「退職金のない会社はやばい」は本当?割合と、後悔しないための全対策
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退職金のない会社はやばい」「退職金なしの会社はやめとけ」──。

転職活動中や、今の会社の将来に不安を感じたとき、こんな言葉が頭をよぎるかもしれません。老後の生活を支える大きな柱である退職金。それがないという事実は、たしかに私たちの将来に大きな不安を投げかけます。

しかし、その不安を「やばい」という一言で片付けて思考停止してしまうのは、あまりにもったいないことです。退職金がないという事実を冷静に受け止め、それが自分のキャリアと人生にとって本当にリスクなのかを正しく判断し、具体的な対策を講じることができれば、未来は大きく変わります。

この記事では、まず信頼できるデータで「退職金のない会社」のリアルな割合を解説。その上で、あなたの会社が本当に「やばい」のかを客観的に判断するための5つの基準を提示します。

そして、今の会社で働き続ける場合と、転職する場合、それぞれで後悔しないための具体的なアクションプランを、誰にでも分かるように徹底的に解説します。この記事を読めば、漠然とした不安は、未来を自分でコントロールできるという自信に変わるはずです。

目次

  1. 【結論】「退職金のない会社はやばい」は、半分本当で半分嘘
  2. 【事実】退職金のない会社はどのくらいある?データで見る日本の現状
  3. 退職金がないのはなぜ?会社側の3つの事情
    1. ① 会社の設立が新しい、または成長段階である
    2. ② 年俸制など、給与水準を高く設定している
    3. ③ そもそも経営体力・管理能力がない
  4. 【診断】あなたの会社は本当に「やばい」?5つの判断基準
    1. 基準① 給与水準は相場より高いか?
    2. 基準② 代替制度(企業型DCなど)はないか?
    3. 基準③ 退職金以外の福利厚生は充実しているか?
    4. 基準④ 会社の成長性と将来性はあるか?
    5. 基準⑤ 今の仕事でスキルアップやキャリアにつながるか?
  5. 【対策①】今の会社で「じぶん退職金」を2000万円作る方法
    1. 1.【必須】iDeCo(個人型確定拠出年金)を上限額まで始める
    2. 2.【必須】新NISAで長期の資産形成を行う
    3. 3.具体的な積立シミュレーション(40歳から月5万円で…)
    4. 4. 積立投資と並行して「キャッシュフロー資産」を持つ
  6. 【対策②】「退職金あり」の会社へ賢く転職するための全知識
    1. 1.求人票で退職金制度を見抜く方法
    2. 2.面接で確認する際のスマートな質問例
    3. 3.年収交渉時に「総額」で考える重要性
  7. 会社の制度に依存せず、自分のキャリアと資産を設計しよう

【結論】「退職金のない会社はやばい」は、半分本当で半分嘘

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いきなり結論から申し上げます。あなたが抱く「退職金のない会社って、やっぱりやばいんじゃないか?」という不安、その気持ちはよく分かります。そして、その問いに対する答えは「半分本当で、半分は嘘」です。

何が本当で、何が嘘なのでしょうか。

「本当」なのは、もしあなたが何の対策もせず、会社の給与だけで生活し、将来の備えを何もしないのであれば、退職金がないという事実は老後に致命的な影響を与え、間違いなく「やばい」状況になる、という点です。

一方で「嘘」なのは、退職金がない会社が、必ずしも悪い会社とは限らないという点です。その分、毎月の給与が高く設定されていたり、他の手厚い制度があったり、あるいはあなた自身の市場価値を高める貴重な経験が積める会社かもしれません。そして何より、今の時代は、会社の制度に頼らずとも、自分自身で強力な「じぶん退職金」を作ることが可能です。

つまり、「退職金がないこと」そのものが問題なのではなく、「その事実に対して、あなたがどう向き合い、どう行動するか」が全てを決めるのです。

【事実】退職金のない会社はどのくらいある?データで見る日本の現状

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客観的なデータとして、退職金制度のない会社は日本にどのくらい存在するのでしょうか。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」を見てみましょう。

これによると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は、全体で74.9%です。つまり、約4社に1社は退職金制度がないという計算になります。

しかし、この数字は企業規模によって大きく異なります。

▼企業規模別 退職給付制度がある企業の割合

  • 従業員1,000人以上:90.5%
  • 300~999人:88.8%
  • 100~299人:84.7%
  • 30~99人:70.1%

このように、従業員1,000人以上の大企業では9割以上の会社に退職金制度がありますが、30〜99人規模の企業になると、その割合は約7割にまで下がります。あなたが中小企業に勤めている場合、退職金がないことは決して珍しいことではない、というのが日本の客観的な現状なのです。

退職金がないのはなぜ?会社側の3つの事情

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自分の会社になぜ退職金がないのか、その背景を理解することは、冷静な判断を下すために重要です。単に「ケチな会社だ」と決めつける前に、会社側の事情も知っておきましょう。

① 会社の設立が新しい、または成長段階である

設立間もないスタートアップや、急成長中のベンチャー企業に多いケースです。 これらの企業は、将来の退職金のために資金を積み立てるよりも、事業拡大への投資や優秀な人材確保のための現在の給与を優先します。従業員へのインセンティブとして、退職金の代わりにストックオプション(自社の株式を安く購入できる権利)を付与する企業も多くあります。

② 年俸制など、給与水準を高く設定している

外資系企業やIT企業などでは、「退職金は給与の後払い」という考え方に基づき、退職金制度を設けない代わりに、毎月の給与や年俸を業界水準より高く設定している場合があります。 これは「トータルコンペンセーション(総報酬)」という考え方で、生涯に受け取る報酬総額は退職金のある会社と変わらない、あるいはそれ以上になるように設計されています。

③ そもそも経営体力・管理能力がない

多くの中小企業がこれに該当します。 将来支払うべき退職金を計画的に積み立てていくことは、企業にとって大きな財務的負担です。また、退職金制度は会計・税務上の管理が複雑であり、専門知識を持つ人事・経理部門のリソースが不足している、という現実的な理由で導入に踏み切れないケースも少なくありません。

【診断】あなたの会社は本当に「やばい」?5つの判断基準

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「退職金がない」という事実だけで、今の会社が「やばい」と判断するのは早計です。以下の5つの基準を使い、総合的にあなたの状況を客観的に評価してみましょう。

基準① 給与水準は相場より高いか?

まずは、あなたの給与が同業種・同職種の市場相場と比べて高いか低いかを確認しましょう。 もし相場より明らかに高いのであれば、会社は退職金分を毎月の給与として前払いしてくれている可能性があります。転職サイトやクチコミサイト(OpenWork、Glassdoorなど)で、自身の市場価値を調べてみましょう。

基準② 代替制度(企業型DCなど)はないか?

「退職金」という名前でなくても、それに代わる制度がないか確認してください。 代表的なのは「企業型DC(企業型確定拠出年金)」です。これは会社が掛金を拠出し、自分自身で運用して老後資金を作る制度で、立派な退職給付制度の一つです。就業規則や給与明細を改めて確認してみましょう。

基準③ 退職金以外の福利厚生は充実しているか?

住宅手当や家族手当、資格取得支援、学習費用の補助など、退職金以外の福利厚生が手厚い場合、会社は従業員の生活や成長を別の形で支援していると考えられます。 目に見える退職金の有無だけでなく、こうした実質的な恩恵も総合的に評価することが重要です。

基準④ 会社の成長性と将来性はあるか?

今の会社が成長産業にあり、業績が伸び続けているのであれば、将来的により良い給与や制度が導入される可能性があります。 また、会社の成長はあなたの給与アップや昇進にも直結します。短期的な制度の有無だけでなく、会社の将来性という長期的な視点も持ちましょう。

基準⑤ 今の仕事でスキルアップやキャリアにつながるか?

究極的には、最大の資産はあなた自身の稼ぐ力です。 今の仕事を通じて、他社でも通用する専門的なスキルや貴重な経験が得られているでしょうか? もしそうであれば、たとえ退職金がなくても、あなた自身の市場価値が高まり、将来的により良い条件で転職できる可能性が広がります。

【対策①】今の会社で「じぶん退職金」を2000万円作る方法

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診断の結果、「給与も悪くないし、仕事も面白い。会社は“やばくない”から、自分で老後資金を備えよう」と判断したあなたへ。ここからは、具体的な「じぶん退職金」の作り方をご紹介します。

1.【必須】iDeCo(個人型確定拠出年金)を上限額まで始める

iDeCoは、退職金のない会社員にとって、国が用意してくれた最強の節税武器です。 毎月一定額を積み立て、自分で運用して60歳以降に受け取る私的年金制度ですが、最大のメリットは**「掛金が全額所得控除の対象になる」点です。

たとえば、年収500万円の会社員がiDeCoの上限額である月2.3万円(年27.6万円)を拠出した場合、所得税・住民税が年間約5.5万円**も安くなります。これは、ただ銀行に預金しているだけでは決して得られない、拠出するだけでリターンが確定しているようなものです。

2.【必須】新NISAで長期の資産形成を行う

iDeCoが老後資金作りの「守り」だとしたら、新NISAはより積極的に資産を増やす「攻め」の役割を担います。 NISA口座内で得た投資の利益(値上がり益や配当金)が全額非課税になる制度です。

特に、毎月コツコツと投資信託などを積み立てていく「つみたて投資枠」は、長期的な資産形成の王道です。全世界株式や米国株式(S&P500)などに連動する低コストのインデックスファンドを、ドルコスト平均法で淡々と積み上げていくことで、複利の力を最大限に活かすことができます。

3.具体的な積立シミュレーション(40歳から月5万円で…)

iDeCoと新NISAを併用した場合、具体的にいくら準備できるのでしょうか。年代別のシミュレーションを見てみましょう(※年利5%で複利運用した場合の概算)。

スタート年齢 積立額/月 積立期間 65歳時点の資産額
30歳 5万円 35年 約5,734万円
40歳 5万円 25年 約2,986万円
50歳 5万円 15年 約1,368万円

この表が示す通り、始めるのが早ければ早いほど、複利の効果は絶大です。しかし、40歳から始めても約3,000万円、50歳からでも約1,400万円という大きな資産を築くことは十分に可能です。「もう遅い」と諦める必要は全くありません。

4. 積立投資と並行して「キャッシュフロー資産」を持つ

iDeCoやNISAは、将来のために資産の「残高」を増やす、いわば「貯水池に水を貯める」ような方法です。これは資産形成の基本であり、誰もが取り組むべきことです。

一方で、もう一つ重要な視点があります。それは、資産の残高を増やすのと並行して、現役時代から毎月収入を生み出す「キャッシュフロー資産」を育てるという考え方です。これは、自分の敷地に「井戸を掘る」イメージに近いかもしれません。

この「井戸」の代表的な例が、家賃収入を得られる不動産投資です。

  • もう一つの給与明細を作るイメージ
    不動産投資は、入居者がいる限り毎月安定した家賃収入をもたらします。これは、会社の給料とは別の、もう一つの収入源です。iDeCoやNISAが原則60歳以降でないと受け取れないのに対し、不動産投資はローン完済を待たずして現役時代からキャッシュフローを生み出すことができます。
  • 万が一の時の「保険」にもなる
    ローンを組む際に加入する「団体信用生命保険」は、オーナーに万が一のことがあった場合、残りのローンがゼロになる保障です。遺された家族には無借金の不動産が残り、家賃収入が生活を支えてくれます。これは、退職金がない不安を和らげる、生命保険のような役割も果たしてくれるのです。

iDeCoやNISAで将来のための資産をコツコツ積み立てながら、不動産投資で毎月のキャッシュフローを少しずつ増やしていく。この両輪を回すことで、より盤石な「じぶん退職金」を設計することが可能になります。

【対策②】「退職金あり」の会社へ賢く転職するための全知識

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診断の結果、「給与も安く、将来性もない。今の会社に留まるのはリスクだ」と判断したあなたへ。退職金ありの会社へ後悔なく転職するための具体的な知識とテクニックをお伝えします。

1.求人票で退職金制度を見抜く方法

求人票の「福利厚生」欄を注意深くチェックしましょう。 以下のキーワードがあれば、何らかの退職給付制度がある証拠です。

  • 「退職金制度あり」: 最も基本的な表記。一時金制度の可能性が高いです。
  • 「確定拠出年金(DC)」: 企業型DC制度があることを示します。
  • 「確定給付年金(DB)」: 会社が将来の給付額を約束する手厚い制度です。大企業に多いです。
  • 「中小企業退職金共済(中退共)」: 中小企業で広く導入されている共済制度です。

これらの制度の違いが分からなくても、まずはこれらの記載がある求人を選ぶことが第一歩です。

2.面接で確認する際のスマートな質問例

面接の場で、お金のことばかり聞くのは印象が悪いかも…と心配になるかもしれません。 しかし、これはあなたの将来に関わる重要な情報です。以下の様に、他の福利厚生と合わせてスマートに質問しましょう。

質問例:
「福利厚生について少しお伺いしたいのですが、御社では住宅手当や学習支援など、どのような制度がございますでしょうか。また、将来設計の参考に、退職金制度や企業年金制度についてもお聞かせいただけると幸いです」

このように、幅広い福利厚生への関心を示す形で質問することで、自然な流れで退職金制度の有無や種類を確認することができます。

3.年収交渉時に「総額」で考える重要性

転職活動では、目先の年収だけで判断しないことが極めて重要です。 例えば、以下の2社を比較してみましょう。

  • A社: 年収600万円、退職金なし
  • B社: 年収570万円、退職金制度(確定給付年金)あり

一見、A社の方が魅力的に見えます。しかし、B社が将来的に1,500万円の退職金を給付してくれると仮定すると、生涯で受け取る報酬総額(生涯賃金)はB社の方が高くなる可能性が高いのです。

年収だけでなく、退職金、住宅手当、その他の福利厚生を含めた「トータルパッケージ」で判断する視点を持ちましょう。

会社の制度に依存せず、自分のキャリアと資産を設計しよう

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退職金のない会社はやばい」という言葉は、私たちの不安を煽ります。しかし、この記事をここまで読んでくださったあなたは、もうその言葉に一方的に振り回されることはないはずです。

退職金がないことは、必ずしも“やばい”わけではありません。しかし、それは“何も考えなくていい”ということでは決してありません。

会社の制度に一喜一憂し、依存する時代は終わりました。大切なのは、あなたの会社がどのような状況であれ、それを冷静に評価し、自分自身の足でキャリアを切り開き、計画的に資産を設計していくことです。

iDeCoやNISAで将来の資産を「積み立てる」。そして、もし余力があれば、毎月の収入を増やす不動産などの「キャッシュフロー資産」についても学んでみる。このように、複数の選択肢を組み合わせることで、あなただけの盤石な資産を築くことができます。

退職金がないという事実は、見方を変えれば、会社に縛られず、自分の力で未来をコントロールする自由と責任を与えてくれた、と考えることもできます。今日から、あなた自身の力で、豊かな「じぶん退職金」作りを始めていきましょう。

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