どうする?不動産投資ローンの団体信用生命保険
(画像=Pachai Leknettip/Shutterstock.com)
佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

住宅ローンを組む際、団体信用生命保険(団信)への加入が必須と言われた人は多いのではないでしょうか。多くの不動産投資ローンでは任意加入となるため、メリットやデメリットを知っておく必要があります。不動産投資を検討している人は参考にしてください。

任意?必須?加入した場合のコストは

初めに団信について解説しておくと、ローンを支払う人が亡くなったり、高度障害を負ったりして今後の支払いが困難になったときに、残りの債務が免除されるというものです。遺族は負債のない不動産が手に入ります。賃料収入を生む資産を残すことができるわけです。

不動産投資ローンで団信が必須となるケースは、住宅ローンに比べて多くありません。特にオーダーメイドのローンであるプロパーローンの場合は、加入したくてもできないこともあります。「加入は任意」と言われると、迷ってしまうのではないでしょうか。保険は未来に備えるものなので、今の時点では判断しづらいという性質もあります。

加入を必須とする場合、保険料はローン金利に含まれるのが一般的です。そうでない場合は金利に保険料分を上乗せします。加入した場合のコストは2019年10月現在、ローン残高に対して0.3%前後です。仮に2,500万円のローンを組んだ場合、最初の月は6,250円となります。

加入することでトータルの保険料が削減できることも

団信の保険金は直接遺族に支払われるわけではありません。この点が一般的な生命保険とは大きく異なるところです。しかし加入することで、他の保険の代わりになることがあります。生命保険の保険料は一人当たり1.5万円~2万円が平均ですが、月6,250円の団信に加入することで、削減できる可能性があるのです。

不動産投資ローンでは、団信を使うような事態になったとき、家族に残るのはマンションなどの収益不動産です。家族はこのマンションから発生する賃料を生活費の足しにできますし、売却して現金に変えることもできます。

例えば、自分が亡くなったときのため、配偶者を受取人にした1,000万円の終身保険に入っているとします。払込みが65歳までに終わる契約で、保険料は毎月2万円ほどかかります。一方、2,500万円の団信付きローンを組んで買い、20年後に所有者が亡くなったとします。建物の価値が半減したとすると、1,250万円分の資産を残すことができたことになります。終身保険よりもはるかに低い保険料で、より手厚い保障ができるのです。

終身保険との大きな違いは加入期間です。団信はローンを完済すれば契約が終了します。保険自体はいわゆる「掛け捨て」ですが、完済した時点で収入を生む資産を手に入れられるので、実質的に貯蓄型生命保険と同じ効果があります。

相続対策の場合は一考の余地あり

団信に加入するかどうかを検討する際には、相続税も考慮に入れる必要があります。相続対策で不動産投資を始める場合には、加入しないほうが良い場合が多いのです。

相続対策の不動産購入の仕組みを簡単に説明します。相続税は、現金預金や不動産、株式などの資産を、被相続人が亡くなったときの時価で集計し、さらにローンなどの負債を差し引いた「純資産」に対してかかります。遺産相続の際の不動産評価額は実勢価格の7割から8割で計算されますが、賃貸に出していることでさらに評価額が下がり、5分の1程度まで評価を下げられます。これによりローンとの差額分、相続税を圧縮できるというものです。

例えば、ローン残高が1,000万円、不動産の時価が800万円の場合、不動産を買うことによって200万円分の財産が圧縮され、その分の相続税が減ります。しかし団信に入っていると負債の1,000万円がなくなるため、不動産の時価である800万円分に対して相続税がかかります。

相続税には基礎控除があり、3,000万円+600万円×法定相続人までは無税です。団信に加入するかどうかを考える際には、資産全体を見て、相続税がかかるかどうかを計算してみる必要があります。

不動産投資ローンで団体信用生命保険をつけるかどうかは資産全体を考慮して決める

団体信用生命保険の保険料はローン残高に対して年間0.3%程度です。保険料に対して保障が手厚く、加入することで他の生命保険が不要になる場合があります。ただし相続税対策としてはつけないほうが良い場合もあります。不動産投資の目的や、資産の状況を考えて加入を検討してください。

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