空室対策の新手法、「バーチャルステージング」導入のメリット
(画像=Archi_Viz/Shutterstock.com)
丸山 優太郎
丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。

マンション・アパートの空室対策として、ホームステージングを導入する物件が増えています。何もしない物件よりも早く入居者が決まることが実証されていますが、実際に室内へ家具や小物を入れるとなるとそれなりに費用がかかってしまいます。そこで最近台頭してきたのが、VR(バーチャルリアリティー)技術を使って内覧を行なう「バーチャルステージング」です。一体どのような手法なのでしょうか。

バーチャルステージングとは何か

「バーチャルステージング」とは、アトラクションやゲームなどでおなじみのVR技術を応用し、部屋をモデルルーム風に演出する「ホームステージング」の手法と組み合わせて、仮想空間で部屋を魅力的に見せる新しい内覧の手法です。

各種ステージングは、部屋に家具や小物を配置することで生活した時のイメージをしやすくしてくれる効果があります。実際にマンションを売却した事例では、ホームステージングを行っていない物件の売却までの日数が平均88日だったのに対し、行った物件は半分以下の平均42日(日本ホームステージング協会調べ)で成約に至っています。

ホームステージングとの違いは?

バーチャルステージングは、ホームステージングとどのような違いがあるのでしょうか。ホームステージングは入居希望者が内覧する部屋へ実際に家具や小物を配置して、まるで人が住んでいるかのような演出を施します。これに対してバーチャルステージングは、実際に家具などは置かず室内写真をCGで加工することによって、仮想現実空間での内覧を実現します。

ホームステージングは空室の状態でないと家具などを配置できませんが、バーチャルステージングでは入居中の部屋でも撮影した写真から家具を消して、新たにCGで加工した家具を配置することができるので、時期に関わらず実施できるというメリットがあります。

不動産会社は加工した写真をWebサイトに掲載し、アクセスしてきたユーザーに物件のイメージを訴求することができるので、広告戦略上でも有効な手法と言えるでしょう。

バーチャルステージングのメリット

バーチャルステージングには、VRならではのメリットが多くあります。最大のメリットは、家具や観葉植物などをレンタルする必要がないことです。またホームステージングと違って、レンタルした家具などにうっかり傷を付けてしまうといったリスクがありません。

ボタン操作によってステージングした画面と空室の画面を簡単に比較することができ、内覧者は現地で空室状態を確認しながら、チラシに印刷したQRコードをスマホで読み込んでステージング画面を見ることもできます。家具などのレンタルが不要なので、オーナーにとってはコストを格段に低く抑えられることが大きなメリットと言えるでしょう。

バーチャルステージングの導入コスト

バーチャルステージングでは、まず広角レンズで撮影した360度写真を加工サービス会社に提出し、数日後CGで加工されたホームステージングの360度写真が納品されます。

バーチャルステージングの導入コストは、専門業者スペースリーの例では写真1枚当たり1万円程度からとかなりリーズナブルです。家具のレンタルを必要とするホームステージングに7~10万円(日本ホームステージング協会調べによる賃貸ホームステージングの最多費用帯)程度かかることを考えると、負担が少なく効果の高い手法と言えるでしょう。

昨今IT化が進む不動産業界ですが、バーチャルステージングも業界が進める「不動産テック」の1つにカテゴライズされています。他の不動産テックに比べると低コストで行うことができるため、今後も普及が進むことが予想されます。オーナーとユーザーの双方にメリットがあるバーチャルステージングは、新時代にふさわしい内覧方法と言えるのではないでしょうか。

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