株価上昇が長く続くと、「より多くのお金を投資に回して資産を増やしたい」と思うのではないでしょうか。しかし、株価が永遠に上がり続けることはありません。何の前兆もなく、急に株価が暴落する可能性もあるので、常にリスクに備えておくことが大切です。今回は、突然の株価暴落に備えて個人投資家がやっておくべきことを5つ紹介します。
目次
株価暴落は定期的に発生している
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年の前半は世界的に株価が暴落しました(コロナショック)。しかし、先進国の金融緩和や新型コロナ関連の経済対策によって数ヵ月で株価は回復・上昇した後、現在は一進一退の状況が続いています。
東京株式市場では、2021年2月に日経平均株価が30年半ぶりに3万円台を回復しました。しかし、実体経済との乖離から「今回の株価上昇はバブルではないか」との声もあります。
過去の相場を振り返ると、株式市場では定期的に株価暴落が発生しています。たとえば、2000年以降では「ITバブル崩壊(2000年)」「リーマンショック(2008年)」「チャイナショック(2015年)」などがあり、ピーク時からの下落率は30~50%程度となっています。
何の前触れもなく株価が急落すると、短期間で損失が拡大します。生活費以外のお金を全て投資に回している場合、株価急落のような不測の事態に直面すると、経済的にも精神的にも大きなダメージを受けることになるので注意が必要です。
投資に成功するかは株価暴落への備えで決まる
株価は常に変動しており、さまざまな要因で上昇と下落を繰り返しています。今回の新型コロナのように、将来何が起こるかはわからないため、株価暴落を予測するのは難しいでしょう。
お金を大きく増やせるのが理想ですが、損失を最小限に抑えられるように、リスク軽減をはかりながら投資をする必要があります。また、短期の値動きに一喜一憂せずにすむ投資方法を選択することも重要です。株式投資に成功するかは、株価暴落への備えで決まるといえます。
株価暴落に備えて個人投資家がやっておくべき5つのこと
株価が暴落しても、損失を最小限に抑えながら投資を続けていくにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、株価暴落に備えて個人投資家がやっておくべきことを5つ紹介します。
預貯金を多めに保有しておく
投資は元本保証ではないので、株価が上昇すれば利益を得られますが、暴落すると大きな損失が生じます。突然の株価暴落に慌てないためには、預貯金を多めに保有しておくことが大切です。
まとまった預貯金があれば、投資で損失が生じても当面の生活に困ることはありません。「長期的には株価が回復する」と考えられるなら、「投資商品を売却せずに持ち続ける」という選択もできます。
生活防衛資金として、最低でも生活費用として数ヵ月分の預貯金を確保しておくといいでしょう。個人向け国債も元本保証ですが、原則として購入後1年を経過しないと中途解約はできません。いつでも引き出せるように、生活防衛資金は預貯金で持っておくと安心です。
リスク許容度を見直す
リスク許容度とは、投資で耐えられるリスクの度合いのことです。株価が暴落すると資産が大きく目減りする恐れがあるので、リスクを取りすぎていないか見直しておく必要があります。過去の株価暴落では、日経平均株価は30~50%程度下落しているので、一つの目安にするといいでしょう。
たとえば、保有資産が1,000万円で、株価が50%下落するケースについて確認してみましょう。1,000万円をすべて株式に投資した場合、株価暴落によって保有資産は半分の500万円になってしまいます。しかし、「株式500万円+預貯金500万円」なら、株式が半分の250万円になったとしても、資産全体では750万円(株式250万円、預貯金500万円)で損失は抑えられます。
このように、投資商品の割合を減らして預貯金の割合を増やすとリスク軽減が期待できます。ただし、リスクを減らすほどお金が増えにくくなるデメリットもあるので注意が必要です。
リバランスを行う
リバランスとは、「保有資産の価格が変動して当初の割合が崩れたときに資産の配分を見直す」ことをいいます。
たとえば、「株式50%:債券50%」で投資を始め、株価の上昇によって「株式70%:債券30%」の割合になったとします。その場合、株式を売却するか債券を買い増してリバランスを行い、当初の「株式50%:債券50%」に戻します。
定期的にリバランスを行うことで、リスクの取りすぎや機会損失を防ぐ効果が期待できます。あまり神経質になる必要はありませんが、年1回程度は運用状況をチェックし、必要に応じてリバランスを行うといいでしょう。
長期保有しやすい商品を選ぶ
株価暴落に備えるには、長期保有しやすい商品を選ぶことも大切です。株式投資であれば、上場したばかりの新興企業より、時価総額が大きい東証一部上場企業のほうが株価の変動を気にせずに長期保有できるかもしれません。
新興企業は将来性があって株価上昇が期待できますが、順調に業績を伸ばしていけるか不透明な部分もあります。一方、大企業は大きな株価上昇は期待できないかもしれませんが、業績が安定していれば配当を目的に長期保有できます。
また、不動産は株式に比べると値動きが緩やかな傾向にあります。個別性が高く物件次第ではありますが、収益性の高い物件に投資すれば長期にわたって安定した家賃収入が期待できるでしょう。
分散投資を心掛ける
分散投資とは、1つの資産に資金を集中して投資するのではなく、複数の資産に分散して投資することです。特定の資産が値下がりしても他の資産の値上がりで損失をカバーできるため、リスクの軽減(分散)が期待できます。
「複数の銘柄に投資する」「株式だけでなく、債券や不動産にも投資する」のように、意識して投資先を分散することで、株価暴落が発生しても損失を抑えることが可能です。
株価暴落に強い2つの投資方法
個人投資家が株価暴落を過度に恐れることなく投資を続けるには、投資方法の選択も重要になります。ここでは、株価暴落に強い投資方法を2つ紹介します。
インデックス投資
インデックス投資とは、特定の株価指数に連動する運用成果を目指して投資する方法です。代表的な株価指数は以下の通りです。
- 日経平均株価(日経225):日本を代表する東証一部上場企業225社
- 東証株価指数(TOPIX):東証一部に上場するすべての企業
- S&P500:米国市場に上場する主要企業500社
- MSCIコクサイ・インデックス:日本を除く先進国の株式
- MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス:世界中(先進国・新興国)の株式
たとえば、TOPIXに連動する投資信託(インデックスファンド)を購入すれば、東証一部上場企業全体に分散投資ができます。インデックスファンドは投資テーマが古くならず、市場平均のリターンが期待できるため、長期保有しやすいのがメリットです。
また、定期的に一定額を購入する積立投資にも対応しています。金融庁の「つみたてNISA早わかりガイドブック」によれば、資産や地域を分散した積立投資を長く続けることで、結果的に元本割れの可能性が低くなる傾向にあることがわかっています。
ちなみに、つみたてNISAは年間40万円投資が可能で、最長で20年間運用できます。通常投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、つみたてNISAによって得た運用益は非課税となっています。
短期の値動きに一喜一憂したくない場合は、インデックスファンドの積立投資に取り組むといいでしょう。
参考:金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」
不動産投資
不動産投資は、マンションやアパートなどの収益不動産を入居希望者に貸し出して家賃収入を得る方法です。しかし、リーマンショックやコロナショックのような経済的な危機においても、家賃は株価のように一度に大きく下落することはありません。一般的には賃貸借契約は2年程度の期間で締結していることが多く、また引っ越しには多くの費用と労力が必要なため、不動産投資の収益である家賃には価格の硬直性があるといわれています。入居者がいれば長期にわたって安定した収益が期待できます。
大きく経済が打撃を受け、保有する株価などが下落したときにポートフォリオの一部に安定収入をもたらす不動産があると精神的にも楽だと思えるケースが多いようです。
不動産を購入するにはまとまったお金が必要ですが、金融機関の融資を利用して購入することも可能です。株式などの投資には自己資金を使い、自身の信用力を担保として不動産投資は融資という他人資本で投資すると資金の色分けを明確にしている投資家も多くいます。
長期的に安定したインカムゲインを目的に検討するといいでしょう。
大切な資産を守るため株価暴落に備えよう
今は順調に利益が出ていても、株価は社会的な要因によって変動するため、今後どのような値動きをするかは予測することができません。「リーマンショック」や「コロナショック」のようなことが起こり、突然株価が暴落する可能性はいつでもあるといっていいでしょう。
投資を行う上で大切なことはリスクを分散させることだといわれています。今回ご紹介した株価暴落の備えをまだ実践されてない方は、この機会に始めてみてはいかがでしょうか。
融資期間に関するQ&A
Q1.融資を受けることが大切なのはなぜですか?
A.以下の理由があげれます。
・レバレッジが効かせられる レバレッジとは小さな力で大きなものを動かす「てこの原理」のことをいいます。自己資金だけでなく、金融機関から融資を受けることで、自己資金に対する利回りが高くなります。
Q2.金融機関はどのようにして融資期間を決めているのですか?
A.金融機関が融資期間を決める際、基準としているのが「法定耐用年数」です。詳しくは第2章の「2.銀行はどうやって融資期間を決めているのか」をご覧ください。
Q3.融資期間が長くした場合のメリット・デメリットを教えてください。
A.融資期間を長くした場合のメリットは以下の通りです。
メリット
- 月々の返済額が少なくなる
- 手元に残ったお金を預金や急な出費に回せる
- 手元に残ったお金を新たな物件の購入にあてられる
デメリット
- 利息が高くなる
- ローン保証料が高くなる
- 老後もローンを払い続ける可能性がある
詳しくは第3章の「3.融資期間を長くした場合のメリット・デメリット」をご覧ください。
ちなみに融資期間を短くした場合のデメリットは以下の通りです。
メリット
- 月々の返済額が多くなるが元本をはやく返済することができる
- 支払総額が少なくて済む
- ローンの保証料が安くなる
デメリット
- 月々の返済額が多くなる
- 融資期間の延長が基本的にはできない
詳しくは第3章の「4.融資期間を短くした場合のメリット・デメリット」をご覧ください。