投資家であれば誰もが一度は夢見る、圧倒的な技術革新による市場の急拡大。その中心にいるのが、従来のコンピュータを遥かにしのぐ計算能力を持つ「量子コンピュータ」です。SFの世界の話だと思っていた技術が、いよいよ現実のビジネスを変えようとしています。
しかし、期待が高まる一方で、「専門的すぎてどの銘柄を選べばいいか分からない」「海外のスタートアップは情報が少なくて怖い」といった不安も尽きないでしょう。
量子コンピュータ市場の全体像から、国内外の注目すべき「本命」銘柄、そして決して無視できない「投資リスク」までを網羅的に解説します。夢の技術への投資を成功させるために必要な知識をおさえましょう。
※本記事で紹介する銘柄は、ニュースや専門サイトをもとに、現在注目度が高まりつつあると考えられるものを抽出したものです。投資の推奨をするものではありません。投資するかしないかの判断は、くれぐれも投資家本人の責任において行ってください。
目次
なぜ今「量子コンピュータ」が投資テーマとして熱いのか?
投資家がこの分野に熱視線を送る理由は、単なる技術的な興味ではありません。量子コンピュータが、これまでの産業構造を根本から覆す可能性を秘めているからです。
従来のコンピュータとの決定的な違い
従来のコンピュータ(古典コンピュータ)は、すべての情報を「0」か「1」のビット(bit)で処理します。これに対し、量子コンピュータは「0」と「1」の状態を同時に併せ持つ「量子ビット(Qubit)」を使用します。
この違いを迷路にたとえてみましょう。
従来型: 行き止まりに当たるたびに戻り、一つずつルートを試して出口を探す「しらみつぶし」のアプローチ(逐次処理)。
量子型: すべてのルートの可能性を「重ね合わせ」として保持し、波が互いに強め合う・打ち消し合う「干渉」という性質を利用して、正解のルートだけを瞬時に浮かび上がらせます。
単なる並列処理ではなく、この物理法則を利用した計算こそが、量子コンピュータが「革命」と呼ばれるゆえんです。
医療・金融・AI…全産業を覆すゲームチェンジャー
この計算能力が実用化されれば、世界は劇的に変わります。どのような分野での応用・変化が期待されるのでしょうか。
【創薬・医療】
・新薬候補の探索期間: 10年超 → 数年に短縮
・分子シミュレーション精度の飛躍的向上
【金融】
・ポートフォリオ最適化: リアルタイム計算
・リスク分析の高度化・高速化
【AI・機械学習】
・学習速度: 数日 → 数時間
・複雑なパターン認識の精度向上
【物流・製造】
・配送ルート最適化(組み合わせ爆発問題の解決)
・サプライチェーン全体の効率化
※NEDO、経済産業省資料より編集部作成
市場規模が急拡大、2030年ごろには実用化?
市場規模の予測からも、この分野の急成長ぶりが見て取れます。国内市場だけでも2030年度には約3,000億円、2040年以降は10兆円を超える規模に達すると予測されており、現在はまさに「黎明期から成長期への移行タイミング」にあると言えます。
量子コンピュータ市場規模予測
【国内市場】(量子コンピュータ市場単体)
2022年度: 195億円
2025年度: 550億円(約2.8倍)
2030年度: 2,940億円(約15倍)
▼ 将来的には量子技術全体へ波及 ▼
【世界市場】(関連技術・サービスを含む予測)
2035年 : 約12兆円
2040年 : 約21兆円
2050年 : 55兆円超
※出典:矢野経済研究所(2025年10月発表「量子コンピュータ市場調査」)ほか ※国内は量子コンピュータおよび関連ソフトウェア市場。世界市場の長期予測は量子暗号・センシング等を含む量子技術全体の市場規模(予測)
これらの市場規模は計り知れず、量子コンピュータ市場の覇権を握る企業は、GAFAM級の次世代巨大企業になる可能性すら秘めています。
さらに2030年までの約5年間が注目です。というのも、主要企業の開発ロードマップをみると、多くの企業が2030年前後を「実用化の分水嶺」と位置づけているからです。
国内市場だけでも2030年に現在の約15倍にあたる3,000億円規模へ成長すると見られるうえ、2040年以降、量子通信やセンサーなどの周辺技術を含めた世界市場は数十兆円規模に達すると予測されています。
投資家にとって、今後5年間が極めて重要な局面と言えます。
主要企業の実用化目標時期
| 企業名 | 実用化目標 |
| IBM | 2029年 |
| 2029年 | |
| IonQ | 2028-30年 |
| Rigetti | 2027年 |
| Quantinuum | 2029-30年 |
| 富士通 | 2030年 |
【注目度が高まる】量子コンピュータ関連銘柄<日本編>
まずは、身近な日本企業から見ていきましょう。日本にはハードウェアからソフトウェアまで、世界レベルの技術を持つ企業が存在します。
本命①:ハードウェア開発・部品供給企業
量子コンピュータそのもの(ハードウェア)や、それを動かすための重要部品を開発している企業群です。
- 富士通(6702):理化学研究所と共同で国産量子コンピュータの開発を主導。スーパーコンピュータ「富岳」のノウハウも活かしています。
- NEC(6701):量子アニーリング方式において世界的な実績を持ち、カナダのD-Wave Systemsとも提携。
- オキサイド(6521):酸化物単結晶の育成技術を持ち、量子暗号通信や半導体製造装置向けのレーザー光源・光学部品などで実績を持つ企業。量子技術関連の材料分野で注目される。
これらは技術的な「本命」ですが、企業規模が大きいため、株価が量子コンピュータの話題だけで動くとは限らない点に注意が必要です。
本命②:ソフトウェア・アルゴリズム開発企業
量子コンピュータという「箱」があっても、それを動かす「ソフト」がなければただの箱です。この分野では、技術力のある中小型株が注目されます。
- フィックスターズ(3687):量子コンピュータ向けのソフトウェア開発や高速化技術に強みを持ち、多くの研究機関と連携。
- HPCシステムズ(6597):科学技術計算(HPC)分野で実績があり、量子コンピュータ向けソフトウェア開発企業QunaSysと資本業務提携。量子化学計算の応用領域で技術開発を進める。
これらは時価総額が比較的小さいため、ニュースが出た際の株価反応が大きく、短期的な値幅を狙う投資家の人気を集めやすい傾向があります。
注目③:量子技術を活用する応用・コンサル企業
自社でハードウェアを作るわけではありませんが、実用化を見据えて活用のための研究やコンサルティングを行う企業です。
- ソフトバンクグループ(9984):量子コンピュータ関連の先端技術への投資を積極的に行っており、グループ傘下のArm社も量子コンピューティング向けチップ設計に関心を持つ。量子テックのエコシステムに投資しており、グローバルな技術投資ポートフォリオの一環として注目される。
- 野村ホールディングス(8604):金融派生商品(デリバティブ)の価格計算やリスク管理への応用を研究。
テーマとしての純度は下がりますが、本業の収益基盤がしっかりしているため、長期投資の対象として手堅い選択肢と言えます。
【世界の本命】量子コンピュータ関連銘柄<海外・米国編>
世界の量子コンピュータ開発をリードしているのは、やはり米国と中国です。投資対象として考えた場合、情報の透明性や市場規模から米国企業が中心となります。
米国の巨大テック(GAFAMなど)の動向
巨額の資金力を背景に、開発競争の先頭を走っているのが米国のテックジャイアントです。
- IBM(IBM):量子コンピュータの商用化で世界をリード。「IBM Quantum」としてクラウド経由で実機を提供しており、開発ロードマップも明確。
- Google(GOOGL): 2019年に「量子超越性」を実証し、スーパーコンピュータで1万年かかる計算を数分で解いたと発表して世界を驚かせた。 さらに2023年には、実用化に向けた最大の壁である「量子エラー訂正」技術でも画期的な成果を発表。 IBMと激しいデッドヒートを繰り広げながら、着実に実用化への階段を登っている。
- Microsoft(MSFT)、Amazon(AMZN):それぞれAzure Quantum、Amazon Braketとして、クラウド上で量子コンピューティング環境を提供。
これらの企業は財務基盤が盤石であり、投資リスクは比較的低いですが、巨大すぎるがゆえに量子部門の成功が株価に与えるインパクトは限定的です。
注目度No.1!量子コンピュータ専業のスタートアップ企業
「量子コンピュータ一本で勝負する」専業企業こそが、個人投資家にとっての真の「本命」であり、ハイリスク・ハイリターンの主戦場です。
- IonQ(IONQ):イオントラップ方式という技術を採用し、AmazonやGoogleからも出資を受ける注目株。2021年10月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した、世界初の量子コンピュータ専業上場企業。
- Rigetti Computing(RGTI): IBMやGoogleと同じ「超電導方式」を採用し、チップ製造からクラウド提供までを一貫して行うフルスタック企業。2021年にSPAC上場を果たした。 巨大テック企業と同じ土俵で戦っているため競争は激しいが、独自の特許技術や製造ノウハウを持っている。株価の変動は非常に激しく、「成功すれば巨万の富、失敗すれば淘汰」という、量子コンピュータ投資のハイリスク・ハイリターンな側面を最も体現している銘柄とも言える。
- Quantinuum(クオンティニュアム、未上場): 米産業大手ハネウェルの量子部門と英ケンブリッジ・クオンタムが合併して誕生した企業。現在、量子ボリューム(性能の指標)で世界最高峰の実績を誇り、2029〜30年の実用化を目指している。 同社自体は未上場だが、親会社のハネウェル(HON) を通じて間接的に投資可能。「専業スタートアップの爆発力」と「大企業の安定感」を兼ね備えた、実質的な本命候補と言える。
これらは「テンバガー」(10倍株)の夢がある一方で、現時点では赤字企業が多く、技術的な進展や金利動向によって株価が乱高下するジェットコースター銘柄でもあります。
「夢」だけでは勝てない。量子コンピュータ投資の3大リスク
ここまで夢のある話をしてきましたが、投資家として冷静に見るべき「リスク」についても触れなければなりません。特に、本業を持つサラリーマン投資家にとって、このリスクは無視できない重さとなります。
リスク1:実用化はまだ先。「夢」が「失望」に変わる可能性
量子コンピュータは、まだ研究開発の途上にあります。
「いつ本格的に実用化されるのか」「いつ黒字化できるのか」という問いに対する明確な答えは、まだ誰も持っていません。期待だけで上昇した株価は、決算発表や技術的な壁(エラー訂正技術の難しさなど)が露呈した瞬間に、一気に失望売りへと変わる危険性を常にはらんでいます。これは「テーマ株」特有の怖さです。
リスク2:専門性が高すぎ、個人では情報収集が困難
「超電導方式」と「イオントラップ方式」、どちらが覇権を握るのか?
この問いに答えられる個人投資家はほぼ皆無でしょう。技術的な専門性が極めて高いため、ニュースの良し悪しを判断することが難しく、結果として「なんとなく凄そう」という雰囲気だけで投資するギャンブルになりがちです。プロでも見抜くのが難しい「本命」を、個人が一点張りで当てるのは至難の業です。
リスク3:株価変動(ボラティリティ)が激しく、精神的な「手間」がかかる
特に専業のスタートアップ銘柄は、一晩で10%や20%動くことも珍しくありません。
日中働いている間も株価が気になり、仕事に集中できない。こうした精神的な負担は、忙しい現役世代にとって非常に大きな「手間(コスト)」となります。夢を追う代償として、心の平穏を失っては本末転倒です。
【投資判断の重要ポイント:バイオベンチャーに近いリスク】
スタートアップ銘柄への投資は、「新薬が承認されれば株価10倍、失敗すれば暴落」という創薬バイオベンチャーへの投資に近い性質を持っています。 素晴らしい技術ロードマップを持っていますが、もし開発競争で脱落したり、資金ショートに陥ったりすれば、企業価値が毀損するスピードも桁違いです。「将来のGAFAM」になる夢がある一方、紙切れになるリスクも背中合わせであることを忘れてはいけません。
ポートフォリオ戦略|「夢(量子コンピュータ)」と「現実(安定資産)」の両立
量子コンピュータへの投資は諦めるべきかというと、決してそんなことはありません。「それだけ」に依存するのではなく、「守り」と「攻め」を組み合わせることが正解です。
なぜ「分散投資」が絶対に必要か?
ハイリスク・ハイリターンの量子コンピュータ銘柄は、あくまで資産全体のスパイス(攻め)として位置づけるべきです。
全資産をここに投じてしまうと、もし技術開発が停滞した場合、資産の大半を失うことになります。資産形成の土台(守り)には、これとは全く異なる値動きをする、地に足のついた「安定資産」を組み込むことが鉄則です。
資産形成の「土台」に「不動産投資」が最適な理由
量子コンピュータ投資(ハイリスク・キャピタルゲイン狙い)の対極にあり、最も相性が良い安定資産としておすすめしたいのが「不動産投資」です。
- 手間がかからない:管理会社に任せれば、株価のように日々チャートをチェックする必要はありません。精神的な安定が得られます。
- 安定した不労所得:技術の成否に関わらず、人が住む限り「家賃」は毎月発生します。このインカムゲインが、ハイリスク投資の損失カバーや再投資の原資となります。
- インフレに強い実物資産:技術という無形の価値ではなく、土地と建物という実物に裏付けられた資産は、インフレ局面でも価値を維持しやすい特性があります。
「夢」を追うためのリスクを取るには、足元の「現実」を支える盤石な基盤が必要なのです。
量子コンピュータは注目の投資テーマの一つだが、より大きな視点で投資・資産形成を
量子コンピュータは、間違いなく未来を変える素晴らしい技術であり、投資対象としても大きな夢があります。
しかし、現時点では「いつ実用化するか分からない」「どの技術が勝つか分からない」という不確実性が高く、非常にハイリスクで手間のかかる投資であることも事実です。
量子コンピュータへの投資は、ポートフォリオの一部をあてるとしても、資産形成のメイン(土台)には、手間をかけずに安定収入を生む「不動産投資」などをすえるとよいでしょう。
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