不動産を購入する際、それがマイホームでも、はたまた投資用マンションでも、いずれにしても金融機関でローンを組む人が大多数です。そこでしばしば議論になるのが、不動産を購入するにあたってはマイホームと投資用不動産、どちらを優先すべきなのかというテーマです。そこで本稿では、資産形成の観点からこの点について、住宅ローンと不動産投資ローンを比較しつつ考えてみます。

物件を買うならマイホーム?それとも投資用マンション?
(画像=PIXTA)

住宅ローンと不動産投資ローン

不動産の購入で多くの人がローンを組むことはお伝えしました。しかしマイホームと投資用マンションでは実はローンの種類が異なります。マイホームは住宅ローン、投資用マンションは不動産投資ローンとなります。ではこの2つは一体どこが違うのでしょうか。

住宅ローンと不動産投資ローン、確かに2つとも同じ不動産のローンではありますが、それぞれに対して融資する金融機関の視点が異なります。住宅ローンはマイホームに住む人のための貸付です。このため、融資審査では、借りる人の年齢、職業、会社、年収、勤続年数などのいわゆる「属性」や、健康状態および将来へのライフプランなどが重視されます。いわば、住宅を購入する「人」に対する貸付なのです。理由として住宅ローンの返済に充てられるお金が、借主の給与を前提にしているからです。住宅ローンの金利は不動産投資ローンよりも低く、返済期間も長く設定してもらえます。ただし、融資金額は、年収の5倍から高くても8倍程度で、不動産投資ローンよりも低くなります。

一方の不動産投資ローンは、「ビジネスプランへの貸付」です。不動産投資ローンの場合、審査で重視される点は、ローンの対象となる物件を用いて、どのように収益を上げていくのかとなります。要するに投資対象である「物件」に対する貸付となるのです。

不動産投資は事業として見なされます。そのため金融機関は、不動産投資ローンの返済について、家賃収入から充てられるものと基本的にみなしています。これはつまり都心でアクセスが良く、空室リスクが低い優良物件と判断されると、融資が有利になりますし、逆に過疎化した地方で、かつ築古のため、空室リスクが高いと判断されると、融資のハードルが高くなるということでもあります。

不動産投資ローンの場合、融資金額は、借主の収入も加算されるので、住宅ローンよりも多く借入ができます。ただ、金利は住宅ローンよりもやや高めです。理由として、不動産投資はあくまでも経営であり、マイホームとは違って、金融機関も投資家もともに儲けるという前提があるためです。

審査はどちらが厳しいのか

住宅ローンと不動産投資ローンを比較すると、不動産投資ローンの審査のほうが、住宅ローンの審査よりも厳しいと言えます。住宅ローンで自宅を購入した経験のある方は、おそらく分かると思いますが、住宅ローンの場合、数年間(最低1年以上)正社員として雇用されていれば、審査が通る可能性が高いのです。運がいいと、最初の金融機関で融資が下りるでしょう。ある程度の信用力がある人なら、金融機関を数ヵ所回れば、どこかでローンが組める可能性が高いはずです。

一方の不動産投資ローンは、先の住宅ローンで述べた「属性」も審査はされますが、それ以上に投資対象となる物件の価値やマンション経営の手順までチェックされます。物件を買えばお客さんが借りてくれて、常に満室の状態で、短期で返済できると見込んでいるような、行き当たりばったりの事業計画では金融機関も渋い顔をしてしまいます。

その代わり、不動産投資ローンには、一回融資を受けて不動産投資がうまく行きだしたのであれば、その後の追加融資は受けやすくなるというメリットもあります。ここでもやはり、不動産投資はビジネスであるという観点を持つ必要があるのです。

精神的満足感とビジネスとしての収益物件

マイホームは端的に言えばプライベートのものです。もちろん、勤め先や親族との距離などある程度考慮すべき面も出てきますが、それ以上に購入する人の精神的な満足感がとても大切になってきます。だからこそ、もしマイホームを選ぶというのであれば、候補物件を絞り込むためにも、まずは、自分が理想とする暮らしのイメージをできる限り具体的に書き出してみると良いでしょう。

「日当たりがいい」「自然が溢れている」「広いバルコニーが欲しい」「職場に近い」「伴侶や子どもが満足する」など、自分の理想を書き出し、そこから優先順位をつけて、物件を絞り込んでゆくのです。あとは予算との相談です。

一方、投資用不動産は、家賃収入でローンを払いながら資産を増やすことが目的ですから、空室になりにくく、時間が経っても資産価値が落ちない物件を選ばなければなりません。そのためには何よりも立地の良さが求められます。過疎化した地方よりも都心の方が、借り手が多いのは当然のことです。また周辺の利便性も求められます。例えば東京で言えば、渋谷や新宿といった主要ターミナル駅に出やすく、駅から徒歩10分以内のように交通アクセスが良ければこれらの基準はクリアできていると言えるでしょう。周辺環境も、スーパーマーケットやコンビニエンスストアが近くにあり、病院などの公共施設もあれば、やはり借り手も物件に好感を抱きます。なお「不動産は管理を買え」と言われます。資産価値が落ちないためにも、適切な管理・運営が行われていることも大切です。

マイホームと投資用マンションのどちらを優先するべきか

不動産を購入するにあたり、マイホームと投資用マンションのどちらを優先すべきでしょうか。マイホームであれ、投資用マンションであれ、いずれ個人の資産になる点で違いはありません。ただ、金融機関から見ると、ローンを完済するまでは、マイホームは負債として評価します。マイホームだけを持つと家賃収入がないので、給与所得からローンの返済が行われるためです。また、「今の家賃で家が持てます」というキャッチコピーが住宅の販売営業で使われていますが、固定資産税や管理費、修繕積立金などはこれに含まれていません。築年数が経つほど、修繕費も増えます。それらはすべて給与収入から捻出しなければなりません。無理をして高額物件を買ってしまったために、実はマイホームが重荷になってしまっている人が少なくありません。

もし、少しでも不動産投資に興味があるならば、まずはマンションに投資することをお勧めします。投資用マンションは家賃収入があるため、毎月のローンの返済は家賃収入で補ってくれます。さらに物件の資産価値が高ければ、金融機関は、投資家にローンが残っていたとしても、家賃を給与所得とは別の副収入として評価してくれるため、新規投資のための追加融資もしてくれます。さらにローン完済後には投資用マンションで、家賃を支払うことなくマイホームとして住むこともできます。これらを勘案すると、不動産を持つ際には、まずは投資用マンションを持つことを優先すべきだと言えるでしょう。

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