住宅ローンにも影響を与える、マイナス金利がもたらすものとは
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丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

景気浮揚策の1つとして導入されたマイナス金利政策が、多方面に影響を与えています。マイナス金利とは何か、また私たちの生活にどのような影響があるかについて解説します。

マイナス金利とは何か

「マイナス金利の意味がわからない」という人は少なくないでしょう。現在、普通預金の金利は年0.001%(三菱UFJ銀行、2019年12月30日現在)とほぼゼロに等しい数字ですが、それでもマイナスではありません。

マイナス金利とは、個人が銀行から受け取る金利のことではなく、銀行が日本銀行に預けている当座預金の一部に導入されている金利を指します。マイナス金利下では、銀行は日銀にお金を預けると、利息を受け取るのではなく、利息を支払うことになります。預金額が大きい銀行にとっては、マイナス0.1%でも大きな負担になります。

日銀にお金を預けると利息を取られるため、銀行は企業や個人にお金を貸して金利収入を得るほうが良いと考え、貸し出しが活発になります。このようにして設備投資や住宅着工などを増やすことで景気を浮揚させ、デフレ脱却に向けて物価の上昇を狙ったのが、マイナス金利政策です。

物価は上昇せず見込み違いに

景気浮揚による物価上昇を狙うマイナス金利政策ですが、日銀が目標に掲げた物価上昇率2.0%に届かなかったことは、政府や日銀にとって誤算でした。

総務省統計局の調査による「全国消費者物価指数」の2018年の総合指数は、前年比1.0%の上昇に留まっています。2016年の-0.1%、2017年の0.5%よりは上昇幅が大きくなってはいますが、目標の2.0%にはほど遠い状況です。

デフレから脱却しつつあるとはいえ、この程度の物価上昇ではマイナス金利政策の転換は難しく、銀行は利ザヤの低い「企業への貸付」以外の融資の道を探さざるを得なくなりました。

カードローン急増が社会問題に

そこで銀行が目をつけたのが、カードローンによる個人への貸付です。長引く低金利下で利ザヤが縮小している銀行にとって、14~15%程度で貸し付けるカードローンは魅力的な商品です。しかも銀行は消費者金融に比べて、金利と総量規制において有利です。

消費者金融の金利が18%程度なのに対し、銀行は14~15%程度。利用者は、借りられるなら銀行で借りるでしょう。総量規制では、貸金業者が利用者の年収の3分の1以上を貸し付けることを禁止していますが、銀行のカードローンは貸金業法の対象外であり、3分の1以上を貸し付けたとしても違法にはならないのです。

これによって銀行のカードローン利用者が急増し、「銀行が消費者金融になった」という批判の声が聞かれるようになりました。これに伴って自己破産件数も増加し、最高裁調べの2018年度自己破産件数は6.2%増と、3年連続で増加しています。全国銀行協会は、金融庁による規制強化を回避するために貸付自粛制度を設けました。これによって銀行カードローン残高の急増はおさまりましたが、自己破産の増加傾向は続いています。

住宅ローンへの影響は?

マイナス金利政策は、住宅ローンにも少なからず影響を与えました。金利の低下によって、住宅ローンの需要が急増したのです。今回のマイナス金利政策が実施されたのは2016年2月16日ですが、「住宅ローン新規貸出金額」は2015年度の13兆9,555億円から、2016年度は17兆1,395億円へ、22.8%も増えました。

国土交通省が発表している「新設住宅着工件数」は、2010年に約77万戸まで落ち込んでいましたが、マイナス金利を導入した2016年に97万戸を記録し、以降も90万戸台を維持しています。マイナス金利下で、銀行が住宅ローン融資に力を入れたのが奏功したのです。

このように、マイナス金利には功罪両面あります。銀行の利ザヤ縮小や、預金金利収入の低下、カードローンの過剰融資というマイナス面はあるものの、住宅購入や不動産投資では低金利が続くことは追い風であり、株式市場は預金よりも魅力のある配当利回りによって、新たな投資を呼び込むことができます。

日本のマイナス金利は当面続きそうですが、この状況を不動産投資のチャンスと捉えることもできるでしょう。

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