株価3万円回復で見えたREITの魅力と割安感
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丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

2021年に入り日経平均株価がバブル期以来の3万円大台回復を達成しました。新型コロナウィルス感染拡大の影響で企業業績が悪化する企業が目立つ中、なぜ日米ともに株価の上昇が続くのでしょうか。世界的に株高が続く背景と株価の上昇で割安となったREITの魅力を紹介します。

平均株価が30年ぶりに3万円を回復

日経平均株価は2021年2月15日に前日比564円08銭値上がりし3万84円15銭を付けました。平均株価が終値で3万円台の値を付けたのは、バブル期の1990年8月2日以来実に30年6ヵ月ぶりのことです。バブル期を知る投資家には、感慨深いものがあるのではないでしょうか。日経平均株価は、新型コロナの感染拡大で世界的な株価暴落が起きた2020年3月19日に1万6,358円19銭(場中)まで急落。

このとき多くの人が「コロナの影響から株式市場が立ち直るには数年かかる」と感じたことでしょう。しかし意に反して約半年後の同年9月3日に2万3,465円53銭(終値)を付け、コロナ前の高値を更新。その後も米国市場の株高に連動する形で上昇し、上述した3万円の大台回復に至ったのです。今後の注目は1989年12月29日終値の史上最高値3万8,957円44銭をいつ超えるかでしょう。

世界の余剰マネーが投資に向かっている

世界的にコロナ禍でありながら、どうして株高が続いているのでしょうか。大きく影響しているのが世界的な超低金利です。マイナス金利の国もあるように、もはや金利は消えたに等しい状況が続いています。機関投資家も運用難に陥り「株式に投資せざるを得ない」という事情があるのです。機関投資家が目標利回りを達成するために株式の配当利回りの高さは大きな魅力といえるでしょう。

日本最大の機関投資家となるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もポートフォリオの約50%を株式で運用しています。2001年の運用開始以来、2020年度第3四半期までに得た利子・配当金収入は実に39兆5,730億円です。超低金利で債券に魅力がなくなった以上、株式に資金がシフトするのはやむを得ない現実があります。

さらに超低金利に加えて、コロナ以降では各国が大胆な経済対策を講じ大量の資金を社会に回しているのも、投資家の買い安心感を誘っている要因の一つです。日経平均株価は3万円、ダウ平均株価は3万米ドルの大台に乗せていますが、余剰マネーは株式だけでなく暗号通貨(仮想通貨)や金相場にも向かっています。なかでも暗号通貨の代表的銘柄となるビットコインの価格は、投機的な狂熱相場になりました。

ビットコイン価格は2020年9月の時点で「110万円台のボックス相場」というおとなしい動きでした。ところが同年10月下旬から上昇を開始し同年11月初旬には160万円台に乗せます。その後上昇ピッチが速まり2020年12月に200万円台、2021年1月に300万円台と次々に水準を切り上げ2021年2月21日にはついに終値で607万8,600円の史上最高値を付けました。

2021年3月13日終値時点では、667万5,086円まで上昇しており依然として上値を切り上げています。ビットコインには、株式のような価格の裏付けになる指標がないため、完全に投機的な動きと判断できるでしょう。しかしビットコインが単独で大相場になっているわけではありません。高値を付けたのは株価が3万円に乗せた時期とほぼ同じです。

そのため「余剰マネーが暗号通貨に向かった」と考えるのが妥当なのかもしれません。

REITも上昇続くがまだ高利回り銘柄が多い

株式と歩調を合わせるようにJ-REIT(上場不動産投資信託)の上場銘柄で構成する東証リート指数も上昇しています。東証リート指数は、2020年2月21日の2,255.72ポイントからコロナの影響が顕著になった同年3月19日には1,138.04ポイントまで約半値へつるべ落としの暴落相場となりました。オフィス空室率の悪化などが影響したものと推測されます。

しかし東証リート指数は、その後急速に反騰し2021年2月19日には2,000ポイント大台を回復。株式は、3万円台回復の過程で配当利回りが低下し2021年2月末の東証1部単純平均利回りは1.76%と2%台を割り込んでいます。配当利回りの魅力は、次第に薄れつつあるといえるでしょう。一方J-REITは、まだ高利回り銘柄が多く2021年2月時点での分配金平均利回りは3.71%と魅力的な水準です。

2020年3月12日時点のJ-REIT分配金利回りランキング上位9銘柄はすべて5%以上となっています。さらに上場している61銘柄のうち56銘柄が3%以上の利回りです。つまりほとんどの銘柄が、株式の単純平均利回りを上回るパフォーマンスをあげていることになります。利回りで投資するなら明らかにJ-REITが割安です。

J-REITは、なぜこのように利回りが高いのでしょうか。その秘密は、J-REITならではの分配金ルールにあります。通常の株式会社は、税制上の所得に対して法人税が課税されますが、J-REITは収益の90%以上を分配するなど一定の条件を満たせば法人税が免除されるのです。株式会社で問題になる内部留保もないため、収益のほとんどが分配金として還元される仕組みになっています。

インカムゲインを目的にする投資家には、最適な投資先といってよいでしょう。

REITにも分割や優待がある

株式投資は、値上がり益や配当金のほかに株式分割や株主優待があることも魅力の一つです。追加資金を投じることなく保有株数が増える株式分割は、主に株価が高くなりすぎた場合に行われます。例えば、株価が1万円になった銘柄が1:2の株式分割を行い株価が5,000円に下がれば投資家が買いやすくなり市場に流通する株数が増えるため、取引が活発になる効果が期待できるでしょう。

実は、J-REITでも投資口分割が行われることがあります。分割が行われると一時的に1口価額は下がりますが再び上昇に転じたときに資産増加効果が高くなるため、投資にとってプラス要因となる場合が多いのです。またJ-REITには、数は少ないですが投資主優待制度を実施している銘柄があります。ホテルを保有している銘柄ならホテル宿泊料の割引がスタンダードな優待内容です。

もう1つ多いのが介護福祉施設の入居一時金割引。そのほかでは、家電量販店の買い物券など株主優待で一般的な内容の優待があることも注目です。高利回りの分配金と投資主優待を合わせると、J-REITは株式に引けを取らない魅力的な投資対象といってよいでしょう。

現物不動産も早めの購入が賢明か

一方で現物不動産の販売価格を注視することも必要です。コロナ禍であっても新築分譲マンションの販売価格は、上昇傾向が続いています。不動産経済研究所の調査「全国マンション市場動向-2020年のまとめ-」によると2020年の首都圏マンション価格は6,083万円と史上初の6,000万円台に乗せました。これで4年連続の上昇です。

東京23区に限定すると7,712万円となり前年より426万円の大幅な上昇を記録しています。コロナ禍にもかかわらず逆行高になっているのは株価と同じです。しかし、急騰という感じではなく毎年じりじりと水準を切り上げているのがマンション価格の特徴となります。新築マンション価格の上昇は、投機的な動きではなく主に建築資材や人件費の上昇によって販売価格が高くなっているのが要因です。

建設業界を取り巻く状況が変わらない限り、今後も緩やかな上昇が続く可能性は高いでしょう。マンション経営を考えているなら現物不動産も早めの購入が賢明かもしれません。コロナ禍の株高には、危うさもあります。株高や暗号通貨の急騰に熱狂しているときほど、価格の裏付けがしっかりとしているREITや現物不動産で堅実な運用を目指すほうが、長い目でみてプラスといえるのではないでしょうか。

※この記事は2021年3月4日現在の情報を基に構成しています。株価や各種の指標は変化しますので、投資の際は最新の情報をご確認ください。

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