有名な元経営者や各分野の成功者で「生活や仕事をルーティン化」している人が目立ちます。もしかしたら、そこに彼らが成功した秘密が隠れているのかもしれません。そこで本稿では、5人の成功者の取材記事や書籍などをもとに「彼らがルーティン化にこだわる理由」「彼らは具体的にどんなことをルーティン化しているのか」を解説します。
目次
「ルーティン」は、ネガティブ・ポジティブ両方の意味で使われる
ルーティンとは、その人の習慣になっている手続きや仕事の進め方などのことです。ビジネスの世界では「マニュアル通りのルーティンワークしかできない」といった具合に、ネガティブな表現として使われることもあります。
一方、「ルーティン 成功者」「ルーティン お金持ち」など、ルーティンというキーワードをポジティブに捉えるケースもよくあります。成功者やお金持ちがルーティンにこだわる理由はさまざまです。ここでは次の5人がルーティンワークにこだわる理由を見ていきます。
・成毛眞氏(元日本マイクロソフト社長)
・水野学氏(クリエイティブディレクター)
・樺沢紫苑氏(作家・精神科医)
・イチロー(元大リーガー)
・ジェフ・ベゾス氏(米アマゾン・ドット・コム創業者)
脳のリソースを無駄遣いしなくなる
ルーティンの効果については、元日本マイクロソフト社長の成毛眞氏の取材記事が参考になります。ニューズピックスの『【成毛眞】モノ、情報、資産。ビジネス断捨離の「最適解」』では成毛氏の話をもとに「意思決定を減らすことで、脳のリソースを無駄遣いしなくなる」と解説しています。
ライフスタイルをルーティン化すれば、意思決定の機会が減ります。使わなかったリソースを仕事や成果につながるタスクに振り向ければ、成功をおさめる可能性は高くなるでしょう。
成毛氏のルーティンの一例としては、昼食は麺類がほとんどで、夕食は焼鳥屋かそば屋など選択肢を絞り込んでいるのが特徴的です。一択のルーティンが難しければ、成毛氏のように「選択を減らすルーティン」にする方法もあります。それだけでも、無数の選択肢があるよりも脳のリソースを使わない効果がありそうです。
クリエイティブな思考回路が生まれる
野村證券が運営するメディア「エル・ボルデ(EL BORDE)」の取材記事でクリエイティブディレクター水野学氏は、仕事を分解したうえで(例:調べる、ラフを描く、デザイン案を出すなど)1つひとつの作業をルーティン化することへのこだわりを解説しています。
一見すると、新たなアイデアを生み出し続けるクリエイターにとって、ルーティン化は作品作りを流れ作業にしてしまう懸念があるようにも感じられます。
しかし、水野氏は「ルーティンを増やすと効率よく物事が進むうえ、気持ちにも余裕ができます」としたうえで、この余裕(余白)によって「クリエイティブな思考回路が生まれやすい」と述べています。
水野氏自身はクリエイティブな仕事においてルーティン化を推奨していますが、一般のビジネスパーソンにも参考になります。例えば、ルーティン化によって生まれた余裕を活用して、下記のように仕事の質を高めることが可能です。
・企画書の精度を高める
・仕事のケアレスミスをチェックする
・顧客と丁寧にコミュニケーションをする など
理想的な1日の準備ができる
ルーティン化のなかでも朝やることを決めておく「モーニングルーティン」の効果を説く成功者は多いです。そのなかの1人が、精神科医でありビジネス書籍のベストセラー作家でもある樺沢紫苑氏です。樺沢氏は2021年7月発売の書籍『今日がもっと楽しくなる 行動最適化大全』でモーニングルーティンについてくわしく解説しています。
樺沢氏はモーニングルーティンの利点として、起床後にやることを予め決めておけば、目が完全に覚めていない状態でもすぐ活動に入れることを挙げています。「活動することで脳が活性化し意欲が湧いてくる」「脳と身体にスイッチが入り、1日のスタートの準備が整う」とのことです。
ちなみに樺沢氏自身のモーニングルーティーンの一部は次の内容です。
・起床後に体重測定をする
・その後にコップ1杯の常温水を飲む
・シャワー浴びる
・髭剃りと整髪をする
・朝の散歩に出かける
・気力、体力ともに充実した状態でそのまま執筆開始
これくらい具体的にモーニングルーティーンが決まっていれば、毎朝スムーズに活動に移れそうです。『行動最適化大全』は、まるまる1冊が生活や仕事などのルーティンの参考書といえます。ルーティン化したいけれど「具体的に何をしていいかわからない」という人は参考になるでしょう。
次の行動に集中するスイッチになる
ルーティンにこだわる成功者の代表的な存在といえば、元大リーガーのイチローでしょう。現役時代のイチローのルーティンで有名な逸話には、「打席に入るまでの定型化した流れ」「ゲーム開始から逆算して、食事や起床時間を決めている」「(現役時代の一時期)必ず朝食・昼食兼用のカレーを食べていた」などがあります。
しかし、引退後の本人の話を聞くと、イチローのルーティンはこんなレベルではなかったことがわかります。試合中のちょっとした仕草までルーティンとして決めていたとのことです。
SMBC日興証券が提供するWebコンテンツシリーズ内の本人インタビューによると、イチローは出塁した際のルーティンとして「エルボーガードを外す」「革手袋のマジックテープを締め直す」という行動をとっていたことが明かされます。
そして、このルーティンは「今、集中していたバッティング」から「次の走塁」に切り替えるためのスイッチだったとイチローは解説しています。
この「ルーティンをスイッチにする」という着眼点は、ビジネスの現場でそのまま活用できそうです。例えば「プレゼンの前に決まった行動をとる」「出勤して仕事をはじめるときに決まった行動をとる」など、ルーティンを決めておくことで自身のスイッチを入れることが可能ではないでしょうか。
的確な判断ができる
早起きを習慣にする経営者は多いですが、2021年7月5日付で米アマゾン・ドット・コムのCEO(最高経営責任者)を退任したジェフ・ベゾス氏もその1人です。ただしベゾス氏の場合、早起きをしてもすぐに仕事は始めないスタイルのようです。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事によると、ベゾス氏の場合は早寝早起きをして「新聞を読み、コーヒーを飲んで子どもと朝食を共にすることを好む」とのことです。さらに、同記事では下記のベゾス氏流のルーティンも紹介しています。
・朝10時前に会議の予定を入れない
・高度IQの会議はランチ前に入れる
・夕方5時までには帰宅の途に就くようにする
もうひとつベゾス氏の有名なルーティンには「睡眠時間を8時間確保している」があります。これらは、すべて的確な判断をするためであり、仕事の質を高めるための行動でもあります。
ルーティン化するのは何のためか。どのような結果を最終的に得たいのか。これを熟慮したうえでルーティン化することが大切ということをベゾス氏は説いています。
数多くの行動をルーティン化すると続かない可能性も
ここで見てきたように、「限られたリソース・自己の能力・時間などを最大化」するのに生活や仕事のルーティン化は有効のようです。ただし、「どんな行動をルーティン化すると、パフォーマンスが上がるのか」は人それぞれ違うため、各自で研究していく必要がありそうです。
注意点としては、一気に数多くの行動をルーティン化すると、負担が大きくなり続かない可能性もあります。まずは1つのことをルーティン化し、それが定着したら増やすという流れがよいかもしれません。
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