オーナーチェンジ物件とは?出回る理由やメリット・デメリット、失敗しないポイント
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オーナーチェンジ物件は、購入時点で入居者がいる状態の不動産です。家賃収入をすぐに得られるという利点がある一方で、空室物件とは異なる注意点もあります。

この記事では、オーナーチェンジ物件が売りに出される背景や、投資におけるメリット・デメリット、購入前に押さえておきたいポイントを解説します。

目次

  1. 1.オーナーチェンジ物件とは?
  2. 2.なぜ売る?オーナーチェンジ物件が出回る理由
    1. 2-1.不動産投資の継続が困難になった
    2. 2-2.売り時と判断した
    3. 2-3.別の物件へ買い替える
    4. 2-4.急な資金ニーズへの対応
    5. 2-5.賃貸経営が成り立たなくなった
    6. 2-6.住宅ローンの不正利用による売却
  3. 3.オーナーチェンジ物件のメリット
    1. 3-1.購入直後から家賃収入が見込める
    2. 3-2.融資の審査が比較的通りやすい
    3. 3-3.相場より安く購入できる場合がある
    4. 3-4.収支計画が立てやすい
    5. 3-5.入居者募集の手間を抑えられる
    6. 3-6.前オーナーの運用ノウハウを活用できる
  4. 4.オーナーチェンジ物件のデメリット
    1. 4-1.室内の状態を確認しづらい
    2. 4-2.隠れた瑕疵も把握しにくい
    3. 4-3.住宅ローンの利用ができない
    4. 4-4.購入後に入居者が退去するリスクがある
    5. 4-5.入居者の情報を事前に確認しづらい
    6. 4-6.既存契約の条件変更が難しい
    7. 4-7.意図的に入居させたサクラがいる可能性も
  5. 5.オーナーチェンジ物件で失敗しないためのポイント
    1. 5-1.契約内容をしっかり確認する
    2. 5-2.現地調査で物件の実態を把握する
    3. 5-3.家賃相場と現状の賃料を照らし合わせる
    4. 5-4.物件の運用履歴を確認する
    5. 5-5.売主が手放す理由を確認する
    6. 5-6.信頼と実績のある不動産会社から購入する
  6. 6.オーナーチェンジ物件はリスクも理解して判断を

1.オーナーチェンジ物件とは?

オーナーチェンジ物件とは?出回る理由やメリット・デメリット、失敗しないポイント
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オーナーチェンジ物件とは、入居者がいる状態で売買される不動産のことです。旧オーナー(売主)と入居者との間で交わされていた賃貸借契約は、新オーナー(買主)にそのまま引き継がれ、入居者は退去することなく住み続けることができます。文字通り、住人はそのままで「物件のオーナーだけが入れ替わる」のが特徴です。

対象となる物件は、区分マンションや戸建て、一棟アパート・マンションなどさまざまです。一棟物件の場合は複数戸あるため、そのうち1戸でも入居中であれば、オーナーチェンジ物件として扱われます。

なお、新オーナーは家賃収入を得る権利だけでなく、敷金の返還や修繕対応といった義務も引き継ぐことになります。そのため、既存の賃貸契約内容や入居状況が、その後の運用に大きく影響する可能性がある点には注意が必要です。

2.なぜ売る?オーナーチェンジ物件が出回る理由

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オーナーチェンジ物件が市場に出回る背景には、売主の事情や投資環境の変化など、さまざまな理由が関係しています。ここでは、代表的なケースを見ていきましょう。

2-1.不動産投資の継続が困難になった

オーナー自身の生活環境の変化により、不動産投資の継続が難しくなって売却されることがあります。たとえば、遠方への転居、高齢による体力低下、病気などが挙げられます。

管理業務を委託していても、管理会社とのやり取りや確定申告など、オーナーが対応すべき業務は少なくありません。なかには、入居者や管理会社とのトラブルが原因で運用に支障をきたし、手放す判断に至るケースもあります。

2-2.売り時と判断した

不動産投資では家賃収入だけでなく、売却によって得られる利益も含めて、最終的な成果が決まります。そのため、物件価格が上がっているタイミングなど、利益が出やすいと判断されたときには売却されることもあります。

このようなケースは、たまたま入居者がいたというだけで、必ずしもマイナスの理由とは限りません。

2-3.別の物件へ買い替える

より高い収益性やスケールメリットを求めて、保有物件を売却し、別の物件へ買い替えるケースは少なくありません。たとえば、区分マンションから一棟物件へ切り替えたり、将来性のあるエリアに投資先を移すことで、運用効率の向上を目指すといった形です。

こうした売却は、収益性の改善や資産全体の最適化を図るための、戦略的な判断といえるでしょう。

2-4.急な資金ニーズへの対応

住宅の購入や子どもの進学など、まとまった資金が必要になった際に、保有している不動産を売却して現金を確保するケースもあります。

不動産投資は、長期的に安定した家賃収入が見込める点が魅力ですが、短期間で大きな利益を得られるような投資ではありません。そのため、急な支出に対応する手段として、売却を選択するオーナーも一定数存在します。

2-5.賃貸経営が成り立たなくなった

空室が長引いて想定していた収益が得られなかったり、高金利の融資で返済負担が大きくなって手元資金が圧迫されるなど、キャッシュフローの悪化が原因で売却に踏み切るケースもあります。

このような場合、無理に運用を続けるよりも、早めに売却して損失を抑える判断のほうが現実的といえます。

2-6.住宅ローンの不正利用による売却

本来、住宅ローンは自ら居住するための住宅購入に利用されるものですが、実際には賃貸経営運用を目的に物件を購入するケースも見受けられます。

このような不正が発覚すると、通常はローンの一括返済を求められます。一括返済ができない場合は自己破産に至る恐れがあり、さらに不正利用の程度によっては詐欺罪などの刑事罰が科される可能性もあります。

近年では住宅ローンの目的外使用が問題視されており、事態が深刻化する前に売却を選ぶオーナーも増えています。

3.オーナーチェンジ物件のメリット

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オーナーチェンジ物件には、次のようなメリットがあります。

3-1.購入直後から家賃収入が見込める

空室の物件を購入した場合、入居者が決まるまでの間は家賃収入が得られず、その間のローン返済や維持費は自己資金でまかなう必要があります。

一方、オーナーチェンジ物件はすでに入居者がいるため、購入直後から家賃収入を得られるのが魅力です。初月から収益が見込めることで、安心して運用を始めやすくなります。

3-2.融資の審査が比較的通りやすい

金融機関が融資を判断する際には、申込者の年収や職業といった属性に加え、物件そのものの収益性や資産価値も重視されます。すでに安定した家賃収入があるオーナーチェンジ物件は、収益性の裏付けがある分、審査で有利になりやすい傾向があります。

ただし、収益性が低い場合や、立地・物件の状態が悪い場合は、かえってマイナスに働くこともあります。あくまでも「収益性の高い物件」であることが前提です。

3-3.相場より安く購入できる場合がある

相場よりも家賃が低く設定されているオーナーチェンジ物件は、家賃収入の水準が物件価格に反映されて、比較的割安に購入できることがあります。

もちろん、入居者がいる間は収入も控えめになりますが、退去後に家賃を相場に合わせて見直すことができれば、利回りの上積みが期待できます。収益が増えれば物件の評価にも好影響を与え、将来的に売却益を得られる可能性もあるでしょう。

3-4.収支計画が立てやすい

オーナーチェンジ物件は、すでに入居者がいて家賃収入が発生しているため、購入前の段階から収支の見通しを立てやすいのがメリットです。実際に得られている賃料をもとに現実的なシミュレーションが行えるため、資金計画における不確実性を大きく減らすことができます。

空室物件のように「いつ入居が決まるか分からない」「家賃をいくらに設定すべきか悩む」といった不安を抱える必要がなく、特に不動産投資初心者にとっては心強い選択肢です。

3-5.入居者募集の手間を抑えられる

オーナーチェンジ物件は入居者がいる状態で取引されるため、新たに入居者を募集する必要がありません。

空室物件を購入する場合は、募集条件の設定、不動産会社とのやり取り、内見対応など、入居者を確保するまでに多くの手間が発生します。しかし、オーナーチェンジ物件であれば、こうした初期の負担を大きく軽減しながら不動産投資を始められます。

3-6.前オーナーの運用ノウハウを活用できる

オーナーチェンジ物件は、前オーナーが築いてきた管理体制や運営ノウハウを、実際に稼働している状態のまま引き継げる点もメリットです。

たとえば、以前から契約していた管理会社や修繕業者を引き続き利用すれば、物件の構造や設備の状態、過去の対応履歴などを把握している担当者と連携しやすく、管理や対応の負担を抑えることができます。

4.オーナーチェンジ物件のデメリット

オーナーチェンジ物件とは?出回る理由やメリット・デメリット、失敗しないポイント
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一方で、オーナーチェンジ物件には次のようなデメリットもあります。

4-1.室内の状態を確認しづらい

オーナーチェンジ物件は、入居者が住んでいる状態で売買されるため、購入前に室内を詳細に確認するのが難しいという側面があります。

リフォーム履歴や修繕の有無といった情報は取得できたとしても、現地での内見が制限されることが多く、設備の劣化具合や日常の使用状況を直接確認するのは困難です。そのため、購入後に予想外の修繕費用が発生するリスクもあります。

4-2.隠れた瑕疵も把握しにくい

オーナーチェンジ物件では、壁の内部や床下、天井裏、配管など、普段は見えない箇所に潜む問題を発見することも難しくなります。例えば、雨漏りの形跡、構造部分の腐食やシロアリ被害、給排水設備の深刻な老朽化といった「隠れた瑕疵(かし)」を見落としてしまう可能性が高まります。

購入後にこうした問題が発覚すると、表面的な修繕にとどまらない予想外の高額な修繕費用が発生するリスクがある点に注意が必要です。

4-3.住宅ローンの利用ができない

オーナーチェンジ物件はあくまで投資用不動産として扱われるため、自己居住を前提とした住宅ローンを利用することはできません。そのため、購入には不動産投資ローンを利用することになります。

不動産投資ローンは、住宅ローンと比べて金利が高めに設定されるほか、返済期間も短く、審査基準も厳しくなる傾向があります。

4-4.購入後に入居者が退去するリスクがある

購入時点で入居者がいるオーナーチェンジ物件でも、その入居が将来的に続く保証はありません。契約期間満了やライフスタイルの変化などを理由に、購入後まもなく退去されるケースも考えられます。

特に、契約更新のタイミングが近い場合などは、退去の可能性を念頭に置いておくことが重要です。想定外の空室リスクに備え、家賃収入が一時的に途絶えても対応できるよう、あらかじめ余裕のある資金計画を立てておきましょう。

4-5.入居者の情報を事前に確認しづらい

オーナーチェンジ物件では、入居者がそのまま引き継がれるため、入居者の詳細な人物像を把握するのは難しいことがあります。

家賃の支払い状況など基本的な情報は管理会社を通じて確認できることもありますが、職業や生活スタイルなど、より深い情報までは分からないのが一般的です。まれに滞納や近隣トラブルを抱えた入居者がいるケースもあるため、注意が必要です。

4-6.既存契約の条件変更が難しい

すでに賃貸借契約が結ばれている状態で取引されるオーナーチェンジ物件では、その契約内容が原則としてそのまま引き継がれます。そのため、新たなオーナーの判断で家賃や更新条件などを自由に変更することはできません。

たとえば、家賃が相場よりも低く設定されていた場合でも、契約期間中は原則その条件に従う必要があります。

4-7.意図的に入居させたサクラがいる可能性も

オーナーチェンジ物件の中には、売却を有利に進めるために、意図的に入居者を確保しているケースもあります。

いわゆるサクラ入居者が契約後すぐに退去してしまうと、その家賃収入を前提に立てた投資計画が大きく崩れる可能性があります。特に、不自然に高い家賃設定や、新規入居が短期間に集中している物件には注意が必要です。必ずレントロール(賃料表)を確認しましょう。

5.オーナーチェンジ物件で失敗しないためのポイント

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オーナーチェンジ物件は、入居者がすでに住んでいる状態で取引される特殊な不動産です。そのため、通常の空室物件とは異なる確認事項や注意点があります。ここでは、購入前に押さえておきたいチェックポイントを紹介します。

5-1.契約内容をしっかり確認する

オーナーチェンジ物件では、既存の賃貸借契約がそのまま引き継がれるため、新しいオーナーが勝手に契約内容を変更することはできません。

したがって、売主と入居者との間で結ばれている契約書の内容を事前に細かく確認することが重要です。賃料や契約期間、更新料の有無、保証人の有無、敷金の扱い、退去時の原状回復費用の負担など、トラブルになりやすい項目を中心にチェックしておきましょう。

5-2.現地調査で物件の実態を把握する

オーナーチェンジ物件は、入居者が住んでいる状態で売買されるため、購入前に室内を内覧できないことが一般的です。しかし、建物の外観や共用部の様子、周辺環境などは現地で確認することが可能です。

たとえば、外観の劣化状況やごみ置き場の状態、近隣の騒音、日当たり、嫌悪施設の有無などをチェックすることで、物件の管理状況や住環境、入居者層の傾向などをある程度推測できます。室内を確認できない分、現地で得られる情報をできるだけ収集しておくことが重要です。

5-3.家賃相場と現状の賃料を照らし合わせる

オーナーチェンジ物件の購入を検討する際は、売主や仲介会社からレントロール(賃料表)を入手し、現状の賃料が周辺相場と比べて妥当かどうかを確認することが大切です。

家賃が相場より低く設定されている場合は、将来的に賃料を見直すことで利回りの改善が期待できます。ただし、その家賃水準になっている理由についても事前に把握しておくと安心です。

一方で、相場より高い家賃が設定されている場合は、退去後に賃料が下がる可能性があるため、そのリスクを収支計画に織り込んでおく必要があります。また、レントロールの内容が実態と異なるケースも稀にあるため、書類だけで判断せず、実態と照らし合わせて確認することが重要です。

5-4.物件の運用履歴を確認する

売主から、過去の賃貸運営に関する情報をヒアリングすることで、将来の収益性や維持管理の見通しを立てやすくなります。

たとえば、入居率や空室期間の傾向、入居者の入替え頻度、決まりにくい部屋があるかどうかといった情報は、運用の安定性を判断する材料となります。

また、修繕履歴や設備の更新状況なども確認しておくことで、今後発生する可能性のあるコストを見積もることができます。加えて、現在の管理会社の対応状況も把握し、引き続き依頼するか、変更を検討するかを判断しましょう。

5-5.売主が手放す理由を確認する

売却理由を確認することで、物件の抱えるリスクをある程度見極めることができます。

高利回りで安定した家賃収入があるにもかかわらず売却しようとしているいる場合は、表面化していない問題を抱えている可能性があります。入居者や物件自体に何らかの事情があるのかもしれません。

ただし、売主が必ずしも本当の理由を話すとは限らないため、仲介業者を通じて客観的な情報を集める工夫が必要です。

5-6.信頼と実績のある不動産会社から購入する

オーナーチェンジ物件の購入では、確認すべき項目が多く、一般の買主にとってはハードルが高く感じられることもあります。

そのため、購入を検討する際は、実績と信頼のある不動産会社が売主となっている物件を選ぶのがおすすめです。信頼できる会社であれば、必要な情報をスムーズに入手しやすく、安心して取引を進めることができます。

また、不動産会社が自ら保有してきた物件であれば、過去の運用実績や修繕履歴などの詳細な情報を把握していることが多く、投資判断に役立つ具体的な情報提供を受けやすい点もメリットです。

情報の透明性と信頼性が求められるオーナーチェンジ物件だからこそ、信頼のおける不動産会社を選ぶことが、失敗を避けるための重要なポイントとなります。

6.オーナーチェンジ物件はリスクも理解して判断を

オーナーチェンジ物件とは?出回る理由やメリット・デメリット、失敗しないポイント
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オーナーチェンジ物件は、すでに入居者がいる状態で購入できるため、初月から家賃収入が得られる点で非常に魅力的です。融資審査でも有利になりやすく、収支計画も立てやすいことから、不動産投資のスタートとして検討されることも少なくありません。

一方で、室内の状態が確認しづらかったり、契約内容を自由に変更できないなどの制約や、退去リスク・情報の不透明さなどの注意点もあります。購入前には、契約内容やレントロール、物件の運用履歴、売主の売却理由などを丁寧に確認し、信頼できる不動産会社を通じて取引を進めることが重要です。

メリットだけに目を向けず、想定されるリスクもきちんと把握したうえで、自分にとって適した物件かどうかを冷静に見極めましょう。

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