企業が資金を調達する方法には、実にさまざまな方法があり時代の流れに伴い従来の方法だけでなく新たな資金調達手法が登場し続けています。例えばクラウドファンディングはその中の一つです。クラウドファンディング自体は従来からあるものですが、クラウドファンディングの中でも株式投資型クラウドファンディングについては耳慣れない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は新しい資金調達手法として「株式投資型クラウドファンディング」を紹介します。特に投資を考えている人に向けて「どんな仕組みなのか」「メリットやリスク」「注意点」などについて解説していくため、しっかりとマスターしたうえで投資判断に役立てましょう。
株式投資型クラウドファンディングとは
資金を必要としている人がネット上で資金を募り出資者や投資家がそれに応じて資金を提供する仕組みがクラウドファンディングです。購入型クラウドファンディングの場合、事業者はその資金を活用してさまざまなプロジェクトを実行しリターンを出資者へ提供します。寄付型クラウドファンディングは、社会貢献事業など収益を目的としないプロジェクトへの出資となりリターンはありません。
株式投資型クラウドファンディングは前者のリターンが前提になっているタイプで見返りとして提供されるのはその事業者の未公開株式です。
通常の株式投資との違い
出資者が資金を出して株式を受け取るのであれば「通常の株式投資と変わらないのでは?」と感じている人もいるかもしれません。通常の株式投資との最大の違いは、提供される見返りが未公開株式である点です。未公開株式を発行している企業は非上場なので一般的に投資家が証券取引所などで簡単に入手することはできません。
そのため個人投資家が未公開株式を入手する方法は限られてきましたがそこに新たな流通モデルを実現したのが株式投資型クラウドファンディングです。
株式投資型クラウドファンディングのメリット
株式投資型クラウドファンディングのメリットは、主に3つあります。
1.入手困難な未公開株式への投資が容易になる
未公開というだけあって非上場企業の株式を購入する機会は限られています。特に個人投資家はその機会が少なく不公平感を感じていた人は多かったかもしれません。株式投資型クラウドファンディングはネット上で簡単に出資ができるため、未公開株式への投資機会を広げました。
2.魅力的なスタートアップ企業に早期投資が可能になる
「有望なアイディアやビジネスモデルを持つスタートアップ企業やベンチャー企業に出資したい」と考える投資家は多いでしょう。しかし未公開のままだとその機会がほとんどない状態でした。株式投資型クラウドファンディングであればIPO(新規公開株式)よりも早い段階から投資機会が得られるため、将来の大化け銘柄に出会える可能性があります。
3.税制の優遇がある
設立間もない企業への投資を促進することを目的した「エンジェル税制」という優遇措置があります。「ベンチャー企業への投資額を所得から控除できる」「未公開株式の売却時の損失を繰り越せる」といったことが主な骨子です。これらは株式投資型クラウドファンディングにも適用されます。
株式投資型クラウドファンディングの注意点
次に株式投資型クラウドファンディングのリスクや注意点についても解説しておきましょう。主に留意しておくべきことは以下の3点です。
1.投資金額に上限がある
投資家保護の観点から株式投資型クラウドファンディングには年間投資金額の上限が定められています。企業が年間に調達できる資金は1億円未満、そして投資家が投資できる上限は年間50万円までです。投資家目線で考えると年間で50万円までという金額は少なく感じるかもしれません。
2.流動性が低い
株式投資型クラウドファンディングの見返りとして受け取るのは、未公開株式です。上場されていない株式のため、手に入れることはできても売却する方法が限られてしまいます。多くの投資家はIPOによって公開されたときの大化けを期待することになるでしょう。しかし株式が必ず公開される保証はなく最悪な場合は経営が行き詰まって倒産してしまう可能性もあります。
3.実績が少ない
株式投資型クラウドファンディングはまだまだ歴史が浅く実績が少ないことも不安定要素です。日本国内初の案件が募集開始になったのは2017年のため2020年時点でもまだ3年となっています。今後案件数が積み重なることで実績も増えていく可能性は高いですが手探り状態の側面があることは否めません。
まとめ
企業にとって血液ともいえる資金の調達は、経営上きわめて重要な課題といえるでしょう。「いかに企業と投資家をうまくつなぎ両者がメリットを享受できる仕組みを作るか」という視点で誕生したのが株式投資型クラウドファンディングです。資金調達の可能性を広げて今後投資家にとって魅力的な選択肢となるか注目していきましょう。
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