年収1000万円でも生活が苦しいのはなぜ?家計が苦しくなる5つの落とし穴と改善策を解説
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「年収1000万円」と聞けば、誰しも「経済的に余裕のある暮らし」を思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、「毎月の支出に追われて貯金ができない」「思ったより余裕がない」といった声も少なくありません。むしろ年収が高いからこそ直面する税負担の増加や、生活レベルの維持にかかる出費が家計を圧迫し、「苦しい」と感じる人が多いのです。

この記事では、年収1000万円でも「なぜか苦しい」と感じてしまう理由を掘り下げたうえで家計の見直しや資産運用によって現状を改善するためのヒントをご紹介します。自分だけが苦しいのではないと安心できる情報と、今から実践できる具体策をお届けします。

目次

  1. 年収1000万円でも生活が苦しいのは珍しくない
    1. 金融資産が100万円未満の世帯は全体の約33%
    2. 3000万円以上保有する世帯は12.7%
  2. 年収1000万円でも生活が苦しい理由
    1. 1. 税金と社会保険料の負担が大きい
    2. 2. 各種支援制度から外れやすい「中間層の谷間」
    3. 3. 教育費・住宅ローンなどの固定費が重い
    4. 4. 生活レベルの上昇と支出の膨張
    5. 5. 都市部の高コストな生活環境
  3. 年収1000万円の実際の手取り額は約720万円
  4. 生活を見直すには?年収1000万円層の家計改善ポイント
    1. 税金対策を活用する(ふるさと納税・iDeCo・NISAなど)
    2. 固定費を見直す(保険・通信・住宅費など)
    3. 生活レベルを「無理なくコントロールする」意識を持つ
    4. 副収入や資産運用を取り入れて収入源を分散する
    5. 将来への不安は年収に関係なく存在する
  5. 年収1000万円の人にはマンション経営がおすすめ
    1. マンション経営とは?安定収入と節税効果が期待できる仕組み
    2. 年収1000万円ならローン審査にも通りやすい
    3. 赤字が出ても節税に活かせるケースもある
  6. 年収1000万円でも「苦しい」と感じるのは自然なこと。資産設計を見直すことが第一歩

年収1000万円でも生活が苦しいのは珍しくない

年収1000万円でも生活が苦しいのはなぜ?家計が苦しくなる5つの落とし穴と改善策を解説
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一般的に高年収とされる年収1000万円ですが、特に都市部で子育てをしている家庭や、共働き世帯などでは、家計のゆとりを感じにくいケースが多く見られます。実際に、年収1000万円以上の人々の資産状況を見てみましょう。

金融資産が100万円未満の世帯は全体の約33%

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)(2023年)」によると、年収1000万円以上の二人世帯のうち、 金融資産保有額が100万円未満の世帯の割合は非保有を合わせて33.2%です。

・金融資産非保有(持っていない):24.6%
・100万円未満:8.6%
※合計33.2%

年収1000万円以上にもかかわらず、貯金が100万円に満たない世帯が33.2%(全体の約3分の1)を占めています。金融資産非保有は24.6%で、年収1000万円世帯の2割以上が貯金ゼロという状況です。

この結果から、年収1000万円でも安定した資産形成ができていない世帯が一定割合いることがわかります。

(参考)家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和5年調査結果

3000万円以上保有する世帯は12.7%

一方で、年収1000万円以上の二人世帯のうち、金融資産保有額が3000万円以上の割合は12.7%です。年収1000万円以上世帯の約1割は、3000万円以上の資産を作ることができています。このように、同じ年収1000万円の世帯でも、金融資産保有額に大きな差が生じているのが現状です。

国民全体の貯蓄金額とその割合についてはこちらの国民生活基礎調査のデータをご覧ください。
次章では、なぜそうしたギャップが生まれるのか、その具体的な理由を見ていきましょう。

年収1000万円でも生活が苦しい理由

ここでは年収1000万円でも生活が苦しくなる理由について、大きく分けて5つに分けて解説します。

1. 税金と社会保険料の負担が大きい

年収1000万円ともなると、所得税・住民税・社会保険料の負担が大きくなり、実際の手取り額は想像以上に少なくなります。特に給与所得者の場合、控除の幅が限られているため、税負担を軽減しにくいという問題があります。結果として、年収1000万円でも手取りは約700〜750万円程度にとどまることが一般的です。

(参考)所得税の速算表

課税される所得金額税率控除額
195万円未満5%0円
195万円以上〜330万円未満10%97,500円
330万円以上〜695万円未満20%427,500円
695万円以上〜900万円未満23%636,000円
900万円以上〜1,800万円未満33%1,536,000円
1,800万円以上〜4,000万円未満40%2,796,000円
4,000万円以上45%4,796,000円
No.2260 所得税の税率(国税庁)をもとに作成

2. 各種支援制度から外れやすい「中間層の谷間」

児童手当や高校無償化、医療費助成など、多くの支援制度には所得制限が設けられています。年収1000万円前後の世帯は、こうした制度の支援対象から外れる一方で、生活費や教育費の負担は依然として重く、実質的な「中間層の負担増」を感じやすい層でもあります。

<支援対象から外れる制度の一例>
・高校無償化
・大学無償化
・一部の奨学金制度
・障害児福祉手当
・特別児童扶養手当

3. 教育費・住宅ローンなどの固定費が重い

私立学校への進学や中学受験、習い事といった教育費は、都市部では年間100万円以上かかることも珍しくありません。また、年収に見合った住宅を購入すればローン返済額も高額になり、家計を圧迫します。高収入だからこそ発生する高コストな支出が、生活のゆとりを奪っているのです。

4. 生活レベルの上昇と支出の膨張

収入が増えると、自然と生活の質や選択肢を上げたくなるものです。外食や旅行、衣類や自動車など、暮らしの水準が高まることで、収入に比例して支出も増加します。 家計調査の平均でも、所得が800~1000万円世帯の消費支出額は300万円未満世帯の約2倍に達するとの分析があり​、高所得層ほど支出総額も大きい傾向があります。

参考:国民の所得や生活の状況等に関する分析 ③(厚生労働省)

5. 都市部の高コストな生活環境

首都圏や大都市に居住している場合、住宅価格や保育料、交通費など、生活の基本コストが地方より高くつく傾向にあります。特に子育て世帯では、安心して暮らせる環境を選ぶことで自然と支出が増える構造になっており、家計に余裕を持たせにくい状況が生まれます。

年収1000万円の実際の手取り額は約720万円

年収1000万円でも生活が苦しいのはなぜ?家計が苦しくなる5つの落とし穴と改善策を解説
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ここでは、年収1000万円の給与所得者が受け取れる実際の手取り額について、社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料)と所得税、住民税のみを考慮したシミュレーション結果を見ていきましょう。

課税される所得金額税率控除額
社会保険料(控除)約140万円保険料率14.055%(厚生年金18.3%+健康保険料9.81%(介護保険なし)を事業主と折半)※東京都の場合
給与所得控除195万円-
基礎控除48万円-
課税所得617万円年収1000万円-社会保険料控除-給与所得控除-基礎控除
所得税約81万円課税所得×20%-42万7,500円(控除額)
住民税約62万円課税所得×10%
手取り額約717万円年収1000万円-社会保険料-所得税-住民税

社会保険料は約140万円とします。額面年収1000万円から社会保険料控除、給与所得控除、基礎控除を差し引いた課税所得金額は約617万円です。所得税は約81万円、住民税は約62万円のため、社会保険料・税金控除後の手取り額は約717万円となります。

年収の手取り額を12ヵ月で割ると、手取り月収は約60万円です。賞与を含めて年収1000万円の場合、月収の手取り額はさらに少なくなるでしょう。

上記シミュレーション結果はあくまでも概算金額であり、実際の手取り額は他の所得控除や介護保険の有無など、個人の状況によって変わってくる点にご留意ください。

生活を見直すには?年収1000万円層の家計改善ポイント

年収1000万円でも生活が苦しいのはなぜ?家計が苦しくなる5つの落とし穴と改善策を解説
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年収1000万円という高収入であっても、支出の構造を見直さなければ家計に余裕を持たせることは難しいです。ここでは、具体的な家計改善のポイントをご紹介します。重要なのは、「支出の見える化」と「将来を見据えた対策」をバランスよく行うことです。

税金対策を活用する(ふるさと納税・iDeCo・NISAなど)

課税所得が高い層ほど、税金の影響が家計に重くのしかかります。ふるさと納税を活用すれば、自己負担2000円程度で実質的な節税と返礼品の受け取りが可能です。また、iDeCo(個人型確定拠出年金)は掛金が全額所得控除となるため、所得税・住民税の軽減につながります。さらに、新NISA制度を活用すれば、将来の資産形成を非課税で行うことができます。

固定費を見直す(保険・通信・住宅費など)

高収入世帯ほど、生活の質を維持するために固定費が膨らみやすい傾向があります。とくに見直し効果が大きいのが生命保険や医療保険の契約内容です。過剰な保障を見直すことで、月数千円〜数万円の削減につながることもあります。通信費やサブスクリプションサービスも、無意識のうちに家計を圧迫している可能性があるため、定期的な見直しが有効です。

生活レベルを「無理なくコントロールする」意識を持つ

収入に応じて生活の質が上がることは自然な流れですが、そのすべてが「必要な支出」かどうかは慎重に判断することが大切です。たとえば、外食やレジャー、車のグレードアップなど、満足度とコストのバランスを意識するだけで、無理のない節約が実現します。意識的に支出を選ぶことが、精神的な余裕にもつながります。

副収入や資産運用を取り入れて収入源を分散する

将来の教育費や老後資金に備えるためには、収入源の分散も重要です。副業によって収入を増やしたり、不動産投資や株式投資などによって資産を育てる仕組みを持つことで、長期的な家計の安定につながります。収入が一定水準ある人ほど、金融機関の融資や投資商品の選択肢が広がるため、有利に運用を進めやすいという利点もあります。

将来への不安は年収に関係なく存在する

高収入だからといって、将来への不安がなくなるわけではありません。実際、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)(2023年)」によると、年収1000万円以上の世帯でも約7割が老後や将来の生活に不安を感じていると回答しています。

将来の不安を解消するためには、支出の最適化だけでなく、資産形成に取り組むことも重要です。なかでも、安定収入と節税効果の両面があり、実物資産としてインフレ対策にもなるマンション経営は、年収1000万円層にとって相性の良い資産運用のひとつといえるでしょう。

参考:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯](金融広報中央委員会)

年収1000万円の人にはマンション経営がおすすめ

資産運用を検討する際には、安定性と将来性のバランスが気になるもの。そうした観点から、マンション経営を「選択肢の一つ」として検討する人も増えています。特に年収1000万円の方は、金融機関からの信用力が高いため、融資を受けやすく、より有利な条件でマンション経営をスタートできる傾向があります。

マンション経営とは?安定収入と節税効果が期待できる仕組み

マンション経営とは、投資用のマンションを購入し、入居者に貸し出すことで毎月の家賃収入を得る運用方法です。立地や物件選びを適切に行えば、空室リスクを抑えつつ長期的な安定収入を確保できます。物件の購入や管理業務についても、不動産会社や管理会社のサポートを活用すれば、日々の手間を最小限に抑えた運用が可能です。

年収1000万円ならローン審査にも通りやすい

マンション経営を始める際、多くの方が金融機関から融資を受けて物件を購入します。年収1000万円の方は返済能力の面で高く評価されやすく、ローンの審査にも通りやすいというメリットがあります。自己資金を抑えながら資産形成をスタートできる点は、給与所得が安定している層にとって大きな強みです。

赤字が出ても節税に活かせるケースもある

マンション経営では、減価償却費やローン金利、管理費などの経費を計上することで、帳簿上は赤字となることがあります。この赤字は給与所得と損益通算できるため、所得税や住民税の軽減につながる可能性があります。さらに、マンション経営が「事業的規模」と認められれば、青色申告特別控除(最大65万円)などの税制優遇を受けられることもあります。

参考:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯]No.1400 給与所得(国税庁)

年収1000万円でも「苦しい」と感じるのは自然なこと。資産設計を見直すことが第一歩

年収1000万円といえば、一般的には「高収入」と見なされる水準です。しかし、現実には税金や社会保険料の負担が重く、さらに都市部での生活費・教育費・住宅ローンといった固定支出が重なることで、家計に余裕を感じにくいケースが少なくありません。

大切なのは「年収の高さに安心せず、今あるお金の流れをコントロールする力」を身につけること。 節税制度の活用や固定費の見直し、副業や投資といった収入源の分散も、選択肢の一つです。

今一度ライフプランを見直し、将来を見据えた家計設計を整えてみてはいかがでしょうか。

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