不動産の賃貸経営では、しばしば住人の「属性」が問題にされます。ここで言う「属性」とは、住人の経済力や信頼性、モラルの程度などを意味しています。不動産投資は長期的な資産運用です。安定感のある、リスクの少ない運用をしたいのであれば、属性の良い住人を集める必要があります。そこで本稿では「住人の属性」をキーワードに、不動産投資を成功に導く方法について考えてみます。

不動産投資の成功要因は、住人の「属性」にあり!
(画像=Kirill Neiezhmakov/Shutterstock.com)

物件の質は住人の層を左右する

例えば家賃が安いかわりに、築五十年で、階段の電球も切れているような修繕もろくにされていない木造アパートがあったとしましょう。一方、都心でアクセスも良い、周辺環境も整った新築のマンションがあったとします。それぞれに同じような生活層の人が住むと思いますか? 物件の質はそこに住む住人の層を左右します。

物件の質によって、家賃にも当然差が生まれます。住人の「属性」を考えたとき、家賃が低い物件であれば、当然それに伴って収入の少ない人が住みたがります。

収入の少ない人が、わざわざ家賃の高い物件を選ぶことは考えられません。一般的に、家賃は月収の30%以下が目安とされています。家賃5万円の物件には、月収17~18万円の人が住んでいることになります。

低収入の住人が持つリスク

収入の少ない住人が住む物件は、リスクが高くなります。一番は「家賃滞納」のリスクでしょう。収入が少なければ、生活費の余裕はなくなります。

毎日のやりくりがギリギリで、もし事故や病気など、急にお金を支払わねばならないアクシデントが起きたら、家賃にあてるはずだったお金が足りなくなり、家賃滞納に発展します。

家賃滞納は多くの大家が抱える共通の悩みです。収入減につながるだけに留まらず、督促や回収にも苦慮します。家賃滞納リスクを減らしたいのであれば、基準を遥かに凌駕するような、あまりにも安い家賃の設定はダメだということです。そしてまた、飛び抜けて安い物件の購入もお勧めはできないということでもあります。

一人暮らしの高齢者が増えている

最近は高齢者の一人暮らしが増えています。年金など収入が限られているため、低収入であるおそれがあります。また、あまり考えたくないことですが「孤独死」するかもしれません。そうなると、事件性がないかどうか調べるために、警察が入ることもあり、結果的に改装工事が遅れるかもしれません。

万一死亡後、時間が経ってから発見された場合は、遺体の腐敗が進み、原状回復に多額の費用がかかったうえに、リフォーム代金の回収や請求が不可能になることも珍しくありません。いわくつきと言われる、いわゆる事故物件として扱われてしまうおそれもあります。

属性の良い住人が住まないと悪循環が生まれる

不動産投資は経営です。借り手の質が良く、問題が起こることなく、毎月きちんと家賃を支払ってくれるのが一番の理想です。そのような層はやはり所得が高い人の方が多いのが事実です。

所得に関しては次のようなデータもあります。厚生労働省の「所得と生活習慣等に関する状況」によると、男女ともに、所得が低い人は高い人に比べて喫煙率が上がるそうです。

この調査によると、男性に限れば、世帯所得200万円未満の場合、37.3%が喫煙し、世帯所得600万円以上は27.0%が喫煙を習慣にしていることがわかっています。その差は10%以上です。

マンション経営に際して、質の良い借り手が一生住人になってくれるのであるに越したことはありませんが、やはりときどきは、借り手は引っ越します。そうなると次の借り手のために、なるべくキレイな部屋にしておきたいのは不動産投資を行っている人の当然の心理でしょう。

喫煙者が抱えている問題点

物件の住人に喫煙者が多いと、いろいろと問題が出てきます。部屋でタバコを吸えば、壁紙などはタバコのヤニ汚れで変色し、臭いが付いてしまいます。

換気扇が通路側に付いている所では、タバコの煙がどんどんと通路に排出されて、ひどくなると、大げさな表現ではなく、建物全体がタバコ臭くなってしまうこともあります。エントランスや通路、建物の周囲で「ポイ捨て」が増えるかもしれません。

禁煙が推奨されている昨今、タバコを吸わない人が、そのような物件を選ぶはずがありません。つまり収入の多い、質の良い入居者から敬遠されて、空室リスクが高まるわけです。空室が増え、悪い状態が続けば、やがて賃料の値下げを迫られることになります。

そうなれば、ますます収入の少ない住人が増えることになります。一般的に、良い属性の人が住む物件には良い属性の人が増え、悪い属性の人が住む物件には、悪い属性の人が集まってくるという循環が生じやすいことは大切なポイントであると言えます。

物件の内覧時には住人の質をよく見ておこう

物件を良質に維持するためには、上述したような悪循環に陥らない対策が必要です。中古物件の購入を検討されている方は、内覧時に住人の「質」も観察しておきましょう。

注目すべき点は、まず「廊下」です。物がゴチャゴチャ置かれていたり、汚れがひどかったりする物件は期待が持てません。

また、駐車場やゴミ捨て場、エントランスにも注目してください。これらがひどく汚れているようであれば要注意です。新築物件であれば、こういう状況に陥らないような配慮が必要となります。

購入価格の安い中古物件は手が届きやすく、返済リスクが低いなどのメリットもあります。しかし、良い属性の住人が少なく、運営面でのリスクが高くなるおそれも考慮しなければなりません。

良い属性の人が多い物件は、トラブルが起こる可能性も低く、不動産投資の運用においても、スムーズなマンション経営ができるはずです。

賃貸経営を成功させるためには、属性の良い人に住んでもらうのが一番です。不動産投資では、物件選びだけでなく、入居者選びも大切な経営要素なのです。

属性に関するQ&A

それでは最後に、属性に関する疑問を振り返ってみましょう。

Q.属性とは何ですか?

A.属性とは性質や特徴ことをいいます。「あの人の属性は・・・」といった場合、「どのような仕事をしているのか」「どこの会社に勤めているのか」「年齢はいくつか」「年収はいくらか」といったことになります。

不動産投資・マンション経営において、「入居者(住人)の属性」といった場合には、先ほどあげた属性の他に、「貯金はどのくらいあるのか」「どのような性格なのか」なども含むのが一般的です。

Q.なぜ物件の質が住人(入居者)の質を左右するのでしょう?

A.家賃が安くてボロボロの物件があったとします。そのような物件には、所得の低い方が住むケースがほとんどです。このとき想定されるのが「家賃滞納」のリスクです。収入が少ないことによる生活苦から家賃を滞納されてしまっては、不動産投資が成り立ちません。

新しく綺麗といった質の高い物件は、家賃を高く設定することができます。そうした物件に入居を希望される方は、大手企業に勤めていたり、ステータスが高いといわれる仕事に就いていたりするなど、高い収入を得ていると思われます。

不動産投資とはいわば「経営」ですから、経営的な視点からいえば、入居者の属性がしっかりしており、毎月問題なく家賃を払ってくれる方に入居いただいたほうが安心できるというものです。

Q.物件を内覧するときのポイントを教えてください

A.中古物件の購入を検討されている方ならば、以下の5つを確認しておきましょう。

・廊下
物が置かれていてゴチャゴチャしていないか、汚れていないかを確認する。

・エントランス
廊下と同様で物が置かれていてゴチャゴチャしていないか、汚れていないかを確認する。

・ゴミ捨て場
ゴミが散乱していないか、汚れていないかを確認する。

・駐輪場や駐車場
使ってないような自転車が放置されてないか、駐輪場・駐車場が汚れてないかを確認する。

・入居者
可能ならばどのような人が住んでいるのかも確認しましょう。

新築で質の高い物件ならば、こうしたことはまず不要といえます。なぜならば、家賃の値段がフィルターとなり、属性の良い方が入居される可能性が高いからです。

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