相続税・贈与税・所得税。保険は名義でどう変わるのか?
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山中 勇樹
山中 勇樹
ライター/編集者。主に企業経営者への取材・インタビューを通じて、ビジネス系の文章(書籍・雑誌等)を執筆。インタビュー実績多数。

もしものことを考え、残された家族に財産を残すために「保険」を活用する人は多いかと思います。ただ、保険の“名義”をどのようにするのかによって、課せられる税金が変わるということはあまり知られていません。実は、保険を有効活用するためには、税金について知っておく必要があります。

そこで本稿では、保険の名義によって「相続税」「贈与税」「所得税」のどれに適用するのかについて、その仕組みとともに解説します。

切っても切れない保険と税の関係性

そもそも保険と税金は、切っても切れない関係にあります。もし何かあった場合を想定して保険に加入することを前提としつつも、保険金を受け取る場合には所得を得ることとなり、税金に対する配慮が欠かせないためです。

税金について考えることなく保険に加入してしまうと、保険金の手続きが煩雑になってしまったり、場合によっては実際に受け取れるお金が少なくなってしまったりすることもあるでしょう。だからこそ、税金への意識が大切です。

保険と税金は密接な関係性にあります。保険に加入する際には、保険金やサービス内容だけでなく、「受け取るときにどう税金が関係してくるか」という点にも気を付けながら、意思決定をするようにしてください。

契約の名義によって変わる税金とは

保険と税金の関係について考えたとき、ポイントになるのは保険の「名義」です。つまり、保険の契約に際して、「契約者(保険料を負担する人)」「被保険者」「保険金の受取人」の名義を誰にするのかによって、課せられる税金の“種類”が変わってくることになるのです。具体的には、以下のように、大きく3つの方向性があります。

相続税

契約者:父 被保険者:父 受取人:配偶者(母) →相続税

1つ目は、契約者と被保険者が同じ(父など)であり、受取人が配偶者(母など)である場合です。

このパターンでは、受取人である配偶者に課せられる税金は「相続税」となります。ただ、保険金として受け取る財産に加えて、他にも多額の資産がある場合、子ども等に課せられる相続税が大きくなってしまう場合も考えられます。 そのようなケースも見越して、受取人を配偶者ではなく子にしておけば、受け取った保険金を相続税の支払いにあてることができます。もともと配偶者には税額軽減の特例(1億6,000万円まで)があることを見越した対応となります。

贈与税

契約者:父 被保険者:母(配偶者) 受取人:子 →贈与税

2つ目は、契約者が父であり、被保険者が母、受取人が子である場合です。このパターンでは、契約者と受取人が異なっているため、課せられる税金は「贈与税」となります。

贈与税は、原則として基礎控除額(年間110万円)を差し引いて、残りの金額に税率をかけて計算されます。親から子への贈与で、子どもが未成年の場合は「一般税率」、子どもが20歳以上の場合は「特例税率」で計算されます。

<一般税率>

<特例税率>

「贈与税の計算と税率(暦年課税)」国税庁

所得税

契約者:父 被保険者:母(配偶者) 受取人:父 →所得税

3つ目は、契約者を父、被保険者を母、受取人を父にしていた場合です。

このパターンでは、契約者と受取人が同じであるため、父が受け取る保険金は「一時所得」となり、課せられる税金は「所得税」となります。 将来的に、贈与が発生することが想定される場合は、高額となりやすい贈与税を回避するために、あえて所得税を選択するケースも考えられます。 たとえば、2つ目のパターンのように「父・母・子」の保険契約を、「子・母・子」にすることで、保険金の支払いを子が肩代わりしながら、子に課せられる税金の一部を所得税にする場合などです。

保険契約は税金の知識が大事

このように、保険契約の内容によって課せられる税金の種類が変わり、税額にも変化が生じます。保険金だけでなく、全体の資産状況を踏まえて、「どのような税金が課せられるのか」を見越した対応をとるようにしましょう。

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