不動産投資による法人化のメリット・デメリット
(画像=VOJTa Herout/Shutterstock.com)
山中 勇樹
山中 勇樹
ライター/編集者。主に企業経営者への取材・インタビューを通じて、ビジネス系の文章(書籍・雑誌等)を執筆。インタビュー実績多数。

金融機関から融資を受け、家賃収入を得ながら安定的に資産運用ができる不動産投資。最初は個人ではじめるケースが多いものの、規模が拡大していくにつれて、法人化を検討する人も少なくありません。そこで法人化のメリット・デメリットを解説します。

不動産投資は個人から法人化へ

そもそも不動産投資とは、銀行をはじめとする金融機関から融資を受け、マンションやアパートなどの物件を購入し、賃貸に出すことで家賃収入を得る投資手法です。

入居者から得られる毎月の家賃からローン返済や諸経費などを差し引いたものが収益となるため、他の投資手法と比較しても安定しているのが特徴です。また現物を扱う投資なので保有資産をイメージしやすいのも利点でしょう。

そんな不動産投資ですが、個人としてはじめるケースが大半です。最近では「働き方改革」という文脈から、副業・兼業として不動産投資に着手する人も増えています。

賃貸管理のほとんどは管理会社に委託でき、手間や時間もかからないため選ばれやすいのでしょう。ただし投資する物件や規模が大きくなってくると、いずれ個人での投資には限界がきます。

そこで検討されるのが「法人化」というわけです。

不動産投資の法人化のメリット・デメリットとは

法人化とは、それまで個人で行ってきた不動産投資を法人格で行うことです。個人の不動産投資家が法人化することでさまざまなメリットがあります。一方で法人化にはマイナス面もないわけではありません。そこで法人化のメリット・デメリットについて確認しておきましょう。

そもそもなぜ法人化を検討するのか?

法人化を検討する理由として代表的なのはやはり「節税」でしょう。ご存じのとおり累進課税制度が採用されている日本では、個人の所得税が5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%の7段階に区分されています。

ちなみに課税される所得金額が超えた部分にのみ、高い税率が課せられます。そのため、あらかじめ控除額が定められており、その金額を差し引くことで正しい税額が求められます。

所得税の速算表※「所得税の税率」国税庁

一方で法人税の税率も所得金額に応じて高くなります(目安は800万円)。そのため法人化の分岐点としては「900万円」がひとつの目安になるでしょう。

なぜなら課税される所得金額が900万円を超えると、住民税(10%)を加えた場合の個人の税率が43%になるのに対し、法人税の実効税率は約37%になるからです。

法人化がもたらすメリット

このように、規模が大きくなるにつれて節税効果が得られる法人化ですが、その他にもメリットはあります。例えば不動産投資によってマイナスが発生した場合、個人だと他の所得と合算して3年間しかマイナスを繰り越せないのに対し、法人では9年間も繰り越すことができます。

しかも個人の場合では一定の要件を満たさなければ損益通算ができません。法人の場合であれば同一事業年度内の損失を他の所得から無条件で控除できるため、事業としてのバランスを保ちやすいのです。

長い目で見るとこうした違いは節税効果とともに重要な利点であると言えるでしょう。

法人化がもたらすデメリット

ただし法人化によるデメリットもあります。例えば法人化するのには所定の設立費用がかかることに加え、赤字であっても維持費として税金がかかります。

また会計処理の複雑化にともない、税理士や公認会計士への委託料も必要です。その他、事務手続きが煩雑になるなどの点は、あらかじめふまえておくべきでしょう。

メリット・デメリットを考慮して法人化を検討しよう

このように法人化にはメリット・デメリットがあるため、不動産投資を行う際には、どの程度の規模まで収入を拡大したいのかを考慮しつつ、それぞれの違いを理解したうえで検討することが大切です。短期的な視点だけでなく中長期的な視野で考えることが求められるでしょう。

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