家賃収入で暮らしている人はどうやって実現している?必要額や始め方、落とし穴まで解説
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「家賃収入で悠々自適な生活を送りたい」そんな夢を抱いている方もいるかもしれません。毎月、安定した収入が自動的に入ってくる仕組みは、確かに魅力的です。では、実際に家賃収入で暮らしている人は、どのような道のりを経てその生活を手に入れたのでしょうか。

この記事では、家賃収入の基本から、具体的な内訳、必要な経費、そして家賃収入で暮らすための現実と戦略、さらにはメリット・デメリットまで、網羅的に解説します。

目次

  1. 1.家賃収入とは?基本を理解しよう
    1. 1-1.家賃収入の定義と仕組み
    2. 1-2.「家賃収入」と「手残り現金(キャッシュフロー)」は異なる
    3. 1-3.家賃収入を得るために必要な支出(経費)の概要
  2. 2.家賃収入の具体的な内訳と差し引かれる経費
    1. 2-1.家賃収入として計上されるもの
    2. 2-2.家賃収入から差し引かれる主な経費
  3. 3.家賃収入で暮らすには?必要な金額と現実
    1. 3-1.不動産所得者の平均所得は547万円
    2. 3-2.高所得の不動産オーナーはごく一部という現実
  4. 4.家賃収入を得るための具体的な手順
    1. 4-1.ステップ1:情報収集と不動産会社選び
    2. 4-2.ステップ2:物件探しと選定
    3. 4-3.ステップ3:資金計画と融資の申し込み
    4. 4-4.ステップ4:物件の購入契約と決済
    5. 4-5.ステップ5:入居者募集と賃貸借契約
    6. 4-6.ステップ6:家賃の受領と物件管理
  5. 5.家賃収入で暮らすために大切な考え方と実践法
    1. 5-1.成功の土台:綿密な計画とリスク管理
    2. 5-2.収益最大化:物件価値の向上と効率的な運営
  6. 6.家賃収入で暮らすメリット・デメリット
    1. 6-1.家賃収入で暮らすメリット
    2. 6-2.家賃収入で暮らすことのデメリットとリスク
  7. 7.家賃収入で暮らしている人の実態から見える、理想と現実のギャップ

1.家賃収入とは?基本を理解しよう

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家賃収入という言葉を聞くと、多くの方が「何もしなくてもお金が入ってくる」というイメージを抱くかもしれません。しかし、その実態はもう少し複雑です。まずは家賃収入の基本的な定義と、それがどのようにして生まれるのか、そしてしばしば混同されがちな「手残り現金」との違いについて、しっかりと理解を深めていきましょう。

1-1.家賃収入の定義と仕組み

家賃収入とは、文字通り、所有する不動産(アパート、マンション、戸建てなど)を第三者に貸し出すことによって得られる賃料収入のことです。この収入は、不動産賃貸業における主要な収益源となります。

仕組みとしては、物件のオーナーが入居者と賃貸借契約を結び、入居者はその物件を使用する対価として毎月定められた家賃を支払います。この一連の流れが家賃収入を生み出す基本的な構造です。物件の購入から入居者募集、契約、家賃回収、そして物件の維持管理まで、オーナーにはさまざまな役割が求められますが、これらの業務は管理会社に委託するのが一般的です。

1-2.「家賃収入」と「手残り現金(キャッシュフロー)」は異なる

家賃収入は、あくまで売上(収入)の総額を指します。例えば、月10万円の家賃収入があったとしても、その10万円が全て自由に使えるお金になるわけではありません。

この家賃収入から、後述するさまざまな経費を差し引いたものが、実際にオーナーの手元に残る現金、つまりキャッシュフローとなります。多くの「家賃収入で暮らしている人」は、このキャッシュフローを最大化することに注力しています。収入の額面だけに目を向けるのではなく、最終的にどれだけの現金が手元に残るのかを正確に把握することが、不動産投資で成功するための鍵となります。

1-3.家賃収入を得るために必要な支出(経費)の概要

家賃収入を得るためには、残念ながら収入だけを見ているわけにはいきません。物件を維持し、安定した賃貸経営を行うためには、さまざまな支出(経費)が伴います。これらの経費を理解し、適切に管理することが、健全なキャッシュフローを生み出すうえで不可欠です。

主な経費としては、ローンの支払利息、不動産管理会社へ支払う管理委託料、物件の修繕にかかる費用、固定資産税や都市計画税といった税金、火災保険や地震保険などの保険料などが挙げられます。これらの経費は、物件の規模や種類、築年数、管理状況などによって変動します。次の章では、こうした収入と支出の具体的な内訳について、詳しく見ていきましょう。

2.家賃収入の具体的な内訳と差し引かれる経費

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家賃収入と一口に言っても、その中身は家賃だけではありません。また、そこから差し引かれる経費も多岐にわたります。ここでは、具体的にどのようなものが収入として計上され、どのような費用が経費として差し引かれるのかを解説します。

2-1.家賃収入として計上されるもの

不動産賃貸経営における収入は、主に以下の項目から構成されます。これらを合計したものが、いわゆる「家賃収入」となります。

2-1-1.家賃

最も基本的な収入源であり、入居者が物件を使用する対価として毎月支払うものです。物件の立地や間取り、築年数、設備の内容などを踏まえて金額を決定します。

2-1-2.共益費(管理費)

共用部分の維持・管理にかかる費用を入居者が負担するもので、毎月の家賃とともに支払われます。共益費はエレベーターや廊下、ゴミ置き場などの管理・清掃費用に充てられるのが一般的です。物件によっては「管理費」と呼ばれることもあります。

2-1-3.更新料

賃貸借契約は通常2年契約が多く、契約期間満了後も引き続き入居を希望する場合に、契約更新の対価として支払われる費用です。地域や物件によって慣習が異なり、更新料がない場合もあります。一般的には家賃の1ヵ月分程度が目安とされています。

2-1-4.礼金

契約時に入居者から謝礼の意味を込めて支払われる一時金であり、返還の義務がないため、オーナーにとってはそのまま収入となります。礼金を求めるかどうかは地域の慣習や物件の条件によって異なり、近年では礼金なしの物件も増えています。

2-1-5.敷金

家賃滞納や退去時の原状回復費用などに備えて、入居時に敷金を預かるケースがあります。退去時には、未払い家賃や入居者の故意・過失によって発生した修繕費などを敷金から差し引いたうえで、残額を返還するのが原則です。会計上は「預かり金」として処理され、そのままでは収入にはなりません。しかし、実際に発生した未払い家賃や入居者負担分の修繕費などに敷金が充てられた場合に限り、その充当された金額のみが収入として計上されます。

2-1-6.その他

駐車場や駐輪場の使用料、トランクルームの利用料など、家賃以外の収入が発生することがあります。こうした付随収入も、安定した不動産運用を行ううえで重要な要素となります。れます。

2-2.家賃収入から差し引かれる主な経費

家賃収入から差し引かれる経費は、不動産投資の収益性を左右する重要な要素です。どのような経費があるのかを事前に理解し、計画に織り込んでおく必要があります。

2-2-1.修繕費用

入居者の退去時に行う原状回復費用(壁紙の張り替え、ハウスクリーニングなど)や、給湯器、エアコンといった設備の故障・交換費用、将来的に必要となる外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕費用がこれにあたります。特に大規模修繕は数百万単位の費用がかかることもあるため、長期的な視点での積み立てが不可欠です。

2-2-2.管理会社への業務委託料

入居者募集、家賃集金、クレーム対応、物件の清掃・点検などの管理業務を不動産管理会社に委託する場合に支払う費用です。一般的には家賃収入の5%程度が相場とされていますが、委託する業務範囲によって変動します。

2-2-3.税金

不動産を所有していると、毎年固定資産税と都市計画税(市街化区域内の場合)が課税されます。また、家賃収入から経費を差し引いた利益(不動産所得)に対しては、所得税と住民税が課税されます。これらの税金は、不動産投資を行ううえで避けて通れないコストです。

2-2-4.保険料

火災や自然災害(台風・水害など)による損害に備えるためには、火災保険への加入が必要です。また、地震による損害に備えるには、火災保険に付帯するかたちで地震保険に加入します(地震保険は単独での契約はできません)。これらの保険に加入しておくことで、万が一の災害発生時にも修繕費用などのリスクを軽減することができます。

2-2-5.減価償却費

建物や設備は、時間の経過とともに価値が下がっていくと考えられており、その価値の減少分を毎年「減価償却費」として経費に計上することができます。実際に現金が出ていくわけではありませんが、会計上は費用として処理されるため、所得を圧縮する効果があります。

建物の構造や用途、設備の種類によって、減価償却に用いる「耐用年数」が異なります。主な資産ごとの法定耐用年数は、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の住宅であれば、耐用年数は47年とされています。一方、木造住宅は22年となっており、構造が異なれば償却期間も変わってきます。

2-2-6.ローン金利

物件購入のために金融機関から融資を受けた場合、毎月の返済額には元金部分と金利部分が含まれます。このうち、金利部分のみが経費として計上できます。元金部分は負債の返済であり、経費にはなりません。

2-2-7.その他諸経費

物件の視察や管理会社との打ち合わせにかかる交通費、不動産投資に関する情報収集や連絡に必要な通信費、税理士や司法書士への報酬などは、不動産収入に関連する支出として、原則経費に計上することが認められています。なお、私的な支出と混同されないよう、領収書や用途の記録を残しておくことが重要です。

3.家賃収入で暮らすには?必要な金額と現実

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家賃収入だけで暮らす「大家さんライフ」は、経済的自由の象徴として多くの人が憧れるライフスタイルの一つです。ここでは、その実現に必要な収入額や、理想と現実の間に横たわるギャップについて、公的なデータから読み解いていきましょう。

3-1.不動産所得者の平均所得は547万円

まず、不動産所得を主な収入源としている人は、日本にどれくらいいるのでしょうか。

国税庁の「令和5年分 申告所得税標本調査 -調査結果報告-」によると、不動産所得をメインとして所得税の申告・納税をした人は105.4万人、1人当たりの平均所得金額は547万円となっています。

「平均547万円なら生活できそうだ」と感じるかもしれませんが、これはあくまで税法上の「所得」であり、手元に残る現金「キャッシュフロー」とは異なります。ここから、個人事業主として納める税金や公的な保険料、そしてローン返済という大きな支出が差し引かれるためです。

同調査データによると、この所得に対する平均の所得税・復興特別所得税額は約68万円です。これに加えて、住民税(課税所得の約10%)や、個人事業主として納める国民健康保険料と国民年金保険料も支払う必要があります。仮に、これら税金と公的保険料の合計が年間180万円程度だとすると残りは約367万円です。

さらに、この金額からローン返済を行わなければなりません。もし年間200万円のローン返済があれば、最終的に手元に残るお金は年間167万円(月額約14万円)ほどになってしまいます。

総務省統計局が公表している「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、2024年の平均的な年間消費支出は、単身世帯で約204万円、二人以上の世帯では約360万円です。つまり、不動産所得者の平均的な姿では、ローンを抱えている場合、家賃収入だけで生活費を賄うのは非常に厳しい、というのが現実です。

3-2.高所得の不動産オーナーはごく一部という現実

では、裕福な暮らしができるほどの家賃収入を得ている人は、どれくらいの割合なのでしょうか。

先述の国税庁調査データの所得階級別の人数を見ると、不動産所得者のうち、税法上の所得金額が1,000万円を超える人は約12.3万人。これは不動産所得者全体の約11.6%に過ぎません。一部の高所得者に収益が集中する、格差の大きい世界であることがうかがえます。「家賃収入だけで悠々自適」というイメージ通りの生活を送っているのは、ほんの一握りの成功者というのが現実です。

そして、このデータにはもう一つ重要な視点が隠されています。それは、「兼業大家」の存在です。国税庁の調査データは、所得の中で最も金額が大きいもので個人を分類しています。そのため、給与がメインの「兼業大家」は「給与所得者」のカテゴリに含まれており、一見するとその実態が見えにくくなっています。

しかし、データを詳しく見ると、「給与所得者」のうち、副業として不動産所得を得ている人は全国に約78万人もいることがわかります。

この数字は、不動産所得を主とする「専業大家」の数である約105万人に迫る規模であり、いかに多くの人が兼業で不動産経営を行っているかを示しています。このことから、不動産経営は、それ一本で生計を立てるモデルだけでなく、給与という安定収入にプラスアルファの収益源を加えるという、より現実的でリスクを抑えた形で広く実践されていることが読み取れます。

4.家賃収入を得るための具体的な手順

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家賃収入を得るためには、どのようなステップを踏んでいけばよいのでしょうか。夢物語で終わらせないためには、具体的な行動計画が必要です。ここでは、情報収集から物件管理に至るまでの一連の手順を、ステップごとに解説します。

4-1.ステップ1:情報収集と不動産会社選び

何事も、最初が肝心です。まずは不動産投資について正しく理解するために、情報収集から始めましょう。書籍を読んだり、インターネットで信頼できる情報を探したり、不動産投資セミナーに参加するのも有効です。この段階では、家賃収入の仕組みやリスク、市場動向など、基本的な知識を身につけることが大切です。

あわせて、信頼できる不動産会社を見つけることも非常に重要です。不動産会社には、売買仲介を得意とする会社や、賃貸管理に強みを持つ会社など、さまざまなタイプがあります。自分の投資スタイルや目標に合ったパートナーを見つけるためには、複数の会社に相談し、担当者の知識や経験、提案内容などを比較検討しましょう。実績があり、親身に対応してくれる会社を選ぶことが、成功への近道となります。

4-2.ステップ2:物件探しと選定

基礎知識を身につけ、信頼できる不動産会社というパートナーが見つかったら、いよいよ具体的な物件探しに進みます。物件の選定は、不動産投資の成否を左右する最も重要なプロセスと言っても過言ではありません。実際に「家賃収入で暮らしている人」の多くは、この物件選びに非常に時間をかけ、慎重に判断しています。

物件を選ぶ際には、まず立地条件(駅からの距離、周辺環境、将来の発展性など)を重視しましょう。さらに、物件の種類(区分マンション、一棟アパート・マンション、戸建てなど)、築年数、価格、想定される利回り、建物の状態などを総合的に比較検討することが大切です。

表面利回りの数字だけで判断するのではなく、管理費や修繕費、固定資産税などのコストを加味した「実質利回り」のシミュレーションも忘れてはいけません。また、実際に現地へ足を運び、自分の目で物件や周辺環境を確認することも重要です。

4-3.ステップ3:資金計画と融資の申し込み

購入したい物件の候補が見つかったら、次は資金計画を具体化し、必要であれば金融機関に融資の申し込みを行います。自己資金をどれくらい投入できるのか、融資を利用する場合はどの程度の金額を、どのような条件(金利、返済期間など)で借り入れるのかを明確にします。

金融機関は、物件の収益性や担保価値、そして申込者の属性(年収、勤務先、金融資産など)を総合的に審査して融資の可否を判断します。融資の承認を得るためには、しっかりとした事業計画書や収支シミュレーションを準備することが求められます。複数の金融機関に相談し、最も有利な条件を引き出す努力も必要です。この段階で、不動産会社の担当者やファイナンシャルプランナーに相談するのもよいでしょう。

4-4.ステップ4:物件の購入契約と決済

融資の目処が立ち、購入の意思が固まったら、売主と不動産売買契約を締結します。契約時には、物件の詳細、売買代金、支払い条件、引き渡し日など、重要な事項が記載された契約書の内容を隅々まで確認することが不可欠です。専門的な内容も多いため、不明な点があれば、不動産会社の担当者や、必要に応じて弁護士などの専門家に確認しましょう。

契約後は、ローンの実行に向けた準備を進め、決済日にあわせて残代金の支払いが行われます。支払いと同時に、所有権移転登記や抵当権設定登記などの法的手続きも行われ、物件の引き渡しを受けて正式にオーナーとなります。登記業務は司法書士に依頼するのが一般的です。

4-5.ステップ5:入居者募集と賃貸借契約

物件の引き渡しを受けたら、次はいよいよ入居者を募集し、賃貸借契約を結んで物件を貸し出す段階に進みます。入居者の募集は、不動産管理会社に委託するのが一般的です。管理会社は、インターネットの不動産ポータルサイトへの掲載、チラシの配布、店頭での紹介など、さまざまな方法で入居希望者を募ります。

その際には、適切な家賃設定に加えて、敷金・礼金の有無やフリーレントの導入など、募集条件の工夫も重要です。条件を柔軟に見直すことで、空室期間の短縮や収益の最大化につながる可能性があります。

入居希望者が見つかれば、まずは入居審査を行い、問題がなければ賃貸借契約を締結します。契約書には、家賃、契約期間、禁止事項、退去時の原状回復に関する取り決めなど、貸主として明確にしておくべき重要な内容が含まれます。後々のトラブルを防ぐためにも、契約時にはこうした内容に漏れや不備がないかを十分に確認しておくことが大切です。

4-6.ステップ6:家賃の受領と物件管理

賃貸借契約に基づき、毎月入居者から家賃が支払われます。これがオーナーにとっての家賃収入となります。家賃の集金業務についても、管理会社に委託するのが一般的です。

ただし、オーナーの役割は家賃を受け取るだけではありません。物件の維持管理も、重要な業務のひとつです。共用部分の清掃、設備の点検や修繕、入居者からの問い合わせやクレーム対応など、対応すべきことは多岐にわたります。これらの業務も管理会社に委託できますが、オーナーとして物件の状況を定期的に把握し、適切な判断や指示を行うことが求められます。

安定した家賃収入を継続的に得るためには、入居者が安心して快適に暮らせる環境を提供し続ける姿勢が不可欠です。

5.家賃収入で暮らすために大切な考え方と実践法

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家賃収入で暮らすことは、多くの人にとって理想的なライフスタイルのひとつかもしれません。とはいえ、それを現実のものとし、さらに継続・発展させていくには、単に物件を所有するだけでは不十分です。安定したキャッシュフローを生み出すためには、戦略的な考え方と日々の実践が欠かせません。

5-1.成功の土台:綿密な計画とリスク管理

不動産投資における成功は、運任せでは成り立ちません。家賃収入で暮らすという目標を達成するためには、事前の綿密な準備と、リスクへの備えが重要です。

5-1-1.事前の収支シミュレーションと事業計画の重要性

物件を購入する前に、家賃収入・支出・税金・ローン返済などを含めた収支シミュレーションを行うことは必須です。空室や家賃下落、突発的な修繕などのリスクも踏まえて、複数のケースを想定しながら試算する必要があります。

そのうえで、目指すキャッシュフロー、投資回収までの期間、将来的な売却の見通しなどを含めた事業計画を立てておくと、投資判断がぶれにくくなります。金融機関からの融資を受ける場合も、この計画の内容が審査材料として重視されます。

5-1-2.空室・滞納リスクへの備え

家賃収入が途絶える原因として代表的なのが、空室と家賃滞納です。空室期間が長くなると収入が発生せず、滞納があれば対応や回収にコストと労力がかかります。こうしたリスクは事前の対策で最小限に抑えることが可能です。

空室対策としては、魅力的な物件づくり(リフォームや人気設備の導入)、相場に合った家賃設定、信頼できる管理会社への委託などが有効です。滞納リスクに対しては、入居審査の強化や保証会社の活用、滞納発生時の迅速な対応が効果的です。こうした基本的なリスク管理を徹底することが、安定した暮らしを支える土台になります。

5-2.収益最大化:物件価値の向上と効率的な運営

家賃収入を生活の柱として安定的に得ていくためには、収入の安定性を高める仕組みと、収益性を向上させる工夫の両方が求められます。物件の分散によるリスク軽減、入居者ニーズを踏まえた運営改善、そして日々のメンテナンスやトラブル対応まで、収益最大化には総合的な視点での取り組みが欠かせません。

5-2-1.複数物件による分散と収益の多角化

1件の物件に依存していると、空室や修繕などの突発的なトラブル、あるいは地域の需要変動によって、家賃収入が大きく左右されるリスクがあります。こうしたリスクを軽減する方法として有効なのが、複数の物件を組み合わせて運用する戦略です。

異なるエリアやタイプ(区分マンション、一棟アパート、戸建てなど)の物件を所有すれば、仮に一部の物件で収益が落ち込んでも、他の物件からの収入で補うことができます。結果として、全体のキャッシュフローが安定し、心理的な余裕も生まれやすくなります。

初めから無理に規模を追わず、ひとつの物件で実績と経験を積みながら、徐々に買い増していくステップアップ型の投資スタイルは、多くの不動産投資家が取り入れている堅実な方法です。

5-2-2.収益性を高めるための運営工夫

すでに保有している物件の収益性を高めるには、単に家賃を引き上げるのではなく、入居者満足度を意識した運営改善が不可欠です。特に重要なのが「長期入居を促す工夫」と「過剰投資を避けた設備改善」のバランスです。

例えば、古いキッチンやユニットバスを使いやすく刷新する、Wi-Fi環境を整える、収納を増やすといったリフォームは、入居希望者の関心を引きやすくなります。ただし、地域の家賃相場や入居者層を無視した高額な設備投資は、かえって回収が難しくなることもあるため注意が必要です。「何に、どれだけのコストをかけるべきか」を冷静に見極めながら改善を積み重ねることが、手残りの最大化につながります。

5-2-3.定期的なメンテナンスと迅速なトラブル対応

物件の収益を守るうえで、定期的なメンテナンスとトラブルへの迅速な対応は欠かせません。例えば、外壁や屋根の劣化チェック、共用部分の清掃、エアコンや給湯器などの設備点検を定期的に行うことで、突発的な修繕リスクや大規模な費用発生を防ぎやすくなります。

また、入居者からの連絡に対する対応スピードも重要な要素です。水漏れや設備不良などのトラブルにすばやく対応することで、入居者の信頼を得られ、結果的に長期入居につながりやすくなります。こうした日々の地道な取り組みが、空室リスクの低下や原状回復費用の抑制にも貢献し、長期的な収益安定につながるのです。

6.家賃収入で暮らすメリット・デメリット

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家賃収入での生活は多くの魅力がある一方で、注意すべき点やリスクも存在します。ここでは、その光と影、つまりメリットとデメリットを具体的に見ていきましょう。これらを正しく理解することが、後悔のない不動産投資への第一歩となります。

6-1.家賃収入で暮らすメリット

家賃収入で生活することには、単なる投資とは異なる、日々の暮らしに直結する実利があります。

6-1-1.労働に縛られず、時間に余裕が生まれる

物件を所有し、入居者がいれば、基本的には毎月一定の家賃収入が得られます。この収入は、自ら働かずとも得られる「仕組み化された収入源」であり、労働時間に縛られない生活を実現できます。これまで通勤や労働に費やしていた時間を、自分のために自由に使えるようになる点は、家賃収入で暮らすことの大きなメリットのひとつです。

6-1-2.ライフステージの変化にも柔軟に対応しやすい

家賃収入は定期性があり、予測しやすいため、定年退職後や育児・介護など働き方を見直すタイミングでも、安定した生活資金として活用できます。一度基盤ができれば、経済的な余裕を持ってライフスタイルを選びやすくなる点が大きな強みです。

節税やインフレ対策など副次的なメリットもある

不動産投資は、建物や設備の減価償却費などを経費として計上でき、課税所得を圧縮する効果が期待できます。また、物価上昇に伴って家賃が上がる場合もあり、インフレによる貨幣価値の目減りに対してもある程度の防衛力があります。このように、単なる収入源としてだけでなく、税務や資産保全の面でも一定のメリットがあります。

6-2.家賃収入で暮らすことのデメリットとリスク

一方で、家賃収入を生活の基盤にすると、予期せぬ事態や外的要因によって暮らしが不安定になる可能性もあります。

6-2-1.空室や賃料下落による収入の変動リスク

入居者が退去すれば、その期間中の収入はゼロになります。また、競合物件の増加や周辺環境の変化によって、家賃を下げざるを得ないこともあります。こうした変動は収支計画に大きな影響を及ぼし、生活費の確保にも直結します。

6-2-2.修繕費や設備更新などの予期せぬ出費

建物や設備の老朽化に伴い、突発的な修繕や交換が必要になることがあります。特に築年数が経過した物件では、給湯器や水回りなどの修繕が想定外に頻発する可能性もあり、収入のすべてを生活費に使っていると対応が難しくなることがあります。

6-2-3.ローン返済負担や金利上昇による圧迫

ローンを利用して物件を購入した場合、毎月の返済額は固定的な支出となり、家賃収入のなかからこれを継続的にまかなう必要があります。特に変動金利型のローンを選んでいる場合、市場金利が上昇すれば返済額も増加し、その分、手元に残るキャッシュフローが減少する可能性があります。金利の変動が生活資金に直接影響する点は、大きな注意点です。

6-2-4.自然災害による突発的な損失リスク

地震・台風・水害などの自然災害によって物件が被害を受けると、修繕費がかかるだけでなく、入居者が退去して家賃収入が一時的に途絶える可能性もあります。被害の程度によっては、長期間にわたり収入が得られなくなるケースもあります。火災保険や地震保険に加入していても、すべての損失が補償されるわけではないため、物件の立地条件や災害リスクを事前に把握し、十分な備えをしておくことが不可欠です。

6-2-5.いざという時に現金化しづらい

不動産は、売りたいと思ったタイミングですぐに売却できるとは限らない資産です。買い手が見つかるまでに時間がかかったり、希望通りの価格で売れなかったりすることもあります。そのため、急にまとまった現金が必要になった場合に柔軟に対応しにくいという「流動性の低さ」は、デメリットといえるでしょう。

7.家賃収入で暮らしている人の実態から見える、理想と現実のギャップ

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家賃収入で暮らす生活は、自由な時間と安定収入が手に入る理想的なライフスタイルとして語られることが多い一方で、そこに至るまでの道のりには、明確な戦略と現実的な視点が欠かせません。物件の選定、資金計画、日々の運営、トラブル対応、そしてリスク管理まで──どれひとつとして「何となく」で済まされるものではなく、地道な積み重ねが生活基盤を支えています。

また、「家賃収入で暮らしている人」は、決して運任せではありません。堅実に準備を進め、変化に対応しながら、着実にキャッシュフローを築いてきた人たちです。だからこそ大切なのは、「夢のような生活」を追い求めることではなく、自分にとって実現可能な現実を見据え、具体的な計画を立てることです。理想を持つことは悪いことではありませんが、現実の数字と向き合い、着実に行動へと移す姿勢が、家賃収入で暮らすための確かな一歩となります。

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