日本の住宅事情にマッチした「レンタル収納」ビジネスの成長性
(画像=Karolis Kavolelis/Shutterstock.com)
平 行男
平 行男
ライター/合同会社スクライブ代表。主にビジネス、マネー、IT領域で、経営者インタビューやプロダクト紹介、導入事例紹介、イベントレポートなどのコンテンツ制作を担う。年間数冊のブックライティングも行う。

トランクルームや貸しコンテナなどの「収納サービス」市場が伸びています。その中で、「マンションやビルの1室をトランクルームに改装する」ケースなど、さまざまなアイデアで収納サービスが提供されるようになってきました。そこで本稿では、収納サービスビジネスの概要や成長性について考察します。

アメリカでは10世帯に1世帯が利用

「収納サービス」とは、トランクルームやレンタル収納、コンテナ収納を含めた総称ですが、市場規模はここ数年、順調に拡大しています。街中でトランクルームの看板を見かけたり、郊外のロードサイドでコンテナ収納が並ぶ様子を見たりする機会も増えていることからも実感できるのではないでしょうか。

2018年度の収納サービスの国内市場規模は、前年度比6.7%増の約743億円の見込みと発表されています。収納拠点数の増加・認知度の向上により需要増も続いているとのことで、2020年度の国内市場規模は約829億円に達する見込みです(矢野経済研究所「レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム市場に関する調査」より)。

トランクルーム、レンタル収納、コンテナ収納などは「セルフストレージ」とも呼ばれます。一般社団法人セルフストレージ協会のウェブサイトによれば、アメリカでは1970年代からセルフストレージが広がりを見せ、10世帯に1世帯が利用するサービスになったとのこと。

一方、アメリカでのサービスや需要の広がりに対して日本での浸透度はまだまだ低い状況です。しかしながら、住宅が狭いという事情を抱える日本において、収納サービス(セルフストレージ)の需要は今後さらに高まっていくと考えられるでしょう。

屋内型のトランクルームと屋外型のコンテナ

収納サービスの主な種類としては以下の3つがあります。

レンタル収納

主に街中の複合ビルなどで展開されている収納サービスで、ビル1棟丸ごと収納サービスで運営されているケースもあります。不動産業者による運営が多いのですが、個人がオーナーとなってレンタル収納業者に運営を委託しているケースもあり、誰でも参入できるビジネスです。

メリットとして保管物の出し入れが24時間できる自由さがあります。一方でデメリットとしては、荷物の補償は付いていないサービスがほとんどという点が挙げられます。

トランクルーム

「トランクルーム」はレンタル収納と同じく、街中の複合ビルなどで展開されている収納サービス。倉庫業者が運営し、「荷物の補償あり」「利用時間の制限あり」などの特長がある点がレンタル収納と異なります。

なお、国土交通省ではトランクルームの認定制度を設けているため、「トランクルーム」と名乗るには認定を受ける必要があります。

コンテナ収納

郊外のロードサイドなどにコンテナボックスを設置し、収納サービスとして運営しているものです。

自動車をコンテナのすぐ横に付けて荷物を出し入れできるのが特長。レンタル収納と同様に認定の取得などは必要なく誰でも参入できるビジネス形態です。サービス内容は事業者によって異なります。

利用者は何を預けているか?

これらの「収納」サービスに、利用者は何を預けているのでしょうか?

残念ながら調査データは見つかりませんでしたが、家庭の私物(書籍や洋服、スポーツグッズ、季節の家電など)、業務で使う器具や備品といったものが考えられるでしょう。自宅の引っ越しや買い換え・建て替えの際、あるいは海外留学や海外駐在の際に、家具や家電を一次保管しておくといった利用方法もあるでしょう。

業者や事業形態、サービス内容にもよりますが、以下のようなものは通常、預けることができないと考えておいた方が無難です。

  • 貴金属や有価証券、紙幣等の貴重品
  • 爆発物、劇薬等の危険物
  • 麻薬や認可を得ていない銃刀等、法律で所持を禁じられているもの
  • 動植物の飼育、腐敗するおそれのあるもの
  • 臭気や騒音を発するもの

ビジネスとしてレンタル収納を始める方法

倉庫業者の運営する「トランクルーム」に参入するには高いハードルがありますが、「レンタル収納」「コンテナ収納」なら上記のとおり誰でも参入可能です。

例えばビルを所有している方なら、ビルの空室にパーティションなどを設置する、あるいは空き地にコンテナを置くだけで始められます。実際の運営はレンタル収納サービス業者に委託して、物件探しや契約、設備設置、利用者募集、日々の管理などを行うケースが多いでしょう。

中には自分の所有するマンションやビルの一室を利用し、住居や事務所として賃料を得るのではなく、レンタル収納として運営している不動産オーナーもいます。水回りなどの設備がなく、また退去に伴う原状回復も必要なく、住居として貸し出すより高い利回りが期待できるなどのメリットがあります。ビルや区分マンションを所有している、または所有を考えているという方には、ひとつの方法になるかもしれません。

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