不動産を遺産相続したときの手順と相続方法のポイントとは?
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八木 チエ
八木 チエ
株式会社エワルエージェント 代表取締役|宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち、中立的な立場で不動産投資に関連する情報をお届けします。書籍、メディアなどに記事掲載の実績多数。

誰の身にも親との永遠の別れが訪れます。そうした別れに備えて、「親から不動産を遺産相続するときの手順を知りたい」「不動産を分割して相続する方法を知りたい」と考えられる方もいらっしゃることでしょう。不動産を相続する手続きは複雑です。そこで本稿では、「不動産を遺産相続するときの手順」や「不動産を分割して相続する方法」についての概要をわかりやすく解説します。

不動産を相続したときに行う手続きの手順

不動産を相続したときの手順は主に以下の5つです。

1. 遺言書の有無を確認する
2. 法定相続人を確定する
3. 相続財産を調べる
4. 遺産分割協議書を作成する
5. 必要書類を揃える

それぞれについて説明していきますので見ていきましょう。

1.遺言書の有無を確認する

親が亡くなった場合、死亡届を市区町村の役場に提出(7日以内)する必要があります。その後、被相続人(亡くなった人)が遺言書を残しているかどうかを確認します。

遺言書の有無によって、その後の相続手続きが異なるので、この確認はしっかり行う必要があります。

遺言書が残されていたら、書かれている内容にそって相続手続きを行います。

一方で、遺言書が残されていない場合には、遺産分割協議を行い相続人が相続する財産を決める必要があるので手間がかかります。

2.法定相続人を確定する

遺言書の有無が確認できたら、法定相続人を調査して相続人の確定を行います。

法定相続人を確定する際に遺言書があり、相続人や相続内容について記載がある場合は、記載されている人が相続人になるため、遺言書の有無と内容は非常に重要です。

一方で、遺言書や遺言書に書かれている内容に相続人の記載がない場合は、民法にしたがって相続人を決定します。

法務局に行き、必要書類※を提出すると、被相続人の戸籍から判明する相続人を一覧にした図を作成してれくるので、活用してもいいでしょう(法定相続情報証明制度)。

法務局 必ず用意する書類/必要となる場合がある書類(PDF形式)

民法によると、「配偶者と子や孫、被相続人の両親や兄弟姉妹」が相続人になることが可能です。

ただし、法定相続人は以下のように順位が決まっており、上の順位の人がいる場合には下の順位の人は相続人になることができません。

・常に相続人:配偶者
・第1順位:被相続人の子や孫(直系卑属)
・第2順位:被相続人の父母や祖父母(直系尊属)
・第3順位:被相続人の兄弟姉妹

例えば、配偶者と息子が生きているケースでは両親は相続人になれません。

3.相続財産を調べる

法定相続人が確定したら次は相続財産を調査します。相続財産とは預金、不動産、貴金属、車などの価値があるものになります。

ただし、借金などのマイナスの財産も相続財産になるため、金融機関の借入額などを調べる必要があることも覚えておいてください。

不動産投資ローンや住宅ローンが残っていた場合には、これらのローンも当然相続対象になります。

とはいえ、団体信用生命保険(団信)に加入している場合には、保険会社がローンの残債を弁済してくれるので、ローンを相続することはありません。

遺産を相続するにあたっては、現金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナス資産も相続することになります。

プラスの財産よりもマイナス資産が多いときには、相続放棄を選択肢に入れてもいいでしょう。

ただし、プラスの財産も放棄することになるので、慎重に判断する必要があります。

4.遺産分割協議書を作成する

遺言書がないときや、遺言書に相続財産の分配が記載されてないときは、遺産分割協議を行う必要があります。この際に相続人ごとの相続財産の分割の仕方や、割合を記載した書類である遺産分割協議書を作成するのが一般的です。

ちなみに、遺産分割協議書は必ずしも作成する必要はありません。相続人全員で遺産分割協議を行っていれば法的には問題はありません。

しかし、後に言った言わないのトラブルを避けるために作成するケースもあります。

5.必要書類を揃える

不動産を相続する場合に必要となる書類は以下の9つです。

1. 遺言書
2. 遺産分割協議書(相続人が1人、遺言書に分割の記載がある場合は不要)
3. 相続人全員の戸籍謄本
4. 相続人全員の印鑑証明書
5. 被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
6. 被相続人の住民票の除票(本籍地が載っているもの)
7. 不動産を相続する人の住民票
8. 不動産の固定資産評価証明書
9. 不動産の登記事項証明書

上記のように多くの書類が必要になります。

不動産相続登記を行う

相続財産が決まり書類も揃ったら、最後に行う手続きが不動産相続登記になります。

不動産相続登記とは、相続した不動産の名義を被相続人から相続した人に変更する手続きのことです。

相続した不動産の名義変更を行わないと、相続した人が所有者とは認められません。その不動産があるエリアを管轄する法務局に行き、不動産相続登記の手続きを行ってください。

管轄の法務局がわからない場合は、法務局のホームページに「管轄のご案内」が掲載されているので、そちらで確認ください。

法務局 管轄のご案内

相続人が複数いて不動産を分割して相続するときの方法

相続人が複数いる場合、不動産を分割して相続するケースがあり、その方法は以下の4つが挙げられます。

・現物分割
・代償分割
・換価分割
・共有分割

それぞれについて見ていきましょう。

現物分割

現物分割とは不動産や車などを売却して現金に換金することなく、相続人ごとに引き継ぐものを分ける方法です。例えば、長男は不動産、次男は預金、といったようになります。

現物をそのまま相続するため、名義変更の手続きだけで相続できるので、手続きが簡単なことや遺産評価に対する不満などのトラブルが起こりにくいメリットがあります。

ただし、相続する財産によっては不公平になることもあります。

代償分割

代償分割とは相続人の一部が現物で遺産の相続を行い、現物での相続ができなかった相続人や相続した金額が低い相続人に代償として自分の資産を渡すという方法です。

例えば、相続人数が2人の場合で5,000万円の不動産を相続する場合だと、5,000万円の不動産を1人が引き継ぎ、不動産を相続できなかった相続人に2,500万円支払う方法になります。

不動産などの財産を相続した人が現金を払う必要があるため、相続する財産に相当する現金を持っておく必要があります。

換価分割

換価分割とは不動産や車などの価値のある相続財産を売却して、売却したお金を相続人に分割する方法です。

相続財産を売却して現金に変えるため、1円単位での分割が可能で、相続人によって不公平になることがありません。

また、遺産を現金で受け取ることができるため、相続した遺産から相続税を支払うことが可能といった利点があります。

しかし、遺産を売却する必要があるため現金化に時間が掛かることや、相続財産を売却する際に相続人全員の同意が必要といった手間も掛かります。

共有分割

共有分割とは不動産などの権利を相続人で共有する方法で、分割して相続する方法です。権利を共有するので、不動産を売却するにも修繕を行うにも相続人全員の同意が必要になります。

また、相続人が他界した場合、相続人の配偶者や子どもに権利が移るため共有者が増えます。

こういった事態になると、相続した不動産を売却するなどの手続きがますます手間になります。共有分割は上記のようにデメリットが多いため、避けたほうが無難といえるでしょう。

滞りなく相続するために専門家に相談しよう

不動産を相続するには多くの手続きが必要です。特に、不動産を複数の相談人に分割して相続する場合は手続きがより複雑になります。

そのため、手続きや不動産の分割相続については深い知識がないと滞りなく相続することができません。

相続のためとはいえ、一般の方々がそれを勉強し深く理解するのはかなりハードルが高いといえます。

滞りなく相続を行うためには、最低限の流れと知識を習得したうえで、相続に詳しい弁護士や司法書士などに相談するのがいいでしょう。

もしくは、不動産会社によっては不動産の相続に詳しい専門家が在籍している会社もあるので、そうした専門家に相談してみることをおすすめします。

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