不動産を購入した際、確定申告で経費計上をしようとして「土地は減価償却できるのだろうか」と疑問に思う人は少なくありません。
記事の冒頭で結論をお伝えすると、税務上のルールにおいて土地は減価償却の対象外となります。確定申告で経費として少しずつ計上していくことができるのは、建物やその設備部分のみです。
本記事では、なぜ土地が対象外になるのかという基本的な仕組みから、マンションや一戸建てを土地とセットで購入した際の価格の分け方(按分)までを詳しく解説します。
さらに、この仕組みを利用して、会社員が合法的に税金をコントロールする不動産投資のメカニズムについて、2026年の最新税制に基づいてお伝えします。
目次
土地は減価償却できない!その理由と「対象となる資産」の違い
「結局、土地はどう扱えばいいのか」という疑問に素早くお答えするため、まずは要点を整理しておきます。
- 原則:土地は「非減価償却資産」に分類されるため、減価償却(経費化)できません。
- 理由:年月が経過しても、物理的な価値が目減り(劣化)しないとみなされるためです。
- 対策:不動産を一括で購入した場合は、購入価格を「土地」と「建物」に分け(按分)、建物部分のみを減価償却費として計算します。
このように、不動産を購入したらまずは土地と建物の価格を切り離して考えることが、確定申告の第一歩となります。
なぜ土地は対象外?減価償却の仕組みと「非減価償却資産」
| 比較項目 | 減価償却できる資産(対象) | 減価償却できない資産(非減価償却資産) |
|---|---|---|
| 主な具体例 | 建物、付帯設備(エアコン等)、パソコン、車 | 土地、借地権 |
| 分類される理由 | 時間の経過や使用によって劣化し、価値が減少していくため | 時間が経っても劣化・消耗せず、物理的な価値が消滅しないため |
| 購入にかかった諸費用(付随費用)の扱い | 建物の取得費になるもの建物の仲介手数料、建物の登記費用など | 土地の取得費になるもの土地の仲介手数料、測量費、土地の登記費用、建物の解体費用など |
| 確定申告・税務上の扱い | 耐用年数に応じて分割し、毎年の「経費」として計上できる | 毎年の経費にはできず、将来売却する時まで持ち越される(売却時の取得費になる) |
そもそも減価償却とは、高額な固定資産を購入した際、その購入費用を一度に経費にするのではなく、国が定めた耐用年数(使える期間)に応じて分割し、数年にわたって経費計上していく制度です。
建物やエアコンなどの設備、パソコン、車といった資産は、使えば使うほど古くなり、劣化していきます。時間が経つにつれて価値が減っていくため、その減った分の価値を「経費」として認めるのが減価償却の考え方です。
一方、土地はどうでしょうか。いくら人が歩いても、上に建物を建てても、土地自体がすり減ってなくなることはありません。時間経過によって物理的な価値が消滅しないため、税務上は「非減価償却資産」として扱われ、経費化することができないのです。
土地と建物をセットで購入した場合の「価格の分け方(按分)」
マンションや一戸建てを購入する場合、多くは土地と建物がセットになった価格で取引されます。
しかし確定申告で減価償却を行うには、「購入総額のうち、土地がいくらで、建物がいくらなのか」を明確に分けなければなりません。
これを専門用語で「按分」(あんぶん)と呼びます。適当に分けることは認められておらず、税務署に説明できる合理的な基準で計算する必要があります。ここでは、実務でよく使われる3つの具体的な分け方をご紹介します。
1. 「消費税」から建物の価格を逆算する方法
もっとも確実で、一般的なのが消費税額を利用する方法です。
日本の税制では、土地の売買には消費税がかからず、建物部分のみに消費税が課せられます。つまり、売買契約書に記載されている消費税額を見れば、建物の本体価格を正確に逆算できるのです。
たとえば、消費税率が10%で、契約書に「消費税額200万円」と記載されていたとします。この場合、建物の税抜価格は「200万円 ÷ 10% = 2,000万円」と計算できます。そして、不動産の購入総額からこの2,000万円と消費税額を差し引いた残りの金額が、土地の価格ということになります。
2. 「固定資産税評価額」の比率で分ける方法
個人間での売買や中古物件の取引などでは、売買契約書に消費税額が記載されていないケースがあります。その際によく用いられるのが、固定資産税評価額の比率で按分する方法です。
固定資産税評価額とは、市町村が税金を計算するために定めた不動産の価値のことで、納税通知書などで確認できます。
購入した年の「土地の評価額」と「建物の評価額」を調べ、その割合を求めます。たとえば評価額の比率が「土地4:建物6」であった場合、実際の購入総額をこの4対6の割合で振り分けます。公的な評価額に基づいているため、税務署にも認められやすい合理的な計算方法です。
3. 不動産鑑定評価や売買契約書の金額に基づく方法
これらの2つの方法が使えない場合の選択肢もあります。
一つは、売買契約書にあらかじめ「土地〇〇円、建物〇〇円」と明確に区分して記載されている場合です。当事者間で合意された合理的な金額であれば、そのまま採用できます。
もう一つは、不動産鑑定士に依頼して鑑定評価額を出してもらい、その金額をもとに按分する方法です。確実性は高いものの、鑑定を依頼するための費用(数十万円程度)がかかるため、一般的な会社員が個人の不動産投資で利用するケースは稀です。
土地の取得にかかった費用(付随費用)は減価償却できる?
不動産を購入する際には、物件の本体価格以外にも、仲介手数料や登記費用など、さまざまな諸費用(付随費用)がかかります。
これらの費用を確定申告でどう扱うかは、少し複雑です。支払った費用が「土地の取得費」になるのか、「建物の取得費」になるのか、あるいは「その年の必要経費」として一括で落とせるのかを正しく仕訳ける必要があります。
土地の取得費に含まれるもの(減価償却不可)
購入にかかった費用のうち、土地を取得するために直接かかった費用は「土地の取得費」に加算されます。
具体的には、土地部分の仲介手数料、土地の測量費、土地の所有権移転登記にかかった費用などです。また、古い建物が建っている土地を買い、更地にするために取り壊した際の解体費用も土地の取得費に含まれます。
これらは土地の本体価格に上乗せされる扱いとなるため、建物のように減価償却して毎年の経費にすることはできません。将来その土地を売却する時まで、経費化は持ち越しとなります。
建物の取得費に含まれるもの・経費にできるもの
一方で、建物部分の仲介手数料や建物の登記費用などは「建物の取得費」に含まれ、本体価格と一緒に減価償却できます。
さらに知っておきたいのが、購入時にかかった費用のうち、特定の税金などは「その年の必要経費」として一括で落とせるというお得なルールです。
不動産取得税、登録免許税、売買契約書に貼る印紙税、銀行のローン事務手数料などは、資産に計上せずに全額をその年の経費として処理してよいことになっています。
不動産投資における減価償却費の「節税」メカニズム
ここまで減価償却の計算方法などを解説してきましたが、会社員にとって本当に重要なのは、この仕組みをいかに資産形成に活かすかという投資戦略の視点です。
減価償却費は「お金が出ていかない経費」
減価償却費の最大の魅力は、魔法のような特性を持っていることです。
通常の経費、たとえば交通費や接待交際費は、実際に手元の現金が減ってしまいます。しかし減価償却費は、購入時に既にローンなどで支払いを済ませている資産の価値を分割して計上するものです。
つまり、確定申告を行う年においては「実際の現金の支出は1円もないのに、帳簿の上では数百万円という大きな経費(赤字)を作ることができる」のです。これが、不動産投資が会社員の資産運用として有利だと言われる理由の根幹です。
会社員の「損益通算」で所得税・住民税を取り戻す
この「お金が出ていかない帳簿上の赤字」を最大限に活かせるのが、本業で高い給与をもらっている会社員です。
日本の税制には「損益通算」というルールがあり、不動産投資で出た赤字を、本業の給与所得(黒字)とぶつけて相殺することが認められています。
減価償却費を使って不動産所得を赤字にし、それを給与所得から差し引くと、総所得の金額が小さくなります。会社員は毎月の給与から高めの税金を天引き(源泉徴収)されているため、所得が圧縮された状態で確定申告をすると、払いすぎた所得税が還付金として戻ってきます。さらに、圧縮された所得をベースに計算されるため、翌年の住民税も安くなるのです。
不動産売却時(出口戦略)の税金計算と土地の扱い
減価償却は保有期間中の手残りを増やす強力な手段ですが、将来不動産を売却する時のことも見据えておく必要があります。
減価償却費が売却時の「譲渡所得」に与える影響
毎年建物を減価償却していくと、帳簿の上での建物の価値(未償却残高といいます)はどんどん減っていきます。
将来その不動産を売却する際、税金の計算ベースとなる利益(譲渡所得)は、「売却価格 -(土地の購入費 + 建物の未償却残高)」で求められます。
つまり、保有中に減価償却をして帳簿上の価値が減っているほど、売却時の利益は大きく計算され、結果として売却時にかかる税金が増える可能性があるのです。
この仕組みを理解すると、減価償却は完全な節税というよりも「税金の支払いを将来に先送り(繰り延べ)している」側面があることが分かります。
だからこそ、将来売る時に値段が下がりにくい、資産価値の落ちない立地の物件を選ぶことが非常に大切になります。
土地の性質を理解し、建物の減価償却で賢く節税しよう
不動産投資における税務の基本は、土地は減価償却できず、建物部分のみが経費化の対象になるというルールを正しく理解することです。
マンション等を購入した際は、消費税額や固定資産税評価額を用いて価格を適切に按分し、建物の価値を正確に把握することが確定申告の第一歩となります。そして、この建物の減価償却という仕組みを戦略的に活用すれば、本業の給与所得と損益通算を行うことで、会社員にとって手残りを増やす強力な武器になります。
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