駅徒歩10分のマンションの資産価値は?徒歩距離とマンション資産価値を徹底比較
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「駅からの距離はマンションの資産価値にどれほどの影響があるのか」――。

この記事では、そんなシンプルな問いに答えるべく、「駅徒歩10分」「駅徒歩15分」といった徒歩距離とマンションの資産価値との関係を最新データで検証します。さらに、値崩れしにくい物件条件や資産価値を最大化するチェックポイントまで、分かりやすく解説します。

目次

  1. 駅徒歩10分と15分の差が資産価値に及ぼす影響
  2. 駅徒歩15分でも資産価値が落ちない物件の特徴
  3. 駅近マンションの資産価値を最大化する11のチェックポイント
  4. 「駅徒歩10分」を軸に、多角的な視点で“本当の価値”を見抜く

駅徒歩10分と15分の差が資産価値に及ぼす影響

駅徒歩10分のマンションの資産価値は?徒歩距離とマンション資産価値を徹底比較
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まずは国土交通省が公開する「不動産情報ライブラリ」で発表されているマンションの取引データを見ていきましょう。

徒歩分数と平米単価の相関

下のグラフは、駅からの徒歩分数ごとの平米単価の平均値を示したものです。

【データ抽出条件】
対象期間: 2022年第1四半期~2024年第4四半期(2022年1月〜2024年12月)
対象エリア: 東京23区
物件種別: 中古マンション

徒歩分数と平米単価の相関
最寄り駅からの距離(分) 平米単価 徒歩1分の平米単価からの下落率
徒歩1分 約124.31万円 0%
徒歩2分 約119.11万円 約4.2%
徒歩3分 約128.20万円 約-3.1%
徒歩4分 約116.44万円 約6.3%
徒歩5分 約113.44万円 約8.7%
徒歩6分 約115.70万円 約6.9%
徒歩7分 約114.89万円 約7.6%
徒歩8分 約105.82万円 約14.9%
徒歩9分 約102.14万円 約17.8%
徒歩10分 約100.07万円 約19.5%
徒歩11分 約93.73万円 約24.6%
徒歩12分 約90.99万円 約26.8%
徒歩13分 約87.49万円 約29.6%
徒歩14分 約77.19万円 約37.9%
徒歩15分 約72.96万円 約41.3%
不動産情報ライブラリ(国土交通省)の情報をもとに編集部作成

特定の高額物件の取引などが平均値に影響し、一部不規則な動きは見られるものの、全体として駅から遠ざかるにつれて価格が下落する傾向にあることがわかります。駅徒歩1分の平米単価と比較すると、駅徒歩10分の物件は約19.5%、駅徒歩15分の物件は約41.3%ほど価格が下落しています。

ただし、この下落幅はエリア特性によって大小があります。車依存度の高い地域では、駅からの距離の影響が相対的に小さいため、資産価値を判断する際には「地域特性×駅距離」の複眼的な視点をもつようにしましょう。

なぜ「徒歩10分以内」が選ばれやすいのか?

SUUMO リサーチセンターの「住宅購入・建築検討者調査2024」によると、購入検討者の47%が「徒歩10分未満」を希望しており、この割合は2年連続で上昇しています。 なぜこのような傾向にあるのか、その背景にある理由を分析してみます。

時間という目に見えない資産

駅からの距離は、単なる利便性の指標ではありません。それは、私たちの生活の質(QOL)を左右する、かけがえのない「時間資産」です。

通勤や通学にかかる時間が短くなれば、ストレスや疲労の原因にさらされる時間を物理的に短縮することができます。朝は慌ただしさが消えて心穏やかに一日が始まり、夜は帰宅後にゆとりが生まれる。そうして日々の心身の負担が軽くなることは、仕事のパフォーマンス向上や、家族と穏やかに過ごすためのエネルギーにつながります。

物件選びにおいて「徒歩10分以内」という条件が重視されるのは、それが日々の快適性を確保し、暮らしの豊かさと健やかな生活への「投資」という側面を持っているからに他なりません。

「駅近」というブランドイメージ

雨の日の通勤の楽さ、仕事帰りに気軽に立ち寄れる商業施設、そして夜道を歩く時間の短さがもたらす安心感──。こうしたポジティブなイメージの積み重ねが、「駅近=豊かな暮らし」という強力なブランドイメージを築き上げています。

また、多くの人が物件探しで使うポータルサイトで、「徒歩10分以内」という条件が重要な区切りとなっており、将来売却したり賃貸に出したりする際にも「買い手や借り手が見つかりやすいだろう」という安心感に繋がります。

駅徒歩15分でも資産価値が落ちない物件の特徴

駅徒歩10分のマンションの資産価値は?徒歩距離とマンション資産価値を徹底比較
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これまでのデータが示す通り、駅から15分離れたマンションは資産価値の維持が難しい傾向にありますが、「距離の不利」を覆す強力な付加価値があれば、都心の駅近物件に匹敵するリセールバリューを発揮する場合もあります。

再開発・大型商業施設が牽引するケース

大規模な再開発は、街の魅力を劇的に向上させ、駅からの距離というデメリットを凌駕するほどの力を持ちます。

たとえば港区の高輪エリアでは、JR山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」の開業を含む超大型再開発が進行しています。これにより、駅から多少離れたマンションでも開発への期待感から資産価値が大きく向上しています。

「交通ハブ」機能が、時間的デメリットを覆す

複数の路線が乗り入れる「ハブ駅」や、ラッシュ時でも座って通勤できる「始発駅」は、日々の利便性が非常に高いため、徒歩分数の不利を十分に補う価値があります。

たとえ駅徒歩15分でも、都内の主要駅へ乗り換えなしでアクセスできたり、毎朝必ず座って読書や勉強の時間が確保できたりするなら、それは徒歩5分の単線駅よりも魅力的だと感じる人も少なくありません。

人口流入が、「選ばれる街」としての価値を支える

将来にわたって「買いたい」「借りたい」という人が増え続けるエリアは、当然ながら資産価値が維持されやすくなります。

たとえば、東京都中央区の晴海エリアは、大規模な住宅開発(晴海フラッグ)や都心への近さからファミリー層の人気を集め、人口が増加し続けています。このように、自治体の魅力的な施策などによって定住者が増えている街は、安定した需要に支えられ、駅から多少離れていても資産価値が落ちにくいのです。

駅近マンションの資産価値を最大化する11のチェックポイント

駅徒歩10分のマンションの資産価値は?徒歩距離とマンション資産価値を徹底比較
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「駅徒歩10分以内」という好条件も、それだけで資産価値が保証されるわけではありません。「災害に弱い」「管理がずさん」といった問題が後から発覚し、価値が急落するケースもあります。

ここでは「立地」「建物」「管理」の3つの視点から、本当の資産価値を見抜くための11のチェックポイントを整理しました。チェックリストとして活用し、「駅からの距離」以外の本質的な資産価値を可視化しましょう。

立地編:街そのものの将来性を読む

1. ハザードマップと災害リスク

近年、購入者の防災意識は非常に高く、浸水や土砂災害のリスクは資産価値に直結します。
自治体のHPや国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」などで、災害リスクを必ず確認しましょう。

参考:ハザードマップポータルサイト(国土交通省)

2. 再開発・大型商業施設の計画有無

街の将来性を左右する大きなプラス要因であり、前項でも解説した通り、距離のハンデを覆す力があります。簡単に把握できるものではありませんが、自治体の都市計画情報や、不動産会社の担当者へのヒアリングを通じて、情報を収集するようにしておくことが重要です。

3. 教育・医療など行政インフラの充実度

人気の学区や総合病院の存在は、特にファミリー層からの安定した需要に繋がります。
自治体のHPで学区情報を確認し、地図アプリで周辺施設をリサーチしましょう。

4. 交通ハブとしての機能性(複数路線・始発駅など)

乗り換えの利便性や通勤の快適さは、駅からの距離と同じくらい重要な価値を持ちます。利用できる路線や、始発・急行列車の停車有無などを路線図や駅情報で確認しましょう。

建物編:築年数だけでなく“中身”を点検

5. 新耐震基準への適合

住宅ローン控除など税制面での優遇が大きく異なり、買主にとって探しやすさに直結する最重要項目です。

6. 耐震基準適合証明の有無

「建築確認済証」の日付で1981年6月以降に建てられたものかを確認する必要があります。あわせて、不動産会社に必ず確認しましょう。旧耐震物件であっても、耐震基準適合の証明があれば税制優遇が受けられるため、資産価値の低下を抑えられます。

7. 壁や床の厚さ、二重床・二重天井か(遮音性)

民間の騒音トラブルは生活の質を下げ、資産価値にも影響します。壁や床の構造は要チェックです。「設計図書」で戸境壁の構造やスラブ厚を確認し、営業担当者にもヒアリングしましょう。

8. 大規模修繕の履歴と計画

12~15年周期で適切にメンテナンスされているかどうかは、建物の寿命と将来のコストに影響します。「長期修繕計画」や「重要事項調査報告書」で実施履歴と今後の計画を確認します。

管理編:数字でわかる“マンション経営”の健全度

9. 修繕積立金の残高と不足割合

国土交通省の調査では、約36%のマンションで積立金が不足気味というデータがあります。将来的な一時金徴収のリスクがないか、「重要事項調査報告書」で残高と滞納額を確認するようにしましょう。

参考:令和5年度マンション総合調査結果(国土交通省)

10. 管理組合の財務諸表(収支報告書・貸借対照表)

管理組合の財政が赤字続きだと、適切な管理が行われていない可能性があります。「総会議案書」に含まれる収支報告書や貸借対照表を確認しましょう。

11. 長期修繕計画と積立方式

将来の修繕費が急激に上がる「段階増額方式」のまま放置されていないか、必ず確認しましょう。健全なのは「均等積立方式」です。

以上の11項目を 「立地4・建物4・管理3」 の観点で見極めれば、駅からの距離だけに頼らない“本当の資産価値”を把握できます。

「駅徒歩10分」を軸に、多角的な視点で“本当の価値”を見抜く

駅徒歩10分のマンションの資産価値は?徒歩距離とマンション資産価値を徹底比較
(画像=拓也 神崎/stock.adobe.com)

これまで見てきた通り、マンションの資産価値において「駅徒歩10分以内」という条件は、売却・賃貸いずれの市場でも有利に働くといえます。

もちろん、再開発や優れた管理体制といった強力な付加価値があれば、距離のハンデを覆すことも可能です。しかし、それはあくまで限定的なケースと心得るべきでしょう。

「駅徒歩10分」という重要な「点」を軸に置きつつ、街の将来性・管理組合の財務状況など、多面的な指標をつなぎ合わせ、「本当の資産価値」を見つけ出しましょう。

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