新型コロナウイルスによる影響が社会のさまざまな分野に波及しています。その中で非常に深刻かつ大きな問題として取り上げられているのが外食産業の売上激減による家賃支払いの負担増です。外食産業は「3密」になりやすくクラスター発生源になる可能性があることから国や自治体による休業や営業時間短縮の要請が出されそれに応じた飲食店は大打撃を受けました。

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(画像=xartproduction/stock.adobe.com)


仮に応じていない飲食店であっても客足が激減したことによる影響は計り知れません。休業補償や支援策などの遅れもあり外食産業界が声を上げました。それは「家賃支払いモラトリアム法」の提言です。この「家賃支払いモラトリアム法」とはどのようなもので今後家主である不動産オーナーにどのような影響を及ぼすのでしょうか。最新情報を交えて不動産オーナーが知っておくべき知識をまとめました。

なぜ「家賃支払いモラトリアム法」が策定されたのか

「家賃支払いモラトリアム法」という名称になっていますが、国が制定した法律ではありません。外食産業の有志で結成された「外食産業の声」という団体が提言しているもので同法を本物の法律として制定し外食産業を救うことを目的としています。ちなみにモラトリアムとは「支払い猶予」「猶予期間」といった意味を持つ言葉です。

つまり「家賃支払いモラトリアム法」の趣旨は、「外食産業に多大な負担を与えている家賃支払いの猶予を法制化するべき」というものです。

「家賃支払いモラトリアム法」の骨子

「家賃支払いモラトリアム法」は、以下の3点を骨子としています。いずれも外食産業を守るためのものですが不動産オーナーにとっては少々耳が痛いと感じるものも含まれています。

1.入居者との話し合いに応じることを不動産オーナーに義務づける
2.家賃の猶予や減免交渉に応じることを不動産オーナーに義務づける
3.不動産オーナーがローンを利用していることで猶予や減免ができない場合は政府系金融機関による家賃の立て替えで補てんする

なお3の家賃の立て替えについてはコロナショックが収束したあとで金融機関が入居者に請求することも定めています。

「家賃支払いモラトリアム法」が不動産オーナーに与える影響

骨子だけを見ると外食産業を救うために不動産オーナーに負担を一方的に求めている印象を持つ人いるかもしれません。もし「家賃支払いモラトリアム法」が本物の法律として制定された場合、不動産オーナーにはどのような影響が考えられるのでしょうか。先ほどの骨子や「家賃支払いモラトリアム法」の内容を詳しく見ると実は外食産業だけを救うことではないことが分かるでしょう。

不動産オーナーの負担を最小限に抑えつつ協力を呼び掛けるスタンスであることが読み取れます。オーナーがローンを利用していて、そう簡単に家賃の減免や猶予に応じられない事情も考えられますが、そのための政府系金融機関への立て替え申請はオーナーと入居者が合同で行うという内容です。すでに全国各地で不動産オーナーに対して入居者が家賃の減免や猶予を求める交渉が行われています。

これらの交渉は個々に行われているため基準やガイドラインが特にあるわけではありません。「家賃支払いモラトリアム法」では不動産オーナーに交渉のテーブルにつくことを義務づける一方で双方が納得できる落としどころを探る方向性を持っています。今後「家賃支払いモラトリアム法」が法律として制定された場合、不動産オーナーは交渉のテーブルにつくことは余儀なくされるでしょう。

また仮に法律制定にいたらなくても提言の内容が交渉のガイドラインとして機能することが考えられます。そのため「不動産オーナーは交渉のテーブルにつく義務が生じる可能性がある」と考えておいたほうが良いでしょう。交渉のテーブルにつくことによって双方が歩み寄れる落としどころを探ることが重要になります。

まとめ

先述のように「家賃支払いモラトリアム法」には外食産業を救うだけでなくもう一方の当事者である不動産オーナーの賃貸経営に及ぼす影響を最小限に抑える意図も含まれています。不動産オーナーおよび入居者ともにコロナショックで大きなダメージを受けているのは同じです。オーナーと入居者の関係はコロナショック収束後も続くものなので良好な関係性を維持するためにもこの難局をお互いに協力して乗り切っていくスタンスが重要になるのではないでしょうか。
 

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