不動産投資家の中には、会計をすべて税理士に任せている方もいます。自分で確定申告書は作成できなくても、せめて簡単な収支計算ぐらいは知っておくと、不動産投資の新しい側面に気づくことができるはず。今回は基礎的な収支計算について解説いたします。

基礎から学ぶマンション経営の収支計算
(画像=Worawee Meepian/Shutterstock.com)

不動産投資で発生する経費

まずは不動産投資における収益と経費について学んでみましょう。

不動産投資の目的は、「家賃収入から収益を得ること」です。「収益」について考えるにあたり、まずは入居者から得る家賃収入と、そこから経費を差し引いて求められる不動産所得について学ぶ必要があります。

不動産所得=家賃収入-必要経費

では、不動産投資では、どのような経費が発生するのでしょうか。 まず、不動産を購入する際に、初期費用がかかります。それは、①「物件の取得費用」と、②「その他諸費用」に大別されます。

① 物件の取得費用 物件の取得費用とは、言い換えれば物件の購入費のことです。物件購入の際は、頭金を払う人がほとんどですが、どのような不動産投資を目指すかによって頭金の金額も異なります。もちろん自己資金が多いほど安心できることは間違いありません。しかし、10万円程度の頭金でも、優良な物件を購入することで堅実な運用をできることもあるため、頭金の金額は人それぞれです。

② その他諸費用 取得費用以外には、以下のような諸費用がかかります。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 損害保険(火災・地震)
  • ローン関連費用(利息・事務手数料・保証料etc.)
  • 管理費用
  • 修繕積立金
  • 固定資産税
  • 事務手数料
  • 登記費用

  • 印紙税

不動産を購入する場合、不動産売買契約書に印紙を貼り、印紙税を払います。印紙税は1,000万円を超え、5,000万円以下の場合、2万円がかかります。なお、2020年3月31日までは軽減税率が適用されるため、1万円となります。

  • 登録免許税

登記にかかる税金です。不動産の購入価格ではなく、市町村が定めている固定資産税評価額に基づき決定されます。

  • 不動産取得税

基本的には固定資産税評価額の4%がかかります。(取得時期や適用される軽減税率で料率は変わります)。物件を購入してから約半年経つと、物件のある都道府県から購入者に納付書が送られてきます。固定資産税評価額は、物件の購入価格と同じというわけではなく、物件によって異なります。少なくとも数十万円は資金の用意をしておきましょう。

  • 損害保険

火災保険、地震保険に年単位で加入した場合、取得費用として計算しましょう。数年以上の保険料を支払った場合は、年ごとに分割し、その分だけを計上するかたちになります。

  • ローン関連費用

不動産の取得にあたり、銀行から融資を受けた場合、事務手数料、保証料などがかかります。

  • 管理費用

マンション経営では、管理組合がマンションの清掃や点検などを管理会社に委託します。費用はエレベーターや共用設備の多さによって異なるため、事前に費用を把握しておくことが肝心です。

  • 修繕積立金

株式や為替とは違い、不動産は「モノ」であるため、定期的に修繕を行います。このため、先の修繕計画を見越して管理組合が徴収する費用が必要となります。

  • 固定資産税 固定資産税は毎年1月1日に物件を所有している人に課されます。固定資産税は「課税標準額×1.4%」で求められますが、各市町村の条例によって税率が異なることもあり、また軽減措置による料率の変更もあるため、物件購入の際、事前に確認しておきましょう。

  • 事務手数料

金融機関から融資を受ける際にかかる手数料です。ローン金額の数%を手数料としてかかりますが、割合は金融機関によって異なります。

マンション経営と節税

不動産投資において物件の購入はスタート地点に過ぎません。その際、各種において費用が生じますが、確定申告で計上できる経費は多数存在します。

主な費目として、

① 租税公課(固定資産税・都市計画税)、②修繕費及び修繕積立金、③減価償却費、④ローン利息、⑤仲介手数料、⑥管理委託料、⑦広告宣伝費、⑧その他(弁護士報酬・税理士報酬、交通費など)が挙げられます。

実際に現金を支払う経費と計上する経費は大きく異なります。そのため、上手に必要経費が計上できれば、確定申告の際に節税に役立てることができるでしょう。例えば減価償却費は実際の支出を伴わないのに、建築費用を耐用年数で割った金額が、毎年計上できます。また、資産運用のセミナー参加費用やテキスト代なども必要経費として計上できます。「ちりも積もれば山となる」という言葉がありますが、コツコツとこまめに領収書を集め、経費計上していくことで、課税される所得金額やそれに伴う税額を抑えることも可能になるでしょう。

サラリーマン大家なら損益通算

不動産投資を行う際、課税所得の総額について知っておくことは何よりも大事です。例えばサラリーマンの方が物件を購入する際、家賃収入よりもローンの返済額が少しだけ多くなった場合、この赤字分を給与所得から差し引くことができます。これを「損益通算」と言います。サラリーマンであれば否応なしに引かれていた課税所得を引き下げ、その分納税額を減らすことができるかもしれません。不動産投資は節税にもつながるということです。

不動産投資で成功したいなら収支計算は必須

不動産投資に関する収支計算について考えてみました。不動産投資は何十年間という歳月をかけて行うものです。そのためには表面的な利回りに惑わされず、将来的にも需要が高いと思われる物件を選ぶようにしましょう。

また、見通しの立った運用をするためには、簡単な収支計算だけでも自分でできるようになることも大切です。できれば、税金に関する知識も身につけて、節税も心がけることです。あくまでも長期的な目線でもってコツコツと資産を築いてゆくイメージを持つことが不動産投資を成功させる秘訣だといえます。

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