最終更新日:2023/09/27
 
マンション経営に頭金はいくら必要?知っておきたい自己資金と融資の話
(画像=sommart sombutwanitkul/Shutterstock.com)
丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

不動産投資をするのであれば、融資の活用が欠かせません。融資を購入価格のどの割合まで受けるかによって、その後の戦略が大きく変わってきます。

また、不動産投資の戦略を考える上で「頭金」という言葉もキーワードになります。マンション経営を行うためには頭金として数百万円や数千万円貯めないといけないというイメージをお持ちの方もいますが、決してそんなことはありません。

本記事では、自己資金(頭金)と融資の関係についてどのように考えるべきかを解説し、併せて物件タイプ別の頭金の目安や諸費用、頭金を準備するメリット・デメリットについて紹介します。

目次

  1. 1.不動産投資の頭金はいくら必要?
    1. 1-1.新築区分マンションの場合
    2. 1-2.新築一棟マンションの場合
    3. 1-3.中古区分マンションの場合
    4. 1-4.中古一棟マンションの場合
  2. 2.不動産投資で頭金を用意するメリット・デメリット
    1. 2-1.頭金を用意するメリット
    2. 2-2.頭金を用意するデメリット
  3. 3.頭金を用意しなくても不動産投資は可能
    1. 3-1.購入時にかかる諸費用
    2. 3-2.頭金を用意できないとどうなる?
  4. 4.融資条件は「属性」によって異なる
  5. 5.自己資金が少なくても融資でカバーできる不動産投資

1.不動産投資の頭金はいくら必要?

不動産投資に頭金はいくら必要?知っておきたい自己資金と融資の話
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

不動産投資では、物件購入に10~30%程度の頭金を入れるのが一般的です。頭金を入れることによって融資審査で有利になります。首都圏マンションの相場を基準にした物件価格を基に、物件タイプ別の頭金の目安を見てみましょう。

1-1.新築区分マンションの場合

不動産経済研究所の調べによると、2022年9月の首都圏新築区分マンション平均価格は、東京23区8,758万円、東京都下5,723万円、神奈川県5,378万円、埼玉県5,254万円、千葉県4,169万円、1都3県の平均で6,653万円となっています。物件価格相場ごとの頭金の目安は下表のとおりです。

物件価格頭金10%頭金15%頭金20%頭金25%頭金30%
4,000万円400万円600万円800万円1,000万円1,200万円
5,000万円500万円750万円1,000万円1,250万円1,500万円
6,000万円600万円900万円1,200万円1,500万円1,800万円
7,000万円700万円1,050万円1,400万円1,750万円2,100万円
8,000万円800万円1,200万円1,600万円2,000万円2,400万円

1-2.新築一棟マンションの場合

新築一棟マンションは物件そのものが少なく、一例として2023年4月に完成予定の東京都渋谷区(JR代々木駅歩8分)の物件価格(15戸)は5億9,080万円となっています。

後述する中古一棟マンションが1~3億円程度で購入できることを考えると、好立地の新築一棟マンションは2倍程度の予算を立てる必要がありそうです。下表のように首都圏で一棟マンションを買うには少なくとも数千万円単位の頭金が必要です。

物件価格頭金10%頭金15%頭金20%頭金25%頭金30%
4億円4,000万円6,000万円8,000万円1億円1.2億円
5億円5,000万円7,500万円1億円1.25億円1.5億円
6億円6,000万円9,000万円1.2億円1.5億円1.8億円
7億円7,000万円1.05億円1.4億円1.75億円2.1億円
8億円8,000万円1.2億円1.6億円2億円2.4億円

1-3.中古区分マンションの場合

東京カンテイの「市況レポート」によると、2022年9月の首都圏中古区分マンションの平均価格は、東京都6,380万円、神奈川県3,581万円、埼玉県2,937万円、千葉県2,638万円、首都圏平均4,777万円となっています。

やはり東京都が突出して高く、首都圏平均でも17ヵ月連続で上昇しています。ただし、中古区分マンションの場合は数百万円単位の頭金で購入できます。

物件価格頭金10%頭金15%頭金20%頭金25%頭金30%
2,500万円250万円375万円500万円625万円750万円
3,500万円350万円525万円700万円875万円1,050万円
4,500万円450万円675万円900万円1,125万円1,350万円
5,500万円550万円825万円1,100万円1,375万円1,650万円
6,500万円650万円975万円1,300万円1,625万円1,950万円

1-4.中古一棟マンションの場合

首都圏中古一棟マンションの価格は不動産ポータルサイトの売り出し価格で見ると、1億円台~2億円台が多い傾向です。3億円まで考えておけばかなりの数の物件から選択可能でしょう。ただし、1,000万円以上の頭金が必要です。

物件価格頭金10%頭金15%頭金20%頭金25%頭金30%
1億円1,000万円1,500万円2,000万円2,500万円3,000万円
1.5億円1,500万円2,250万円3,000万円3,750万円4,500万円
2億円2,000万円3,000万円4,000万円5,000万円6,000万円
2.5億円2,500万円3,750万円5,000万円6,250万円7,500万円
3億円3,000万円4,500万円6,000万円7,500万円9,000万円

2.不動産投資で頭金を用意するメリット・デメリット

不動産投資に頭金はいくら必要?知っておきたい自己資金と融資の話
(画像=takasu/stock.adobe.com)

不動産投資で頭金を用意するのは、メリットばかりでなくデメリットもあります。頭金を入れたことで運営に支障が出ることがないように、資金計画に合わせて頭金の有無や金額を決定することが大事です。

2-1.頭金を用意するメリット

頭金を用意する最大のメリットは、融資を受ける金額が減るため月々のローン返済額が少なくなることです。例えば、年収500万円(月収41万6,667円)の人が頭金なしで5,000万円の融資を受けて物件を購入する場合と、頭金1,000万円を入れて4,000万円の融資を受けて購入する場合の返済負担率の違いは以下のようになります。

【融資条件】金利2.0%、元利均等払い、返済期間35年

融資金額毎月の返済額返済負担率※総返済額
5,000万円16万5,631円39.75%6,956万4,969円
4,000万円13万2,505円31.80%5,565万1,862円
差額3万3,126円7.95%1,391万3,107円
※年収500万円の場合

毎月の返済額に3万円以上の差があるので、頭金を入れることでキャッシュフローを黒字化できる可能性が高くなります。また、総支払額で1,400万円近く少なくなるので、頭金を入れることの威力がわかります。

もう1つのメリットは頭金を入れることで金融機関の融資審査に通りやすくなることです。頭金を多く入れるほど融資を受ける金額が少なくなるので、仮に年収が基準に満たなくても融資のハードルが下がる場合があります。

ローンの年収に対する返済負担率は35%が限度といわれていますので、上記の例ではフルローンの場とだと審査に通らない可能性が高いです。頭金を入れることで限度内に収まり審査に通る可能性が出てきます。

2-2.頭金を用意するデメリット

頭金を用意するデメリットは、運転資金に余裕がなくなり、修繕など急な出費に対応できなくなる場合があることです。例えば5,000万円の物件を購入するのに20%の頭金を用意する場合は1,000万円の自己資金が必要になります。

運転資金が底をついて空室が出れば給与収入から補填することになり、生活が不安定になることも考えられます。単に頭金を多く入れれば良いというものではなく、運転資金とのバランスが取れた資金計画が求められます。

3.頭金を用意しなくても不動産投資は可能

不動産投資に頭金はいくら必要?知っておきたい自己資金と融資の話
(画像=jirsak/stock.adobe.com)

マンションを購入する場合に、自宅用であっても投資用であっても自己資金100%というケースはほとんどありません。多くの人は、金融機関から融資を受けてマンションを購入します。投資用マンションであれば、賃貸に出して家賃収入を獲得し、そこからローン返済を続けるというのが一般的なやり方です。

この際、頭金をいくら払うのか常に議論の的となりますが、そもそも頭金を用意しなくても不動産投資を行うこと自体は可能です。

また、不動産投資を始める際は、次のような諸費用もかかりますが、これらの費用も含めて融資でまかなうことも可能ではあります。これをオーバーローンと呼びます。フルローンやオーバーローンが実現すれば、頭金なしでも物件を購入して不動産の運営を開始できるのです。

3-1.購入時にかかる諸費用

不動産を購入するとき、購入代金に加えて諸費用がかかってきます。購入時の諸費用としては、以下が挙げられます。

3-1-1.仲介手数料(新築物件の場合は手数料無料)

中古マンションを購入する場合は、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料の計算式(速算式)は、「取引額×3%+6万円+消費税」です。例えば、3,000万円の物件を購入した場合の仲介手数料は、3,000万円×0.03+6万円×1.1=105万6,000円となります。

3-1-2.印紙税

ローン契約書や売買契約書を締結する際には、印紙税を納付する必要があります。印紙を貼付する形で納付しますが、物件価格によって下表のように税額が決まっています。

▽印紙税税額表(不動産)

記載された契約金額税額
1万円未満非課税
10万円以下200円
10万円を超え50万円以下のもの400円
50万円を超え100万円以下のもの1,000円
100万円を超え500万円以下のもの2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの2万円
5千万円を超え1億円以下のもの6万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円
5億円を超え10億円以下のもの20万円
10億円を超え50億円以下のもの40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

3-1-3.登録免許税

不動産を購入する際には、不動産登記にかかる登録免許税がかかります。税率は住宅用新築物件では建物の所有権保存登記の場合0.15%(軽減税率)です課税標準は物件価格ではなく、固定資産税評価額となります。

3-1-4.司法書士報酬(依頼する場合のみ)

不動産登記は手間がかかるため、司法書士に依頼する人もいるでしょう。依頼する場合は司法書士報酬がかかります。報酬額は司法書士事務所によって異なり、登記手続きや登録免許税の実費を合わせ10万円程度が相場になります。

3-1-5.固定資産税・都市計画税

1月1日から引き渡しまでの固定資産税・都市計画税は日割りで売主が負担します。税率は固定資産税が物件の固定資産税評価額の1.4%、都市計画税が最大0.3%です。

3-1-6.不動産投資ローン事務手数料

不動産投資ローンを組む場合、金融機関に事務手数料を支払う必要があります。手数料には定額制と定率制があり、定額制は3万円程度、定率制は借入金額の1~3%が相場です。

3-1-7.不動産投資ローン保証料

不動産投資ローンを組む際には、ローン保証会社に保証人になってもらうのが一般的で、利用する場合は保証料を支払います。支払い方法には、一括支払いと金利に上乗せして支払う方法があります。一括の場合は融資総額の2%程度、金利上乗せの場合は0.2~0.3%程度が目安です。

3-2.頭金を用意できないとどうなる?

頭金をたくさん払えばローンの返済額が小さくなる代わりに、貯金が一気になくなってしまい生活が苦しくなるリスクがあります。逆に頭金ゼロで物件を購入すると、自己資金を他の用途に使用できる代わりに、ローン返済額が大きくなります。

もし頭金を用意できないとどうなるのでしょうか。頭金の分だけ自己資金を貯めないと不動産投資ができないかというと、そんなことはありません。購入した物件自体を担保としてフルローン(購入価格と同額のローン)を組むことも可能であるため、自己資金が少なくても不動産投資をスタートすることはできます。ただし、フルローンにするには条件があります。

頭金ゼロであればローン返済額が大きくなるため、入居者のつきやすい物件を購入することが大前提となります。そもそも入居者がつきやすく物件価値の高い物件でないと、金融機関も頭金ゼロのフルローンを承認してくれることはほぼないでしょう。

そのためにも、優良物件を確実に保有する不動産会社を選定することが重要です。初心者向けの不動産投資セミナーに参加してみたり、直接担当者に話を聞いてみたりして、 質のよい物件を保有する信頼性の高い会社を選ぶようにしてください。

4.融資条件は「属性」によって異なる

不動産投資に頭金はいくら必要?知っておきたい自己資金と融資の話
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いくら融資してもらえるのかは、属性によって異なります。属性とは、具体的には職業や勤続年数、年収、資産額などの総称です。金融機関は融資条件を明示しているわけではありませんので、実際にこうした指標を判断材料にしているかどうかは確かではありません。しかしながら、ローンの返済能力を判断するにはこうした属性が有効と考えられています。

例えば、大手企業や公務員の場合、倒産や収入激減のリスクが極めて小さいため、融資の確率が高まります。さらに勤続年数が長く、年収や資産額が多いとより評価が高まるでしょう。逆に自営業者や個人事業主、中小企業の代表などの場合、地位が不安定であると判断されてしまい審査で不利になる可能性があります。

また、物件自体の価値も重要です。前述の通り、入居者がつきやすくて価値が下がりにくいと考えられる物件であれば、担保価値が高く頭金もゼロに近い融資を受けられる可能性が高まります。だからこそ優良物件を選ぶこと、ひいては優良物件を抱える不動産会社を選ぶことがとても重要なのです。

5.自己資金が少なくても融資でカバーできる不動産投資

不動産投資に頭金はいくら必要?知っておきたい自己資金と融資の話
(画像=Freedomz/stock.adobe.com)

不動産投資の特徴は、融資を活用して効率よく資産形成を実現できる点にあります。決して自己資金が少ないから不動産投資ができないということはなく、融資してもらいやすい物件を選ぶことで自己資金の少なさを十分にカバーできるわけです。

先に紹介したように、物件タイプによって必要な頭金の水準が異なるので、自分が用意できる頭金でどの物件タイプを購入できるかシミュレーションしてみることが大事です。

もちろん、どんな条件でも必ず融資を受けられるとは限りません。信頼できる不動産会社を選び、入居者のつきやすい物件を購入することが重要です。自己資金をコツコツ貯めるよりも、まずはセミナーや個別相談などで不動産会社へアクセスしてみてはいかがでしょうか。

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