最終更新日:2024/9/11
 
油断は禁物!意外と知られていない「保険のリスク」
(画像=Prostock-studio/Shutterstock.com)
佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

生命保険は、ケガや病気などのリスクを回避するために加入するものです。そのためか、「加入すればもう安心」と考える人が多いのも事実です。しかし、保険の加入者が知っておくべき別のリスクもあります。それは「保険のリスク」です。

目次

  1. 保険会社が破綻したら
  2. 運用に行き詰まれば利率が下げられることもある
  3. よくわからない商品を買ってしまうリスク
  4. 保険に加入すれば絶対安心というわけではない

保険会社が破綻したら

保険会社も企業である以上、事業に失敗することもあります。そのため、すべての生命保険会社は生命保険契約者保護機構(以下、機構)に加入することを義務付けられています。機構は、生命保険会社が破綻した時に加入者を保護する役割を担っています。ただし、保険契約がそのまま保証されるわけではありません。

保険会社が破綻した場合、生命保険の保険金がどこまで支払われるかは、その時までわかりません。機構の役割は、責任準備金の90%を保証することです。「保険金額の90%」ではないことに注意が必要です。

責任準備金とは、保険金や解約返戻金などの支払いのために保険会社が積み立てるお金です。保険の種類によって、受け取った保険料の一定割合を積み立てることが、保険業法で定められています。

保険会社や契約内容によっては、破綻後に受け取る保険金は契約した金額の9割を大きく下回る可能性があります。一般的に、定期保険のような掛け捨て型の保険は責任準備金の割合が低く、養老保険のように貯蓄型の保険は高めに設定されています。

保険業法の施行後、すでに8社の生命保険会社が破綻しており、自分が契約している保険会社が破綻しないという保証はどこにもありません。

運用に行き詰まれば利率が下げられることもある

保険の契約内容が変わるのは、破綻した時だけではありません。経営に黄色信号が出た時点で、契約条件が変更されることがあります。保険契約の継続が難しいと判断された場合、保険会社は内閣総理大臣の承認を得て予定利率を引き下げることができることが、保険業法で定められています。

この規定は、「生命保険会社による契約条件の変更の申出」や「経営破綻前の契約の予定利率の変更」などと呼ばれています。

破綻時の責任準備金と同様、直接的に保険金額を下げるわけではありません。予定利率とは、目標とする運用利率のことです。ここから保険支払いの発生率などを考慮して、解約返戻金の割合や保険料が決められます。予定利率が下がると、将来受け取る保険金額や解約返戻金が少なくなります。

予定利率の引き下げには下限が設けられており、3%を下回ることはできません。かつては、予定利率が5%を超えるような高利回りの保険もありました。これらは「お宝保険」などと呼ばれていますが、保険会社の経営状態によっては予定利率が下げられることもあるのです。

予定利率は、金融庁が発表する標準利率を参考にして各保険会社が定めます。マイナス金利政策以降、標準利率は下降の一途をたどり、2020年1月についに0%になりました。保険会社は厳しい経営が続くことが予想されます。

よくわからない商品を買ってしまうリスク

保険の仕組みに内在するリスクに触れましたが、少し視点を変えてみましょう。保険の最大のリスクは、「内容をよく理解しないまま加入してしまうこと」です。保険商品の中には、商品自体がハイリスクなものもあります。

外貨建て生命保険や変額個人年金などは、運用結果によって受け取る金額が変わります。某保険会社で、リスクの説明が不十分な不適切販売があり、高齢者を狙い撃ちする悪質な営業として糾弾されたことは有名です。

保険や金融商品は、一般的に考えられているよりも複雑です。安易に加入せず、少しでもわからないことがあれば理解に努めることをおすすめします。

保険に加入すれば絶対安心というわけではない

保険は仕組みが複雑です。特に外貨建て生命保険や変額個人年金などには価格変動リスクがあるため、加入にあたっては内容をよく理解する必要があります。一般的な終身保険や定期保険なども、保険会社の経営状態によっては解約返戻金や保険金額が下げられる場合があります。

保険はリスクを回避するために加入するものですが、保険自体にもリスクがあることを覚えておきましょう。

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