
マンション経営は選ぶ物件によって稼働率や収支が大きく変わります。初心者がマンション経営を始める場合、どのようなポイントを重視して物件を購入すればよいのでしょうか。本稿では、初心者がマンションを購入する場合に見るべきポイントを解説し、あわせて良い不動産会社を選ぶために注目すべき点について紹介します。
目次
1.不動産投資初心者こそ新築マンション経営

不動産投資初心者にとって、どのような物件を購入すればよいか、判断に迷うところでしょう。
初めてのマンション経営においては収益規模の大きさよりも、空室リスクが少なく安定した家賃収入を目指すほうが得策です。
それには次の3つのポイントで検討することが望ましいといえます。
2. 中古マンションよりも新築マンション
3. ファミリー向けよりもワンルームマンション
1-1.アパートよりもマンション経営
アパートは通常一棟買いとなりますので、ある程度多くの資金が必要です。
土地を持っている人がアパートを新築するならメリットもありますが、不動産投資家が中古アパートを一棟買いしても空室リスクや修繕リスクが高いだけであまりメリットはないでしょう。
その点マンションは区分所有で一室から購入可能なので、リスクはアパートより低くなります。
1-2.中古マンションよりも新築マンション
マンションを購入する場合は中古よりも新築が有利です。新築マンションは「新築プレミアム」という言葉があるとおり、新しい住居に住みたいという需要が常にあるため、高い確率で入居者を確保できます。
価格は中古よりも高くなりますが、その分銀行融資で条件が有利になります。新築物件は中古よりも融資金利が低く、融資期間も長く設定されるメリットがあるからです。
1-3.ファミリー向けよりもワンルームマンション
マンション経営では入居者の需要が多い物件を選ぶことが大切です。

西暦 | 単独世帯 | 夫婦と子から成る世帯 |
---|---|---|
2015 | 1,841万7,922世帯 | 1,434万1,651世帯 |
2020 | 1,934万2,438世帯 | 1,413万3,510世帯 |
2025 | 1,995万9,786世帯 | 1,369万3,160世帯 |
2030 | 2,025万3,714世帯 | 1,311万8,427世帯 |
2035 | 2,023万3,497世帯 | 1,246万4,575世帯 |
※2020年以降は推計
(参考:国立社会保障・人口問題研究所 『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2019年推計)を参考に編集部にて作成)
国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、わが国では2030年に単身世帯が初めて2,000万世帯の大台を突破する見込みです。
これは「夫婦と子から成る」ファミリー世帯の1,312万世帯を大きく上回っています。今後将来にわたってファミリー向けマンションよりもワンルームマンションのほうが多くの需要を見込めると考えてよいでしょう。
2.投資用の新築マンション選び5つの必須ポイント

マンション経営を行うにあたり、初心者のうちは知っている情報量や経験が少ないことから、どのような物件を購入すればいいか、わからないかと思います。
そこで、物件選びのポイントを解説いたします。
2.選ぶなら不動産価値の落ちにくいブランドマンション
3.「利回り」はあくまでも一つの目安
4.「安けりゃいいや」は大問題
5.不動産投資は街づくりの一環でもあることを心得よう
以上の主なポイントについて、一つひとつ見ていきましょう。
3.ポイント1:立地が何よりも重要

マンション経営においては立地が何よりも重要です。好立地とは、入居者が確実に見込める、需要が旺盛なエリアのことをいいます。
ポイントは人気が高く、人口があまり減らない見込みのエリアです。そして、そのエリアのなかでも建物の構造や設備が良い物件を選ぶことが大切です。
そこで良い立地の選びの方について解説いたします。ポイントは以下の3つになります。
2.人口減少が少ないエリアを選ぶ
3.立地に合わせた建物の構造や設備の物件を選ぶ
3-1.人気のエリアを選ぶ
東京23区を例に解説いたします。好立地の基本は「東京23区駅歩10分以内」ですが、そのなかでも人気エリアといわれているのが「都心5区」と呼ばれる港区・千代田区・中央区・新宿区・渋谷区です。
また、港区・千代田区・中央区を「都心3区」、前出5区に文京区を加えて「都心6区」といういい方をする場合もあります。
もちろん、他の東京23区や地方の大都市である大阪、名古屋、横浜などでも駅歩10分以内の物件であれば安定した集客が見込めるでしょう。
3-2.人口減少が少ないエリアを選ぶ
日本は人口減少が始まっています。人口減少はマンション経営にも大きなマイナスポイントです。したがって、安定したマンション経営を行うには人口減少が少ないエリアの物件を選ぶことが有効な方法です。

総務省統計局の「2019年人口推計」によると、2019年10月1日時点の前年比で人口が増加したのは東京都、沖縄県、埼玉県、神奈川県、愛知県、滋賀県、千葉県の7都県となっています。
大阪府も8位でわずか−0.04%とほとんど減っていません。やはり首都圏と愛知・大阪など大都市圏が人口増減率で有利な傾向がはっきり見て取れます。
3-3.立地に合わせた建物の構造や設備の物件を選ぶ
エリアを決めたら、次に建物の構造や設備に着目する必要があります。エリアによって居住者の特性が異なるからです。
例えば、東京の御茶ノ水・水道橋エリアであれば大学が集中しているため、学生向けのワンルームマンションの需要が見込めます。
また、東京でも郊外の立地であれば駐車場を確保できる物件が求められるでしょう。このようにエリアによって入居者を確保するための間取りや設備が異なってくるのです。
4.ポイント2:選ぶなら不動産価値の落ちにくいブランドマンション

マンションを不動産価値で判断するならブランドマンションの購入も検討する価値があります。
ブランドマンションとはどのようなマンションを指し、どのような特徴があるのでしょうか。ポイントを確認しておきましょう。
4-1.ブランドマンションとはどのようなマンションか
ブランドマンションとは、知名度の高い大手不動産会社が土地の所有から建築まで手掛けて販売する分譲マンションのことを指します。
駅から近い好立地に、ハイクオリティな建築デザインや設備を施して建築しているため、販売するとすぐに買い手がつくほど高い人気を誇っています。
ブランドマンションは大手不動産会社が威信を賭けて建築・販売しているため、どの物件も一定のクオリティが維持されており、投資家も安心して購入することができます。
4-2.ブランドマンションは不動産価値が落ちにくい
ブランドマンションは不動産価値が落ちにくいのが特徴です。駅から徒歩圏に立地しているうえに、最新トレンドのデザインや設備を導入しているため、安定して入居者が見込めます。
建物内も管理人が随時巡回し、外観やエントランスの美観が保たれています。さらにセキュリティにも万全を期しているため、防犯面の不安もありません。
全体的に管理体制がしっかりしていることから、築年数が経過しても資産価値が落ちにくいという特性があるのです。
4-3.ブランドマンションは高く売れる
ブランドマンションは売却するときに高く売れるメリットがあります。
上記したように資産価値が落ちにくいため、中古で売却する際も高い価格で売れることが期待できます。
ブランドマンションの売却は系列の不動産会社に仲介を依頼すれば、ブランド価値を下げないために、できる限り高い価格で売れるように努力してくれるという特性があります。
5.ポイント3:「利回り」はあくまでも一つの目安

物件情報に記載されている「利回り」の数字は、あくまでも目安でしかないことを知っておきましょう。
物件情報の利回りは「表面利回り」という数字であり、この表面利回りは、対象物件を1年間満室で運営できたときの家賃収入を、購入金額で割ったものとなっています。
表面利回り = 1年間満室で運営した場合の家賃収入 ÷ 購入金額
実際に不動産投資をした場合、満室にならないこともあるでしょう。例えば引っ越しシーズンで部屋が空いたり、駅から遠く離れた場所にあるためにアクセスが悪かったりなど、いろいろな事情が考えられます。
5-1.価格が安い物件ほど数字が高くなりがち
しかし、このような物件であっても、表面利回りは満室を前提に算出するので、築古で価格が安い物件や地価の安いエリアの物件ほど数字が高くなりがちなのです。
5-2.物件維持のためにかかるコストを考慮していない
さらに、表面利回りは物件維持のためにかかるコストを考慮していません。例えば、昭和時代の古びた部屋だったり、また、外壁であれば、安価な吹き付け塗装だったりすると、やはりコストがかかる傾向があります。
あくまで目安の一つとして見なしつつ、実際の入居率はどの程度なのか、毎年の修繕にどの程度の費用をかけているのか、過去にどのような修繕履歴があるのかを必ず確認しましょう。
そうすることで初めて、実際にどのような経営をすれば良いのかイメージも湧いてくるはずです。
6.ポイント4:「安けりゃいいや」は大問題

「不動産投資をしてみたい。初心者だし、お財布と相談して手頃な安い物件からはじめてみよう」と考えるのはある意味自然です。しかし同時に、これは初心者が陥りがちな落とし穴です。
安い物件というのは安いなりの理由があります。状態の良し悪しをよく確認せず、物件価格だけを見据えてしまうと後でとんだしっぺ返しを食らいかねません。
例えば、7万円が家賃としてもらえる金額の上限であるにも関わらず、管理費に月々2万円を支払っていたら、実際の収益性は大変低くなってしまいます。
6-1.値段よりも入居者の立場に立って考えてみる
物件の値段よりも、まずは入居者の立場に立って考えてみることが肝心です。築古物件は、今の時代の入居者からすると魅力が高い物件とはいえません。
バブル期後の物件ですと、部屋が非常に狭かったり、今のようにバス・トイレ・洗面所が独立していない3点ユニット式だったりします。このような物件は入居者の獲得に大変苦労します。
6-2.マンションの運営状況を確認する
物件を購入する際には、価格以前に、まずはどのような管理を行っているのか、大規模修繕計画はどのように立てられているかなど、運営状況を必ず確認してください。
7.ポイント5:不動産投資は街づくりの一環でもあることを心得よう

不動産投資は長期的に行うものです。株やFXのように、頻繁に売買して利益を出すものではなく、20~30年と長期にわたって物件を所有することによって利益を得ます。
今から10年前、20年前のお住まいの地域を思い出してみてください。今と比較すると、だいぶ景観が変わったはずです。
購入物件も20年、30年と時代を経れば当然景観や人口、住まう人々も変化していくでしょう。そして購入した物件それ自体も環境の変化に一役買います。不動産投資とは投資であると同時に街づくりでもあるのです。
7-1.人口動向を考慮する
ともあれ、投資にあたってまず考えるべきは人口動向です。入居者がいなければ家賃収入は得られません。
現在、日本の各地方では過疎化が進んでいます。一方、都心は人口が流入しており、東京23区や神奈川県川崎市、横浜市などの賃貸需要は上昇しています。
賃貸需要が上昇した成功例に武蔵小杉が挙げられますが、同じように鉄道路線などの交通アクセスが改善され、大幅に人口が増えるケースもあります。
7-2.都市計画を押さえておく
街づくりという観点で不動産投資を眺めてみると、押さえておきたいのが都市計画です。
鉄道会社の開発計画、周辺の商業施設の開発計画などもしっかりとチェックしてみましょう。10年後、20年後の環境イメージが見えてくるはずです。
7-3.単身者が多いか子育て世代が多いかを調べる
ターゲティングも重要です。単身者世帯が多いエリアには、単身者向け物件のワンルームマンションなどの需要があり、住宅地ではファミリー向け物件の需要が見込めます。
国土交通省が発表するデータを見れば、そのエリアには、単身者世帯が多いのか、それとも子育て世代が多いかなどのデータが調べられます。
8.実績のある不動会社を選ぶ

マンション経営を軌道に乗せるためには不動産会社との付き合いも大切です。
空室が出た場合、早めに次の入居者を見つけるうえで不動産会社のサポートが不可欠だからです。そのためには実績のある不動産会社を選ぶことが必須となります。
実績のある不動産会社を見分けるには次の3つのポイントをチェックする必要があります。
2.入居者募集に強い
3.管理業務も行う
8-1.自社ブランドを持っている
マンションの自社ブランドを持っている会社は信頼性が高いと考えられます。
同じブランドで発売を続けているということは、既存の物件が購入者から評価されている証でもあり、品質も高い物件であると想像することができます。
入居者目線で見た場合でも、聞き覚えのあるブランド名が冠されていることによる安心感があり、入居につながりやすいというメリットがあります。
8-2.入居者募集に強い
マンション経営で一番心配なのは空室リスクです。入居者募集に強い不動産会社に依頼すれば、平均的な不動産会社よりも早く入居者を見つけてくれる可能性があります。
とくに数百店舗規模を擁する不動産チェーンであれば、自店舗で入居者が見つからなくても、近隣の店舗から紹介してもらえることも考えられます。
8-3.管理業務も行う
不動産仲介だけでなく、管理業務も行う不動産会社であればより利便性が高くなります。入居者の動向を把握していますので、退去の連絡があればそのまま入居者募集に移行できます。
入居者が退去する際の原状回復や敷金の清算、そして次の入居者との仲介など、自分の物件に関する手続きをオールインワンで依頼できるのはとても安心感があります。
9.初心者は手堅い新築ワンルームマンション経営から

マンション経営初心者は、収益規模よりも安定した家賃収入が見込める物件を購入し、手堅い経営からスタートすることが望ましいといえます。
そのためには立地の選定が極めて重要で、中古マンションよりも都心駅近の新築ワンルームマンションの購入が空室リスクを少なくするうえで重要なポイントです。また、資産価値を維持するためには、ブランドマンションの購入も選択肢の1つになります。
そして、不動産会社の選定は紹介したポイントに当てはまる良い会社を見つけて、マンション経営の良きパートナーとすることが求められます。
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