
「老後の資金準備や副収入のために、不動産投資を始めたい」
「でも、ニュースで見るような失敗はしたくないし、リスクがとにかく怖い……」
資産形成への関心が高まる中、このような期待と不安を抱えている人は少なくないようです。不動産投資は、家賃収入という安定したインカムや、インフレに強い資産を持てるなど、大きな魅力がある一方で、知識なく始めると取り返しのつかない失敗につながる危険な側面も持っています。
特にマンション投資は始めやすいイメージがありますが、特有のリスクを見落とすと、夢の大家生活どころか、毎月赤字を垂れ流す「負債」を抱え込むことにもなりかねません。
ただし、漠然とした不安を「コントロール可能なリスク」に変えるための知識をつければいいのです。
2025年の最新動向を踏まえ、不動産投資、特にマンション投資に潜む全12のリスクを徹底的に解説。さらに、それぞれのリスクに対する具体的な回避術まで網羅します。
記事を最後まで読んで、あなたは不動産投資で失敗を避け、成功への道を歩み始めるための、確かな羅針盤を手に入れましょう。
目次
【最初に知りたい質問】不動産投資の最大のリスクとは?

不動産投資に潜む数多くのリスク。その中で、投資家にとっての「最大のリスク」とは何でしょうか。
結論から言うと、それは「キャッシュフローが悪化し、自己資金の持ち出しが続く状態に陥ること」です。
キャッシュフローとは、家賃収入からローン返済や管理費、税金などの諸経費を差し引いて、最終的に手元に残るお金の流れのこと。
この記事で解説する「空室」「家賃下落」「金利上昇」「修繕」といったすべてのリスクは、最終的にこのキャッシュフローの悪化、つまり「赤字経営」につながります。
不動産投資の目的が資産を増やすことである以上、資産を減らす赤字経営状態こそが、最大にして本質的なリスクなのです。
まずは押さえるべき!不動産投資に共通する7つのリスクと対策

まずは、アパートや戸建て、マンションなど、あらゆる不動産投資に共通する基本的な7つのリスクを見ていきましょう。これらは成功のための必須知識です。
① 空室リスク
- リスク内容:入居者が決まらず、家賃収入がゼロになるリスク。収入はなくてもローン返済や管理費の支払いは続くため、最も直接的にキャッシュフローを悪化させます。
- 対策:何よりも「立地」が重要です。駅から徒歩10分圏内、コンビニやスーパーが近いなど、賃貸需要が安定しているエリアの物件を選びましょう。また、入居者付け(リーシング)に強い管理会社をパートナーに選ぶことも極めて重要です。
② 家賃下落リスク
- リスク内容:建物の老朽化や周辺に競合物件が増えることで、家賃を下げざるを得なくなるリスク。購入時の想定利回りを下回り、収支計画が狂う原因になります。
- 対策:2025年現在、東京23区など一部の都心部では建築費高騰と旺盛な需要から家賃は上昇傾向にありますが、長期的に見れば日本の人口減少による下落圧力は避けられません。購入前に周辺の家賃相場を徹底的に調査し、10年後、20年後も家賃が下落しにくいエリアかを見極める視点が不可欠です。
③ 金利上昇リスク【2025年最新動向】
- リスク内容:住宅ローン金利が上昇し、毎月の返済額が増えるリスク。特に変動金利でローンを組んでいる場合に影響が大きくなります。
- 対策:2024年にマイナス金利が解除され、2025年現在、もはや低金利が永遠に続くとは考えられない状況です。金利が1%上昇してもキャッシュフローが赤字にならないかシミュレーションしておく、手元資金に余裕があれば繰り上げ返済を行うなど、金利上昇を前提とした資金計画を立てましょう。
④ 災害リスク(地震・火災・水害)
- リスク内容:地震による倒壊、火災による焼失、台風や豪雨による浸水など、自然災害で建物が損壊し、資産価値を失うリスク。修繕費用や入居者への補償が発生する場合もあります。
- 対策:購入前にハザードマップを必ず確認し、災害リスクの低い土地を選びましょう。その上で、「火災保険」と「地震保険」への加入は必須です。補償内容をよく吟味し、万が一の事態に備えておくことが重要です。
⑤ 修繕リスク(突発的な出費)
- リスク内容:給湯器やエアコンの故障、雨漏りなど、予測不能なタイミングで発生する修繕費用。数十万円単位の突発的な出費は、キャッシュフローを圧迫します。
- 対策:中古物件の場合は、購入前に過去の修繕履歴を確認しましょう。新築・中古にかかわらず、毎月の家賃収入の中から「修繕積立金」として一定額(家賃の5%程度)を別口座に取り分けておくことで、いざという時の出費に慌てずに対応できます。
⑥ 不動産価格下落リスク(売却時の損失)
- リスク内容:購入時よりも不動産価格が下落し、売却時にローン残債を下回ってしまう(債務超過)リスク。売却損(キャピタルロス)が発生します。
- 対策:短期的な売買で利益を狙うのではなく、長期的な家賃収入を目的としましょう。その上で、将来にわたって資産価値が落ちにくい、人口が増えている、あるいは維持されている都市部の物件を選ぶことが、出口戦略(売却)のリスクヘッジになります。
⑦ インフレリスク
- リスク内容:インフレで物価が上昇すると、建物の修繕費や管理委託費なども高騰し、支出が増えるリスク。家賃を物価上昇分だけ引き上げられなければ、実質的な利回りは低下します。
- 対策:インフレに連動して家賃を上げやすい、需要の強い都心部の物件を選ぶことが一つの対策です。また、金利が低い時期に長期の固定金利でローンを組んでおけば、インフレで金利が上昇しても返済額は変わらないため、インフレリスクを抑えることができます。
【要注意】マンション投資特有の4つのリスクと対策

ここからは、一棟アパートなどにはない、区分所有マンションならではの特殊なリスクを4つ解説します。これらを見落とすと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
⑧ 管理会社リスク(倒産・対応の悪さ)
- リスク内容:入居者募集や家賃回収、クレーム対応などを委託する管理会社の質が低い、あるいは倒産するリスク。対応が悪いと入居者の満足度が下がり退去につながったり、空室期間が長引いたりします。家賃保証(サブリース)契約をしていても、管理会社が倒産すれば保証はなくなります。
- 対策:管理委託費の安さだけで選ぶのは危険です。複数の管理会社を比較し、客付けの実績、管理戸数、担当者のレスポンスの速さなどを確認しましょう。地元に強く、長く営業している会社は信頼できる可能性が高いです。
⑨ 建物の老朽化・建て替えリスク
- リスク内容:築年数が経過したマンションでは、大規模修繕でも対応しきれない老朽化が進み、最終的に「建て替え」が検討される場合があります。しかし、建て替え決議には区分所有者の5分の4以上の賛成が必要で、合意形成のハードルは非常に高く、実現は困難なのが実情です。建て替えもできず、資産価値が下がり続けるリスクがあります。
- 対策:旧耐震基準(1981年5月以前)の物件は原則として避けましょう。新耐震基準の物件であっても、長期修繕計画がしっかりしているかを確認することが重要です。あまりに築年数が古い物件への投資は、プロ向けの領域と心得ましょう。
⑩ 流動性リスク(売りたい時に売れない)
- リスク内容:不動産全般に言えることですが、特にマンションでは「売りたい」と思ってもすぐに買い手が見つからないリスクがあります。駅から遠い、旧耐震、ワンルーム条例に抵触しているなど、条件の悪い物件は現金化に1年以上かかることも珍しくありません。
- 対策:購入する段階で「自分が買い主だったら、この物件を欲しいと思うか?」という視点を持ちましょう。常に賃貸だけでなく売買の需要も見込める、ターミナル駅へのアクセスが良いなど、普遍的な価値を持つ物件を選ぶことが、流動性リスクへの最大の備えです。
⑪ 隣人トラブルリスク
- リスク内容:騒音、ゴミ出しのマナー、ペット問題など、入居者間のトラブルのリスク。オーナー自身が直接対応することは少ないですが、トラブルが原因で優良な入居者が退去してしまったり、物件の評判が落ちてしまったりする可能性があります。これはオーナーの努力だけでは完全にコントロールできないリスクです。
- 対策:購入前に物件の掲示板やゴミ置き場の状態を確認し、マンションの雰囲気を掴むことが参考になります。また、入居者トラブルの対応に慣れている経験豊富な管理会社を選ぶことが、リスクを最小限に抑える鍵となります。
【診断】あなたは大丈夫?不動産投資リスク許容度チェックリスト

不動産投資のリスクは、その人の資金力や知識、性格によって「許容できる範囲」が異なります。以下の8の質問で、ご自身の不動産投資リスク許容度をチェックしてみましょう。
【質問】YES / NO でお答えください。
- 預貯金とは別に、500万円以上の自己資金を用意できる。
- 突然、給湯器の交換などで20万円の出費が発生しても、生活に支障はない。
- 不動産投資に関する本を、これまでに3冊以上読んだことがある。
- ローンの返済計画や収支シミュレーションを自分で計算できる、または学ぶ意欲がある。
- 空室が半年続いても、精神的に落ち着いていられる自信がある。
- 管理会社や税理士など、専門家にお金を払って協力を仰ぐことに抵抗がない。
- 3年、5年という短期的な値上がり益を期待していない。
- 購入する物件の最寄り駅に、実際に足を運んだことがある(または行くつもりだ)。
【診断結果】
- YESが6個以上: 準備万端タイプ。リスクへの備えができています。信頼できるパートナーを見つけ、具体的な物件探しに進む段階です。
- YESが4~5個: 準備中タイプ。不動産投資への意欲は高いですが、資金面や知識面でまだ補強すべき点があります。まずは情報収集と自己資金の準備を続けましょう。
- YESが3個以下: 要検討タイプ。現時点では、不動産投資を始めるにはリスクが高い状態です。まずはNISAや不動産クラウドファンディングなど、少額から始められる投資で経験を積むことをお勧めします。
リスクだけじゃない!それでも不動産投資が選ばれる3つの理由

これほど多くのリスクがあるにもかかわらず、なぜ不動産投資は資産形成の選択肢として選ばれ続けるのでしょうか。それは、他の金融商品にはないユニークなメリットがあるからです。
① 安定したインカムゲイン(家賃収入)
株価のように日々価格が変動する資産と違い、家賃は一度入居者が決まれば毎月安定した収入が見込めます。景気の波にも比較的強く、私的年金として老後の生活を支えるキャッシュフローの基盤となり得ます。
② レバレッジ効果(少額の自己資金で大きな投資)
銀行から融資を受けることで、自己資金だけでは買えない高額な資産(不動産)を手に入れることができます。これを「レバレッジ効果」と呼びます。この効果により、資産形成のスピードを飛躍的に加速させることが可能です。
③ インフレ対策・生命保険効果
インフレでお金の価値が下がっても、不動産や家賃の価値は下がりにくく、インフレヘッジになります。また、ローン契約時に加入する「団体信用生命保険」により、契約者に万一のことがあればローンが完済され、家族に無借金の資産と家賃収入遺せる「生命保険」としての機能も果たします。
失敗事例から学ぶ!リスク管理を怠ったサラリーマン大家の末路

都内在住の会社員Sさん(40歳)は、将来への不安から不動産投資を決意。インターネットで見つけた「地方・築30年・利回り12%」という中古マンションに魅力を感じ、現物を見ずに購入を決めました。
しかし、これが悪夢の始まりでした。
- 修繕リスクの顕在化:購入直後、水道管の漏水が発覚し、修繕に80万円の想定外の出費。
- 管理組合リスクの罠:修繕積立金がほとんど貯まっておらず、Sさんの購入後すぐに大規模修繕のための一時金100万円の徴収が決議。
- 空室・家賃下落リスク:大学のキャンパス移転で地域の賃貸需要が激減。退去者が出ても次の入居者が決まらず、家賃を3割下げても空室は埋まりませんでした。
Sさんは、リスク調査を怠り、高利回りという数字だけに踊らされたのです。結局、毎月のローン返済と経費で給料から10万円以上を持ち出す「赤字大家」に転落。売却しようにも買い手がつかず、今も物件を塩漬けにするしかない状況に陥っています。
よくある質問(Q&A)

Q1. 新築マンションと中古マンション、どちらがリスクが低いですか?
A1.一長一短があり、どちらのリスクが低いとは一概に言えません。
- 新築マンション:当面の修繕リスクは低いですが、価格にデベロッパーの利益などが上乗せされているため割高で、購入直後から価格が下落するリスクが大きいです。
- 中古マンション:新築に比べ価格がこなれており、価格下落リスクは比較的小さいですが、修繕リスクや管理組合・管理会社の状況など、見極めるべき点が多くなります。 ご自身の知識レベルやリスク許容度に合わせて選ぶことが重要です。
Q2. 信頼できる不動産会社の見分け方を教えてください。
A2.良い不動産会社は、メリットだけでなくリスクについても正直に話してくれます。 以下の点もチェックしましょう。
- あなたの資産状況や目標をしっかりヒアリングしてくれるか。
- 物件を一つに絞らず、複数の選択肢を提示してくれるか。
- 契約を急かしたり、しつこい営業をしたりしないか。
- 宅地建物取引業の免許番号の更新回数が多く、長く営業しているか。
複数の会社と面談し、あなたが「この人になら任せられる」と心から思える担当者を見つけることが成功の鍵です。
不動産投資のリスクはゼロにできない。だからこそ「管理」する視点が成功のカギ

ここまで、不動産投資に潜む12のリスクとその対策について解説してきました。
不動産投資のリスクを完全にゼロにすることは不可能ですが、リスクの正体を正しく知り、一つひとつに対策を講じることで、リスクをコントロールし、影響を最小限に抑えることは十分に可能です。
重要なのは、リスクを漠然と恐れるのではなく、「リスクを管理(マネジメント)する」という視点です。不動産投資は、宝くじのようなギャンブルではありません。物件を購入し、入居者という顧客にサービスを提供し、対価として家賃を得る、一つの「事業経営」です。
経営者としてリスクと真摯に向き合い、学び続ける覚悟があるならば、不動産投資はあなたの人生を豊かにする強力なツールとなり得るでしょう。
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