……」といったあいまいな反応になりがちです。

ただオーナーからすると、退去時費用がどれくらいかかるか把握できないのは不安だと思います。あくまでも一例として目安をご紹介したいと思います。なお、ワンルームマンションの場合の目安です。

4-1.ハウスクリーニング代

入居者の退去時に必ず発生する費用としては、ハウスクリーニング代があります。これは特約などがない限り、オーナー負担になります。

ハウスクリーニングとは、プロの清掃業者に依頼して、物件の必要な箇所を清掃してもらうことです。ある程度の年数住んでいれば、経年による汚れは発生するのが普通です。次の入居者を確保するために、部屋をきれいな状態にするのがハウスクリーニングの目的です。ハウスクリーニング箇所の内訳は下表の通りです。

【ハウスクリーニング箇所の内訳】

清掃箇所清掃内容
キッチンキッチンの清掃。食洗機やオーブンレンジ内部の清掃は別料金
レンジフードレンジフードの分解清掃
浴室浴槽、床、壁、天井、換気口、排水口。高圧洗浄等は別料金の場合あり
トイレ便器・タンクの洗浄、便座・ウォシュレットの分解洗浄、換気口の清掃
洗面所洗面所の清掃
エアコンエアコンの清掃。フィルター清掃、臭いやカビの除去。お掃除機能付き機種は料金が高くなる

※一例です。料金や汚れ具合、オプションの有無によって異なります。

ハウスクリーニングを依頼する場合は、必ず請求書に料金の内訳を書いてもらうようにしましょう。万一入居者の過失によって汚れた箇所がある場合に、費用の根拠を明確にするためです。

間取り別のハウスクリーニング代の相場は下表の通りです。パック料金のおよその目安になります。

【ハウスクリーニング間取り別相場】

間取り相場間取り相場
1K1万5,000~3万円2LDK・3DK4~7万円
1DK・2K2万5,000~3万5,000円3LDK・4DK4万5,000~8万円
1LDK・2DK3~5万円4LDK・5DK5万5,000円以上

※一例です。基本的な料金の相場であり、オプションを加えると料金は変わります。

4-2.クロスの張り替え

クロスの張り替え費用を「誰が負担するか」については、入居者が喫煙者でヤニによって色が変色している場合などは入居者負担になります。また、通常の経年劣化による張り替えの場合はオーナー負担になります。

ただし 、国土交通省のガイドラインに基づくとクロスの耐用年数は6年と定められています。そのためタバコを吸った影響でクロスが変色していても、6年以上入居者が住み続けたのならクロスの張り替え費用はオーナー負担という考え方が一般的です。

張り替え費用の金額は、質感や色合いのよいクロスなどを選択した場合、1平方メートルあたり1,000円〜1,500円程度が相場でしょう。安さ重視のクロスだと1,000円以下で施工するケースもあります。この価格に下地処理や既存のクロス撤去などの費用が含まれるかは業者によって違うでしょう。

6畳の部屋の場合、トータルのクロス張替の費用4〜5万円程度(安さを重視した場合)からが相場です。

【クロスの張り替えの相場】

1平方メートルあたり1,000円〜1,500円程度
6畳の部屋4〜5万円程度(安さを重視した場合)

5.トラブル回避の方法

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賃貸経営にトラブルは付きものです。とくに費用負担が生じる事項についてはトラブルに発展するケースが多いといえます。公的機関の調査では原状回復費用や敷金に関するトラブルの件数は 年間1万件を超えています。オーナーにとっては厳しい状況ですが、トラブルを回避する方法もあります。

ここでは、原状回復の費用負担を巡って入居者から寄せられた相談の実態を公的機関のデータや事例から確認します。あわせて、トラブルを回避するために実践すべき対策について紹介しますので、検討するとよいでしょう。トラブルに発展させないポイントは、入居者が納得したうえで費用を負担してもらうことです。

5-1.最も多いのが原状回復に関するトラブル

オーナーと入居者の間で最も多いトラブルが原状回復に関することです。

独立行政法人国民生活センターの調査によると、ハウスクリーニングやクロス替え等にかかった原状回復費用を敷金から差し引かれ、敷金が返金されない、あるいは敷金を上回る金額を請求されたという相談が2020年度に1万2,048件寄せられています。

毎年相談件数が1万件を超えていることから、いかに原状回復や敷金に関するトラブルが多いかがわかります。国民生活センターが挙げている事例では、以下のようなことが紹介されています。

  • 賃貸マンションを退去したところ、高額なハウスクリーニング代を請求された
  • 5年入居していた賃貸アパートを退去したところ、壁紙の修理をするため敷金は返金できないと連絡があった

国土交通省のガイドラインではいずれもオーナー側が負担するケースにあてはまりますが、入居者側に原因がないか細かい状況がわからないため一概に判断できない面もあります。

例えば、入居者がペットを飼っていた場合は、柱や床、壁などに汚れや臭い、キズなどが付く可能性が高くなるでしょう。そのようなケースでは「ペットを飼育する場合は、敷金1ヵ月分を償却する」という特約を付けて契約する方法もあります。裁判でペット特約があったことでオーナーの主張が認められた判例もあるので、検討に値します。

5-2.入居者とのトラブルを回避するためには

自主管理のオーナーが入居者とのトラブルを回避するためには、以下の3つの方法を実践することが有効です。いずれも入居者の納得を得るうえで有効な対策ですので、実践するとよいでしょう。

・原状回復ガイドラインを渡す
インターネットで閲覧できるとはいえ、ガイドラインの存在を知らない入居者もいるでしょう。契約時にプリントアウトしたガイドラインを手渡して熟読してもらうのも有効な方法です。ガイドラインに沿って判断することでお互いに納得した結論を出すことができます。

・チェックシートを使って立ち会いする
入居時や退去時にオーナーと入居者が立ち会いを行う際に、お互いにチェックシートを使ってチェックすると、見落としなどを防ぐことができます。あわせて写真を撮っておくと、退去時に当初の状況との変化を比較しやすくなります。

・取り決めを明文化する
トラブルになるケースが多い費用については、書面として明文化することが大切です。例えば、「ハウスクリーニング代は借主の負担とする」などの特約を付ける場合は、契約書に記載します。

明文化したことで、ハウスクリーニングの裁判においてオーナーの主張が認められた判例があります。ただし、明文化するだけでなく、入居者への説明をしっかり果たすことが重要です。

6.退去時費用は、かけるべき部分にしっかりかけるべき

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オーナーは、マンション経営の退去時費用に、「どんな項目があり、どれくらいの費用がかかるか」を把握しておく必要があります。

退去時費用を考えるときのポイントは、コストを抑えることにこだわりすぎないことです。なぜなら、「かけるべき部分にコストをしっかりかけて入居者を決めること」が最優先課題だからです。コストを抑えても入居者が決まらず、空室期間が長くなれば収入面のマイナスも大きくなることを心得ておくべきでしょう。

一方で、入居者に負担してもらうべき費用は、きちんと敷金から差し引き、オーナーの損失にならないようにする必要があります。その場合は、国土交通省のガイドラインに照らし合わせて、入居者に納得して費用を負担してもらいましょう。

トラブルの多い退去時費用ですが、お互いが納得して負担できるように基準を明確にし、信頼関係を築くことが求められます。

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