両親や配偶者など、大切な家族に万一の事態が起こってしまった際の支えとなる生命保険。しかし生命保険の保険金を受け取ると相続税の課税対象になってしまいます。2015年、基礎控除額の引き下げを通じた相続税の増税が施行されたことで、生命保険の非課税枠の活用による節税が注目されるようになりました。本稿では相続対策を含めた生命保険の活用方法および資産運用方法についてお伝えします。
生命保険は相続税の課税対象
2015年に施行された相続税の増税はさまざまな余波を生みました。相続税は相続等により一定以上の財産を取得した人に課税されますが、最高税率のアップと基礎控除の大幅な引き下げの相乗効果により、富裕層はもちろんのこと、これまで他人事だった相続税が課税されるおそれが出てきた人が急増したのです。この結果、一般国民も節税についての意識を持つようになりました。
ライフプランの見直しをする中で、節税につながりやすいものの代表に生命保険が挙げられます。生命保険の保険料を支払っている場合、一定額の所得控除(生命保険料控除)を受けることができるからです。生命保険は万一の際のことを考えるとなるべく加入しておきたいところですが、同時に子どもがいる家庭であれば、その成長に合わせて見直しをしていくことが大切です。一方、万一の事態が起こった際、生命保険さえあれば安心とも言い切れません。なぜなら生命保険の死亡保険金は相続税の課税対象として課税遺産総額に含められてしまうためです。
生命保険の非課税枠と活用方法は?
生命保険の死亡保険金は遺された家族の今後を支える重要な財産です。このため、相続税として課税されるとはいえ、一定金額までは非課税としています。
相続税の非課税枠は原則として「500万円×法定相続人の人数」となります。たとえば子どもが2人いる家庭の場合、配偶者の逝去によって3,000万円の死亡保険金が支払われたとします。このときには「500万円×3人」の1,500万円が控除となり、3,000万円の支払額の内、残る1,500万円が相続税の課税価格に含まれることになるのです。
- 生命保険は相続対策に活用できる
なお、生命保険は上手に活用することで相続対策につながります。生命保険の死亡保険金は「みなし相続財産」と呼ばれ、原則として遺産分割協議の対象にはなりません。このため、非相続人の中からある個人を受取人に指定して保険に加入することで、その保険金を遺産分割協議から外すことができるのです。このため、生命保険は遺産相続の財産の配分の調整に一役買うことができます。
また、生命保険の死亡保険金は相続放棄をした場合でも受け取ることができます。相続放棄とは、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない方法です。例えば、亡くなった被相続人がプラスの財産よりも債務を多く有していた場合などに、利用されることがあります。ただし、相続放棄をした場合は、被相続人の債務だけでなく財産をも相続できなくなる点、生命保険金の非課税金額の適用を受けることはできない点に注意が必要です。
さらに、生命保険の死亡保険金を相続税の納税資金として活用することもできます。相続が発生すると、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、原則として現金で相続税を納税しなくてはなりません。しかし、例えば、他の相続財産が不動産のみであった場合、相続税の納税期限までに現金化できるとは限りません。そんな時、もし生命保険の死亡保険金を現金で受け取ることができれば、相続税の納税資金として大きなプラスになります。なお、死亡保険金には各保険会社ごとに約款等で定められた支払期限があるので注意しましょう。
不動産投資では生命保険のさらなる活用法も
生命保険は一般的なもののほかに、不動産投資(購入)をする人が加入できる団体信用生命保険というものがあります。団体信用生命保険は加入者が死亡または所定の高度障害状態になってしまった場合に、物件の残債務を全額弁済してくれる制度です。
不動産投資には節税効果や老後の私的年金などさまざまなメリットがありますが、もし不動産投資を行っている最中、オーナーに万一の事態があっても遺された家族は物件をそのまま手に入れることができるため、保険金の代わりとして以後の家族の生活を安定させることができるようになるでしょう。
団体信用生命保険は、一般的な生命保険の目的とも重なる面があります。そのため、不動産投資を始める際には、生命保険の見直しを考えてみる価値もあるでしょう。
生命保険は使い方次第
上記の通り、生命保険には相続税が課税されます。しかし、使い方次第では、節税や相続対策になったりもします。日々の生命保険の見直しに加え、加入者の指定や、不動産投資などの資産運用と上手に絡めてライフプランニングを行うことをおすすめします。
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