団体信用生命保険(団信)は月々いくら?仕組みや種類、保険料、選び方まで解説
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マイホームや投資用不動産をローンで購入する場合、多くの金融機関で加入を求められるのが団体信用生命保険(団信)です。ただ、「団信の保険料は月々いくらなのか」「ローンの支払いにどの程度影響するのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。

この記事では、団信の保険料の目安に加え、仕組みや種類ごとの特徴、選び方のポイントまで解説します。

目次

  1. 1.団体信用生命保険(団信)は月々いくら?
  2. 2.そもそも団体信用生命保険(団信)とは?
    1. 2-1.「万が一」に備える保険の仕組み
    2. 2-2.一般の生命保険との違い
  3. 3.団体信用生命保険(団信)に加入するための条件
    1. 3-1.対象者:住宅ローンまたは不動産投資ローンを新規で利用する人
    2. 3-2.健康状態の告知:金融機関所定の審査基準と告知義務
    3. 3-3.持病がある場合の選択肢:ワイド団信とは?
  4. 4.団体信用生命保険(団信)の種類と保障範囲
    1. 4-1.基本保障型:一般団信(死亡・高度障害に備える)
    2. 4-2.引受基準緩和型:ワイド団信(健康状態に不安がある人向け)
    3. 4-3.保障充実型:疾病保障付き団信(特約で保障範囲を拡大)
  5. 5.団体信用生命保険(団信)選びのポイント
    1. 5-1.必要保障を見極め、自分に合ったタイプを選ぶ
    2. 5-2.保障の厚さと費用負担のバランスを確認する
    3. 5-3.保険金が支払われる条件を必ず確認する
    4. 5-4.金融機関ごとの取り扱い商品を比較する
    5. 5-5.ローン完済後も見据えた長期的な視点で選ぶ
  6. 6.団体信用生命保険(団信)と他の保険のバランスをどう見直すか?
    1. 6-1.保障の重複がないかを確認する
    2. 6-2.足りない保障はないか?
  7. 7.団体信用生命保険は保障内容とコストを冷静に見極めよう

1.団体信用生命保険(団信)は月々いくら?

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団体信用生命保険(団信)の保険料は、住宅ローンでは金利に含まれているのが一般的で、死亡や高度障害に備える「一般団信」であれば追加費用は発生しないケースがほとんどです。ただし、死亡・高度障害以外にがんのような疾病を保障する団信の場合は、保険料が金利に上乗せされるのが一般的です。

一方、不動産投資ローンにおいても団信の保険料はローン金利に含まれてることが多いです。さらに、加入する場合は金利に保険料が上乗せされる形が主流です。例えば、一般団信の保険料として年0.2%程度が上乗せされ、さらに手厚いがん・三大疾病などの特約を付ける場合は、その金利に加えて年0.1%〜0.2%程度が追加で上乗せされるのが一般的です。

以下で、不動産投資ローンを前提とした団信の保険料負担をシミュレーションしてみましょう。ここでは、一般団信に加入した際の金利が年2.0%になるケースを基準とし、そこから保障内容を手厚くした場合に、月々の負担がどれだけ増えるのかを試算します。

【前提条件(共通)】

  • 借入額:3,000万円
  • 返済期間:35年
  • 返済方法:元利均等返済
  • 一般団信加入時の金利(基準金利):年2.0%
保障内容 適用金利 月々の返済額 月々の保険料(上乗せ分)
一般団信(基本保障のみ) 年2.0% 約99,378円 -(基準プラン)
がん保障付き(+0.1%) 年2.1% 約100,925円 約1,547円
3大疾病保障付き(+0.2%) 年2.2% 約102,485円 約3,107円
※月々の保険料(上乗せ分)は、基準となる一般団信プランの月々の返済額との差額です。
住宅ローン新規借入シミュレーション(三菱UFJ銀行)を使用

団信に特約を付けることで、月々の返済額は数千円単位で増加しますが、不動産投資においてはこの差が利回りやキャッシュフローに直結します。物件の収益性や自己資金比率と照らし合わせながら、保険によるリスクヘッジと収益性のバランスを見極めることが求められます。

※本シミュレーションは一例であり、実際の金利や保障内容、返済条件は金融機関や契約内容によって異なります。実際にローン契約・団信加入を検討する際は、必ず各社の最新情報とご自身の個別条件を確認してください。

2.そもそも団体信用生命保険(団信)とは?

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団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンや不動産投資ローンの契約者が死亡または高度障害になった場合に、保険金でローン残高を完済する仕組みです。万が一のときでも家族に返済の負担を残さず、居住用であれば住まいを、投資用であればローンのない不動産を相続できます。

参考:団体信用生命保険(全国信用保証協会連合会)

2-1.「万が一」に備える保険の仕組み

団信では、ローン契約者が被保険者、金融機関が契約者となり、保険会社と契約を結びます。契約者が死亡または高度障害状態になると、保険金が金融機関に直接支払われ、その時点のローン残高が完済されます。住宅ローンの場合、家族は住まいを手放すことなく生活を続けられます。不動産投資ローンの場合は、無借金の収益物件が残り、家賃収入を継続的に得られる可能性があります。

また、金融機関にとっても貸し倒れリスクを回避できるメリットがあるため、住宅ローンでは団信への加入が利用条件になっていることが一般的です。一方、不動産投資ローンでは、先述の通り団信への加入が任意となっているケースも多く見られます。

いずれの場合でも、万が一の際に団信に加入していなければ、遺された家族がローン返済を引き継ぐ必要があり、返済が困難となるケースも考えられます。こうした事態を避けるためにも、団信は重要な備えといえます。

2-2.一般の生命保険との違い

一般の生命保険は、保険金の受取人を家族などに自由に指定でき、保険金額や期間も柔軟に設定可能です。使い道も生活費や教育費、葬儀費用などさまざまです。これに対して、団信の保険金は金融機関が受け取り、保険金額はローン残高に応じて変動し、保険期間はローンの返済期間と同じです。ローン完済に特化した保険であることが、一般の生命保険との最大の違いです。

また、終身保険や養老保険のように解約返戻金がある一般の生命保険と異なり、団信には原則として返戻金がありません。さらに、一般の生命保険では保険料を月払いや年払いで別途支払うのが一般的なのに対し、団信ではローンの金利に保険料が含まれていることが多く、別途支払いが不要なケースが大半です。

3.団体信用生命保険(団信)に加入するための条件

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団信に加入するには、住宅ローンや不動産投資ローンを新たに契約することが前提となります。あわせて、保険会社や金融機関が定める健康状態や年齢などの加入基準を満たす必要があります。

3-1.対象者:住宅ローンまたは不動産投資ローンを新規で利用する人

団信の対象者は、住宅ローンや不動産投資ローンを新規に契約する人です。借換えの際にも再度加入するのが一般的です。多くの金融機関では年齢条件があり、例えば申込時は20歳以上70歳未満、完済時は80歳未満などと定められています。不動産投資ローンの場合は、申込者の健康状態だけでなく、物件の収益性や担保評価も審査対象になります。

3-2.健康状態の告知:金融機関所定の審査基準と告知義務

団信に加入する際には、健康状態の告知が必要です。過去の病歴や現在の治療状況、服薬の有無などを正確に申告しなければなりません。虚偽の申告があった場合、契約の解除や保険金の不支給につながることがあります。審査では、直近の入院歴、がん・心疾患・脳疾患・精神疾患といった重大疾病の治療歴などが主な確認項目となります。

3-3.持病がある場合の選択肢:ワイド団信とは?

健康状態に不安がある人でも、「ワイド団信」と呼ばれる引受基準緩和型の商品に加入できる場合があります。高血圧、糖尿病、うつ病などを抱える人でも、症状が安定していれば加入が認められるケースもあります。ただし、一般の団信に比べて金利が年0.1〜0.3%程度上乗せされるのが一般的です。金融機関ごとに取り扱いの有無や保障内容は異なるため、事前確認が不可欠です。

4.団体信用生命保険(団信)の種類と保障範囲

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団信にはいくつかの種類があり、契約者の健康状態や重視するリスクに応じて保障内容を選べます。住宅ローンでは多様なタイプから選べるケースが多い一方で、不動産投資ローンでは基本保障のみ、あるいは任意加入とされることもあります。ローンの種類や金融機関の方針によって取り扱いが大きく異なるため、契約時にしっかり確認しておくことが重要です。

4-1.基本保障型:一般団信(死亡・高度障害に備える)

最も標準的な団信で、契約者が死亡または所定の高度障害状態になった場合に、保険金でローン残高が完済されます。保障内容はシンプルで、万が一の事態に備えるうえで、住宅ローン・不動産投資ローンのいずれにおいても基本となる保障です。

住宅ローンでは、この基本保障があらかじめローン金利に含まれているケースが多く、別途の保険料支払いは不要です。一方、不動産投資ローンでは、保障そのものが任意扱いの場合が多く、条件には注意が必要です。

基本保障型は「ローン残高の解消」に特化しており、経済的リスクを最小限に抑えるうえで、重要な土台となります。

4-2.引受基準緩和型:ワイド団信(健康状態に不安がある人向け)

先述した通り、持病がある人でも加入しやすい「ワイド団信」は、健康状態に不安がある人にとって有効な選択肢の一つです。加入条件が緩和されている分、一般の団信よりも金利が年0.1〜0.3%程度上乗せされるのが一般的ですが、それでも団信に加入できることのメリットは大きいといえます。

ただし、すべての金融機関が取り扱っているわけではなく、不動産投資ローンでは対応していないケースもあります。また、投資用ローンでは利回りへの影響が出やすいため、金利上乗せがどの程度収支に影響するかを具体的に試算しておくことが重要です。

4-3.保障充実型:疾病保障付き団信(特約で保障範囲を拡大)

より手厚い保障を希望する場合は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中といった3大疾病、あるいは7〜11大疾病までカバーする「疾病保障付き団信」が選択肢になります。所定の状態に該当すると、死亡や高度障害と同様にローン残高が保険金で完済される仕組みです。

このタイプは特約として設定されることが多く、加入には健康状態の審査が必要です。金利は保障内容に応じて年0.1〜0.2%程度上乗せされるのが一般的で、長期の返済計画を立てるうえではトータルコストを含めたシミュレーションが欠かせません。

商品ごとに保障範囲や支払条件が細かく異なるため、内容をよく比較し、自分のリスク許容度や家計に合ったものを見極める姿勢が求められます。

5.団体信用生命保険(団信)選びのポイント

団体信用生命保険(団信)は月々いくら?仕組みや種類、保険料、選び方まで解説
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団信を選ぶ際には、住宅ローン・不動産投資ローンの目的や契約条件に加え、自身のライフプランや家計状況、健康状態、さらには相続や投資の方針までを含めて総合的に判断する必要があります。次のポイントを押さえ、自分に合った保障内容と支払い負担のバランスを見極めましょう。

5-1.必要保障を見極め、自分に合ったタイプを選ぶ

団信は「ローン返済を肩代わりしてくれる最低限の保障」です。家族構成や将来のライフイベント(子どもの進学、親の介護など)を見据えた上で、一般団信だけで十分か、あるいは手厚い保障を加えるべきかを判断することが大切です。特に扶養家族がいる場合や、収入を支える立場にある場合は、基本保障に加えて特約(3大疾病、就業不能など)を付加する意義があるかを検討しましょう。

また、不動産投資を行っている場合は、相続対策の一環として団信をどう活用するかも視野に入れるべきです。ローンが完済されることで相続税の債務控除が使えなくなる可能性がある一方で、借入のない収益物件を遺すことは、相続人にとって大きな経済的価値をもたらします。こうした利点と課税面での影響を踏まえ、団信による保障設計を資産承継戦略の一環として位置づけることが重要です。

5-2.保障の厚さと費用負担のバランスを確認する

団信の保障内容が充実するほど、金利の上乗せによって月々の返済額も増えます。住宅ローンの場合は、教育費や老後資金など将来的な支出を踏まえて、無理のない返済計画を設計することが大切です。

不動産投資ローンにおいては、上乗せ金利が利回りやキャッシュフローにどう影響するかを精緻に試算する必要があります。特約を追加した結果、投資の採算性を下げてしまわないよう、支出とリターンのバランスを意識した判断が欠かせません。

5-3.保険金が支払われる条件を必ず確認する

団信の「支払条件」は商品によって大きく異なります。例えばがん保障でも、「診断確定で即支給」のタイプと、「入院・治療が必要」など追加条件があるものがあり、同じ保障名でも中身が違う点に注意が必要です。

また、免責事項や告知義務違反により、給付が受けられないリスクもあるため、契約前には約款や重要事項説明書をよく確認し、自身の健康状態との整合性もチェックしましょう。

5-4.金融機関ごとの取り扱い商品を比較する

同じように見える団信でも、取り扱う金融機関によって金利上乗せや特約の有無、サービス内容が異なるため、比較検討が不可欠です。

住宅ローンと不動産投資ローンでは選べる団信の種類が違う場合があるほか、一部の商品では健康相談や治療支援などの付帯サービスを提供しているケースもあり、こうした付加価値も選定のポイントとなります。「どの団信が使えるか」は、ローン商品との組み合わせ次第なので、ローン契約前に確認しておくことが大切です。

5-5.ローン完済後も見据えた長期的な視点で選ぶ

団信はローン返済中の「万が一」に備える保険ですが、返済期間が長期に及ぶことを考えると、目先の保険料負担や金利上乗せだけで判断せず、将来にわたる影響まで踏まえて選ぶことが大切です。

例えば、返済が続く間に家族のライフイベント(子どもの進学、親の介護など)が重なる可能性もあります。こうした変化の中で、団信の保険料が家計を圧迫しないか、他の保障との重複や不足がないか、あらかじめチェックしておく必要があります。

6.団体信用生命保険(団信)と他の保険のバランスをどう見直すか?

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団信に加入していれば、万が一のときにローン返済の不安はなくなりますが、それだけで十分とは限りません。保障の範囲や目的が限定されているため、他に加入している生命保険や医療保険などとあわせて、保障の「重複」や「不足」がないかを見直す必要があります。

6-1.保障の重複がないかを確認する

まず確認しておきたいのが、住宅ローンに団信を付けた場合です。すでに生命保険に加入していて、将来の住居費も含めた保障額を設定している人は、団信の加入によって住居費に関する保障が重複している可能性があります。

団信は、契約者が死亡または高度障害になったときに、ローンの残高を保険で一括返済する仕組みです。つまり、万が一の際に住居費の負担がなくなるため、生命保険で同じ費用をカバーする必要はなくなります。その分の保障を見直すことで、保険料を抑えられ、家計の固定費削減にもつながります。

一方で、不動産投資ローンに付帯する団信は、自宅ではなく収益物件を対象にしたものです。ローン残債は保険で精算されますが、それは住居費の軽減には直結しません。

6-2.足りない保障はないか?

団信は死亡や高度障害には対応していますが、病気やケガで働けなくなった場合の収入減少まではカバーしていないことがほとんどです。ローンの返済は続くため、長期の療養や就業不能に備える保障も検討が必要です。例えば次のような保険が考えられます。

医療保険:入院や手術などに対応

就業不能保険:働けない間、毎月の給付金で生活費を補える

団信に収入保障の特約を付ける方法もありますが、加入時しか選べない場合が多いため、あとから補いたいときは別の保険で備える必要があります。

7.団体信用生命保険は保障内容とコストを冷静に見極めよう

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団体信用生命保険(団信)は、ローン返済中の「万が一」に備える重要な保険です。基本保障であれば追加負担が発生しないケースが一般的ですが、がんや3大疾病などの特約を付けると、月々の返済額が増えることになります。特に不動産投資ローンでは、もともとの金利が高めに設定されているうえ、特約による金利上乗せがキャッシュフローや利回りに影響する可能性もあるため注意が必要です。

また、団信はあくまでローン残債に対応する限定的な保障です。生活費や医療費など、他のリスクへの備えは別の保険でカバーする必要があります。家族構成やライフプランの変化に応じて、団信と他の保険とのバランスを定期的に見直す視点が大切です。団信の保障内容や特約の有無は、利用する金融機関やローン商品によって異なります。契約前に選択肢と条件をよく確認し、コストと保障内容のバランスを冷静に見極めましょう。

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