近年、40代・50代の「早期退職者」が増加傾向にあります。その背景には、終身雇用が過去のものとなりつつあることに加えて、転職市場の盛り上がりや企業の人事戦略なども影響していると考えられます。とくに企業としては、難易度が高まっている若手社員の採用状況を見越し、人件費の抑制を図る狙いがありそうです。
こうした状況を受け、40代・50代以降の人は転職をどう捉えればいいのでしょうか。ここでは転職のポイントを踏まえつつ、成功させるためのヒントについて考えていきましょう。
40代・50代の転職をどう捉えるべきか?
かつて、転職市場においてその中心であったのは若手社員でした。20代前半の「第二新卒」をはじめ、20代半ば~30代前半までの若手人材による会社や職業の移動が、転職市場を盛り上げていました。「転職35歳説」という言葉もあるように、35歳を超えてからの転職は特殊な技能や能力がなければ厳しいとされ、即戦力として活躍できなければ、職種や業種の変化を伴う転職は難しいのが一般的でした。
しかし、ここ数年で状況は変わろうとしています。大手企業各社が中高年向けの「早期退職社制度」を活用し、人員の刷新を行っているのです。しかも、業績が悪いために人員整理(リストラ)しているのではなく、会社の未来を見据えて早期退職者の募集や人員配置の転換をしている例が目立ちます。このことは、一部の40代・50代の社員が、会社にとって不要だと思われはじめているとも解釈できそうです。
戦略的なキャリア形成を!ミドル世代の転職で押さえておきたいポイント
こうした動きを受けて、40代・50代のビジネスパーソンは、どのような点に注意しておけばいいのでしょうか。既存の転職市場を概観しつつ、ミドル世代が転職時に押さえておきたいポイントについて掘り下げてみましょう。
盛り上がる転職市場
少子化に伴う生産労働人口の減少は、人材ビジネスを活性化しています。転職市場も活況を呈しており、若手人材だけでなく、中高年まで広がっていることはすでに述べました。ただ、企業が早期退職制度を活用している背景について考えると、40代・50代の人は決して楽観視できないとわかります。中高年の転職において重要な「市場価値」について、あらためて見直す必要がありそうです。
重視される「エンプロイアビリティ」とは
転職における市場価値は、「エンプロイアビリティ」などの用語で表されることがあります。エンプロイアビリティとは「雇用される能力」のことで、企業から採用に値すると判断されるスキルや経験、実績を指します。厚生労働省は、エンプロイアビリティを「労働市場価値を含んだ就業能力、即ち、労働市場における能力評価、能力開発目標の基準となる実践的な就業能力」と定義し、基本的な能力として次の3点を挙げています。
A 職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの B 協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの C 動機、人柄、性格、信念、価値観等の潜在的な個人的属性に関するもの
市場で問われるビジネスマンとしての価値
エンプロイアビリティが高い人にとって、早期退職はチャンスとも言えます。自らのスキルを異なる分野で発揮させることで、収入増が見込める場合もあるでしょう。すでに中途採用経験がある企業では、年齢にこだわらない人材の獲得も進んでいます。国の方針も、「年齢にかかわりない円滑な転職・再就職を支援する」としており、より個々人の適正な評価と採用は進んでいくことでしょう。
早期退職に備えて不動産投資などの「運用」もひとつの手段
自らのエンプロイアビリティを高めていない人は、厳しい戦いを強いられることになります。今後は、ひとつの会社に勤め上げるのではなく、市場全体で自分自身の価値を高めていく必要がありそうです。40代・50代のミドル層も、転職に対してもっているイメージを変え、自分ごととして捉えていきましょう。
また、不動産投資を始めとする運用がかなり注目されています。実際にビジネスマンとしてキャリアを積みながら、マンション経営をはじめとする不動産投資で資産形成を行っている方も増えています。企業によっては副業への門戸も開かれつつあります。キャリアアップやエンプロイアビリティの向上のための「転職」と並行して、「副業」をもつこともひとつの手段といえるでしょう。
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