
不動産を持つと毎年支払うことになる「固定資産税」。その税額の基準となる「固定資産税評価額」について、あなたは正しく理解できていますか?
「納税通知書に書かれている金額だけど、どうやって決まるの?」
「土地や家の評価額って、時価と同じくらい?」
「もしかしたら、税金を払いすぎていないか……?」
そんな疑問をお持ちの方のために、固定資産税評価額の基本から、具体的な調べ方、計算方法、そして評価額を下げて節税につなげる5つのコツまで、専門知識がなくても分かるように、やさしく解説します。
固定資産税評価額を正しく理解することは、適正な納税はもちろん、将来の資産計画を立てる上でも非常に重要です。この記事を読めば、あなたの不動産に関するお金の知識が一段と深まるはずです。
目次
【結論から解説】固定資産税評価額とは?実勢価格(時価)との違い

固定資産税評価額とは、一言でいうと「固定資産税などの税金を計算するための基準となる価格」のことです。
この評価額は、総務省が定めた「固定資産評価基準」に基づいて、各市町村(東京23区の場合は都)が個別の不動産ごとに決定します。
多くの方が混同しがちなのが、実際に市場で売買される価格である「実勢価格(時価)」との違いです。
固定資産税評価額は、実勢価格の約70%が目安とされています。たとえば、市場で3,000万円で取引される土地の場合、固定資産税評価額は2,100万円程度になるのが一般的です。
なぜこのような差が生まれるのでしょうか?
それは、固定資産税評価額が、毎年変動する実勢価格を直接反映するのではなく、国が発表する「公示価格」の7割を目安に、3年に1度見直される(評価替えされる)という仕組みだからです。これにより、税額の急激な変動を防ぎ、公平な課税を実現しています。
この固定資産税評価額は、固定資産税だけでなく、都市計画税、不動産取得税、登録免許税といった、不動産に関わる様々な税金の計算基礎にもなる非常に重要な価格なのです。
【土地・家屋別】不動産の評価額はこう決まる!

固定資産税評価額は、土地と家屋(建物)でその決め方が異なります。所有する大切な不動産の価値がどのように評価されているのか、その仕組みをのぞいてみましょう。特に、土地の評価額の決まり方は節税にも関わる重要なポイントです。
① 土地の固定資産税評価額の決まり方【最重要】
土地の固定資産税評価額は、主に「市街地宅地評価法(路線価方式)」を用いて算出されます。 これは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価格である「路線価」を基準に計算する方法です。
国税庁が相続税の計算用に公表する「相続税路線価」とは別の、市町村が固定資産税のために定めた「固定資産税路線価」が使われる点に注意しましょう。この固定資産税路線価は、公示価格の70%程度の水準に設定されています。
【土地の評価額の計算イメージ】
土地の評価額=固定資産税路線価×土地の面積(㎡ )×補正率
ここで重要なのが「補正率」です。土地は一つとして同じものがなく、その個性(形状や利用状況)に応じて評価額を調整する必要があります。この調整が補正率によって行われます。
たとえば、以下のような土地は評価額が低くなる(減額される)可能性があります。
- 奥行きが長すぎる、または短すぎる土地:使い勝手が悪いため評価が下がる傾向にあります。
- 間口が狭い土地:車の出し入れがしにくいなど、利用しづらいため評価が下がります。
- 不整形地(きれいな四角形でない土地):建物を建てにくいため評価が下がります。
- 道路に接していない(無道路地)、または高低差がある土地:利用価値が低いため評価が下がります。
逆に、角地や二方路地など、複数の道路に面していて利便性が高い土地は、評価額が高くなる(増額される)こともあります。
土地がどのような形状で、どう評価されているかを知ることは、固定資産税の評価額が適正かどうかを判断する第一歩です。もし、使い勝手の悪い形状の土地なのに評価額が高いと感じる場合は、評価が見直される可能性があるかもしれません。
② 家屋(建物)の固定資産税評価額の決まり方
家屋(建物)の固定資産税評価額は、「再建築価格方式」で決定されます。 これは、「評価対象の家屋と同一のものを、評価の時点でもう一度新築した場合にかかる費用(再建築価格)」を基準に計算する方法です。
具体的には、市町村の調査員が新築時に家屋調査を行い、以下の項目をチェックして評価額を算出します。
- 構造:木造、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)など
- 屋根、外壁、内装の仕上げ材:どのような材料が使われているか
- 建築設備:キッチン、お風呂、トイレ、空調などのグレードや数
この再建築価格に、経年減点補正率(家屋の築年数に応じた価値の減少)を乗じて、その時点での評価額を算出します。
【家屋の評価額の計算イメージ】
家屋の評価額=再建築価格×経年減点補正率
車が年々価値を下げていくように、家屋も築年数が経つにつれて劣化していくため、評価額は基本的に下がっていきます。
ただし、どんなに古くなっても家屋としての利用価値が残っている限り、評価額がゼロになることはなく、最終的には再建築価格の20%で評価額が下げ止まるのが一般的です。
超カンタン!固定資産税評価額の調べ方4選【今すぐ確認】

不動産の固定資産税評価額がいくらなのか、気になるところ。実は、その調べ方は意外と簡単です。今すぐ手元で確認できる方法から、役所で手続きする方法まで、4つの調べ方をご紹介します。
① 納税通知書(課税明細書)で確認する【一番手軽】
最も手軽で確実なのが、毎年4月~6月頃に市町村から送られてくる「固定資産税・都市計画税 納税通知書」を確認する方法です。
この通知書に同封されている「課税明細書」を見てみましょう。「価格」または「評価額」という欄に記載されている金額が、不動産の固定資産税評価額です。土地と家屋がそれぞれ記載されているので、内訳も一目で分かります。まずはこの書類を探してみてください。
② 固定資産評価証明書を取得する
「固定資産評価証明書」は、不動産の評価額を公的に証明する書類です。 不動産の売買や相続登記、融資を受ける際などに必要となります。
この証明書は、不動産が所在する市町村の役所(都税事務所など)の窓口で取得できます。所有者本人や同居の親族、委任状を持った代理人が申請可能で、手数料は1通300円程度かかります。本人確認書類と印鑑、手数料を持参して手続きしましょう。
③ 固定資産課税台帳(名寄帳)を閲覧する
「固定資産課税台帳」は、市町村が固定資産税を課税するために作成している台帳です。 これを所有者ごとに一覧にまとめたものを「名寄帳」(なよせちょう)と呼びます。
役所で名寄帳の写しを取得したり、台帳を閲覧したりすることで、自分が所有する不動産すべての固定資産税評価額を確認できます。複数の不動産をお持ちの方には便利な方法です。また、毎年4月上旬から一定期間、自分の土地・家屋と近隣の評価額を比較できる「縦覧」という制度もあります。
④ 全国地価マップを利用する(土地のみ)
土地の評価額の目安を手軽に知りたい場合は、「全国地価マップ」というウェブサイトが便利です。
このサイトでは、固定資産税路線価を地図上で確認できます。調べたい場所の路線価(道路に付された価格)を見つけ、その価格に土地の面積を掛ければ、おおよその評価額を自分で計算できます。ただし、個別の土地の形状などは考慮されないため、あくまで概算値である点に注意してください。
全国地価マップ
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal
【計算例つき】固定資産税の計算シミュレーション

固定資産税評価額が分かったら、実際に固定資産税がいくらになるのか計算してみましょう。計算式はシンプルですが、税負担を軽くするための「特例措置」が非常に重要です。
固定資産税の基本的な計算式はこちらです。
固定資産税額 = 固定資産の評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)
ここで注意したいのが「課税標準額」という言葉です。
多くの場合、「固定資産税評価額=課税標準額」ではありません。特に、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、課税標準額が固定資産税評価額よりも大幅に低くなります。
それでは、具体的なモデルケースでシミュレーションしてみましょう。
【モデルケース】
- 土地:面積 180㎡ / 固定資産税評価額 2,400万円
- 家屋:新築 / 固定資産税評価額 1,500万円
- 税率:1.4%
【1. 土地の固定資産税の計算】
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用されます。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):評価額 × 1/6
- 一般住宅用地(200㎡を超える部分):評価額 × 1/3
このケースでは土地面積が180㎡なので、すべて小規模住宅用地に該当します。
- 課税標準額:2,400万円 × 1/6 = 400万円
- 固定資産税額:400万円 × 1.4% = 56,000円
もしこの土地が更地だった場合、特例は適用されず、税額は 2,400万円 × 1.4% = 336,000円 となり、6倍もの差が出ます。
【2. 家屋の固定資産税の計算】
新築住宅には、一定期間、固定資産税が1/2になる減額措置があります(床面積などの要件あり)。
- 一般の住宅:新築後3年間
- 長期優良住宅など:新築後5年間
このケースでは、新築の一般住宅と仮定します。
- 課税標準額:1,500万円 (家屋は原則として評価額がそのまま課税標準額になります)
- 本来の固定資産税額:1,500万円 × 1.4% = 210,000円
- 減額措置適用後の税額:210,000円 × 1/2 = 105,000円
【合計税額】
土地(56,000円)+ 家屋(105,000円) = 年間 161,000円
このように、特例や減額措置を正しく理解することが、適正な税額を知るための鍵となります。
固定資産税は安くなる?評価額を下げて節税する5つの方法

固定資産税は毎年支払うものだからこそ、少しでも安く抑えたいもの。固定資産税評価額の見直しや、特例の活用によって節税につながる可能性のある5つの方法をご紹介します。
方法①:住宅用地の特例を正しく適用する
最も節税効果が高いのが「住宅用地の特例」の適用漏れを防ぐことです。 たとえば、更地だった土地に家を新築した場合や、事務所として使っていた建物を居住用にリフォームした場合などは、速やかに市町村へ申告しましょう。自動で適用されるとは限らないため、納税通知書を見て「宅地」の区分が「住宅用地」になっているか必ず確認してください。
方法②:新築住宅の減額措置を利用する
新築の家を購入したら、減額措置が正しく適用されているかを確かめましょう。 通常、床面積が50㎡以上280㎡以下などの要件を満たせば、3年間(マンションなどは5年間)税額が半分になります。長期優良住宅の認定を受けている場合は、期間がさらに長くなります。申請が必要な場合もあるため、ハウスメーカーや自治体に問い合わせると安心です。
方法③:土地の分筆で評価額を見直す
広い土地の一部を私道として使っている場合など、土地の利用状況が評価額に反映されていないケースがあります。 そのような場合、利用状況に合わせて土地を「分筆」(ぶんぴつ)し、地目を「宅地」から「公衆用道路」などに変更する登記を行うことで、非課税になったり評価額が下がったりする可能性があります。ただし、専門的な知識が必要なため、土地家屋調査士への相談が必須です。
方法④:家屋の取り壊しを届け出る
家を取り壊した場合は、必ず1ヵ月以内に法務局で「建物滅失登記」を行い、市町村にも届け出ましょう。 この手続きを忘れると、存在しない家屋に対して固定資産税が課税され続けてしまいます。ただし、家を取り壊して更地にすると、土地の「住宅用地の特例」が適用されなくなり、土地の税額が最大6倍に跳ね上がる可能性があるので注意が必要です。
方法⑤:審査の申出(不服申し立て)を行う【最終手段】
納税通知書に記載された評価額にどうしても納得できない場合は、「固定資産評価審査委員会」に審査の申出(不服申し立て)ができます。 これは、納税通知書を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に行う必要があります。ただし、明らかな評価の間違いなどを証明する必要があり、申し立てが認められるハードルは非常に高いのが実情です。まずは役所の担当課に相談することから始めましょう。
固定資産税評価額に関するQ&A

ここでは、固定資産税評価額に関してよく寄せられる質問と答えを紹介します。
Q1. 評価替え(3年に1度)で、評価額は必ず変わりますか?
必ずしも変わるとは限りません。 評価替えは、3年間の地価の変動などを評価額に反映させるためのものですが、地価の変動がほとんどない地域では、評価額が据え置かれる(変わらない)こともあります。これを「据置措置」と呼びます。逆に、地価が大きく上昇した場合は、税負担が急激に増えないように、緩やかに評価額を上げていく措置が取られます。
Q2. 新築マンションと中古戸建て、評価額の推移はどう違いますか?
建物の評価額の下がり方は、構造によって異なります。 一般的に、鉄筋コンクリート造のマンションは、木造の戸建てに比べて頑丈で法定耐用年数も長いため、評価額の下落は緩やかです。一方、土地の評価額は立地条件に大きく左右されるため、マンションか戸建てかという違いよりも、どのエリアにあるかが重要になります。
Q3. 親から相続した土地の評価額も同じ方法で調べられますか?
はい、調べ方は同じです。 納税通知書を確認したり、役所で固定資産評価証明書を取得したりすることで確認できます。ただし注意点として、相続税を計算する際に使う土地の評価額は「相続税評価額(路線価または倍率方式で評価)」であり、固定資産税評価額とは異なります。一般的に相続税評価額の方が高くなる傾向があります。
Q4. 2024年の定額減税は固定資産税にも適用されますか?
いいえ、適用されません。 2024年に行われた定額減税は、個人の「所得税」と「住民税」を対象とするものです。固定資産税や都市計画税、自動車税などは対象外となりますので、お間違えのないようご注意ください。
固定資産税評価額の理解が、賢い不動産管理の第一歩

今回は、固定資産税評価額について、その意味から調べ方、計算方法、そして節税のコツまでを網羅的に解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 固定資産税評価額は、固定資産税などを計算するための基準価格で、時価の約70%が目安。
- 土地は「路線価」、家屋は「再建築価格」を基準に評価される。
- 評価額は、納税通知書の「課税明細書」で簡単に確認できる。
- 税額計算では「住宅用地の特例」や「新築の減額措置」が非常に重要。
- 評価額が適正かを確認し、活用できる制度を漏れなく使うことが賢い節税につながる。
固定資産税は、不動産を所有する限り長く付き合っていく税金です。その基礎となる固定資産税評価額を正しく理解することは、不要な税金を払うことを避け、あなたの資産を賢く管理・運用していくための第一歩と言えるでしょう。
まずは、お手元の納税通知書を改めて確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
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