マンション経営に興味をお持ちの方にとって、最も気になるのはメリットとデメリット(リスク)だと思います。その両方を理解したうえで経営に取り組めば、成功率は高くなるでしょう。重要なのは「現実に即した正しい知識」です。
マンション経営に対するイメージや疑問として考えられるものを挙げてみると、
- 色々メリットがありそうだが、自分もそのメリットを得られるのか
- 毎月の家賃収入があれば、老後は安泰?
- でも失敗したら大損するのでは?
- 成功させるために知っておくべきことは?
- 「コロナ禍」の影響は?これから始めて成功できる?
といったものがあると思います。少なくともこれらのうち1つは該当するものがあるでしょうし、なかにはいくつも当てはまる方もおられるでしょう。
そこで当記事では、マンション経営がもつ本質的なメリットと、その一方で知っておくべきリスク、さらに「コロナ禍」による影響と今後に向けてマンション経営を成功させる方法について解説していきます。マンション経営に少しでも関心がある方にとって重要な内容なので、ぜひ最後までお読みください。
1.マンション経営の4大メリット
最初に、マンション経営が持つ4つの本質的なメリットについて押さえておきましょう。これらは新築、中古にかかわらずマンション経営に共通したメリットです。
1-1.安定的な収入源の確保
マンション経営で得られる最大のメリットは、家賃収入です。入居者がいる限り毎月安定的な収入が得られるのは、ほぼすべての方がイメージされているメリットだと思います。その仕組みを作ってしまえば、長期間にわたって不労所得に近い収入が入り続けるので、将来の生活を安定させてくれます。
特に老後になってからも入り続ける家賃収入については年金と同様の効果があるので、マンション経営の年金効果と呼ばれることもあります。
1-2.レバレッジによる資産形成効果
「レバレッジ」は、「てこの原理」の「てこ」のことです。マンション経営では銀行など金融機関の融資を利用することができるため、必要な資金の全部を用意しなくても始めることができます。
たとえば3,000万円の区分マンションを購入し、そこから年間120万円の家賃収入が得られているとしましょう。諸経費や税金などを考慮せず、単純に計算すると利回りは以下のように求められます。
120万円 ÷ 3,000万円 × 100 = 4%
しかし、自己資金が500万円で同じ物件を購入したとすると、自己資金に対する計算式は以下になります。
120万円 ÷ 500万円 × 100 = 24%
なんと24%という高い利回りになりました。これは物件購入費用のうち2,500万円を融資によって調達したからです。このように資金効率が高いのはマンション経営の大きなメリットであり、資金効率を高められる効果のことをレバレッジ効果といいます。
こうした資金計画でマンション経営を始めて、家賃収入からローン返済をすれば、他人資本で投資して、他人からの家賃収入で融資の返済に充てることが可能です。もし、家賃収入でローンを完済できれば、自己資金わずか500万円で3,000万円のマンションを手に入れたことになります。これがマンション経営の資産形成効果で、レバレッジ効果も併せて融資によって生まれるメリットです。
1-3.生命保険効果
先ほどマンション経営と融資の関係について述べましたが、マンション経営に利用できる金融機関の事業性ローンには団信(団体信用生命保険)という保険が付帯しています。もし、マンションオーナーがローン返済中に亡くなったり、病気などで返済不能になってしまった場合に、保険金でローンを完済する仕組みで、金融機関のリスクヘッジとなります。
マンション経営を始める際には融資を利用することが大半なので、この団信が生命保険の代わりになります。近年では団信の補償内容が充実しており、すでに生命保険に加入している人であっても団信に置き換えることが可能です。マンション経営のメリットとして知られるこの効果は、生命保険効果とも呼ばれています。
1-4.インフレ対策
インフレ(インフレーション)とは、通貨が過度に供給されることで相対的な価値が低下し、モノの価格が高くなることです。その逆にデフレ(デフレーション)とはモノに対して通貨の価値が高くなる(つまり物価が低くなる)ことで、日本経済は長らくデフレに苦しんできました。
かつて安倍内閣が推進した「アベノミクス」ではこれを是正するために大規模な金融緩和を実施し、インフレターゲットといってインフレの目標設定をすることで通貨を大量供給し、物価を引き上げる政策がとられました。その結果は株価にも表れ、1万円を下回っていた日経平均株価が2.3倍の上昇をしました。
この政策は菅政権発足後も続けられており、新型コロナウイルス感染拡大による経済へのダメージを抑える目的もあってさらに強化されています。その結果、今後日本経済がインフレに振れる可能性が高くなるわけですが、そんな局面に向けて価値が目減りしてしまうかもしれない現金だけで資産を持っておくのはリスキーです。
マンション経営は資産を現金以外の不動産で保有するため、インフレになると不動産の価値は相対的に高くなります。この効果を利用すると、マンション経営が将来に向けた資産防衛策となります。
2.新築区分マンション経営が持つ3大メリット
マンション経営に共通する4大メリットに続いて、ここでは特に新築区分マンション経営にフォーカスして3つのメリットをご紹介します。
2-1.新しい物件は集客力が高い
「新車」「新築」「新型」「初物」といった言葉には、いずれも新しいものに対する特別な価値を感じさせるニュアンスがあります。こうした言葉に象徴されるように、日本人には総じて新しいものを好む国民性があります。
この国民性は不動産に対する価値観にも表れており、新築物件や新築から年数の経っていない築浅物件には特別な価値があります。集客力が高いため空室になりにくく、また高めの家賃設定であっても新築であればそれを許容する入居者が多いので、有利な立場でマンション経営に臨むことができます。
2-2.不具合が起きにくく修繕コストがかからない
マンションにはさまざまな設備がありますが、新築マンションはその時点での最新設備が整っているだけでなく、まだ劣化していないので不具合が起きにくく、良好な状態を維持しやすい特性があります。汚損、劣化してしまった部分によっては修繕コストも看過できない金額になりますが、新築マンションにはそういったコストの心配がほとんどありません。
2-3.本業がある人は節税効果が大きくなる
すでに区分マンション経営をしている方、もしくはこれから始めたいとお考えの方の多くは、サラリーマンなど本業をお持ちであることが多く、その本業で所得税などの税金が課税されています。
不動産を所有するため、マンション経営には減価償却による節税効果があります。減価償却とは所得額から差し引くことで税額を減らすことができる経費の一種で、「所有している不動産の価値が(会計上)目減りしていく分」を帳簿上の経費として計上することができます。多くのマンションは鉄骨鉄筋コンクリート造なので、法定耐用年数は47年です。マンション物件を購入した時から47年をかけて毎年1年分ずつ帳簿上の価値が減じていき、47年後にはゼロになります。
経費とはいうものの減価償却費はキャッシュが出ていくわけではなく、帳簿上の経費なので節税の観点からメリットが大きいとされています。さらに新築マンションだと減価償却期間を最も長く経費計上できるため、その分節税メリットも大きくなります。
3.押さえておきたいマンション経営のリスクと対策
マンション経営にはメリットだけでなく、特有のリスクもあります。ここでは押さえておくべきマンション経営のリスクについても解説します。
3-1.空室リスク
マンション経営に限らず、アパートやオフィスビル経営など不動産投資に共通する最大のリスクが、空室リスクです。家賃収入は所有物件に入居者がいてはじめて発生するものなので、空室のままだと家賃収入はゼロです。
このリスクをいかに抑えるかがオーナーにとって重要な課題となるわけですが、そこで重要なカギを握るのが築年数と立地条件です。
先ほど述べたように、日本人の国民性もあって新築や築浅のマンション物件は人気を集めやすく、この人気が空室対策になります。また、マンションの入居者は駅から近いことや都心へのアクセスがよいことなど利便性を重視する傾向が強いので、立地条件に恵まれた物件は築年数が古くなっても人気を維持しやすくなります。
この2つの観点から言えることは、新築マンションの強みを理解し、新築ではなくなったときに向けて立地条件のよい物件を選ぶことが重要です。
3-2.家賃滞納や入居者トラブル
入居者がいたとしても、家賃を滞納するなどの問題が起きると、家賃収入が入らなくなってしまいます。また、マンションは集合住宅なので、入居者同士でトラブルが起きる可能性もあります。
こうしたリスクをカバーするには、管理会社に委託するのが一般的です。空室リスクをカバーする目的と併せて、サブリースといって家賃保証をつけることもできます。ただし、サブリースは条件によってはオーナーが不利になることもあるので、利用する際にはしっかりと条件を確認し、収支シミュレーションすることが重要です。
3-3.建物の経年劣化
新築時はピカピカのマンションであっても、時の流れに勝つことはできません。経年劣化といって、不可抗力によって物件が古くなり、劣化していくことは避けられません。それは加齢によって人間が老化を避けることができないのと同じです。
しかし、人間にはアンチエイジングといって努力によって老化の速度を遅くすることができる医学があります。これと同様、マンション物件も適切なメンテナンスにより、経年劣化を最小限に食い止めることは十分可能です。建物が古くなるにつれて、適切なメンテナンスをしているか否かで物件の状態は異なるため、資産保全の観点からも所有物件は大切に管理するべきです。
3-4.自然災害によるダメージ
東日本大震災をはじめとする地震災害や、台風、集中豪雨による気象災害など、日本列島全体で災害リスクが顕在化しています。マンションは鉄骨鉄筋コンクリート造が大半で頑丈な建物が多く、比較的災害に強いとされています。しかし、ハザードマップなどを活用して、少しでもリスクの低い立地条件を選ぶなど、自然災害リスクを意識することは必要でしょう。
所有物件へのダメージを金銭的にカバーできるよう、保険にしっかり加入しておくことも有効です。
当記事では区分マンション経営のメリットを中心に解説しています。一棟マンション経営だと建物全体を所有するため、その建物が自然災害によるダメージを受けてしまうと被害が甚大ですが、区分マンション物件を複数所有しておくと、自然災害リスクを分散させることができます。これはリスク管理の観点からいえる区分マンション経営のメリットです。
4.「コロナ後」を見据えたマンション経営の考え方
新型コロナウイルスの感染拡大は、社会や経済に大きな影響を及ぼしました。マンション経営にも何らかの影響があるのではないかと感じている方もおられると思いますので、ここでは「コロナ後」のマンション経営の考え方について解説します。
4-1.テレワークの普及による住宅需要の増加
「コロナショック」による不動産市場への影響として最も象徴的なのが、テレワークの普及によるオフィス需要の伸び悩みと住宅需要の堅調ぶりです。オフィスにいる時間の一部を自宅で過ごす人が多くなり、住宅物件の新たなニーズが喚起されました。
上場不動産投資信託であるJ-REIT相場を見ていても、こうした傾向を窺うことができます。J-REITの種別を見ると、人の移動減によってホテル型が最も落ち込み、外出減によって商業施設型やオフィス型のJ-REITも伸び悩む展開となりました。その一方で、巣ごもり需要による通販活況で物流施設型が伸び、住宅型も堅調さを維持しています。
主に住宅用途として利用されるマンションは堅調さを維持する可能性が高く、さらにテレワークなどの働き方が普及すると、追い風になる可能性もあります。
4-2.インターネット環境の充実
テレワークの普及は今後さらに進むと見る意見が多く、国も積極的に後押ししています。テレワークの普及だけでなく、今や家でさまざまなネットサービスを利用する時代です。通販だけでなくネットバンキングや遠隔診療など、これらを支えているのはインターネット環境です。全国賃貸住宅新聞社の調べによると、マンション物件の人気設備ランキングで、無料インターネットはファミリーと単身者ともに2017~19年の間3年連続1位でした。
こうした傾向を踏まえ、マンション経営において無料インターネット環境は、重要な付加価値といえます。築古のマンションであればともかく、新築マンションでは基本的にインターネット環境を利用する前提で設計されているので、より無料インターネットを提供しやすいでしょう。
4-3.リスクの低い物件志向
「コロナショック」は感染への恐怖ももちろんですが、ウイルスの特性などが明らかになるにつれて、経済へのダメージに恐怖を感じる人が多くなりました。先行きの不透明感が増しているとして投資に興味を持つ人が増え、証券会社の新規口座開設数が伸びたという事実もあります。
こうした動きの一環として、マンション経営に興味を持つ人も多くなっています。それだけに競合が多くなるのですが、より有利なマンション経営を実現するためにはマーケットの大きな分野に参入するのが有効です。ワンルームマンションは物件数や入居者数などのマーケットが大きいため、これから参入するには有望な選択肢です。また、ワンルームマンションは物件価格も安く抑えやすいので、本業をお持ちの方が「サラリーマン大家」などとして参入することもあります。
できるだけリスクを抑えることが重要なので、まずは身の丈に合った物件を選び、そこから徐々に物件を増やして資産規模を拡大していくのが、「コロナ後」にふさわしいマンション経営のあり方といえるでしょう。
5.まとめ
「コロナショック」によって社会や経済に大きな影響が生じたとしても、マンション経営の本質的なメリットは変わりません。そのことは、「リーマンショック」「東日本大震災」など大きなリスクが現実になったとしても、マンション経営のビジネスモデルが揺らぐことがなかったことから明らかです。もちろんメリットだけでなくリスクもあるので、その両方をしっかりと理解したうえで、成功するオーナーを目指しましょう。
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