「働き方改革」を通じた外国人労働者の受け入れを含め、日本国内における外国人層の増加傾向は今後一層強まっていくでしょう。それは、不動産投資においても大きな影響を与える要因の一つでもあります。不動産オーナーの中には、外国人の入居についてあまり良い顔をしない人も少なくありません。
しかし、外国人だからと一括りに入居を断る時代は、もはや終わりを告げつつあるのです。そこで、本稿では外国人入居者についての意義とメリットについて解説します。
特定技能で急増が予想される外国人居住者
少子高齢化とそれに伴う労働力不足は、国内で大きな問題として取り上げられています。みずほ総合研究所が2017年5月に発表したレポートによると、2016年の労働力人口は6,648万人、労働力率は60%です。しかし、2065年の労働力人口は3,946万人、労働力率(男女別、年齢5歳段階別の労働力率が2016年と同じ場合)は49.9%と大きく減少することが予測されています。
政府は「働き方改革」として、さまざまな政策を打ち出していますが、その中の一つに在留資格「特定技能」と呼ばれる制度があります。特定技能とは、日本の在留資格の一種であり、これまで政府が認めて来なかった、外国人材の単純労働者を受け入れるために設けられた制度のことです。
この特定技能は、介護や飲食など14の業種で働くことを前提として、フィリピン・カンボジア・ミャンマー・ネパールなど、複数の国の人を対象としています。特定技能は2019年4月より施行されているため、今後、日本人の人口減少に反比例して外国人の在留者が大幅に増えていくことが予想されます。
外国人入居者を受け入れるメリット
外国人入居者の受け入れについては、まだ消極的な人が一定数いるようです。これは、別に外国人だからといって差別しているわけではありません。しかし、マンション経営は個人の副業である傾向が多く、「やはりトラブルが心配」という不動産オーナーの意見もあります。
しかし、外国人入居者を受け入れると、さまざまなメリットがあることも知っておきたいところです。
1.新時代へのブランド価値
外国人入居者について、閉鎖的な意見があるオーナーも一定数います。だからこそ、率先して外国人入居者を受け入れるのであれば、時代を先取りした物件としてブランド価値を生み出すでしょう。不動産業者としても「外国人可」の物件として認識するため、空き室リスクもさらに減ることが期待できます。
2.外国人同士のコミュニティ
海外に住んでいる日系人が「日本人街」としてコミュニティを築いているように、海外の人々も日本に住む場合、それぞれにコミュニティを築く傾向があります。これは、横浜の中華街で考えるとわかりやすいでしょう。例えば、ある物件で外国人の入居を受け入れた場合、その話題がコミュニティ内で広がっていきます。
そのため、仮にその人が退去した後も話題を聞きつけた人がまた住んでくれたり、所有している別の部屋に住んでくれたりする可能性があるのです。
3.成約率の高さ
「新時代へのブランド価値」にも通じることですが、日本社会では外国人居住者についてまだ開放的であるとはいえません。外国人にとって日本で住居を探すのは楽な作業ではないのです。外国人が家探しをする場合、日本人のように次から次へと物件を見回って豊富な選択肢から気に入ったものを選べるという人ばかりではありません。
「物件が見つかったら急いで成約する」という傾向も見受けられます。そのため外国人入居者を受け入れると、時期などにはあまり左右されず、すぐに部屋が埋まる可能性が高いというメリットがあるのです。
課題を乗り越えれば上顧客にも
上述の通りメリットはあるものの、外国人入居者の受け入れに関しては言語や文化の壁、また日本独特の連帯保証というシステムなどの問題があります。しかし、今後の日本において外国人入居者の増加は避けては通れない課題となることは容易に想像できます。
いくつか課題は散見されますが、そのリスクを乗り越えて彼らをお得意様として迎え入れることも一つの投資といえるでしょう。