
2022年以降、エネルギー価格上昇などを理由に物価の上昇傾向が続いています。こうした状況の中で、預貯金だけでは資産を守りきれないと感じている人が増え、「個人向け社債」が注目を集めています。社債は株式のような激しい値動きはなく、安定した利息収入が期待できる点が魅力です。
本記事では、2025年最新の利回りランキングとともに、社債の仕組みや選び方のポイントも解説します。
目次
1.2025年最新|個人向け社債の利回りランキング

最新版の利回りランキングとして、日本証券業協会が公表している2025年1月〜2025年3月に起債された個人向け社債のなかから、利回り上位10銘柄を紹介します。
順位 | 発行体名 | 銘柄名 | 利率(年) | 起債日 | 償還期限 | 格付け(取得時) |
---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 光通信 | 第51回無担保社債 | 2.600% | 2025年2月26日 | 2032年3月12日 | A(R&I)、A+(JCR) |
2位 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 第38回無担保社債(劣後債) | 2.051% | 2025年1月9日 | 2035年7月20日 | AA-(R&I・JCR) |
3位 | マツダ | 第35回無担保社債(社債間限定同順位特約付) | 1.86% | 2025年2月28日 | 2032年3月17 | A-(JCR) |
4位 | ソフトバンク | 第27回無担保社債(社債間限定同順位特約付) | 1.81% | 2025年1月21日 | 2032年2月4日 | A+(R&I)、AA-(JCR) |
5位 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 第39回期限前償還条項付無担保社債(実質破綻時免除特約および劣後特約付) | 当初5年6か月間1.565%、以降は5年国債金利+0.73% | 2025年1月9日 | 2035年7月20日 | AA-(R&I)、AA-(JCR) |
6位 | クレディセゾン | 第109回無担保社債(社債間限定同順位特約付) | 1.211% | 2025年1月17日 | 2030年1月30日 | A+(R&I)、 AA-(JCR) |
同率7位 | あかつき本社 | 第48回無担保社債 | 1.2% | 2025年1月14日 | 2026年2月6日 | 発行時の取得格付なし |
同率7位 | アイザワ証券グループ゚ | 第4回無担保社債 | 1.2% | 2025年1月31日 | 2026年2月20日 | 発行時の取得格付なし |
同率7位 | アイザワ証券グループ | 第5回無担保社債 | 1.2% | 2025年2月28日 | 2026年3月24日 | 発行時の取得格付なし |
10位 | アイザワ証券グループ | 第3回無担保社債 | 1.1% | 2025年1月7日 | 2026年1月27日 | 発行時の取得格付なし |
※本ランキングには普通社債のほか、劣後債なども含まれています。社債の種類によってリスクや返済順位が異なるため、選定の際は内容をよくご確認ください。
2025年初頭の時点で2.5%を超える利回りの社債も見られます。発行体の顔ぶれも通信・IT系や製造業、金融業と多様です。次章では、社債の仕組みや種類について、基本からわかりやすく解説していきます。
2.そもそも社債とは?利回りを見る前に知っておきたい基礎知識

社債に投資するうえで、ただ利回りの高さだけを見て選ぶのはおすすめできません。発行体の信用力や償還条件、利払いの仕組みなどを正しく理解しておくことが、安定した債券運用の第一歩です。
2-1.個人向け社債の仕組み
社債とは、企業などが資金調達のために発行する「借金の証書」のようなものです。投資家はその社債を購入することで発行体にお金を貸す形となり、代わりに定められた利息(利子)を受け取ることができます。
通常、社債には「利率(クーポン)」と「償還期限(満期日)」が設定されており、投資家は満期まで保有すれば、元本と利息を受け取ることができます。利払いは半年ごとや年1回など、社債ごとに異なります。
一部の既発債(すでに発行された社債)は、証券会社の取引画面で購入できることもありますが、流通量が少ないため価格や利回りが変動する点に注意が必要です。
2-2.社債の種類
社債にはリスクや条件が異なるさまざまな種類があります。代表的なタイプは以下のとおりです。
・普通社債
最も一般的な社債のタイプです。担保は設定されていないことが多く、格付けなどで発行体の信用力をチェックすることが重要です。
・劣後債
万が一、発行体が破綻した際には、他の一般債権者よりも後回しで弁済されるため、通常より高い利回りが設定されている社債です。利回りだけで投資判断せず、リスクとのバランスをよく考える必要があります。
・転換社債
転換社債は、一定の条件を満たすと発行体の株式に転換できる特徴があります。英語では「Convertible Bond」と呼ばれ、略して「CB」と表記されることもあります。
通常の社債と同様に利息収入が得られるだけでなく、一定の条件をクリアすると株式に転換して株価上昇によるキャピタルゲインも狙える可能性があります。その一方で、転換価格や期間、転換比率などの条件が複雑なため、商品の内容をよく理解したうえで投資判断を行うことが重要です。
・外貨建て社債
外貨建て社債とは、米ドルやユーロ、豪ドルなど、円以外の通貨で発行される社債のことを指します。一般に、円建て社債に比べて利回りが高く設定されることが多く、インカムゲインを重視する投資家から一定の支持を集めています。
ただし、投資時や利払い・償還時に為替の変動リスクを伴うため、為替相場によっては円ベースでのリターンが上下する可能性があります。為替リスクへの理解と、外貨資産への分散投資の一環として位置付けることが重要です。
2-3.株式や預金との違い
社債は、株式や預金の中間的な性質を持つ金融商品です。それぞれの特徴を簡単に比較してみましょう。
商品 | 元本保証 | 利回り | リスク | 値動き |
---|---|---|---|---|
預金 | あり(1,000万円まで) | 低い | 非常に低い | なし |
社債 | 基本的になし | 中程度 | 発行体リスクあり | 原則なし(ただし中途売却の場合は売買市場で変動) |
株式 | なし | 高い可能性も | 市場リスクあり | 大きい |
社債は、定期預金よりも高い利回りを狙いたいが、株式ほど大きな値動きには巻き込まれたくないという方にとって、比較的バランスのとれた投資先といえます。ただし、元本保証ではなく、発行体リスクがある点はしっかり認識しておきましょう。
3.社債のメリットとデメリット

ここでは、投資を検討するうえでの判断材料として、社債の代表的なメリットとデメリットを整理していきます。
3-1.社債のメリット
社債には、主に以下のような利点があります。
・安定した利息収入が見込める
利率があらかじめ決まっており、満期まで保有すれば定期的に利息を受け取れるため、将来のキャッシュフローを計算しやすいです。
・価格変動が比較的少ない
株式のように日々の値動きが大きくないため、相場の影響を受けにくく、落ち着いた運用を望む人に適しています。特に新発債を満期まで保有する場合、途中売却をしなければ価格変動リスクは限定的です。
・証券会社経由で購入しやすい
近年は個人向けの社債が充実しており、ネット証券でも簡単に購入できるようになっています。100万円単位での募集が一般的ですが、中には10万円単位のものもあります。
3-2.社債のデメリット
一方で、以下のような点には注意する必要があります。
・元本保証ではない
預金とは異なり、社債は発行体の信用状況に依存します。発行体が経営破綻した場合、元本が返済されないリスク(デフォルトリスク)があります。日本は欧米に比べて社債のデフォルト件数が非常に少ない傾向にありますが、社債としての債務が不履行になった事例は存在するため、注意が必要です。
・途中売却時には時価での取引になる
途中で売却する場合は市場価格に左右されるため、購入時よりも低い価格で売ることになる可能性があります。特に金利上昇局面では既発の債券価格は下がる傾向にあるため、注意が必要です。
4.個人向け社債を「利回り」だけで選んではいけない理由

社債を選ぶ際に、最も目を引くのが「利回りの高さ」かもしれません。しかし、利回りが高いからといって必ずしも「良い投資先」とは限りません。社債は元本が保証されている商品ではなく、発行体の信用力や債券の条件によってリスクの大きさが変わってきます。
この章では、「利回りの裏側」にあるリスクの種類や、注意すべきポイントについて解説します。
4-1.高利回り=高リスクの可能性がある
一般的に、利回りが高く設定されている社債は、その分だけ信用リスクが高い傾向があります。これは「リスク・リターンの関係」によるもので、投資家にとってリスクの大きい発行体ほど、高い利息を提示しなければ資金を集めにくいからです。
たとえば、格付けが低めの企業(BBB以下)や、業績が不安定な発行体の場合、3%を超えるような高利回りが提示されることがありますが、その背景には「返済不能になるリスク(デフォルトリスク)」も存在します。
4-2.信用格付けを確認しよう
社債には、格付け機関(JCR、R&Iなど)による「信用格付け」が付けられている場合があります。これは、発行体の返済能力をA〜Cなどのランクで評価したものです。
・AAA / AA:極めて信用力が高い
・A: 高いが、経済状況により左右される
・BBB: 投資適格下限ライン(やや注意)
・BB以下: ハイリスク(投機的水準)
格付けが高い=信用度が高いことを意味しますが、格付けの低い社債は、たとえ利回りが魅力的でも慎重に検討する必要があります。
4-3.特殊条件付きの社債にも注意
他の一般債権者よりも返済順位が後回しになる劣後債のように、利率の高い魅力的な商品に見えるものでも、特殊な条件が付与されており、普通社債と比べてリスクが高い社債もあります。投資を検討する際にはこれらの条件も加味したうえで判断するようにしましょう。
5.目的別・投資スタイル別のおすすめ社債

投資に対する考え方や目的によって、選ぶべき社債の種類も変わってきます。
この章では、安定重視の人から利回り重視の人まで、目的別・スタイル別におすすめの社債のタイプを紹介します。
5-1.安定重視の方には「高い格付け×短期満期」の社債
元本割れのリスクをできるだけ避けたい、資産を大きく増やすよりも守りを重視したいという方には、信用格付けが高く、満期が3〜5年以内の短期型社債がおすすめです。
たとえば、電力会社や鉄道会社などインフラ関連の企業が発行する社債は、業績が比較的安定しており、格付けも高めです。大きなリターンは望めないものの、利息収入を確実に受け取りながら満期まで保有するスタイルに適しています。
5-2.利回りを重視したい方には「ハイイールド債」や「長期債」
インカムゲイン(利息収入)を重視し、ある程度リスクを取ってでもリターンを高めたい方には、利回りが高めの社債(ハイイールド債)が選択肢となります。
また、長期満期の社債(7〜10年など)は、短期のものと比べ利率が高めに設定される傾向があるため、将来の安定収入を目的とした投資にも向いています。
ただし、ハイイールド債は格付けが低い(BB以下など)ことが多く、発行体の財務状況やビジネスモデルをよく確認する必要があります。リスクとリターンのバランスを見極める力が求められる投資スタイルです。
5-3..分散投資を意識する方には「異なる期間・発行体」の組み合わせがおすすめ
社債を複数組み合わせて保有することで、満期のタイミングや発行体ごとのリスクを分散することができます。たとえば、
5年満期 × 1本(やや利回り重視)
10年満期 × 1本(将来の収入目的)
といったように、満期の異なる社債をバランスよく保有することで、リスクと収益のバランスをとることが可能になります。
また、発行体を複数企業に分散させることも、万が一のリスクに備えるうえで有効です。金融機関、通信、インフラ、不動産など、業種の異なる企業の社債を組み合わせることで、さらに分散効果が高まります。
6.社債は「利回り×信用度」で選ぶのが基本

社債は、比較的安定した利息収入が見込める一方で、発行体の信用リスクや満期までの期間など、商品ごとに特性が異なります。特に近年は物価上昇や金利上昇の影響もあり、3%前後の利回りを持つ個人向け社債も登場するなど、選択肢の幅が広がっています。
ご自身の投資目的やスタイルに合わせて、安定型、利回り重視型、分散型などのアプローチをとることで、社債はポートフォリオの中で有効に機能する資産の一つとなります。
今後も新しい社債の発行は続いていくため、証券会社の最新情報や発行スケジュールをチェックしながら、自分に合った一本を見つけてみてはいかがでしょうか。
>>【無料eBook】30代で知りたかった「お金」の極意 後悔しない8つのポイント
【オススメ記事】
・ポートフォリオを最適化!生命保険がいらない理由とは
・独身男性の老後の生活費は?「一生ひとり」ならお金の準備はお早めに!
・時には遊び心も!テーマ型投資について
・ポートフォリオを最適化!生命保険がいらない理由とは
・お金はありすぎてもダメ!?「限界効用の逓減」に見る幸せな億万長者の条件