近年、日本を訪問する外国人観光客が増えています。さらに2020年は国際的なイベントである「東京2020オリンピック・パラリンピック」が開催され、国内外での経済的な盛り上がりが期待されており、さらなる飛躍の年となりそうです。
一方で、五輪後の急激な景気の後退、株価の下落も懸念されています。不動産関連株は五輪前後にどのような動きとなるのでしょうか。中長期的な見通しも含め、2020年前後の不動産関連株について俯瞰してみましょう。
気になる不動産市況の現状
はじめに不動産市況の現状について確認しておきましょう。現在、日本の景気は堅調に推移しています。米国経済が好調なのに加え、政府・日銀による積極的な金融緩和政策が継続されていることもあり、この状況は今後も続いていくと予想されます。
不動産市況においても同様です。少子化は依然として進んでいるものの、新設住宅着工数が大幅に減少するなどの傾向は未だ見られていません。
【画像引用元】 国土交通省:「新設住宅着工数」
世界の経済情勢ですが、現状、米国と中国の貿易戦争が一段落している点はプラスにはたらくと思われます。また、米国経済が堅調なのも日本にとって好ましい状況といえます。
足元では、地方で広がる空き家問題など不動産市況の低迷につながる動きもありますが、少なくとも五輪景気の本番となる2020年は外国人観光客による下支えが期待できます。問題はやはり、五輪後にありそうです。
2020年の不動産関連株について
2020年の不動産関連株について掘り下げるために、今後の不動産市況に大きく影響するであろう「宿泊施設」「オフィス」「一般住宅」という3つの観点から、詳細を見ていきましょう。
需要が増加する「宿泊施設」と宿泊関連事業者
「観光立国」としての事業推進を背景に、訪日外国人の数はうなぎのぼりで増えています。観光庁の資料によると、訪日外国人旅行者数は2012年から2018年の6年間で3.7倍まで増加しており、五輪が開催される2020年はさらに増えると予想されています。その結果、観光地等では宿泊施設が逼迫しています。
【画像引用元】 観光庁:「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」
具体的な宿泊施設の動向について見てみると、ホテルや簡易宿所の数が増えている一方、旅館や下宿は減少傾向にあり、宿泊施設としての選択肢が絞られてきているようです。期待されるのは、外国人旅行者を含む観光客のホテル需要がどこまで伸びるかではないでしょうか。
【画像引用元】 観光庁:「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」
堅調な「オフィス」のニーズ
次に、オフィスのニーズはどうでしょうか。全国のオフィス賃貸需要を見てみると、東京を中心に、すべての主要都市で空室率が減少しています。つまり、それだけオフィスが求められているということと考えられます。
【画像引用元】 国土交通省:「不動産市場動向マンスリーレポート」
事実、需要の高まりを反映し、オフィスビルの平均募集賃料は上昇しています。大きく伸びているのはやはり東京で、今後もしばらくは同様の傾向が続くと見込まれています。
【画像引用元】 国土交通省:「不動産市場動向マンスリーレポート」
「一般住宅」の市場動向|不動産価格指数が伸びている「マンション」
最後に、一般の住宅市場についてはどうでしょうか。とくに、不動産価格指数が右肩上がりで伸びているのは「マンション」です。2013年頃から上昇した価格指数は、他の物件を引き離して大きく上昇しています。
【画像引用元】 国土交通省:「不動産市場動向マンスリーレポート」
一方、首都圏の新設住宅着工数を見てみると、特段に大きな動きは見られません。ただ、人口動態や外国人労働者の増加により変化していく可能性はあります。今後の動向を注視しておきましょう。
【画像引用元】 国土交通省:「不動産市場動向マンスリーレポート」
五輪後の不動産市況を俯瞰しよう
以上のように、オリンピックイヤーである2020年は、日本経済も不動産市況も一定の盛り上がりが見られるといえるでしょう。
しかし、当然のことながらそこには関係各所の“期待”が含まれている点も念頭に置くべきでしょう。五輪の直接的なプラス効果も、東京近郊に限られる可能性が無いとはいいきれません。投資判断として不動産動向を注視するのであれば、扇動的な言葉に惑わされることなく、これまで以上に冷静な視点と判断が求められそうです。
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