実質賃金が思うように伸びない今、資産運用の必要性が改めて注目されています。実際に資産運用を始めた人も多く、自分も始めなくてはと考えている人もいるでしょう。資産運用を効果的に行うにはどのような商品を選べば良いのでしょうか。
本記事では、資産運用の種類や活用したい制度、注意すべきポイントを解説し、おすすめの投資法についても紹介します。
目次
1.資産運用とは?注目されている背景
資産運用とは、保有する資産をさまざまな方法で増やすことを指します。運用対象は、預貯金や保険、不動産など値動きが少ない商品と、株式、投資信託、FX、暗号通貨といった値動きがある商品に大別されます。
実質賃金が低下していることや、年金だけでは老後資金が不足する社会情勢に加えて、2024年1月から新NISA制度が始まったことが、資産運用が注目されている背景です。
日本証券業協会の発表によると、2024年1~3月の3ヵ月間だけでNISA口座が187万口座増えており、増加数は前年同期間の2.6倍に急増しています。
2.資産運用の種類
これから資産運用を始める人にとって迷うのが、どの商品で運用すれば良いのかという点です。資産運用商品には以下のように多くの種類があるので、特徴を理解したうえで運用の目的に適した商品を選ぶ必要があります。
2-1.預金
預金には、「円預金」と「外貨預金」があります。円預金には、給与振込や口座引き落としなどの決済に使う「普通預金」と資産運用のための「定期預金」があり、両方合わせて総合口座になっている通帳がほとんどです。金利はごくわずかなので、資産運用商品としての魅力はありません。
外貨預金は通貨発行国の金融情勢に合わせた高金利が魅力ですが、外貨で運用するため、為替リスクを伴うのがデメリットです。米ドル預金の場合、預け入れ時より満期時のほうが円高ドル安になると受取利息が目減りします。
2-2.保険
補償がメインの保険ですが、資産運用になる商品もあります。「貯蓄型保険」といわれるのがその商品です。主な貯蓄型保険は以下の4つです。
・終身保険
被契約者が死亡または高度障害状態になったときに保険金を受け取れる保険
・養老保険
被契約者が死亡したときは死亡保険金を受け取れ、満期になったときは満期保険金が受け取れる保険
・学資保険
教育資金を貯める保険で、契約者に万一のことがあった場合は以降の保険料の払い込みが免除される
・個人年金保険
公的年金だけでは生活に不安がある人が任意で加入する保険
2-3.債券
債券には、国が発行する「個人向け国債」、地方自治体が発行する「個人向け地方債」、企業が発行する「社債」などがあります。
株式に比べるとリスクが小さく、損失を被る可能性は低いです。個人向け国債以外は元本保証ではありませんが、債務不履行になった例は多くありません。ただし、日本航空のような大企業の社債が債務不履行になった例もあることから、債券だからといって完全に安全とはいえません。
「外国債券」は米国債をはじめ高金利の商品が多いですが、外貨預金と同じく円高になると受取利息が目減りするデメリットがあります。新興国の政府、公的機関、企業などが発行する「エマージング債券」は金利が高い半面、財政破綻リスクが常にあるので、注意して投資する必要があります。
2-4.株式
株式投資はニュースでも日経平均株価の動向が報じられるので、最もポピュラーな商品といえます。基本的に100株単位の取引になり、株価が高い銘柄に投資するには数十万~数百万円必要な場合もあります。
しかし、最近は単元未満株式を扱う証券会社も増え、1株から投資できるようになったことで、少額で資産運用できるようになっています。
株式投資は値上がり益のほかに、配当金や株主優待による利益も見込めるほか、銘柄によっては権利確定日に保有しているだけで株数が増える株式分割を受けられる場合もあります。
利益を得る方法が多彩なのが株式投資の魅力です。ただし、時として市場が大暴落することがあることを心得て投資する必要があります。
2-5.投資信託
投資信託は投資家から集めた資金を、ファンドマネージャーなどのプロが複数の銘柄を組み入れたファンドを組成して運用し、投資家に利益を分配する商品です。
株式を組み入れる「株式投資信託」と、債券を組み入れる「公社債投資信託」がありますが、商品数は圧倒的に株式投資信託が多いです。
東京証券取引所に上場している商品は「ETF(上場投資信託)」と呼ばれます。株式と同じようにリアルタイムで売買できるため、株式と併用して保有する投資家もいます。
2-6.FX(外国為替証拠金取引)
FXは、ドル/円などの通貨ペアの値動きを予想する商品です。買った通貨、売りから入った通貨が狙った方向に動けば利益が発生し、逆方法に動けば損失が発生します。
FXの大きな特徴にレバレッジ取引があります。レバレッジ取引とは預け入れた証拠金の数倍、数十倍の金額を取引できる仕組みで、最大で25倍まで売買できます。
レバレッジ取引を利用した場合、狙いと反対の方向に相場が動くと損失が通常の取引より数倍大きくなるので資産運用には向いていません。
2-7.暗号資産(仮想通貨)
暗号資産は、インターネット上に存在するデジタル通貨で、代表的な銘柄にビットコインやイーサリアムなどがあります。
海外でETFの組成が認可されたため、人気が高くなっていますが、株式市場が暴落すると暗号資産も連動して下がる傾向があります。
デジタル通貨であるため、ハッカーによって盗まれる事件が時々発生しています。値動きが激しいうえに盗難リスクもあるため、資産運用には向いていない商品です。
2-8.不動産投資
不動産は現物投資の代表的な商品です。一般的にはローンを組んでマンション、アパート、オフィスなどに投資します。
毎月の家賃収入でローンを返済するので、少ない自己資金でも賃貸経営を行うことが可能です。後で詳しく述べるように、不動産投資にはさまざまなメリットがあるので、初心者が投資を始めるのに適しています。
2-9.金
金は昔から「有事の金」といわれるくらい、戦争や金融危機などの地政学リスクが起こっても大きな影響を受けないメリットがあります。
現物資産の金相場は基本的に右肩上がりで上昇を続けています。金現物は貴金属店などで購入できますが、金塊(インゴット)で販売しているほかに、金貨やアクセサリー、置物などに加工した商品を購入することもできます。
ただし、配当金は付かないので、保有しているだけでは利益が生じないのがデメリットです。
2-10.先物・オプション
先物やオプションは期限付きの特殊な商品です。先物取引は、株式や債券をあらかじめ決めた期日・価格で売買することを約束する取引方法です。
もう1つのオプション取引は、あらかじめ決めた期日・価格で原資産を買付けまたは売付けする権利を売買する取引方法です。
価格が狙った方向と逆になった場合でも、期日が来れば強制的に決済させられるので、資産運用には向いていません。
3.資産運用初心者が活用したい制度
初めて資産運用を行う人が活用したい制度として、NISAとiDeCoがあります。どのような制度なのか把握しておきましょう。
3-1.NISA(少額投資非課税制度)
NISAは、運用する商品から生じる売却益や配当金・分配金の税金が非課税になる制度です。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
非課税保有期間 | 無制限 | |
口座開設期間 | 恒久化 | |
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円) | |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託(金融庁の基準を満たした投資信託に限定) | 上場株式・投資信託等 |
対象年齢 | 18歳以上 |
新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの投資枠があります。1年間の非課税枠は成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円の合計360万円です。2つの投資枠は併用することができます。
投資できる商品は、投資枠ごとに上記のように指定されています。最大で1,800万円の投資枠がありますが、売却して枠が空いた場合は再利用できるのが大きなメリットです。
有利な制度ですが、NISAは1つの口座しか開設することができません。ただし、金融機関の変更は年単位で可能です。
3-2.iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で拠出した掛金を使って資産運用し、積み立てた資産を60歳以降に年金として受け取る個人年金制度です。掛金の拠出は65歳まで可能ですが、60歳になるまでは資産を引き出すことはできません。
毎月積み立てる限度額は職業によって以下のように決まっています。
区分 | 毎月の拠出額 | |
国民年金第1号被保険者 (自営業者等) | 6万8,000円 | |
国民年金第2号被保険者 (厚生年金保険の被保険者) | 確定給付型の年金及び企業型DCに加入していない場合(公務員除く) | 2万3,000円 |
企業型DCのみに加入している場合 | 2万円 | |
確定給付型の年金のみ、または確定給付型と企業型DCの両方に加入している場合 | 1万2,000円 | |
公務員 | 1万2,000円 | |
国民年金第3号被保険者 (専業主婦(夫)等) | 2万3,000円 | |
国民年金任意加入被保険者 | 6万8,000円 |
iDeCoで拠出した掛金は全額所得控除の対象になります。さらに資産運用により生じた利益は非課税となり、受け取った年金も税制優遇されるなど大変有利な制度です。
4.初心者が資産運用を行う際のポイント
初心者が資産運用を行う際は、少しでもリスクを低くするために心がけたいことがあります。以下の5つのポイントは資産運用の基本5ヵ条ともいえる内容なので、実践して資産運用の成功につなげましょう。
4-1.資産運用の目的を明確にする
資産運用は目的を明確にすることで、適した運用期間や投資金額、投資商品などが決まります。
例えば、老後資金を用意するためであれば、定年退職まではほぼ一貫して資産運用を続ける必要があります。老後は「年金+配当金」や「年金+家賃収入」など、資産運用から生じる副収入が生活を支えてくれます。
また、子どもの大学進学の費用のために積み立てるのであれば、現在の学年から入学時期まで計算して積立期間を決めれば効率的な運用ができます。
4-2.目的に合う資産運用法を選ぶ
資産運用の目的を明確にしたら、次に目的に合う資産運用法を選ぶ必要があります。
老後資金が目的であれば家賃収入でローンを返済して、完済後に家賃収入の多くが手元に残る不動産投資が最適です。大学進学資金が目的であれば、毎月給与から一定の金額を積み立てる「積立投資信託」が効率的に資産を増やせます。
もし絶対に元本を減らしたくない場合は、個人向け国債が安全で確実ですが、低金利であるため大きく資産が増えることは期待できません。
4-3.余裕資金で少額からスタートする
資産運用は使う予定のない余裕資金で少額から始めることが大事です。
初心者は投資経験が浅いため、買った後に突然相場が急落すると慌てて売ってしまうことがあります。しかし、ある程度投資経験のある人なら、いずれ相場が回復することを知っているので、急落はむしろ安く買えるチャンスと捉えることができます。
ただし、どんなに相場が下がって今なら安く買えるチャンスと思えるときでも、借金して投資を行うことは厳禁です。
急落にあった場合に損失を最小限に抑えるためにも、少額から始めて投資経験を積んでいくことが資産運用を長く続けるコツです。
4-4.長期目線で運用する
資産運用は長期で行うことが前提です。1日2日といった目先の利益を狙うことは「投機」と呼ばれ、資産運用と区別されています。
1~2年の短い期間で考えると、たまたまコロナショックにぶつかった場合などは、株価が大暴落して不安心理から安値で手放してしまう可能性があります。
しかし、20~30年の長期で考えれば、毎年受け取る配当金や分配金を再投資することで買い単価が下がるため、年を追うごとに元本割れリスクは小さくなっていきます。
4-5.分散投資を行う
資産運用のリスクを低くするために必須なのが分散投資です。例えば、株式のみに投資していると、相場が上がっているときは良いですが、経済危機があって大暴落すると大きな損失が発生するリスクがあります。
株式、投資信託、債券、金、不動産などに資金を分散して投資していれば、株式や投資信託が値下がりしている局面でも、債券の利息や不動産の家賃収入が下支えすることで、株式のみの場合よりも評価損が少なくて済みます。
国内最大の機関投資家といわれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオは、国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25%に均等に分散投資することを基本にしています。
5.初心者の資産運用におすすめの不動産投資
初心者の資産運用におすすめなのが不動産投資です。初心者が初めての資産運用で大きな損失を被ったら「二度と資産運用などするまい」と思うでしょう。一方で、利益が出ても雀の涙ほどの収益しか上がらなかったら、資産運用の魅力を実感することができません。不動産は以下のような理由で初心者の投資に適しています。
5-1.初心者におすすめの理由
初心者に不動産投資がおすすめの理由は、需要が安定しているからです。株や金を持たなくても暮らしていけますが、住む所がなければ生活することはできません。不動産は生活必需品といえる投資商品です。
短期間に大きく価格が変動することがなく、家賃収入でまとまった金額を受け取れます。ローンは家賃収入で返済できるので、空室が出ない限り持ち出しをせずに運用できるのがメリットです。
初心者におすすめの不動産は新築ワンルームマンションです。不動産投資で初心者が一番不安に思うのはローンを組んで購入して、入居者が本当に付くのかという点でしょう。
新築物件は常に探している人がいるため、入居者募集すれば借手が現れるのが早いというメリットがあります。特に、都心・駅近のワンルームマンションは通勤・通学の利便性が高いので、単身者の需要が見込めます。
5-2.不動産投資で利益が出る仕組み
不動産投資で得られる利益には2つのタイプがあります。1つは、不動産を第三者に貸し出すことで得る家賃収入、いわゆる「インカムゲイン」です。
もう1つは、購入した不動産が値上がりし、売却時に得られる「キャピタルゲイン」です。ローンを完済後に売却して利益を得るケースもこれに含まれます。
不動産投資の真の利益は、インカムゲインとキャピタルゲインを合わせて計算することで見えてきます。仮に売却益がマイナスだったとしても、それまでに得た家賃収入を含めれば、全体としてプラスになることが多い傾向です。
6.資産運用は資産三分法で「守り・攻め・安定」のポートフォリオが理想
資産運用の世界には「資産三分法」という考え方があります。これは、資産を「現金・株・不動産」の3つに分けて保有するポートフォリオの構築法の1つです。
現金や預貯金といった守りの資産は安全性が高いものの、資産の増加は期待できません。一方、株式や投資信託など攻めの商品はリターンが見込めますが、リスクも高く、相場によっては資産を減らす可能性があります。
この守りと攻めに加え、安定した家賃収入を生む不動産を組み合わせることで、資産三分法に基づいたバランスの良いポートフォリオを実現できます。守り・攻め・安定のバランスを取りながら、資産の成長を目指しましょう。
※記事中で紹介した投資法は一例です。参考程度にご覧ください。
>>【無料eBook】30代で知りたかった「お金」の極意 後悔しない8つのポイント
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