退職するとき、会社に本当の理由を伝えない人も多いようです。そこで気になるのは、みんなの本音。本記事では、複数の調査結果をもとにランキング形式でリアルな退職理由を紹介します。退職を考えている人はもちろん、部下や後輩の退職の相談に乗る立場の人も参考になる内容です。
1万人のビジネスパーソンを対象にした退職理由ランキングは?
はじめに、エン・ジャパンの1万人のユーザーを対象にした『「転職のきっかけ」実態調査』をもとにした退職理由ランキングを見てみましょう。1位から16位までの全回答項目は以下の通りです。
やりがいや将来性など心情的な部分も影響が大きい
※複数回答可、男女計
1位 やりがい・達成感を感じない 41%
2位 給与が低かった 41%
3位 企業の将来性に疑問を感じた 36%
4位 人間関係が悪かった 35%
5位 評価・人事制度に不満があった 26%
6位 残業・休日出勤など拘束時間が長かった 26%
7位 自分の成長が止まった・成長感がない 24%
8位 社風や風土が合わなかった 22%
9位 業界・企業の将来性が不安だった 16%
10位 やりたい仕事ではなかった 15%
11位 待遇(福利厚生など)が悪かった 14%
12位 体調を崩した 14%
13位 他にやりたい仕事ができた 13%
14位 結婚・家庭の事情 10%
15位 転職先が決まったから 5%
16位 その他 3%
(出典:エン・ジャパン『「転職のきっかけ」実態調査』(2019年))
一般的な退職理由としてよく挙げられるのは「給与が低いこと(ランキング2位)」 や「人間関係が悪いこと(同4位)」などです。しかし、本音の退職理由を見てみると、実に数多くの理由があり、併せて「やりがい・達成感を感じない(同1位)」「企業の将来性に疑問を感じた(同3位)」など心情的な部分も影響が大きいことがわかります。
退職理由がひとつではないケースがほとんど
前出の退職理由ランキングを通してわかるのは、「退職の理由はひとつではない」という事実です。「退職のきっかけ」実態調査は、複数回答可の形式になっていますが、16項目すべての回答割合を合計すると341%になります。それだけ多くの理由が退職に絡んでいるといえるでしょう。
退職理由が複数あるイメージの一例は、「給与が低いうえに、やりがいを感じないから会社を辞めたい」「人間関係が悪く給与が低いことに加えて、会社の将来性がとても不安だから転職したい」といった具合です。
このことを踏まえると、会社を辞めたい後輩や部下の相談にのる人は、「退職したい気持ちの裏側には、いくつもの理由があること」を意識するとよいかもしれません。
男性は退職理由で「将来性」を重要視する傾向がある
前出の退職理由ランキングでは、男女で回答割合の差がある項目がいくつかありました。男性の回答割合が高かった項目は次の2つです。
・業界・企業の将来性が不安だった(同4%高)
この結果でわかるように、男性は女性よりも将来性を重要視する傾向があります。逆に、女性の回答割合が高かった退職理由は「体調を崩した」「結婚・家庭の事情」などです。特に「結婚・家庭の事情」と答えた割合は、男性(7%と)女性(13%)で6%もの差があります。
退職のとき上司に本当の理由を伝える人は半数
前出の退職理由ランキングを見渡すと、上司などから「なぜ会社を辞めたいのか?」と聞かれたとき、素直に言いやすいのは全16項目のうち、「体調を崩した(ランキング12位)」「結婚・家庭の事情(同14位)」くらいでしょうか。
ほかの退職理由については、会社の存在意義や根本的な構造を否定しかねないため、ストレートに言いにくい面があるかもしれません。
ちなみに、経営者や人事担当者向けのWebメディア「d’s JOURNAL」が行った調査(2019年実施)によると、退職のとき上司に本当の理由を伝えた割合は47%でした(逆に、伝えなかった割合は53%)。なお、本当の理由を伝えるか否かは、下記の影響があると考えられます。
・本音の退職理由が言いにくい内容かどうか
・ご本人の性格 など
会社に本当の退職理由を伝えるのがよいか、伝えないほうがよいかは、答えのない難しいテーマです。特に、今後も退職する会社と取引をしていきたい、あるいは退職後も上司・同僚・後輩と仲良くしていきたいのであれば、信頼関係を壊さないよう慎重な判断が求められます。
20代〜40代、世代別の退職理由ランキングは?
次に考えてみたいのは、世代によって退職理由にどのような差があるのかということです。例えば、厚生労働省の調査に基づいた、20代〜40代の退職理由ランキング(男性・上位5項目)は次の通りです。
20代後半(25〜29歳)/男性の退職理由ランキング
2位 給料など収入が少なかった(12.8%)
3位 労働時間、休日などの労働条件が悪かった(11.2%)
4位 会社の将来が不安だった(10.7%)
5位 仕事の内容に興味を持てなかった(9.0%)
(出典:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」)
20代後半の退職理由ランキングの特徴は、後ほどご紹介する30代後半で4位の「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由が1位ということです。また、30代後半では、ランキング5位以内に入っていない 「仕事の内容に興味が持てなかった」という理由がランクインしているのも特徴的です。
30代後半(35〜39歳)/男性の退職理由ランキング
2位 労働時間、休日などの労働条件が悪かった(10.0%)
3位 給料など収入が少なかった(9.7%)
4位 職場の人間関係が好ましくなかった(9.6%)
5位 能力・個性・資格を生かせなかった(6.2%)
(出典:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」)
30代後半の退職理由1位の「会社の将来が不安だった」は20代では4位となっており、この世代で特に悩む人が多いことが垣間見られます。加えて、20代後半の退職理由で5位以内に入っていなかった「能力・個性・資格を生かせなかった」がランクイン。ちなみに、この退職理由は40代後半でも4位となっています。
40代後半(45〜49歳)/男性の退職理由ランキング
2位 職場の人間関係が好ましくなかった(7.6%)
3位 会社の将来が不安だった(7.2%)
4位 能力・個性・資格を生かせなかった(7.1%)
5位 仕事の内容に興味を持てなかった(3.8%)
(出典:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」)
40代後半になると、30代後半で3位だった「給料など収入が少なかった」が1位に浮上します。ただし、中高年の転職・退職は逆に収入を減らす結果になるケースもよくあります。転職後の収入を重視するなら、労働市場でのご自身の価値を見極めたうえで、退職に踏み切るのが安全かもしれません。
転職後に勤め先に満足している割合は50%超
最近では、国内でも労働者の流動性が高まり、転職が当たり前になりつつあります。それだけに、「本当に退職すべきか」「退職理由をどのように伝えるか」などで悩むシーンも増えていることでしょう。迷っている人は、本記事の内容などを参考にしながら、後悔のない選択をしましょう。
ちなみに、厚生労働省の「令和2年転職者実態調査の概況」によると、転職後に現在の勤め先に満足しているかという設問への回答は、以下のような結果になっています。
・不満足 11.4 %
・どちらでもない 34.5 %
※満足は「満足」「やや満足」の合計、不満足は「やや不満」「不満」の合計
退職するか否かそのもので迷っている人は、こちらの結果もぜひ参考にしてみてください。
>>【無料eBook】30代で知りたかった「お金」の極意 後悔しない8つのポイント
【オススメ記事】
・お金だけで幸せになれる?老後に必要なものを考える
・ビジネススキルに効果を発揮「マインドフルネス」について
・知っておきたい額面と手取りの基本
・進む働き方の多様化!「エンプロイアビリティ」とは
・増加する早期退職に備えて! 40代・50代の転職と「成功」に必要なこと