マンション経営は生命保険の代わりになる?万が一の事態に備えられる不動産投資
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マンション経営(不動産投資)には、生命保険の代わりになるという大きなメリットがあります。不動産投資ローンを組む際に加入する、団体信用生命保険(団信)が生命保険の代わりを果たしてくれるためです。団信とはどのような保険なのでしょうか。また、そのメリット・デメリットはご存知ですか?
団信に加入する際の注意点も含め、詳しく解説します。

目次

  1. 1.不動産投資家が入れる団体信用生命保険(団信)とは?
  2. 2.団信の種類と保障内容
    1. 2-1. 通常の団体信用生命保険
    2. 2-2. 三大疾病特約付団体信用生命保険
    3. 2-3. 八大疾病特約付団体信用生命保険
    4. 2-4. がん保障特約付き団体信用生命保険
    5. 2-5. ワイド団体信用生命保険
  3. 3.団信のメリット
    1. 3-1.契約者が万が一の時、ローンの返済義務がなくなる
    2. 3-2.所得税の納税義務がない
  4. 4.団信のデメリット
    1. 4-1.所得税の控除が受けられない
    2. 4-2.健康状態が悪いと加入できないことがある
  5. 5.団信の加入の際に注意すべきポイント
    1. 5-1.他の保険と保障が重複していないかチェックする
    2. 5-2.年齢によっては一般の生命保険に加入したほうが得な場合もある
    3. 5-3.金融機関への告知は包み隠さず正直に伝える
  6. 6.遺された不動産は長く生命保険のように家族を支える

1.不動産投資家が入れる団体信用生命保険(団信)とは?

マンション経営,生命保険
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個人で不動産投資を行う際、自己資金だけで物件を購入できる人は少ないでしょう。そのため金融機関から融資を受けるのが一般的です。このローンに生命保険をつけるのが、不動産投資のメリットの一つでもあります。

不動産を購入する際、原則加入する保険が団体信用生命保険(団信)です。所有者(債務者)がローンの完済前に亡くなってしまった場合でも、保険会社から金融機関に対してローンの残債を支払ってくれる保険です。

自分が完済前に亡くなっても、遺された家族がローンの返済に苦しむことがない点が大きなメリットです。万が一の場合、ローンは団信から支払われ、残債のなくなった不動産を相続させることができます。

団信は生命保険と同じ効果を期待できるため、加入している生命保険の見直しを図ることができます。ただし、団信加入があらゆる融資において必須というわけではありません。

住宅金融支援機構と民間の銀行が提供する住宅取得用の「フラット35」など、団信への加入が任意のローンもあります。

団信に加入しなければ融資を受けられないわけではありません。それでも莫大なローンを残して死亡するリスクを鑑みると、加入して損のない保険といえるでしょう。

もし団信にも他の生命保険にも加入しないまま所有者が死亡すると、ローン返済のために不動産を売却しなければいけない事態も考えられます。こう考えると、保険料を余計に支払っても加入する価値はあります。

2.団信の種類と保障内容

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団信には、おもに以下の5つの種類があります。病気にも備えたい場合は、以下の保障内容を比較して、検討するとよいでしょう。ただし、特約を付けると保険料(金利上乗せ分)が高くなることを考慮に入れなければなりません。

2-1. 通常の団体信用生命保険

団体信用生命保険は契約者が死亡または高度障害になったとき、残っている住宅ローンが完済になる保険です。

保険料はローン金利の中に含まれており、毎月の保険料の支払いはありません。また、年齢や性別による保険料の違いがないのが団信の特長です。

保障期間はローンの返済期間と連動しており、融資が実行されると保障が開始、完済と同時に保障期間も終了します。

2-2. 三大疾病特約付団体信用生命保険

三大疾病特約付団体信用生命保険は通常の団信の保障内容に加えて、三大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)で所定の状態になったときも、残りの住宅ローンが完済になる保険です。

三大疾病は普通の病気に比べて治療費が高額になるので、特約を付けておくと安心です。

2-3. 八大疾病特約付団体信用生命保険

八大疾病特約付団体信用生命保険は上記2つの保険の保障内容に加え、五疾患(糖尿病、高血圧性疾患、肝硬変、慢性膵炎、慢性腎臓病)で所定の状態になったときも、残りの住宅ローンが完済になる保険です。

三大疾病と五疾患を合わせた八大疾病のなかでも糖尿病は代表的な生活習慣病です。

厚生労働省が2016年に行った調査では、「糖尿病が強く疑われる人」(1,000万人)と「糖尿病の疑いを否定できない人」(1,000万人)を合わせると、実に2,000万人が糖尿病患者として認識されています。もはや誰もがかかりうる病気といっても過言ではないでしょう。

2-4. がん保障特約付き団体信用生命保険

がん保障特約付き団体信用生命保険は通常の団体信用生命保険の保障内容に加え、医師からがんにかかっていると診断された場合に残りのローンが完済になる保険です。

厚生労働省の調査によると、2017年のがん羅患数は97万7,393人で100万人近い人ががんと診断されています。決して珍しい病気ではないため、不安があれば特約を付けるとよいでしょう。

2-5. ワイド団体信用生命保険

ワイド団信は、正式名称を「加入条件緩和割増保険料適用特約付団体信用生命保険」といいます。持病により団信に加入できない人のために、加入条件を緩和した商品です。ただし、緩和された分金利が0.2~0.3%程度高くなるのが一般的です。

3.団信のメリット

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団信には、以下のようなさまざまなメリットがあります。

3-1.契約者が万が一の時、ローンの返済義務がなくなる

先に紹介したように、団信に加入すると、契約者が万一死亡した場合や、高度障害者になった場合はその時点でローンの返済が免除されます。

残された家族にとってはローンの支払いがなくなり、そのまま住み続けられるため安心できます。これは一般の生命保険にはない団信ならではの大きなメリットといえます。

3-2.所得税の納税義務がない

一般の生命保険で死亡保険金を受け取った場合は、契約の形態により所得税、相続税、贈与税の課税対象になります。ところが、団信ではローンの支払いが免除されても納税義務はありません。

「同じ死亡保険なのに、なぜ団信は非課税なの?」と不思議に思うかもしれませんが、これは受取人の違いが理由の1つです。

一般の生命保険では死亡保険金は直接受取人が受け取りますが、団信で保険金を受け取るのは金融機関です。したがって、免除された家族に課税関係は生じません。

また、高度障害になった場合も、債務の免除が身体の障害に起因して受ける利益であるため、同じく課税関係は生じません。ただし、ローンを完済したマンションを売却した場合は譲渡所得税が課税されるので注意が必要です。

4.団信のデメリット

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一方で、団信には以下のようなデメリットがあります。

4-1.所得税の控除が受けられない

通常、年末調整や確定申告の際に「生命保険料控除」を計上しますが、残念ながら団信は所得税控除を受けることができません。

これは国税庁の通達のなかで生命保険料控除の対象になる生命保険契約等について、その対象者を「保険金等の払込みをする方、又はその配偶者その他の親族とするもの」と規定されているためです。

団信では保険金の受取人がローンの契約者や家族ではないため、所得控除を受けられません。

4-2.健康状態が悪いと加入できないことがある

団信も生命保険ですので、健康状態が悪いと加入できないことがあります。団信に加入する際は、健康状態を告知する必要があり、一般的な告知内容は以下のとおりです。

  1. 告知日より3ヵ月以内の治療や投薬歴
  2. 告知日より3年以内の手術や治療歴
  3. 現在身体障害の状態にあるか

審査する保険会社によって基準が異なりますが、上記の告知内容に問題がなければ加入できる可能性は高いと考えらえます。

5.団信の加入の際に注意すべきポイント

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団信に加入する際は、以下のような注意すべきポイントがあります。

5-1.他の保険と保障が重複していないかチェックする

団信は、前述したように死亡または高度障害が保障されるので、万一の備えという意味では十分な保障内容です。ローンを組んだ時点で、一般の死亡生命保険に加入しているなら見直しを検討する必要があります。

たとえば団信に加入していない人が1,000万円の死亡保障のついた生命保険に入っている場合で考えてみましょう。

死亡した時点で3,000万円の住宅ローン残高があれば、生命保険金で繰り上げ返済したとしても2,000万円の支払いが契約者の亡き後も続くことになります。

その点、団信はローン残高に関わらず返済が免除されるので、家族にとっては団信に加入しているほうが安心といえます。

他の保険は入院日額保障に重点を置いた「入院保険」に切り替えることで、高額な死亡保険を見直した差額分を節約することができます。

ただし、通常の団信では入院に対して十分な保障があるとはいえず、入院保険で保障額を充実させることも一つの選択肢です。死亡や高度障害は団信、生存していて病気に備えるのは入院保険というように、目的を分けるという考え方です。

これにより、死亡、高度障害、入院のいずれの場合にも十分な保障を受けることができます。

5-2.年齢によっては一般の生命保険に加入したほうが得な場合もある

団信に年齢は関係なく保障内容は同じですが、一般の生命保険は年齢や健康状態によって保険料や保障内容が変わってきます。若くて健康であれば安い保険料で手厚い保障を準備することができます。

団信と一般の生命保険の違いを考慮すると、40代以下の健康な人なら一般の生命保険で保障を厚くしたほうが得な場合もあるでしょう。ローンを組む年齢によって、どちらが得か判断することが賢明といえます。

5-3.金融機関への告知は包み隠さず正直に伝える

金融機関に健康告知をする場合は、検査中の病気も含め、正直に伝えることが大事です。

たとえば、健康診断で再検査の必要ありと診断されたにも関わらず、まだ病気と決まったわけではないからと告知しなかった場合、あとになって問題になる可能性があります。

万一加入を断られたとしても、団信への加入が任意のローンもあるので、告知は正直に行うようにしましょう。

6.遺された不動産は長く生命保険のように家族を支える

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不動産投資に際に加入できる団信だけではなく、不動産そのものも生命保険に近い機能を果たす可能性があります。自分が生きている間に物件を「お金のなる木」に育てて、後の世代に受け継がせることができるからです。

不動産は、家賃収入という形で利益を生んでくれる資産です。そのため所有者が死亡しても、相続人やその家族に長く収入をもたらしてくれます。物件は家族にお金を遺してくれるのと同じ働きを持っているのです。

団信やその他相続財産によってローンの返済が終わってしまえば、返済不要な無借金の不動産だけが残ります。

生命保険のように一度に数千万円単位のお金が入ってくることはありませんが、代わりに家賃収入が長く家族を支えてくれます。

小さい子どもを残したとしても、家賃収入が子どもの生活や教育に役に立ってくれるはずです。

万が一まとまったお金が必要であれば、その時点で不動産の売却を考えればよいでしょう。既にローンを返し終わっているので、仮に売却価格が購入価格を下回ったとしても家族にとって損はありません。

売却資金を必要な用途へ役立てることができます。仮に3,000万円で売れたとすれば、実質的には死亡保険金が3,000万円下りたのと同じ効果があると考えることもできます。

不動産投資を自分の老後の生活資金目的で行っている人は多いのですが、実は自分の死後も残された家族のためになるという別の視点があることがおわかりいただけたと思います。

配偶者や子どもたちのために何を遺せるか考えてみたときに、単なる預貯金(現金)ではなく不動産にすることで、家賃収入やいざというときの売却代金で家族を支えることができます。

万が一の事態という「保険」と、家族のために遺す「財産」という2つの目的を両立できる不動産投資は検討に値する資産運用方法といえるでしょう。

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