最終更新日:2024/8/19
 
年収1,000万円の手取りは?住民税や所得税額、生活レベル、節税対策も
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丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

年収1,000万円に憧れる人は多いですが、実際の手取り額はいくらになるのでしょうか。住民税や所得税の負担額、そして節税対策についても確認してみましょう。

目次

  1. 1.年収1,000万円の人の割合や職業
  2. 2.年収1,000万円にかかる税金の種類
    1. 2-1.所得税
    2. 2-2.住民税
    3. 2-3.雇用保険料
    4. 2-4.社会保険料
  3. 3.年収1,000万円の人の手取り額は?
  4. 4年収1,000万円の人の生活レベル
  5. 5.年収1,000万円の人ができる節税対策
    1. 5-1.新NISA
    2. 5-2.iDeCo
    3. 5-3.配偶者控除・扶養控除
    4. 5-4.生命保険料控除・地震保険料控除
    5. 5-5.ふるさと納税
    6. 5-6.医療費控除・セルフメディケーション税制
    7. 5-7.住宅ローン控除
    8. 5-8.特定支出控除
  6. 6.不動産投資で税金対策を行う方法も
    1. 6-1.不動産投資で節税できる理由
    2. 6-2.不動産投資で税金対策したほうが良い人
  7. 7.年収1,000万円はイメージほど楽ではなく節税対策が必要

1.年収1,000万円の人の割合や職業

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はじめに、年収1,000万円の人がどれくらいの割合いるのかを確認しておきます。国税庁が行った「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、年収1,000万円超1500万円以下の人(1年を通じて勤務した人)は201万9,000人で、全対象者5,077万6,000人のうち約3.98%となっています。

転職専門サイト「転職Hacks」の「職業別平均年収ランキング」によると、職業別で平均年収が1,000万円を超えるのは、パイロット、医師、大学教授などわずか3つの職業です。

ほかに年収1,000万円を超える可能性が高い職業として、裁判官・検察官・弁護士などの法務関連職、公認会計士・税理士・中小企業診断士などの士業、小中学校教員・高等学校教員・大学講師などの教員関連職、歯科医師、議員、国家公務員管理職などが挙げられます。

2.年収1,000万円にかかる税金の種類

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年収1,000万円からは以下の4つが差し引かれます。年収1,000万円という言葉の響きは魅力的ですが、引かれる税金や保険料の金額も多いです。

2-1.所得税

▽所得税税率表

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

所得税は税率表にあるように、累進課税で所得に応じて段階的に税率が高くなる税金です。給与収入や事業収入から社会保険料や各種控除を差し引いた課税所得に対して所得税が課税されます。

2-2.住民税

住民税は1月1日現在で住民票に住所が記載されている都道府県・市町村に納付する税金です。課税所得に応じて10%課税される「所得割」と、基本的に5,000円が一律で課税される「均等割」の合計が課税されます。

2-3.雇用保険料

雇用保険料は一定期間納めると、失業したときに失業手当が給付される社会保険料の一種です。保険料は事業内容によって異なりますが、一般的には給与の0.3%程度とされています。算定の基になる給与には、通勤手当も含まれる点に注意が必要です。

2-4.社会保険料

社会保険料は「健康保険」と「厚生年金保険」の2つを合わせた費用です。保険料は勤務している会社と本人が折半して支払います。給与に占める保険料の割合は15%程度といわれており、負担の重さが問題になっています。

3.年収1,000万円の人の手取り額は?

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年収1,000万円の手取り額の目安は以下のとおりです。およその目安であり、細かい金額は諸条件によって異なります。

【設定条件】
40歳未満の会社員(介護保険料なし)
健康保険:57万5,736円
厚生年金保険:69万7,230円
雇用保険:3万円
所得税:84万6,150円
住民税:62万7,850円

【手取り額】
1,000万円-57万5,736円-69万7,230円-3万円-84万6,150円-62万7,850円
=722万3,034円

4年収1,000万円の人の生活レベル

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年収1,000万円の人は、どの程度の生活をしているのでしょうか。手取り年収722万円は月収にすると約60万円です。

【設定条件】
夫:会社員、妻:専業主婦、子ども:中学生、自宅:分譲マンション

収入(月額換算)支出
給与60万円住宅ローン15万円
児童手当1万円管理費・積立金3万円
食費9万円(3万円×3人)
水道光熱費3万円
通信費3万円
交際費2万円
教育費5万円(塾代含む)
教養娯楽費5万円(習い事含む)
駐車場代2万円(マンション内)
各種保険料2万円
雑費1万円
夫・妻小遣い5万円
貯蓄・投資6万円
合計61万円合計61万円

支出で最も大きいのは住宅ローンの支払いと思われます。仮に6,000万円のマンションを5,000万円の融資(元利均等、金利1.5%、返済期間35年)を受けて購入した場合、毎月のローン支払い額は15万3,092円となります。

シミュレーションの家庭では収入の10%にあたる6万円程度を貯蓄や投資に回せますが、子どもが多ければ貯蓄額は減る可能性があります。年収1,000万円といっても左うちわの生活というわけではなさそうです。

ただし、それでもマンションのローン完済後は大きな純資産になるので、貯蓄と併せて老後の備えは十分といえるでしょう。

5.年収1,000万円の人ができる節税対策

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年収1,000万円の人はシミュレーションのケースでは、約278万円の税金が発生します。納税額を少しでも少なくするためには、以下のようなさまざまな節税対策を行うことが大切です。

5-1.新NISA

高所得者の中には資産運用を行っている人が多いでしょう。新NISA(少額投資非課税制度)が2024年1月からスタートし、年間360万円までの投資から生じる売却益や配当金・分配金が非課税になりました。投資を行うならNISA口座の開設は必須です。

5-2.iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は個人年金制度の一種です。自分で拠出した掛金を自分で運用し、資産を形成する年金制度で、65歳まで掛けることができます。その場合、運用益が出たとき、給付を受けるときの全てで税優遇措置を受けられます。

ただし、60歳までは掛金を引き出すことはできないので、余剰資金で行う必要があります。

5-3.配偶者控除・扶養控除

年末調整や確定申告では、「配偶者控除」や「扶養控除」を利用することができます。

配偶者控除は、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられます。ただし、配偶者の給与収入が103万円を超えると控除を受けることができません。これがいわゆる「103万円の壁」といわれる問題です。

▽配偶者控除控除額

控除を受ける納税者本人の
合計所得金額
控除額
一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者
900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1,000万円以下13万円16万円

扶養控除は、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に受けられます。控除額は扶養親族の年齢や同居の有無によって異なります。

▽扶養控除額

区分控除額
一般の控除対象扶養親族38万円
特定扶養親族63万円
老人扶養親族同居老親等以外の者48万円
同居老親等58万円

5-4.生命保険料控除・地震保険料控除

保険に加入することも節税になります。

生命保険料控除は、納税者が生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に、一定の金額を控除できる制度です。

▽生命保険料控除額

年間の支払保険料等控除額
2万円以下支払保険料等の全額
2万円超4万円以下支払保険料等×1/2+1万円
4万円超8万円以下支払保険料等×1/4+2万円
8万円超一律4万円

地震保険料控除は、納税者が損害保険契約等にかかる地震等損害部分の保険料または掛金を支払った場合に、一定額を控除できる制度です。

▽地震保険料控除額

区分年間支払保険料の合計控除額
(1)地震保険料5万円以下支払金額の全額
5万円超一律5万円
(2)旧長期損害保険料1万円以下支払金額の全額
1万円超2万円以下支払金額×1/2+5,000円
2万円超1万5,000円
(1)(2)両方がある場合(1)(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額
(最高5万円)

5-5.ふるさと納税

ふるさと納税は自分で選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除される寄附制度です。控除額の計算は以下のとおりです。

・所得税
ふるさと納税額-2,000円

・住民税(基本)
(ふるさと納税額-2,000円)×10%

・住民税(特例分)
(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税率(0~45%)

5-6.医療費控除・セルフメディケーション税制

医療に関しては2つの税優遇制度があります。

医療費控除は、その年の1月1日~12月31日までの期間に自己または生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が一定額を超えるときに所得控除を受けられる制度です。計算式は、「実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円」です。

セルフメディケーション税制は、平成29年~令和8年の期間に自己または生計を一にする配偶者や親族のために、特定一般用医薬品購入費を支払った場合に、自己がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取り組みとして一定の健康診査や予防接種を行っているとき、その年の特定一般用医薬品購入費の合計額のうち、1万2,000円を超える部分の金額(最大8万8,000円まで)を控除できる制度です。

なお、両方の制度を併用することはできないので注意が必要です。どちらか有利になるほうを選びましょう。

5-7.住宅ローン控除

住宅ローン控除は、個人が住宅ローン等を利用して、住宅を新築、取得または増改築したときに、一定の要件のもとで計算した金額を所得から控除できる制度です。

令和6年1月1日~令和7年12月31日まで居住の用に供した場合の控除額は、10年間毎年「年末残高等(上限2,000万円)×0.7%」の計算式で算出した金額です。

5-8.特定支出控除

特定支出控除とは、給与所得者が通勤費・職務上の旅費・転居費・研修費・資格取得自費・帰宅旅費・勤務上必要経費(図書費・衣服費・交際費等)の特定支出をした場合、支出合計額が基準となる金額を超えるときに、確定申告によりその超える部分を所得から控除できる制度です。

基準となる金額は、「その年中の給与所得控除額の2分の1」です。

6.不動産投資で税金対策を行う方法も

年収1,000万円の手取りは?住民税や所得税額、生活レベル、節税対策も
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不動産投資は昔から税金対策の王道として知られています。給与所得が多い人には節税効果が高い場合があるので、該当すれば検討してみると良いでしょう。相続させる財産が多い人も同様に効果があります。

6-1.不動産投資で節税できる理由

不動産投資で赤字が出た場合、「損益通算」を使って給与所得など他の所得から赤字分を差し引くことができます。したがって、年収1,000万円のような高所得者は不動産投資をすることによって購入初年度に節税することができます。

また、相続させる財産が現金や預貯金だけの人は相続税評価額が100%となり、額面どおりに課税されてしまいますが、投資用不動産を購入しておくと相続税評価額が購入額の25%程度まで下がることもあり、相続税を節税できます。

6-2.不動産投資で税金対策したほうが良い人

具体的にどの程度の所得があれば税金対策したほうが良いのでしょうか。不動産投資で税金対策したほうが良い人は、課税所得が900万円を超える人です。課税所得が900万円を超えると税率区分が23%から一気に33%に増えるからです。

例えば給与所得900万円の人が不動産投資で200万円の赤字が出た場合、給与所得から200万円を差し引けるので、以下のように所得税額を減額できます。

・給与所得のみの場合
課税所得900万円×33%-153万6,000円=143万4,000円

・不動産投資で赤字が200万円あった場合
課税所得700万円×23%-63万6,000円=97万4,000円

不動産投資することにより46万円節税できます。

ただし、赤字が出るのは購入時諸費用が多い初年度のみで、2年目以降は黒字化する可能性が高いので購入初年度のみの節税策と割り切って行う必要があります。

7.年収1,000万円はイメージほど楽ではなく節税対策が必要

年収1,000万円の手取りは?住民税や所得税額、生活レベル、節税対策も
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年収1,000万円の人の生活について検証してみましたが、家庭を持っていればイメージするほど生活は楽ではなく、税金対策で少しでも手取りを増やすことが大事であることがわかりました。

まずは本記事で紹介した節税対策の中で自分が可能な対策を実施して、物価高の経済環境を乗り切っていくことが求められます。

※記事中の各種シミュレーションは一例であり、諸条件によって計算結果は異なります。参考程度にご覧ください。

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