最近デキるビジネスパーソンの間で「成果を出すために十分な睡眠や栄養をとる」という考え方が広がっています。この考え方に今回ご紹介する「アクティブレスト(積極的休養)」をプラスすることで安定したパフォーマンスを発揮しやすくなります。アクティブレストの考え方や実践方法は簡単です。日常生活にぜひ取り入れてみてください。
ビジネスで成果を出し続けるための3条件「スキル・栄養・休養」
大リーガーのダルビッシュ有投手は、トレーニング術や栄養学などを研究して成功したアスリートとして知られています。彼は、自身のTwitterでスポーツ選手として成功するためには「トレーニング・栄養・休養」の3つが大事であると提唱しています。
これをビジネスパーソンに置き換えると、成果を出し続けるには「スキル・栄養・休養」の3条件が必須となるでしょうか。優れたスキルを持っていても、栄養と休養がおろそかなら、持続性の部分で不安が出てきます。体調がすぐれなかったり病気がちになったりすれば、安定した成果は出せません。
ただ休養をとっても疲労回復にはならない
本稿では「スキル・栄養・休養」の3つのうち、休養にフォーカスしたいと思います。「日ごろから睡眠時間を充分とっている」「休日にリフレッシュしている」それなのに疲労感が抜けきらないというビジネスパーソンもいらっしゃるのではないでしょうか。
やみくもに休養をとっても疲労回復にはつながりません。ここでは疲労回復を効率的にするための知識と実践方法を解説いたします。
慢性的な疲労はビジネスパーソンにとって深刻な問題
私たちが仕事や生活をするうえで「疲労回復がいかに重要か」を示す調査があります。
2019年に大正製薬が20代から60代の男女500人を対象に行ったアンケートによると、約9割※の人が「疲れている」と答えており、「疲労を感じていない」と答えた人は1割弱となっています。
※「肉体的に疲れている」「精神的に疲れている」と回答した人の合計
同アンケートの「最も疲労を感じるときは?」の問いに対しては、睡眠不足、仕事のストレス、労働、PC・スマホの使い過ぎなどが上位を占めます。
普段疲れを感じるシーンは?
もう一つ、疲労に関する興味深い調査があります。2019年にマーケティング支援会社のネオマーケティングが20歳以上の男女1,000人を対象にアンケートを行いました。
「あなたが普段疲れを感じるシーンは?」という質問を行なったところ、約43%の人が「朝起きたとき」と回答しており、最も高い数値を示しています。
当然ながら、疲れた状態で仕事をしても最高のパフォーマンスを発揮するのは難しいでしょう。また、朝起きたときの疲労感に仕事の疲れが重なり、それが蓄積していく悪循環に陥るリスクもあります。
このような状態にならないためにも、私たちは疲労回復の方法を知る必要があります。
体を休めるだけの休養では疲労回復は難しい
疲労回復を効率的にするためには、まず「疲労のメカニズム」を知ることが大切です。この点について精神科医・医学博士の西多昌規氏は、著書『休む技術(大和書房)』のなかで、疲労には次の2種類があると解説しています。
活性酸素が原因の疲労
1つ目は活性酸素が原因の疲労です。活性酸素は私たちの体がエネルギーを作り出すときに生まれるもので、細胞を傷つけ、シワ、老化、しみ、がんや生活習慣病の原因になるといわれています。しかし睡眠や休憩をとることで体(疲労)は回復します。
疲労因子が原因の疲
2つ目は活性酸素が細胞を攻撃した際に発生する、「疲労因子FF」が原因の疲労です。
この疲労因子の働きを弱めてくれる「疲労回復因子FR」は軽い運動をすると活発になるそうです。
疲労の種類 | 緩和するための方法 |
---|---|
活性酸素による疲労 | 睡眠や休憩 |
疲労因子による疲労 | 軽い運動 |
一般的な「疲労回復」では、体を休めることをイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、体を休める休養だけでは「疲労因子FF」が弱まらない可能性があります。効率的に疲労回復効果を上げるには休養と軽い運動が必要なのです。
アクティブレスト向きの運動はウォーキング、ストレッチ、ヨガなど
運動することで疲労回復する方法を「アクティブレスト(積極的休養)」といいます。それでは、具体的にどんな運動をすると疲労回復に効果的なのでしょう。
アクティブレストを提唱している専門家のひとり、パーソナルトレーナーの西巻草太氏はウォーキング、ストレッチ、ヨガの3つを挙げています。
休養の種類 | 目的 | 方法 |
---|---|---|
一般的な休養 | 体を休める | 十分な睡眠をとる おいしいものを食べる 温泉につかる など |
アクティブレスト (積極的休養) | 体を動かす | ウォーキング ストレッチ ヨガ など ※軽めの運動が前提 |
参考:DIAMOND online(ダイヤモンドオンライン)掲載コラム『デキる人はやっている!効果絶大な疲労回復法「アクティブレスト」とは』をもとに作成
頑張りすぎないことが大切
アクティブレストをするときの注意点は、目的が疲労回復なので軽めの運動にとどめることです。
頑張り過ぎてしまうと活性酸素が増え、疲労感が強まってしまう可能性があるのでご注意ください。
「どれくらいの運動が軽めなのか」については、年齢、性別、体力などによって違ってきます。
そのため自分で判断をするしかありませんが、目安としては、息があがらない運動が軽めの範囲と考えられます。季節にもよりますが、ウォーキングであれば軽く汗ばむ程度でしょう。
ウォーキング、ストレッチ、ヨガで疲労回復が期待できる理由
ちなみに、なぜアクティブレストに「ウォーキング、ストレッチ、ヨガが効果的なのか」についても西巻草太氏は解説しています。その内容をまとめたのが次の表です。
運動の種類 | 期待される効果 |
---|---|
ウォーキング (10〜30分程度) | 反復運動によりセロトニンの分泌を促進 |
ストレッチ | 筋肉の緊張をほぐして全身の血行改善 副交感神経を優位にする働き |
ヨガ | 深く呼吸することによる脳の疲労回復 副交感神経を優位にする働き |
参考:DIAMOND online(ダイヤモンドオンライン)掲載コラム『デキる人はやっている!効果絶大な疲労回復法「アクティブレスト」とは』をもとに作成
上記の表に出てくる「セロトニン」というのは精神の安定に作用する神経伝達物質のことです。つまり、アクティブレストは体だけでなく、精神面にもプラスの効果が期待できるというわけです。
運動が続かない人でもアクティブレストはできる
ここまでの内容で「アクティブレストの方法と期待できる効果」についてはご理解いただけたでしょう。ただ現実的には「ウォーキングなどが続かない」という人もいらっしゃると思います。
『休む技術』の著者である西多昌規氏は、継続する方法として日常生活にちょっとした変化をつけることを提案しています。その方法は次の通りです。
これくらいなら「ウォーキングなどが続かない」という人でも気軽に習慣化できそうです。西多氏によると「同じ姿勢をとり続けないことが意外と重要」とのこと。
上記の例を参考にしながら、ご自身に合う「体を動かしながら休む方法」を見つけてみてください。
長時間労働で仕事をカバーするには限界がある
「長時間労働で仕事をカバーする」そんな旧来の価値観がビジネスシーンから淘汰されようとしています。
最近では長時間労働から脱却するため、多くの会社で時間管理、生産性向上、チームワークなどが追求されてきました。しかし、それに限界を感じている人も多いのではないでしょうか。
私たちがこの限界の壁を突破するための1つの選択肢が、睡眠・栄養・休養など仕事以外の部分に目を向けることです。
とはいえ、休養はあくまでも休養です。「いかに効率的に休むか」を追求しすぎるとストレスになりかねません。
アクティブレストなどによって効率的に休むことを意識しつつ、ときにはその制約から解き放たれて、ゆったりとした気分で休むことも大切かもしれません。
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