老後資金はいくら必要?老後のお金の不安を解消する5つの方法
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田中 タスク
田中 タスク
エンジニアやWeb制作などを経験した後にFXと出会い、それを契機に投資系ライターとしての活動を開始。自身もさまざまな投資を経験し、その経験をいかした執筆活動に強みをもつ。長期的な視野にたって資産運用の重要性を強く感じ、不動産投資を含む中長期的な投資の生きた情報を発信するための記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。

マンション経営とREITは、いずれも不動産に対する投資です。それなら初心者はREITから始めるのがよいのではないかと考える人もいるのですが、実はこの両者は似て非なるものです。REITそのものは銘柄を選べば優良な投資商品でもあるので、もちろんREITへの投資そのものを否定するものではありません。しかし、仮にREITに投資するのであっても現物のマンション経営とREIT投資の違いを理解しておくことは重要です。今回はそのために、現物の投資であるマンション経営とREIT投資の違いについて解説します。

REITとマンション経営が根本的に異なる3つの理由

まずは、「REIT」を知らない方のために簡単にREITとは何かを解説します。

REIT(リート)とは、Real Estate Investment Trustの略で、不動産投資信託のことをいいます。投資家から資金を集め、マンション、商業施設、ビルなどの不動産を購入したり運用したりします。それによって得られる売買益や賃貸収入を投資家に分配するのがREITといわれる商品になります。

マンション経営とREITはともに同じく不動産を対象とした投資でありながら大きな違いがあります。その違いを3つのポイントに整理すると以下のようになります。

REITは融資を利用できない

マンション経営は現物の不動産を購入し、そこからの収入を得る「事業」です。不動産投資の一種であることから、一般的には「投資」というニュアンスで解釈されがちなのですが、マンション経営は株やFXなどの投資とは根本的に異なる事業といったほうが正確です。

基本的に株を購入するのに銀行などの金融機関から融資を受けることはできませんが、マンション経営では融資を利用することができます。物件の購入費用のうち一部を自己資金として用意するだけで、あとは融資で資金を調達することができるのです。

マンション経営のこうしたメリットはレバレッジ効果と呼ばれています。レバレッジとは「てこ」のことです。原資が少なくとも、融資を受けることで資金を調達し、マンションを購入することが可能になるため、レバレッジ効果はマンション経営のとても大きなメリットだといえます。

REITは節税にならない

現物不動産を所有すると減価償却による経費計上や赤字収支になったときの損益通算など、節税効果が期待できます。投資家のなかにはこの節税効果を目的として物件を購入する人もいるので、マンション経営のメリットの1つに数えられています。

これに対してREITは現物不動産を所有するわけではないため、こうした節税効果はありません。また、REITによる利益への課税は税率が一律で20.315%です※。利益額によって税率が異なるマンション経営と比べると、節税の余地があまりないといえます。

※ただし、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などを利用してREITを運用すると運用益は非課税になります。

REITは儲けが薄い

REITは不動産で運用をしている投資信託なので、金融商品の一種です。東証に上場しているREITの銘柄群はJ-REITと呼ばれますが、このJ-REITの分配金利回りを平均すると3%台です(2021年5月現在)。マンション経営の場合は物件によってばらつきが大きいものの、これを上回る利回りが出ることもあります。

中長期的な視野で比較するとマンション経営は融資を完済することによって利回りが向上しますが、REITにはそういった概念がないため、投資期間が長くなるほどマンション経営の優位性が高まるといっていいでしょう。

REITでは得られず、マンション経営では得られるメリット

REITは間接的に不動産への投資が可能になりますが、あくまでも不動産を所有しているのは運用主体である投資法人です。投資家は不動産の現物を所有するわけではないので、運用がうまくいかないと判断した場合は持ち続けるか手放すかの選択肢しかありません。

現物を所有するマンション経営の場合は、最終的に「自分が住む」という選択肢が加わります。いつかは自分が住むことを前提にマンションを購入する人もいるため、様々な出口戦略を確保しておくことできます。

マンション経営は手出しが少なく運用できる

先ほど述べたように、マンション経営では融資を利用できるためレバレッジ効果があります。これは言い換えると他人資本を活用して自分の資産を増やすことでもあるので、資産形成のスピードも速くなります。

FIRE(Financial Independence Retire Early/経済的自立、早期リタイア)といって、投資による運用収益により経済的自立を達成し、会社を早期リタイアした人のなかには不動産による資産形成の恩恵を受けている人が多いといわれています。しかしREIT投資の場合、レバレッジ効果が見込めないため、どうしてもFIREを達成するには時間が掛かってしまいます。

また現物の不動産を所有することは、社会的な信用を高めることにもつながります。区分マンション1戸から始めた投資家であっても、やがて2戸目、3戸目といったように投資規模を拡大していく際には融資を利用するケースが多くなります。

その融資に、すでに所有している不動産を担保として活用することもできます。REITをどれだけ保有していても担保価値はないので、不動産を所有することで得られる特有のメリットだといえます。

REIT特有のメリット

マンション経営の一方で、REITにも特有のメリットがあります。投資家にとって最も大きなメリットといえるのは、「負担が少ない(楽である)」ことでしょう。

REITは証券会社の口座を通じて買い、それを保有するだけです。それだけで定期的に分配金を受け取ることができるのでとても手軽で楽ですし、投資を終了するのもREITを売却するだけなので非常に簡単です。

マンション経営の場合は自己資金額や融資の条件、購入時に諸費用によって開始当初の収支が赤字になることがあるのですが、REITはそもそも融資を利用して買うことを前提にしていないため、開始当初に大きな赤字になりにくいです。ただしREITは金融商品なので価格の変動によって常に値下がりのリスクがあります。

この価格変動は、逆に値上がりすることで利益を上げられる可能性もあります。特にJ-REITは上場しているため東証の取引時間内であれば刻一刻と価格が変動します。これを利用して短期売買をして利益を狙うこともできますが、こうした機動的な運用はマンション経営にはないものです。

それぞれのメリットをいかして投資判断を

ここまでマンション経営とREITについて、似て非なるものであるとして違いを解説してきました。すべてお読みになった方の多くは、同じことをお考えになったのではないでしょうか。双方に特有のメリットがあるので、うまく使い分けるのがいいでしょう。

どちらか一方の投資をしたらもう一方に参入できないという法律はありません。リスク分散や経験値獲得の観点からも両方に投資をするのも有効な方法です。

マンション経営は基本的に住居向けの不動産による資産運用ですが、REITにはそれ以外にも商業施設や物流施設など多様な性格をもった銘柄があります。住居向けの不動産だけで運用することにリスクを感じる方は、REITのなかでも住居向け以外の不動産で運用している銘柄を保有し、リスクヘッジに活用することも有効な手法といえます。

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