「マンション経営をすると、節税できる」といわれることがあります。実際のところ、マンション経営で節税を行い、長期に安定した収益は得られるのでしょうか?今回はマンション経営による節税スキームの有効性を考えてみましょう。

マンション経営の節税効果は?
(画像=Dagmar Breu/Shutterstock.com)

老後のための資金としてだけではない、マンション経営の魅力

マンション経営のメリットとしては、「個人年金になる」「生命保険の代わりになる」「節税できる」などが挙げられます。

まずは、比較的イメージしやすい「個人年金になる」について説明します。例えばマンションを1室購入し、リタイアまでにローンを完済できたとします。その後は、入居者が続く限り、賃料収入から修繕費や公租公課などの経費を差し引いた金額が家主の収入となり、年金の足しにすることができます。

また、「生命保険の代わりになる」とは、ローンの借入時に加入する団体信用生命保険(団信)を意味します。借入者が死亡した場合には、ローンの残債が清算され、それ以降の賃料収入は、そのまま遺族の手元に残るというものです。ただ、団信は生命保険のように解約したり、繰上げ返済したりしても、まとまった返戻金を手にできるわけではないので、区別して考えましょう。

そして、最後の「節税できる」というのが今回のテーマです。

不動産所得の計算法とは?

節税と聞いてまず考えられるのは、所得税の節税でしょう。マンション経営による所得は、家賃収入から必要経費を引いたものであり、税法上「不動産所得」という区分に分類されます。

必要経費とは、不動産収入を得るために直接必要な経費のことです。具体的には固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などが該当します。また、不動産を取得するために金融機関でローンを組んでいる場合は、そのローンの利子も必要な経費とされます。その他にも、司法書士手数料、ローン手数料、印紙代、登録免許税、不動産取得税などが経費として控除されます。

マンション経営は長期的な運用を行うため、あえて収支をマイナスにします。サラリーマンなどで給与所得を得ている方ならば、マンション経営の赤字分を損益通算することにより、課税所得を減らして節税することができるためです。ただし、手数料や登録免許税などは不動産取得時の一時的な経費ですから、毎年必ず節税になるわけではないので、注意しましょう。

所得の損益通算

所得は、その収入を得る手段に応じて、給与所得、事業所得や不動産所得などのように10種類に分類されます。

①利子所得 ②配当所得 ③不動産所得 ④事業所得 ⑤給与所得 ⑥退職所得 ⑦山林所得 ⑧譲渡所得 ⑨一時所得 ⑩雑所得

10区分された所得の中で、③不動産所得、④事業所得、⑦山林所得、⑧譲渡所得の4つは、所得がマイナス(赤字)になった場合、他の所得と合算して総所得を計算します。これを「損益通算」といいます。これにより総所得が減じれば、結果として所得税は軽減されることになります。

例えば、あるサラリーマンの課税所得が750万円だとすると、これにかかる所得税は、税率23%・控除額63万6,000円となります。これを元に計算すると税額は、

『7,500,000×0.23-636,000=108万9,000円』となります。

しかし、この方がマンション経営をしていて、不動産所得が60万円の赤字だった場合、課税所得は690万円となり、税率20%・控除額42万7,500円となります。税額は、

『6,900,000×0.20-427,500=95万2,500円』となります。

前述と比較すると、13万6,500円の節税です。 このように、マンション経営は上手に活用できれば節税効果が期待できるのです。

「減価償却費」と「ローン利子」が節税の重要ファクター

・支出不要で経費を計上できるのが「減価償却費」 アパートやマンションなどのように長期間にわたって使用される資産は、その取得費用を、取得した年だけに計上すると適正な損益計算ができません。そこで税法上、「長期間使用する資産の取得費用は、使用期間に応じて割り振る」という操作を行います。こうして使用期間中の各年に割り振られた経費が「減価償却費」です。

減価償却費は適正な損益計算のために設定される経費であり、実際の出費(お金の動き)はありません。つまり、実際には支出のない経費を、償却期間中は計上し続けられるわけです。これは所得税の節税において、大きな影響を持ちます。

注意すべき点は、土地は償却という概念が当てはまらないので、減価償却費は、あくまで建物に関連する費用だけで計算されることです。

コントロール可能な範囲で上手に節税を

さて、今回はマンション経営による節税について、所得と経費の関係から考えてきました。不動産所得が赤字となることで、給与所得などの損益通算を利用して節税することが可能となります。しかし、節税効果を受けるのみでは、マンション経営のメリットを享受しきれているとはいえません。マンション経営の節税効果を上手に得つつ、その他のメリットもうまく活用することが重要です。それぞれのメリットを自分自身で理解した上で、長期的な視点でマンション経営を行いましょう。

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