マンション経営は長期運用が基本です。10年、20年と長い歳月をかけて運用を続けることで資産を形成していくことが可能です。また、マンション経営には様々な税金が発生しますので、タックスマネジメントも重要です。通常、所得税や法人税は利益に対して課税されますが、マンション経営においては実際には赤字にもかかわらず、税務上では黒字になり課税されてしまうといった逆転現象が生じることがあります。

「デッドクロス」と呼ばれるこの状況はどのように生じ、また回避すれば良いのでしょうか。本稿では、マンション経営で注意したいデッドクロスについて解説します。

マンション経営で注意したい「デッドクロス」とは
(画像=Freedomz/Shutterstock.com)

マンション経営で抑えておくべき「利息」と「減価償却費」

マンション経営は事業運営でもあります。事業運営では税引き後のキャシュフローで考えることが重要です。マンション経営では実際のお金の流れと税務上におけるお金の流れの2つを把握しておく必要があります。実際のお金の流れというのは、たとえば家賃収入や管理費等の実際のお金を考えると分かりやすいでしょう。

一方、税務上ポイントとなるお金の流れは、ローンの利息や減価償却費などが挙げられます。毎月のローン返済額は「元金」と「利息」に分かれ、「利息」については経費として計上できますが、「元金」については経費計上が認められていません。

そのため現金支出を伴い、経費計上が出来ない「元金」返済が大きくなると、税務上は利益が膨らみ、税負担が増えます。逆に現金支出を伴わず、経費計上が出来る「減価償却費」が大きいと税務上の利益を圧縮する効果があります。

実際には両方が組み合わさることになりますので、現状がどの状態かを把握することが重要です。

  • 元金返済<減価償却費のケース→税務上の利益圧縮
  • 元金返済>減価償却費のケース→税務上の利益が大きくなる

それではローン返済の「元金」部分と減価償却費はどのようなケースで逆転するのでしょうか。 要因の一つはローンの借り方の違いにあります。

不動産投資ローンの返済方法は2種類

不動産投資ローンの返済方法は「元金均等返済」「元利均等返済」の2種類です。元金均等返済とは、購入した物件の返済額のうち、元金を一定額に設定して返済していく方法です。一定の元金に加えて利息を返済していくため、返済開始当初の返済額は大きくなります。しかし元金の減り方は早いため、その利息分、返済額も次第に少なくなっていくのが特徴です。

「元利均等返済」は利息を含めて毎月の返済額を一定に設定してするため、最初から最後まで返済額は変わりません。返済当初は利息の割合が高く、元金のほうが少ないことが特徴です。元金均等返済に比べて元金の返済スピードが遅いため、同じ金額を借り入れした場合、総返済額が多くなります。「元利均等返済」では利息が毎月減っていくため、経費として計上できる利息も年々減少します。

この場合、それだけ税金の負担が大きくなるリスクが生じ、時にデッドクロスが起こることがあります。

減価償却費

減価償却費とは長期間に渡って使用するものであれば、耐用年数分、毎年その費用の一部を計上できる会計上の仕組みです。たとえばRC(鉄筋コンクリート)造の建物部分が1000万円の新築マンションを購入したとします。RC造の耐用年数は47年です。建物の減価償却費は「躯体」と「設備」に分けて計算しなければなりません。「躯体」と「設備」の割合は物件によって異なります。今回は「躯体」7割(700万円)「設備」3割(300万円)で計算します。

  • (躯体:700万円)×(償却率:0.022)=154000円
  • (設備:300万円)×(償却率:0.067)=201000円
  • 154000円+201000円=減価償却費355000円/年

今回の場合、毎年約35万円の減価償却費が計上可能になります。

デッドクロスを回避するには

デッドクロスを回避するにはいくつかの方法があります。例えばローンの借り換えを行って借入期間を延長、かつ毎月の返済額を少なくすることで現金の支出を抑える方法です。逆に資金に余裕があるのであれば、ローンの繰り上げ返済を行ってしまうことでこちらも毎月の返済額を減らすことができます。

このほか物件の購入にあたり、元金均等返済にするのも選択肢の一つです。ただ総返済額は少なく済みますが、当初の毎月の返済額が多くなるデメリットもあります。そのため、あくまでも資金と相談しながら考えることが大切です。なお減価償却の期間は物件によって異なります。そのため「物件が安いから」というだけで購入してしまうのはおすすめできません。

返済方法は不動産会社と相談をしながら

信頼できる不動産会社であれば、自分の収入や返済方法に対して適切なアドバイスが期待できます。物件は長期的に保有する人生のパートナーです。長い歳月をかけて無理なく安定した返済ができるよう、まずはしっかり話し合える不動産会社を選ぶことを基準に考えましょう。

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