最終更新日:2024/05/08
 
サラリーマンでも節税ができる区分マンション投資
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丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

普通にサラリーマン生活をしていると、節税を意識する機会はあまりありません。源泉徴収と年末調整でサラリーマンの税務は完結してしまうからです。しかし、そのサラリーマンでも、マンションを区分所有したり、アパートのオーナーになったりすると、不動産所得が発生し、給与所得と合算して確定申告することが必要です。その際、少しでも節税したいという気持ちになるのは当然のことでしょう。サラリーマンの節税とマンション投資について、具体例を交えて紹介します。

目次

  1. 普通のサラリーマンでも節税が可能
  2. 区分マンション投資で節税できる税金の種類
    1. 所得税と住民税
    2. 固定資産税と都市計画税
    3. 相続税と贈与税
  3. 区分マンション投資で節税できる5つの仕組み
    1. 給与所得との「損益通算」で所得を減らす
    2. 不動産所得から引ける「必要経費」を知る
    3. 経費に「減価償却費」を計上して赤字にする
    4. 建物にかかる「借入金利子」を経費に計上する
    5. 「青色申告」を活用する
  4. 区分マンション経営の節税効果シミュレーション
  5. 5.サラリーマンこそ区分マンション投資で節税を

初心者が知っておきたいマンション経営特集第1話

普通のサラリーマンでも節税が可能

サラリーマン,節税
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通常、サラリーマンができる節税というと年末調整での節税になります。次の5つの項目が挙げられます。

1. 配偶者控除と扶養控除
2. 障害者等の控除(寡婦控除・寡夫控除・勤労学生控除)
3. 配偶者特別控除
4. 各種の保険料控除(社会保険料控除、生命保険料・個人年金・介護保険料控除、小規模企業共済等掛金控除)
5. 住宅借入金等特別控除(初回に確定申告が必要)

これらはサラリーマンであればおなじみでしょう。これらの対象となる控除を忘れることなく年末調整することが節税の第一歩です。

区分マンション投資で節税できる税金の種類

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区分マンション投資を行うと、次のような各種税金を節税することができます。

1.所得税と住民税
2.固定資産税と都市計画税
3.相続税と贈与税

所得税と住民税

区分マンション投資で所得税を算出するには、不動産収入から経費を差し引いて不動産所得を計算します。

収入よりも支出が多い場合は赤字となり、個人事業収入のみであれば所得税と住民税は非課税になります。

したがって、経費にできるものはとことん計上することで節税することができます。ただし、住民税の均等割りの部分は赤字でも支払いが生じる場合があります。

また、サラリーマンが区分マンション投資を行うと、不動産所得が赤字になった場合、後述するように、給与所得と損益通算ができます。

損益通算の有無で数十万円の所得税額の差が生じる場合もあります。サラリーマンが副業で区分マンション投資を行う優位性がわかります。

一方の住民税は所得税と連動しています。税率は市区町村税が6%、都道府県税が4%で合計一律10%です。したがって、課税所得が減れば住民税も安くなります。

固定資産税と都市計画税

区分所有マンションは条件によっては、固定資産税と都市計画税が安くなります。

それは2つの軽減措置を利用できるからです。

1.小規模の住宅用地の特例
2.新築の特例

1.小規模の住宅用地の特例
1つは「小規模の住宅用地の特例」です。賃貸住宅の場合、一戸あたり200㎡までの面積に対し、固定資産税が課税標準の6分の1に、都市計画税が3分の1にそれぞれ減額されます。

2.新築の特例
もう1つは、「新築の特例」です。新築で購入した区分マンションが120㎡までの面積に対し、固定資産税額が5年間にわたって半分になります。ただし、都市計画税の軽減措置はありません。

相続税と贈与税

区分マンションに投資することで相続税を節税できます。

それは、現金と不動産では相続税の評価額が大きく変わるからです。たとえば、6,000万円を現金で相続すると評価額はあくまで6,000万円です。

しかし、不動産は売買価格が変動すること、現金と比較し流動性が低いことが考慮され、現金よりも評価額が低くなります。

節税額は物件によって異なりますが、以下のように評価額が低くなります。

・土地は路線価で評価されます。概ね公示地価の8割程度の水準に設定されています。
・建物は固定資産税評価額で評価されます。固定資産税評価額は概ね時価の5割程度となります。
・小規模宅地等の特例を利用すると、面積が200㎡までの部分の評価額を5割に下げることができます。
・賃貸に出した場合は用途が制限されるため、さらに低い評価額にすることができます。

贈与税は、配偶者に贈与する場合は、配偶者控除を利用すれば2,000万円まで非課税になります。贈与税の非課税枠110万円(/年)と併用すると、最大で2,110万円まで無税で贈与可能です。

また、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫に贈与する場合は、相続時精算課税制度を利用することで2,500万円まで非課税にすることが可能です(ただし相続時に清算が発生します)。

土地を資産として保有することも有効的な手段と言えます。詳しくはこちらの「土地は資産か?持っているだけでは負債になる理由と資産にするたった1つの方法」を合わせてご覧ください。

区分マンション投資で節税できる5つの仕組み

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(画像=maru54/stock.adobe.com)

ここでは、所得税にスポットを当て、節税できる仕組みを5つご紹介します。

1.給与所得との「損益通算」で所得を減らす
2.不動産所得から引ける「必要経費」を知る
3.経費に「減価償却費」を計上して赤字にする
4.建物にかかる「借入金利子」を経費に計上する
5.「青色申告」を活用する

給与所得との「損益通算」で所得を減らす

所得税は「総合課税制度」により、対象となる所得区分の各所得を合算して算定されます。

給与所得と不動産所得は合算の対象で、所得税は合算後の金額に対して所定の税率を乗じることで算定されます。

不動産所得が赤字(所得がマイナス)になった場合、どうなるのかというと、その場合も合算が可能で、「損益通算」という制度が適用されます。

つまり不動産所得の赤字分だけ合計の所得金額が減じるため、所得税を減らすことができます。

<損益通算の計算例>
【モデルケース①】
給与所得1,000万円、所得控除400万円
(1)1,000万円-400万円=600万円が課税所得となる。
(2)課税所得600万円に対する所得税率は20%、控除額は42万7,500円なので、
600万円×20%-42万7,500円=77万2,500円が所得税額となる。

【モデルケース②】
給与所得1,000万円、所得控除400万円、不動産所得▲500万円の場合
(1)1,000万円-500万円=500万円が損益通算後の所得となる。
(2)500万円-400万円=100万円が課税所得となる。
(3)課税所得100万円に対する所得税率は5%、控除額はゼロなので、
100万円×5%=5万円が所得税額となる。

77万2,500円-5万円=72万2,500円が損益通算によって節税できます。

不動産所得から引ける「必要経費」を知る

前述の不動産所得(賃貸物件からの所得)は、以下のように計算します。

不動産所得 = 家賃収入 − 必要経費

ざっくり説明すると、家賃や敷金として受け取った金額から必要経費を差し引いた金額が不動産所得です。

「必要経費」とは、不動産収入を得るために直接的に必要となる費用で、以下のような費用が必要経費に相当します。

・減価償却費(詳しく解説)
・借入金利子(詳しく解説)
・管理費
・修繕積立金
・修繕費
・賃貸管理委託費
・損害保険料
・税金
・その他の必要経費

経費に「減価償却費」を計上して赤字にする

もちろん賃貸業が黒字であれば、給与所得と合算された所得は大きくなり納税額も増えます。しかし、収入がそれ以上に伸びると、必要経費への計上分も増えるのでメリットは十分にあります。

また、節税という観点で不動産投資を考えてみることもポイントです。節税には、不動産所得が赤字であるほうが有利なのです。

不動産所得の計算では収入から必要経費が控除されます。この必要経費としてあげられる、「減価償却費」と「借入金利子」が節税の大きなポイントになります。

例えば、ある新築マンションを5,000万円で購入したとします。この購入費用を、初年度のみの経費として全額計上することは現実的でしょうか。

このマンションは、今後数十年にわたり資産として使用されます。その購入費用は、単年ではなく、長期間で経費化するのが適切な会計処理です。

この考え方のもと、一定期間にわたり経費化することを減価償却といい、各年の費用を減価償却費といいます。

もちろん実際には初年度に費用を負担しています。

したがって、2年目以降は、「支出がないのに経費計上できる」ということになります。つまり、実際のキャッシュフローよりも多く経費が計上できるため、節税につながります。

<減価償却の計算例>
減価償却には、「定額法」と「定率法」の2つの方法があります(対象により適応できる方法は異なります)。

定額法は購入費用を耐用年数で割った費用を毎年一定の金額ずつ経費計上する方法です。

一般的なマンションの造りは「鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造」ですが、該当する物件であれば、耐用年数は47年と規定されています。

たとえば、建物部分が4,700万円の新築マンションを47年で償却する場合、毎年の経費計上金額は、4,700万円÷47=100万円となります。

【表1】定額法の計算例
100万円の資産を耐用年数10年で償却する場合

経過年数償却率償却額未償却残高
1年目0.1100,000円900,000円
2年目0.1100,000円800,000円
3年目0.1100,000円700,000円
4年目0.1100,000円600,000円
5年目0.1100,000円500,000円
6年目0.1100,000円400,000円
7年目0.1100,000円300,000円
8年目0.1100,000円200,000円
9年目0.1100,000円100,000円
10年目0.199,999円1円

一方の定率法は、毎年の未償却残高に耐用年数ごとに定められた償却率をかけて経費計上する金額を算出します。

したがって、はじめの年が一番多く、以降年とともに減少していきます。

【表2】定率法の計算例
100万円の資産を耐用年数10年で償却する場合
償却率:0.2
改定償却率:0.25
保証率:0.06552
償却保証額:65,520円(100万円×0.06552)

経過年数償却率償却額未償却残高備考
1年目0.2200,000円800,000円1~6年目までは、未償却残高×0.2で計算 6年目の期末残に0.2をかけると、 262,144円×0.2=52,429円となり、償却保証額65,520円に満たないため、改定償却率0.25をかけ、65,536円の償却額となる。
2年目0.2160,000円640,000円
3年目0.2128,000円512,000円
4年目0.2102,400円409,600円
5年目0.281,920円327,680円
6年目0.265,536円262,144円
7年目0.2565,536円196,608円7~9年目は、改訂取得価額262,144円に0.25をかけて計算
8年目0.2565,536円131,072円
9年目0.2565,536円65,536円
10年目0.2565,535円1円65,536円-1円=65,535円で計算

定率法の特徴は、7年目から改定償却率に変わることです。7年目以降は定額になります。定額法・定率法ともに、最後は残存簿価1円となります。

1円にするのは、ゼロだと資産が存在しないことになるためです。これを「備忘価額」といい、完全に除去した資産と区別するために利用します。

建物にかかる「借入金利子」を経費に計上する

マンション購入のための借入金では、その利子が経費化できます。なお、注意して欲しいのは、建物に対する借り入れか、土地に対する借り入れかで、変わることです。

建物にかかる借入金利子は、不動産所得がマイナスでも、全額が経費計上できますが、土地にかかる借入金の利子は、不動産所得が赤字である場合、不動産所得が発生しない金額までが繰入限度になります。

区分所有のマンションでは、不動産売買契約書に土地と建物の価格を分離して記載できます。

そこで自己資金で土地代をまかない、建物を借入金で購入したことにすれば、借入金の利子を100%経費化することが可能です。

「青色申告」を活用する

青色申告を活用することも節税につながります。

個人事業主の確定申告には白色申告と青色申告がありますが、青色申告には以下のようなメリットがあります。

1 .所得額から65万円を控除できる
2. 3年間の赤字繰越しを活用できる
3.「青色事業専従者給与」を必要経費にできる

1. 所得額から65万円を控除できる
青色申告には最大65万円の特別控除があります。

ただし、65万円の控除を受けるには、「10室以上ある賃貸アパート・マンションか、5棟以上の賃貸戸建て住宅」という事業規模を満たしていなければなりません。

もし、満たしていない場合は控除額が10万円になります。

2. 3年間の赤字繰越しを活用できる
青色申告では最長3年間赤字を繰り越すことができます。

たとえば、今年60万円の損失が出て、翌年100万円の利益が出た場合、今年度分で青色申告を利用していれば、100万円-60万円=40万円を翌年の所得から差し引くことができます。

逆に、今年が黒字で翌年が赤字の場合は、前年に納めた税金から翌年の赤字部分にかかる税金額が還付されます。青色申告の大きなメリットの1つです。

3.「青色事業専従者給与」を必要経費にできる
青色申告では、親族に支払う「青色事業専従者給与」を必要経費として計上することができます。

事業主と生計を1つにしている15歳以上の親族が対象になります。

控除できる金額は、配偶者が最高86万円、15歳以上の親族が50万円です。ただし、給与の額は仕事の内容や従事する程度に合わせ、妥当な金額を設定しなければなりません。

オーナー様インタビュー特集第1話

区分マンション経営の節税効果シミュレーション

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(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

では、これまで紹介した節税対策をふまえ、区分マンションを経営した場合の節税効果をシミュレーションしてみましょう。

【モデルケース】
・物件価格:3,500万円
・耐用年数:47年(建物割合90%)
・家賃:10万円 
・ローン利子分:月5,8万円

収入支出節税効果
不動産収入 120万円
給与収入  600万円
減価償却費 67万円
((3,500万円×0.9)÷47年)
ローン利子 70万円
その他経費 12万円
(家賃の10%)
不動産収入 120万円
支出計   149万円
(減価償却含む/借入金元金返済は含まない)
差し引き ▲29万円
・不動産所得がなく、給与所得のみの場合
600万円×20%-42万7,500円=77万2,500円

・不動産所得と給与所得を損益通算した場合
571万円×20%-42万7,500円=71万4,500円

・77万2,500円-71万4,500円=5万8,000円

・給与との損益通算で所得税
-5万8,000円

シミュレーションのモデルケースでは損益通算を利用すると5万8,000円の節税効果が生じます。

5.サラリーマンこそ区分マンション投資で節税を

サラリーマン,マンション投資
(画像=chachamal/stock.adobe.com)

ここまで、サラリーマンでも節税ができる区分マンション投資についてみてきました。

会社から給与所得だけを得て生活するサラリーマンは節税の方法に限りがありますが、マンションの区分所有など副業を行うことで節税の選択肢が広がります。

サラリーマンと個人事業主の兼業で、種々の所得控除を活用し、節税につなげることができるのです。

いろいろな資産運用方法がありますが、損失が出ても節税につながるのはサラリーマンによる区分マンション投資ならではの大きなメリットです。

不確実性の時代にリスクの少ない資産運用として、区分マンション投資を検討してみてはいかがでしょうか。



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