資産形成は、人生にとって重要な課題の一つです。資産形成にはさまざまな方法がありますが、マンション経営は「ローリスク・ロングリターン」という特徴があり、有効な資産形成方法の一つといわれています。本稿では、マンション経営をリスク・リターンの観点から他の方法と比較し、より確実に資産形成する方法について考えます。
1.さまざまな投資におけるリスク&リターン
一口に「投資」といってもその方法はさまざまです。まず投資対象として、実物資産と金融資産に大別できます。
また、金・大豆・小麦などの「実物を対象とする投資信託」という、金融資産の姿をした実物資産のような「ハイブリッド」資産もあります。
不動産投資においても、J-REITと呼ばれる不動産を対象とした投資信託もあり、市場でも売買が可能です。
すべての投資は、いうまでもなくリターンを得ることが目的です。そして、リターンを得るにあたり、投資した財産には毀損リスクがあります。そのリスクの可能性に応じて得るリターンも変化します。
それでは、投資ごとにどのようなリスクとリターンがあるのかを見ていきましょう。
1-1.外貨定期預金
例えば、米国のドルと南アフリカのランドの外貨定期預金(ソニー銀行1ヵ月限定金利商品の場合)の利率を見てみると、米ドルは2%、ランドは32%です(2021年6月1日現在、2ヵ月目以降は通常金利)。
このように、その国のインフレや為替、経済安定性などの条件で、元本が毀損する可能性を反映して、リターンの指標である利率が決まります。
1-2.株式投資
株式投資は、上場企業からスタートアップ企業に至るまで、投資対象は広範囲に及びます。スタートアップ企業ならば事業が失敗するリスクが伴うものの、成長性が大いに期待できます。
一方、上場企業であれば、安定感は高いものの、成長性はベンチャー企業に比べると緩やかです。この様相がリスク・リターンとして表れます。
1-3.外国為替証拠金取引(FX)
外国為替証拠金取引(FX)は、為替相場の動きを予測して、たとえばドル/円の場合ドルが安いときに買い、高くなったら売るというように反対売買することで為替差益を得る投資法です。
FXでは自己資金に対してレバレッジ(手持ち資金の何倍もの取引ができる仕組み)が掛けられます。
現状では最大25倍のレバレッジが可能であり、これは100万円の自己資金で最大2,500万円の投資が可能になることを示しています。この仕組みによってリターンは大きくなりますが、当然リスクも大きくなります。
1-4.マンション経営
それではマンション経営はどうでしょうか。マンション経営は金融機関から融資を受けられるのが大きな特徴です。融資を利用して自己資金以上の物件を購入できるのは、一種のレバレッジだといえます。
レバレッジは大きな利益を得るチャンスがある半面、金融投資では損失を被るリスクが大きいのも事実です。
その点マンション経営は、定期的な収入である家賃がローン返済の原資となるため、他の投資よりもリスクが低いことは間違いありません。
2.マンション経営の利益
投資のリターンは、家賃収入である「インカムゲイン(運用益)」と、物件を売却して得られる「キャピタルゲイン(譲渡益)」とに分けられます。
株式投資のような金融資産であれば、流動性も高く、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を考えた運用をする場合がありますが、マンション経営は主にインカムゲインを目的とした長期投資となります。
2-1マンション経営は資産形成に適した投資法
インカムゲインを目的としたマンション経営は、資産形成に適した投資法です。
例えば、賃貸物件のような収益物件に投資すれば、所有している限り定期的に賃料収入が入り続けます。これは安定して資産形成を実行するのに大きな助けとなります。
この収益物件については、「表面利回り」と「実質利回り」という投資効率を表す指標がマンション経営では用いられています。これらは、以下の式で表されます。
表面利回り=100×年間収入/物件価格
実質利回り=100×(年間収入-諸経費)/物件価格
表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格で除した値をパーセント表示した数値で、投資物件を最初に選別する際の目安となる指標です。
実質利回りは、年間収入からその年の諸経費(固定資産税・保険・修繕費など)を控除した値を、パーセント表示した数値です。
実質利回りは、計算式の分子がキャッシュフローを意味していることから、より実態に即した投資効率を表すもので、資産形成を目指すうえで重要な指標です。
3.マンション経営のメリット
マンションは株価のような大きな価格変動はないため、安心して保有することができます。安定している上にマンション経営は次のような多くのメリットがある大変有利な資産運用方法です。
3-1.定期収入がある
マンション経営が安定した資産運用といわれるのは定期収入があるからです。空室にならない限り毎月家賃収入が入り、ローンの返済にあてることができます。
経営を安定させるには、ローン+諸経費の額と家賃収入のバランスを管理することが重要です。
3-2.不労所得が得られる
副業を行う場合、本業に影響しない事業であることが理想です。副業の打ち合わせで本業を休むのでは本末転倒となります。
マンション経営は不動産管理会社に管理を一任すればオーナーが動くことはほとんどありません。
家賃は振り込まれるので、振り込みの状況をスマホで確認するだけで済みます。本業に影響を与えずに不労所得を得られるのがマンション経営の大きなメリットだといえるでしょう。
3-3.節税できる
マンション経営は条件によって所得税を節税できるメリットがあります。サラリーマンの場合、給与所得と不動産所得を合算して総合課税されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円〜1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
(出典:国税庁 所得税の税率)
例えば、給与所得が1,000万円で不動産所得が仮に150万円の赤字というケースでは、850万円が課税所得となります。
税率区分が33%から23%に下がるため、節税効果が高くなります。これを「損益通算」といいます。また後述しますが、現金を不動産に変えることで相続税も節税することができます。
経費面では、購入金額を物件の耐用年数によって減価償却費として毎年経費に計上することができ、所得税の節税につながります。
最も耐用年数が長いケースは、新築マンションで鉄筋コンクリート造の物件を購入した場合で47年です。
さらに土地を持っているオーナーがマンションを建築した場合は、土地のみを所有していたときよりも固定資産税が安くなります。
3-4.資産が残る
保有しているマンションはローンの支払いが終了すれば担保が解除されて純資産として残ります。
マンション経営は家賃収入でローンを返済していくので、自分でローンを支払っていなくても将来的に自分の資産になるというメリットがあります。
3-5.老後の貴重な収入源になる
マンション経営はローンの支払いを家賃収入で賄えるため、固定資産税などわずかな支払いで将来的に大きな資産を得られます。
ローン完済後も賃貸を続ければ引き続き家賃が入るので、老後の貴重な収入源になります。「老後資金2,000万円不足問題」を解決するためにも、若いうちにマンション経営を始めることが有効です。
4.マンション経営のリスク
メリットが多いマンション経営ですが、次のようなリスクを抱えているので注意するとともに、対策も考えておく必要があります。
4-1.空室
マンション経営の一番のリスクは空室です。空室が出ると原状回復や募集期間を含め最低1ヵ月は家賃収入がないものと考えられます。
家賃収入がゼロになった場合、心配なのは家賃収入をローンの返済に充てられないことです。空室リスクを考慮した資金計画が必要です。
4-2.家賃滞納
空室の次に大きなリスクが家賃の滞納です。とくに新型コロナウィルスの感染拡大以降はそのリスクが高まっています。滞納しないまでも家賃の減額を求められるケースもあるようです。
家賃の滞納については「家賃保証会社」を利用することで未納を防ぐという方法もあります。
4-3.老朽化
マンション経営にとって避けて通れないのが建物の老朽化です。通常の使用状態で不具合が生じた場合はオーナーが修繕費を負担して直す必要があります。
さらに一棟オーナーの場合は老朽化が進めば大規模修繕を行わなければなりません。区分所有でも大規模修繕費用の負担はありますが、1人あたりの負担は少なくなります。
老朽化に対する最も有効な対策は新築マンションを購入することです。中古マンションは価格が安いですが、老朽化や修繕箇所の発生が新築よりも早くなります。
4-4.災害
巨大地震や大型台風が周期的に起こる日本においては常に災害リスクがつきまといます。
災害自体を防ぐことはできないので、地震対策としては複数の物件を所有する場合は地域を分散する(東京と名古屋に分けるなど)、台風対策として山や川から離れた都心型の立地を選ぶ、などが考えられます。
火災保険・地震保険である程度の補償はカバーできますが、被害の状況によっては保険金だけでは足りない場合もあります。契約内容によって補償の範囲が変わるので、保険会社とよく相談することが大切です。
5.マンション経営に向いている人
人には適正があり、同じ仕事でも向いている人とそうでない人がいます。ではマンション経営に向いているのはどのようなタイプの人でしょうか。
5-1.着実な資産運用をしたい
マンション経営は着実な資産運用をしたい人に向いています。つまり株やFX、暗号通貨などで一攫千金を狙ったりしない人です。
マンション経営は毎月地道に家賃収入を得て、長期にわたってローンを返済します。返済終了後に数千万円の大きな資産になる根気の要る投資です。
5-2.相続した際の相続税の負担を減らしたい
人生において相続をどうするかも大きな問題です。相続税で最も課税評価額が高いのは現金や預貯金で、評価額100%です。
不動産で相続させた場合は時価の70%程度に相続税評価額が下がるため、相続税を節税することができます。
5-3.会社員(不動産投資ローンの審査が有利)
会社員は不動産投資ローンの審査で金融機関からの評価が高いというメリットがあります。
たとえ収入があっても個人事業主は、売上や収入が不安定という理由でどうしても評価は低くなります。その意味では、会社員はマンション経営に向いている属性といえます。
ただし会社員なら誰でも評価が高いわけではありません。高評価を受けるポイントの1つは「年収」です。
万が一空室期間が長引いたり、高額な修繕費が発生した場合は自身の給与収入から補填しなければなりません。その資金が給与になるわけですから、金融機関は年収を判断材料として重視しています。
次に高評価のポイントとなるのが「勤務先」です。会社が倒産した場合ローンの返済に不安が生じるため、安定した企業に勤務しているほうが評価は高くなります。それに付随して「勤続年数」「年齢」も属性の判断材料になります。
金融機関は、同じ会社に3年以上勤務していることを一つの目安としているといわれており、勤続年数が短く、転職回数が多いと融資が不利になる傾向があります。年齢が高く定年が近いとなると、融資の限度額が減ることがあります。
5-4.老後に備えたい
老後の資金は若い年代から積立を行って備える必要があります。そこで最適なのが長期で資産を形成できるマンション経営です。
モデルケースとして30歳のときに35年ローンを組んでマンション経営を始めれば、65歳でローンを完済。以後は家賃収入と年金で安定した老後を送ることができます。
老後の備えに意識が高い人もマンション経営に向いているといえます。
5-5.忙しい医師
医師は大変多忙です。副業を考える場合、株式などの投資は日々のチェックが欠かせないため、トレードに時間が取れない医師には向いていません。販売や営業が必要な副業も難しいでしょう。
その点マンション経営なら不動産管理会社に物件の管理を委託することで、日常的な管理や家賃の集金まで代行してくれます。忙しい医師に最も向いている資産運用方法といえます。
6.マンション経営の最終目的は
マンション経営は投資の一種ですが、株式を始めとする諸々の投資とは一線を画する点があります。
マンション経営は株・FX・暗号通貨のように目先の値上がり益を目的とするものではありません。長期的な視点に立ち行なうものです。
また株・FX・暗号通貨などは値動きを常にチェックしておく必要がありますが、マンション経営は管理会社に一任することがほとんどなので、忙しい会社員などでも経営することができます。
マンション経営は毎月安定した家賃収入を得ることが最初の目的となります。その家賃収入で、毎月のローンを返済していきます。
そしてマンション経営における最終目的は、すべてのローンの返済が終わることで、マンションという大きな資産がそのまま自分の手に入ることにあります。
純資産となったあとは、家賃収入を年金にプラスして生活を安定させるか、売却して現金化するか2つの選択肢ができます。
公的年金制度だけでは不安がある現在、老後の生活をいかに安定させるかは個々人の備えにかかっています。マンション経営は、この老後を支える大きな礎となることは間違いありません。
老後生活の安定をゴールとして考える場合は、若い年代からマンション経営をスタートする必要があります。
20代で不動産に関する知識がなく、物件選びが難しい場合でも不動産会社に相談すれば適切な物件を紹介してくれるはずです。
まずは不動産会社に気軽に相談してみることをはじめてみてはいかがでしょうか。
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