マンション経営や自己居住など目的は異なっていても、多くの人がマンション価格の高騰を強く感じているのではないでしょうか。特に投資目的でマンション購入を検討している人は、マンション価格の高騰が利回りや収益性に直結するため、なかなか購入に踏み切れないでしょう。
いったいこのマンション価格高騰はいつまで続くのか?そもそもなぜマンション価格が高騰しているのか?これらの疑問にお答えするために、マンション価格高騰に関する最新事情や高騰の理由、そしてこの高騰がいつまで続くのかを展望してみたいと思います。
目次
マンション価格高騰事情
2022年は首都圏など大都市圏におけるマンション価格の高騰が顕著な年となりました。実際のところどの程度高騰しているのかについて、データを交えて解説します。
2022年のマンション価格事情
株式会社不動産経済研究所が定期的に発表しているマンション価格に関するレポートの2022年7月版によると、首都圏の新築マンションは平均価格が6,379万円、平方メートル単価は96.2万円となりました。前月比ではやや下落しているものの、新築マンションの価格が6,000万円台というのは、多くの人が「高い」と感じる水準です。
さらなる価格高騰に今すぐ拍車がかかるといった状況はないように見えますが、マンション価格が高値圏にあることは間違いないでしょう。首都圏の価格高騰がとても目立っていますが、同様の傾向は関西など他の大都市圏にも見られます。
特に高騰しているのは区分マンション
不動産にはさまざまな種類があります。マンションはその中にある1つのカテゴリーですが、マンションの中でも区分マンションの価格高騰が顕著です。こちらは国土交通省が調査、発表した不動産価格指数のグラフですが、このグラフにも区分マンションの価格高騰傾向が如実に表れています。
このグラフにある緑色の線が区分マンションです。2012年の終わり頃から右肩上がりの上昇を続け、2021年以降はさらに強い上昇となっています。住宅地や戸建て住宅は横ばい傾向であることと比較すると、区分マンションだけが突出して高騰している傾向が見て取れます。
大都市圏ではマンションの供給数が多く、またマンションに住みたいと考える人が多いことが区分マンションの市況を活性化させています。さらに、不動産投資においては区分マンションを選択する投資家が多いため、投資目的でのマンション需要も区分マンションの価格高騰につながっています。
マンション価格の高騰はピークアウト?
不動産経済研究所のレポートにもあるように、マンション価格は高騰しているものの高止まりとなっており、2022年には少し下落する傾向も見られます。この傾向をそのまま解釈すると、マンションの価格高騰はすでにピークアウトしている可能性があります。
そのことを示唆するデータがあります。こちらは三菱UFJ不動産販売が分析、発表したレポートによる専有面積帯別の中古マンション価格推移です。
ここで注目したいのは、30平方メートル未満の小さな物件だけが他の面積クラスのマンションと異なる値動きになっていることです。30平方メートル未満のマンションはワンルームマンションであると予想できますが、ワンルームマンションは投資目的で購入する人の多い面積クラスです。少なくとも中古マンション市場ではワンルームマンションだけが一時的に価格高騰が一段落し、ピークアウトの様相を呈していることが分かります。
しかし、このままマンション価格が下落トレンドに転じて高騰も終焉を迎えるかというと、そうとは言い切れない部分があります。インフレの進行や海外勢の旺盛な買い意欲を踏まえると、東京など大都市圏のマンション価格全体は高騰したまま横ばいといった状況が続きそうです。
マンション価格が高騰している理由
そもそも、なぜマンション価格が高騰しているのか?この素朴な疑問を持つ人は多いと思います。ここでは、マンション価格高騰の原因として考えられるものを5つの項目で解説します。
新築マンションの供給不足
モノの価格は需要と供給のバランスで決まります。マンションも例外ではないので、需要が供給を上回ると価格は高騰しやすくなります。新築マンション新築マンションの供給数にそれほど変化はなかったのですが、2020年の上期だけはコロナ禍の影響もあって供給数が急減しています。それまでは供給数が安定していたことを考えると、同じ需要がある中で供給だけが急減すると急激な価格上昇につながりやすくなります。
先ほど区分マンションの価格高騰が2021年から加速していると述べましたが、その値動きには2020年の供給不足も関わっていると考えられます。
低金利
日本は「異次元の金融緩和」を継続している国です。金融緩和を端的に説明すると貨幣を大量に発行して市中に供給することなので、金融緩和を続けているとカネ余りの傾向が強まります。
その一方で、欧米などの主要国はインフレ抑制のために相次いで金融引き締めを行っており、そのために政策金利を上げている状況にあります。このように、日本と欧米主要国とでは、全く異なる金融政策がとられています。
超低金利が続いている限り、日本はお金を借りやすい国であり続けます。しかし、世界全体がインフレの傾向を強めている中で日本だけが別世界であり続ける可能性は低く、すでに日本でもインフレの影が見え隠れしています。
インフレの傾向が強まってくるとローンの金利も上昇するため、超低金利のうちにローンを組んでマンションを買っておこうと考える人が多くなります。その結果、需要が増大してマンションの価格を高騰させる一因となっています。
海外勢の旺盛な需要
2022年は円相場が歴史的な円安水準となっており、外貨で日本の資産を買うのに絶好のチャンスが到来しています。その傾向は不動産市場にも波及しており、海外勢が日本の不動産に熱い視線を送っています。その中でも中国人が日本の不動産を「爆買い」していると言われており、円安や中国国内の先行き不安なども相まったこうした投資熱もマンション価格高騰に「貢献」しているのは間違いないでしょう。
日本ではマンションが高騰していると感じる人が多いと思いますが、世界的に見ると日本の不動産にはまだまだ割安感があると感じる海外の投資家も多く、こうした勢力が需要を押し上げ、マンション価格を高騰させている部分があります。
建築コストの増大
インフレやコロナ禍、戦争によるサプライチェーンへの影響が重なってあらゆるモノの価格が上昇しています。建築資材の価格も上昇しているため、それがマンションの価格に転嫁されています。 また、人手不足によって上昇している人件費もマンション価格に転嫁されているため、これらの構造的なコスト増は市場での需給とは関係なくマンション価格を押し上げます。
高額物件への需要増
6,000万円台で高止まりしている新築マンションを購入できるのは、いったいどんな人なのかと思った人もいるかもしれません。日本経済社が行った「第28回大規模マンション購入者調査」では、6,000万円以上の高額不動産を購入した人のうち、40歳未満の占める比率が増加していることが明らかになりました。
さらに世帯年収が1,000万円を超えるパワーカップルと呼ばれる人たちの比率が5年前の前回調査よりも約10ポイントも上昇しており、若い世代の中にもパワーカップルのように高い購買力を持っている人たちが増えていることが分かります。このようにマンションの価格が高くても購入できる人が増えているのであれば、これも高止まりの要因になります。
マンション価格の高騰はいつまで続く?
それでは、このマンション価格の高騰はいつまで続くのでしょうか。2022年時点での不動産市場や今後の見通しを交えて展望してみましょう。
マンション価格の高騰は今後も続く見通し
どんな相場でも永久に上昇し続けることはありませんし、高止まりしている相場もいつかは収束して価格の下落に転じる局面がやってきます。しかし、2022年時点の不動産市場にはマンションの価格が高騰する条件が揃い過ぎているので、当面は高騰が続くと見るのが妥当です。
逆に、ここからさらに価格が大きく上昇していくのかというと、その兆候も見られないため、やはり 高騰するものの高止まりが続く可能性が高いと見るべきでしょう。
マンション価格の高騰が続くと予測する根拠
先ほどマンションの価格が高騰する条件が揃い過ぎていると述べました。その条件は、主に3つあります。
低金利の継続
日本の金融当局は今後も大規模金融緩和を継続すると明言しており、当面は超低金利が続きます。 金利が低い間にローンを組んでマンションを買っておこうという意欲が旺盛なうちは、需給のバランスを考えてもマンションの価格は下がりにくいでしょう。
旺盛な需要は健在
パワーカップルに代表されるように、価格が高くてもマンションを購入できる人は増えています。こちらは公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が発表した中古不動産の市場動向レポートにある、2020年8月から2022年8月までの首都圏中古マンション件数の推移グラフです。
注目したいのは、赤い棒グラフの部分です。こちらは成約件数を示していますが、マンション価格が高騰している時期にあっても成約件数は堅調に推移しているのが分かります。 価格が高騰している中でも順調に成約しており、高騰していても需給のバランスが保たれています。
材料費、人件費の高騰は続く
材料費や人件費の高騰は、不動産市場とは無関係の要因です。世界的なインフレ傾向は簡単に収束しないでしょうし、戦争などの地政学リスクが高い状態は続くでしょう。 日本は材料のほとんどを輸入に依存しているため、建築費の高騰も続くと考えるのが自然です。
また、建設業界の人手不足は深刻さを増しており、人件費の高騰は今後さらに進む見通しです。これらの構造的な要因が簡単に変わることはないため、マンション価格を高騰させる要因として横たわり続けます。
マンション価格の高騰が終わる時
どんなに高騰しているモノであっても、いつかはその高騰が終焉する時がきます。今後考えられる「高騰終了要因」は、主に2つあります。1つ目は、金融緩和の終了による金利上昇です。おそらく金利が上昇する前にはその兆候がはっきりと表れるため、駆け込み需要が発生した後で需要が急減し、マンション価格の下落につながるでしょう。
もう1つの下落要因は、 人口減少の進行による空き家の増加です。すでに日本全国には膨大な空き家が存在し、2018年時点でその数は約848万戸であると総務省が発表しています。今後も空き家は増え続けると見られており、これが首都圏などの大都市圏にも波及するとマンション価格も下落基調に転じるでしょう。しかし、今も人口の流入が続いている首都圏などでは先の話です。
マンションを買うべきか、待つべきか
今は高騰しているマンションもいつかは価格が下落して買いやすくなるのであれば、その時を待つべきか?それとも今買うべきか?この判断はどうするべきでしょうか。
高騰が収束するのを待っても状況がそれほど変わるわけではないため、購入意欲があるのであれば今買うべきであるというのが当記事の結論です。なぜそう結論づけたのか、その根拠について解説します。
マンションが高いと、家賃も高い
投資目的でマンションを購入する場合、今買うと価格は高いですが、それは市場全体の傾向なので賃貸物件としての家賃も高くなります。
マンション経営の利回りは年間の家賃収入を購入費用で割って求めるため、購入費用と家賃の両方が高くなれば利回りに大きな影響は生じません。マンション価格と家賃相場が比例している以上、いつ買っても条件はそれほど変わらないということです。
マンション購入のチャンスが到来している
マンション価格高騰の一因として、超低金利を挙げました。これはつまり多くの人がマンションを購入するチャンスだと考えているわけで、もちろんそのチャンスは当記事をお読みになっているあなたにも当てはまります。
主要国の中で唯一ともいえる超低金利が今後も続く可能性は低く、インフレの足音が近づいている2022年から2023年はマンション購入のラストチャンスとなるかもしれません。
インフレが進行すると現物資産に有利になる
世界的に進行しているインフレは、やがて日本にも本格的に波及するでしょう。インフレでは貨幣の価値が下がるため、現物資産の価値が相対的に上昇します。インフレが進行すると現物資産であるマンションの価値が相対的に高くなるため、長期目線での資産形成において有利になります。
まとめ
マンション価格がどれほど高騰しているのか、そしてなぜ高騰しているのかといった解説に続いて、最終的な結論として「今買うべきか、待つべきか」という問いに1つの結論を導きました。
マンション価格の高騰が収束する気配が見当たらない以上、いつまで待っていても状況は変わりません。本文で述べたように、超低金利でインフレ前夜の今はマンションを購入するラストチャンスかもしれません。
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