投資の世界には、「有事の金」という言葉があります。戦争や大きな災害、金融恐慌など、世界経済を揺るがすような事態が起きた時には、古代から富の象徴と見なされてきた金(ゴールド)が買われやすいという意味です。
2020年2月から起きたコロナショックと呼ばれる世界的な株の大暴落でも、同様のことが起きました。2016年には1オンスが1,200ドルだった金相場が2019年の秋頃(中国でコロナウイルス感染が拡大し始めた時期)から高騰し始め、2020年の2月には1,600ドル台を突破しました。これはまさに、コロナショックによる「有事の金」です。
一時的に下落した局面はあるものの、コロナショックによる世界経済の先行き不透明感で金投資への注目度が高くなっています。当記事では、なぜ「有事の金」なのか、金投資のメリットや具体的な方法について資産防衛の観点から解説します。
金は安全資産の代表格
有史以来、人類は金を富の象徴として重んじてきました。時の権力者は金を用いた建物や墓を作ることで権勢を示していましたし、オリンピックで優勝した選手に授与されるのは金メダルです。かつては金本位制といって、いつでも貨幣と金を引き換えられることで貨幣への信用につなげていた制度もありました。
宝飾品の材料や産業分野での需要も高い一方で、人類には金を製造する技術がないため、貴金属としての地位はこれからも揺らぐことはないでしょう。
古代から人類共通の財産であり、今後大規模な供給が見込まれないことから、金は今も安全資産の代表格として機能しています。
金投資の特徴とメリット
この安全資産の象徴である金には、個人投資家も容易に投資できます。以下に、金投資の特徴やメリットについて簡単にまとめてみました。
①有限の資源であり無価値になることはない
2020年2月から始まったコロナショックによる株の大暴落を受けて、世界各国が大規模な金融緩和を実施しました。これには相場を支える効果がありますが、通貨を大量に供給するため相対的に通貨の価値が下がってしまう副作用もあります。現実に金融緩和をした国の通貨は、為替市場で価値が下がっています。
それに対して、金は中央銀行が製造できるものではない有限の天然資源です。そのため価値が薄れてしまうことがありません。現実にコロナショックで金が買われたのは、こうした安定感が好感されたからです。
②経済が不安定化すると価格上昇、資産防衛になる
「有事の金」の言葉通り、コロナショックによる経済の不安定化によって金は大きく買われました。今後も世界経済を揺るがすような事態が起きることは十分考えられるため、金を保有しておくと価格上昇によって資産防衛だけでなく資産増の効果も期待できます。
③安全資産である一方で、保有していても配当などはない
安全資産である一方で、金は保有しているだけでは配当などのインカムゲインは何も得られません。あくまでも資産防衛のためにポートフォリオの一部として検討するものであり、資産運用のために購入するものではないと考えてください。
金に投資する具体的な3つの方法
金投資を始めるには、主に3つの方法があります。それぞれについて、メリットとデメリットを交えて解説します。
①金地金
金地金は「きんじがね」と読みます。インゴットや延べ棒など、現物の金塊を購入して保有する投資方法です。大富豪の自宅金庫に金のインゴットが保管されている描写を映画などで見ることがありますが、現物を手元に保有するため最も安心感があります。しかしその一方で、保管場所の確保や窃盗などのリスクと隣り合わせになります。
- メリット:手元に保有するため安心感がある
- デメリット:保管する手間、盗まれるリスクがある
②純金積み立て
証券会社や貴金属販売会社などに口座を開設し、毎月一定額を積み立てて純金を購入していく方法です。数千円から始められるため手軽で、ドルコスト平均法によるリスクヘッジが可能になるなどのメリットがありますが、その一方で金の購入や保管にコストがかかります。
- メリット:手軽にできて、リスクヘッジにもなる
- デメリット:保管などにコストがかかる
③金ETF
ETF(Exchange Traded Fund)とは証券取引所に上場されている投資信託のことで、金ETFは金を購入・保有しているため金価格と連動する値動きをします。上場されている金融商品なので株と同じように簡単に売買が可能であり、1万円以下の少額からでも購入が可能です。さらに現物を保有しないため保管料が不要、売買手数料も安いことなど多くのメリットがあります。ETFでありながら配当金がないなどのデメリットはありますが、これは他の投資方法でも同様なので、金投資を始めるのであれば金ETFがおすすめです。
- メリット:簡単にできて、少額からでも売買可能
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