マンション経営を検討する際、投資金額に対する利益率を表す「利回り」に目がとらわれがちです。事実、投資用マンションなどの広告に目を向けると、物件の利回りを強調している物件も多くあります。
しかし、マンション経営を始めた方の中には、目先の数字に惑わされ、高利回りの物件に飛びついた結果、損失を出してしまうケースも見受けられます。本稿では、見かけだけの高利回りを謳った物件を見抜くために必要な事柄について解説します。
「そもそも利回りとは何か」「不動産投資で安定して利益を得る方法」「不動産投資は長期運用が向いている理由」の3点について説明しますので、不動産投資について検討している方はお役立てください。
目次
不動産投資で考える利回りの種類
物件を探す際、多くの人がまず「利回り」に目を向けることになります。利回りとは、投資金額に対して、年間で上がる収益の利益率のことです。不動産投資における利回りには、以下の3種類があります。
- 想定利回り
- 表面利回り
- 実質利回り
それぞれについて、個別に解説します。
想定利回り
不動産投資における代表的な利回りの計算方法は、想定利回りと呼ばれます。マンション経営などで用いられることが多く、物件が全て満室の状態を想定して家賃収入を計算する方法で、満室時の収入を不動産の購入費用で割って計算します。
2,820万円の物件で、1ヵ月の家賃が9万4,000円。年間にすると112万8,000円の家賃収入があるとした場合、その「想定利回り」は9万4,000円×12ヵ月÷2,820万円=約4%となります。
表面利回り
いわゆる物件情報などで、しばしば掲載されているものが「表面利回り」です。これは、1年間、満室で稼働した場合、物件購入価格に対して何%の収入が得られるかを示しています。一見、表面利回りは想定利回りと同じ計算方法ですが、想定利回りが所有している物件を複数まとめて計算するのに対し、表面利回りは所有不動産一戸のみを対象とします。
そのため、所有している物件が上述の年間家賃収入112万8,000円、購入費2,820万円のマンションのみの場合、「表面利回り」は想定利回りと同じく112万8,000円÷2,820万円=約4%となります。
実質利回り
もうひとつの利回りは、実質利回りと呼ばれるもので、家賃収入から経費(管理費や修繕積立金など)や税金を差し引いた金額を、物件の購入金額で割ったものになります。
上述した想定利回り約4%の物件で、実際に管理費や修繕積立金が年間12万円と想定すると、家賃収入は112万8,000円ですので、実質利回りは(112万8,000円-12万円)÷2,820万円=約3.5%となります。
高利回りの落とし穴
利回りは、あくまで、年間を通じて満室であることを前提に計算された数字です。しかし、実際の不動産経営ではなかなかそうはいきません。入居者は数ヶ月・数年スパンで入れ替わり、退去後すぐに空室が埋まるとも限らないのです。
高利回りを謳う物件には、実際の入居率が非常に低いものもあります。満室を前提とした仮の数字ですから、実際の入居率や家賃収入から乖離しているケースもあるのです。目先の利回りに目がくらみ、もしそんな物件を買ってしまったら、満室にするためには、多大な手間と費用が生じる恐れもあるため注意しましょう。
中古物件では、しばしば10%以上の高利回りの物件も売りに出されています。しかし、実態は家賃収入に対して物件購入費用を安く抑えて、表面利回りを高く算出している物がほとんどです。そのため、「購入後の入居率が極端に低い」「建物が古いため設備の維持費・修繕費・改装費が嵩む」などの理由から、実質利回りは低いといった場合も多々あります。
一方で、オーナーが「早急に現金が欲しい」といった理由で、優良物件が相場よりも安い価格で売りに出されているケースも存在します。大切なのは「高利回りはリスクになる」という可能性を常に念頭に置き、表面利回りの高さだけに一喜一憂しないことです。
不動産投資はインカムゲイン狙い、長期運用で生命保険と年金の代わりに
マンション経営は常に長期的な視点に立つことが望まれます。事業では、現金の流れについて考えることはとても大切です。一方で、マンション経営の場合、短期的な利益を追求するのではなく、あくまでも長期で運用することで、大きな実利を得ることを念頭に置く必要があります。
インカムゲイン狙いか、キャピタルゲイン狙いか?
投資を行う場合、「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」という2種類の考え方があります。2つの言葉の違いは、以下の通りです。
インカムゲイン :資産を保有し続けることで得られる利益のこと(家賃収入など)
キャピタルゲイン:保有資産を購入時よりも高く売却した時に得られる利益
株やFXであれば、短期でハイリスク・ハイリターンを前提として、キャピタルゲインを目的に運用することが多いでしょう。しかし、不動産投資はその手の投資とは異なります。不動産投資の目的は、月々の家賃収入などでインカムゲインを継続的に得ることで、安定した運用を目指すことがほとんどです。
インカムゲインは、キャピタルゲインに比べ利益を得るのに時間がかかりますが、長期的に見た場合のトータルでの収益は、手堅く得ることができるメリットがあります。
キャピタルゲインで大きな収益を得ようとした場合、不動産の売買を繰り返していくことになります。しかし、地価・人口の減少などで購入後に物件価格が下がり、購入時よりも低い価格で売却しなければならない、「キャピタルロス」と呼ばれるケースもあるので、長期で利益を出していくことを狙うにはあまりに不安定です。
そのため、長期的に安定した資産を形成することが目的で不動産投資を行う場合、家賃収入などのインカムゲインを得ていく手法が、ローリスクとなります。「所有物件に空室が発生した場合、赤字になる」という不安を抱いている方は、長期的に所有する物件の数を増やしていき、さらにリスクを軽減させましょう。
空室リスク・災害リスク・金利上昇リスクなどによる収支の悪化は、不動産投資では避けては通ることができませんが、収入源となる物件の分母を増やすことで軽減することができます。
不動産投資は長期運用が基本
家賃収入と同様に、不動産購入時に利用することになる住宅ローンについても、長期的な考えを持ちましょう。一回あたりの返済額を大きくして、短期で借入資金を完済することを考える必要はありません。不動産投資では、ローンの返済期間を長くすることで月々の返済額を下げ、ローンの返済は家賃収入だけで賄えるようにバランスを取ることが大切です。それにより、資金の手出しを抑えたマンション経営をすることが可能になります。
マンション経営において、短期的にキャッシュフローを充実させたいと考えると、途端にリスクが大きくなります。その理由は、短期で多額のローンを返済しなければならず、ローンに充てる家賃収入への考え方もより厳密になるためです。本来であれば、最初から想定してしかるべき引っ越しシーズンの暫定的な空室リスクなどにも、ピリピリしがちになるため、短期でのローン返済はあまりおすすめできないのです。
不動産投資は長期運用が向いている理由
前述のように、不動産投資ではインカムゲインを狙って、長期で不動産投資を行っていく必要があります。長期運用のメリットとして、以下のような物が挙げられます。
- 価格変動リスクを軽減できる
- 団信に加入することで生命保険費を抑えられる
- 家賃収入が不労所得になる
主に上記の要因により、マンション経営などの不動産投資は、リスクとリターンのバランスが取れており、長期で資産を形成する投資先として優良な手法と言えます。
価格変動のリスクを軽減できる
株などの金融商品の場合、毎時価格が変動するため、常に大きく損をするリスクと向き合わなければなりません。その一方で、不動産の価格が急に下落することはなく、その価格の変動幅は金融商品に比べ緩やかです。
不動産投資で価格変動リスクに備える場合、以下の点に気を付けましょう。
- 物件の立地条件
- 共有部分も含めた物件の状態管理
- 事故物件か否か
- 管理会社の質
- 政府の金融政策
- 景気の同行
- 海外情勢
不動産投資での価格変動を引き起こす要因は、オーナーがコントロール可能なものから、どうしようも無いものまで、さまざまです。物件の立地・状態などは、個人レベルで対応しやすいため、まずはこれらに対応しましょう。
しかしながら、景気の悪化や政府の政策によっても、不動産の価格が変動するのは悩ましいところです。投資家のほとんどが金融機関などからの融資を元手に不動産投資を行う関係上、政府が金融緩和政策などを行うと、どうしても業界全体が冷え込み、不動産価値もそれに連動して下がってしまいます。
現に、1990年代に起こったバブル崩壊の要因のひとつは、不動産価格の上昇にメスを入れるための政府の金融政策でした。また、2008年のリーマンショックの折に、株式相場が暴落した影響で金融機関が融資を渋り、不動産市場も低迷した出来事に代表されるように、海外の影響にも気を配っておく必要があります。
ローン返済中は団信が生命保険代わりになる
団信とは団体信用生命保険の略で、住宅ローンの借入を行う際には加入を義務付けている金融機関が多くなっています。団信に加入しておけば、加入者が死亡・高度障害状態に陥った際に、保険金から残りのローンを完済することが可能です。
団信が通常の生命保険料と違う点は、保険料にあります。一般的な生命保険は月々決まった金額を収めるのに対し、通常の団信の場合、保険料がかからないケースも多いのです。癌や脳卒中などの重大疾病に備え、各種特約があるプランに加入しても、保険料の支払いは住宅ローンの金利に上乗せする形で支払い、その上昇幅も0.1%から0.3%ほどと、僅かです。
借入期間20年・金利2.5%前後で、月々に10万円程度の金額を返済している場合、金利が0.3%上乗せされたとしても、追加で支払うことになるのは数千円程度となります。前述のように、団信は通常プランの場合、保険料の支払いが必要無い物も多いので、生命保険を団信に変えるだけで、ローンの返済期間中は保険料がそのまま浮くのです。
以上のことから、不動産投資をするにあたり生命保険を団信に切り替え、保険料が発生する場合もマンション経営などで入ってくる家賃収入から賄うことは、非常に合理的な選択と言えるのではないでしょうか。
ローン返済後は家賃収入が不労所得となる
マンション経営におけるキャッシュフローの本質は、たとえば35年間、ローンの返済に家賃収入のほとんどを充てることで、毎月1万円程度でもコツコツと返済し続けることです。
そして、定年退職の時期に併せてローンを完済し、そこから先は家賃収入を充実したキャッシュフローとして、リタイア後の生活費に充てる。このような長期的な視野を持つことが大切だと言えます。
不動産投資では、物件・入居者の管理などの実務を管理会社に委託することで、家賃収入を不労所得化することが可能です。物理的に拘束される仕事を外注化しておけば、基本的には不動産の価格変動にさえ気を配っておけばよく、経理業務なども税理士などに委託することで、自分で行う必要はなくなります。
「老後の年金だけでは不安」
「安定して入ってくる不労所得が欲しい」
外注費こそかかってしまいますが、不動産投資は上記のようなニーズを抱えた方に適した投資方法のひとつなのです。
4.マンション経営は将来価値で見極める
マンション経営において、重要するべき指標は、「将来価値」という判断基準です。マンションを購入するにあたり、多くの方が、金融機関から長期にわたって住宅ローンの借入を行うことになります。そして、住宅ローンは一度に返済をする必要はないため、自分は良質な物件の購入後、長期的に安定感のあるマンション経営を可能とします。
ローンの完済後、マンションというプラス資産が手元に残り、この資産は私的年金の代わりとなり、ゆとりのある老後の生活を支えてくれる土台となるでしょう。また、将来的に物価が上昇する、預金などのキャッシュの価値はインフレに合わせて目減りしますが、現物資産としての不動産を保持することで、物価の上昇に合わせた対策も取ることが可能です。
マンション経営などで得られるインカムゲインは、ハイリスク・ハイリターンの金融商品などと異なる、不動産投資ゆえのメリットだと言えます。価値ある物件を購入できれば、不動産に投資する方の将来の資産は、安定的に増えることになるでしょう。
不動産投資では目先の利回りに振り回されるのではなく、利回りが低いことは悪い話ではない、むしろ利回りが低くなっている時こそ、投資対象物件の「将来価値」を見抜くことで、大きく資産を増やすチャンスに変えることが大切です。
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