ふるさと納税の利用件数は2023年度の時点で約5,894万件以上に達しており、前年度の5,184万件から約710万件増加しました。テレビCMや広告などでも数多く宣伝されており、いまや多くの方が利用、もしくは利用を検討している制度です。
ただし、初めて利用する人が注意すべき点の一つとして「ワンストップ特例制度」があります。こちらを利用しないと、確定申告しない限りふるさと納税による節税効果を受けることができません。今回は、ワンストップ特例制度の概要と対象者、使い方について説明します。
目次
1.ワンストップ特例制度とは?
「ワンストップ特例制度」とは、ふるさと納税による控除を受ける際に、確定申告が不要となる便利な仕組みです。
一定の条件を満たすことで、寄附先の自治体へ「特例申請書」と「本人確認書類」を郵送、
またはオンラインで提出するだけで、寄附額(2,000円を超える分)が住民税から控除されます。申請方法は、紙で提出するオフライン方式と、マイナンバーポータルなどを利用してオンラインで完結する方法が選択可能です。
1-1.確定申告との違い
確定申告とは、1年間に得た収入に基づいた自分の税金を計算し、必要な納税手続きを行う制度です。納税者は、自分の収入や経費を申告し、収入に応じた所得税や住民税を税務署に申請・納税します。この手続きにより、納めすぎた税金の還付が行われたり、ふるさと納税を含む様々な控除が適用されたり、支払う税額が軽減される可能性があります。
確定申告が必要になるのは、給与所得以外に副収入がある人、個人事業主やフリーランス、株や不動産投資で所得を得た人などです。提出の期間は通常、翌年の2月16日から3月15日までで、税務署からの指導のもと、必要な書類を添えて提出します。
一方、ワンストップ特例制度は、確定申告が必要ない会社員などの給与所得者が利用できる制度で、ふるさと納税をしたあとに確定申告をしなくても寄付金控除を受けられます。
確定申告とワンストップ制度の大きな違いは、確定申告では住民税と所得税の両方から控除されるのに対し、ワンストップ制度では住民税のみから控除額が引かれる点です。
1-2.ワンストップ特例制度の対象
ワンストップ特例制度の申請条件として、ふるさと納税先の自治体が5つ以内であることに加えて、そもそも確定申告をしなくてよい人であることが挙げられます。逆に言えば、ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告が必要な人は、ワンストップ特例制度を使えません。確定申告を通じてふるさと納税の申告を行うことになります。
確定申告の必要な人の例は以下の通りです。
- 給与収入が2,000万円を超える
- 給与所得・退職所得以外(不動産所得、雑所得など)の所得の合計額が20万円を超える
- 源泉徴収の対象となる給与を2つ以上の会社からもらっており、年末調整されなかった給与収入と給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える
したがって額面で2,000万円以上もらっている会社員や、副業などにより年間20万円以上の所得を得ている人などはワンストップ特例制度の対象外となります。
また確定申告が必要というわけではないが、医療費控除や住宅ローン控除などのために確定申告しようと考えている人も、ワンストップ特例制度を使うことはできません。他の控除とともに、ふるさと納税による寄附金控除についても確定申告書へ記載する必要があります。確定申告とワンストップ特例をともに利用することはできません。
2.ワンストップ特例制度の具体的な申請方法
ワンストップ特例制度を利用するための手続きについて解説します。
税金に関する手続きと聞くと、自治体の役所に出向いたり複雑な書類にサインするなどを想像する方もいると思いますが、シンプルな手続きでワンストップ特例制度を利用できます。
具体的なステップは以下の4つです。
①自治体を選び、ふるさと納税をする
②必要書類を準備する
③ふるさと納税した自治体へ提出する
④翌年度の控除を待つ
2-1.①自治体を選び、ふるさと納税をする
まずは寄附したい自治体を選びます。自治体ごとに特産品や地域に根差した返礼品が異なるため、自分の希望に合った返礼品や寄附金額から選択するとよいでしょう。
選んだ自治体への寄附は、専用のポータルサイトや自治体の窓口で行うことが可能です。
・申請時に必ずチェックを入れる
ここで注意しなければならないのが、寄附申し込みフォームで「自治体からのワンストップ特例申請書の送付を希望する」にチェックをいれて申し込みを行うことです。
このチェックをつけることで、自治体から特例申請書が送付され、ワンストップ制度の利用が可能になります。
2-2.②必要書類を準備する
ワンストップ特例制度を利用するためには以下の2つの書類を準備する必要があります。
・寄附金税額控除に係る申告特例申請書
ワンストップ特例制度を利用する際、ふるさと納税の寄附のたびにこの申請書を寄附先の自治体へ提出する必要があります。また、この申請書は自治体によってフォームが異なる場合がありますので、それぞれの自治体に問い合わせてみてください。
こちらが総務省が公開している申請書です。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000397109.pdf
・本人確認用書類
ワンストップ特例制度を利用する際には、申請者の身元確認のために本人確認用の書類が必要となります。
マイナンバーカードを持っている場合はそのコピー1枚だけで提出が完了しますが、マイナンバーカードを持っていない場合には、マイナンバーが記載された住民票の写しと、運転免許証や健康保険証などの身分証明書のコピーが必要になります。
2-3.③ふるさと納税した自治体へ提出する
必要書類をすべて準備できたら、寄附した自治体へと郵送します。これで手続きは完了となります。
また、令和4年中の寄附からは、一部の自治体においてマイナンバーカードを利用したオンラインでの申請が可能となっています。オンライン申請の対応状況等については、自治体によって異なりますので、各自治体までお問合せください。
2-4.④翌年度の控除を待つ
ふるさと納税での控除は翌年度に行われます。
所得税からの控除は行われず、控除額の全額が、ふるさと納税を行った翌年度の住民税の減額という形で控除されますので、注意しましょう。
3.ワンストップ特例制度の注意点
ふるさと納税による税控除を簡単に行うことができるワンストップ特例制度ですが、いくつかの注意点があります。控除が受けられなくなる場合もあるので十分に注意しましょう。
3-1.申請期限は1月10日まで
ワンストップ特例制度の申請期限は翌年の1月10日まです。
寄附を行った年の翌年1月10日までに、寄附先の自治体に特例申請書と本人確認書類を提出する必要があります。提出期限を過ぎてしまうと、ワンストップ特例制度を利用できなくなり、確定申告を行う必要があります。
3-2.寄附回数分の申請が必要
ワンストップ特例制度は、同じ自治体に複数回ふるさと納税を行った場合でも、寄附回数分の申請が必要になります。
例えば、同じ自治体に2回寄附した場合は、申請書も2回提出する必要があります。
最初の1回分しか申請を行わかった場合、2回目以降の寄附による税控除を受けることができないので注意しましょう。
3-3.確定申告を行うとワンストップ特例制度が無効になる
ワンストップ特例制度の申請後に確定申告も行った場合、ワンストップ特例制度は適用されなくなり、ふるさと納税による寄附金控除も含めて確定申告で申告する必要があります。
この場合の自治体への追加連絡は不要ですが、自動的に確定申告がワンストップ特例制度よりも優先されるため、既に提出した自治体への申請書は無効となります。
何かの都合で確定申告をする必要があり、やむを得ずワンストップ制度の申請が無効になる場合は仕方がないですが、意図せずにこのようなことが起こってしまうのは注意して避ける必要があります。
4.ワンストップ特例制度を活用してふるさと納税を行おう
ワンストップ特例制度は面倒な手続きを避けたい方にとって非常に便利です。
特に、給与収入のみでふるさと納税を行う場合、申請書と本人確認書類を提出するだけで簡単に税控除を受けることができます。
条件を満たしていれば、確定申告をせずに住民税から控除を受けられるため、初めてふるさと納税を試す方も手軽に利用できます。
自分の状況に合った申請方法を確認し、ぜひこの制度を活用して、節税と地域貢献を同時に実現しましょう。
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